何!?ズァークとは「もう1人のボク!」ではないのか!?   作:辛味噌の人

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 二次創作書いてていちばん楽しい時は脳内で捏造OP作ってる時だと思います。異論は認める。



何故黒咲がここに!?

 

「トリシューラプリン、トリシューラプリンっと……」

 

 ジュニアユース選手権への出場権を得た俺は、朝っぱらからお菓子を買いに街に繰り出していた。ミエルの件で酷く機嫌を損ねた柚子とアユのご機嫌取りのためである。未だに柚子に殴られたところが痛い……いや肉体的には痛くないのだが、こころが痛いのだ。

 

「それにしてもトリシューラプリンはあるのに氷結界の方のトリシューラは一度も見かけたことがないんだよな……」

 

 なんというか大いなる矛盾を感じる。いや超絶レアカード故に流通してないだけで持ってるやつは持ってるのかもしれないが……。5D′sで捨てられていたトリシューラが欲しいものである。いやまあ俺のデッキとはそんなにシナジー無いんだけど、ほら欲しいじゃん満足龍。

 

「お前たち!次期市長の命令が聞けんのか!一番偉いのは市長!市長こそ最高権力者!LDSもレオコーポレーションも私の命令に従わなくてはならない!理事長でも社長でもなく次期市長であるこの私にだ!」

 

「うげっ」

 

 嫌なもん見たな……。沢渡の父親、まあモンペなのもあるんだけどシンプルにヤバい奴なんだよな。とりあえず市長になってからものを言えよ……。ま、あんなんが市長になれる訳無いけどな。あれが当選したら世も末だよ。

 まあそんな輩のことはほっといて、とっとと買いに行かないと。人気だからすぐ売り切れちゃうだろうし……。

 

「……ってあれ?」

 

 なんか追われてる気が……。

 気になって後ろを振り向くと、先程沢渡父にゴネられていたLDS所属らしき3人組と、沢渡父が俺のことを追いかけていた。ちょ、零児さん話が違う……。

 いやまあ零児は悪くないんだろうけどさ。なんなら俺のこと追っかけて来てる3人組も悪くない。悪いのはあの沢渡父だろう。マインドクラッシュしたくなってきた……。

 

 まあとりあえず捕まってやる義理もない。とっとと撒いてやろう。

 そう思って路地裏の方に走り込んだ俺だったが、その前にまた別の人物が立ち塞がった。

 サングラスに口元を隠した謎の男だ。服装からしてLDSの追手という訳では無さそうだが……。というかなんか見覚えあるぞあいつ。オマケに謎の男は何故かモンスターを従えていた。こっちのモンスターにも見覚えあるな……。

 

「LDS……!ならば俺が相手だ!」

 

「えっ助けてくれんの?」

 

 俺を追う3人組を見てそう言った謎の男。いや正直代わりに相手してくれるんならありがたいんだけどさ。ここで俺がLDSをやっちまうとまた要らぬ疑いをかけられそうだし……。いや待て、LDSと戦おうとしてるってことはコイツが襲撃犯?

 そんな事を考えながらとりあえず謎の男の後ろに回り込む。さて逃げるか、場合によっては加勢するか……。加勢するにしてもどっちに……?

 

「なんだお前は!邪魔をするな!」

 

「来なければこちらから行く!俺は手札からRRバニシングレイニアスを召喚!」

 

 げえっRR(レイドラプターズ)!?あっ思い出した!コイツ黒咲だ!俺でもちょっと知ってる!黒咲が何故ここに?逃げたのか?自力で脱出を?

 というか向こうがデュエルディスク構えてないのに強行すんのかよ!?

 

「そしてバニシングレイニアスの効果により、手札からバニシングレイニアスを特殊召喚!レベル4のバニシングレイニアス三体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!ランック4!!RRライズ・ファルコン!」

 

 うおっなんだこの風!?アクションフィールド出てないよな!?

 

『デュエルの気配がしたぞ。今度の相手は誰だ』

 

「ズァーク!?助かった、とりあえず身体強化頼む!」

 

『何?デュエルではないのか。というか何をしているのだもうひとりの我』

 

「俺にもわからん!」

 

 あーあー沢渡父とか吹っ飛んじゃってるよ。やめろー!こんなのデュエルじゃない!というか相手フィールドにモンスターいないのにライズファルコン出しても意味無いだろ!

 

 そして強風が止んだ時には、LDS3人組の姿も沢渡父の姿も無かった。逃げたのかそれとも吹っ飛んだのか……。後者なら怪我してないといいんだけど。

 

『デュエルでないなら我は消えるぞ』

 

「ああ助かった、サンキューズァーク」

 

「……やはりこの程度か。貴様もLDS……何?」

 

 黒咲がこちらを振り向くと、怪訝そうな顔をしてサングラスとスカーフを外した。うんやっぱめっちゃ見覚えあるわ。腹パンされてる不審者こと黒咲さんだ。

 

「誰かと思えばユートじゃないか。何故逃げていた?ユート、お前は奴ら程度に苦戦する腕ではないはずだろう」

 

「お、俺はユートではない!」

 

「う゛っ!?」

 

 もちろん瑠璃でもない。

 ……詰め寄られたから思わず腹パンしてダウンさせちゃったけど……これどうしよう。LDS襲撃の現行犯だし、このまま放置しておくわけにもいかないしなぁ……。

 

「と、とりあえずもうちょい人目のつかないところに……!」

 

 う゛っ重……!ズァーク手伝ってくれ!

 

『デュエルでないなら消えると言っただろう、全く……』

 

 そんな事言いつつ手伝ってくれたようで、一気に軽くなる。幸いにして家からはそこまで遠くないし、とりあえず人目につかないルートを通って俺の家で監視するか……?確か今日母さんは出かけてるはずだし。

 そんな訳で俺は人生初の捨て黒咲を拾うことになったのだった。捨て犬とかをやたらと拾ってくる母さんを笑えないなこれじゃ……。

 

 

 

「うぅ……瑠璃……!」

 

 おお、ほんとに瑠璃って言ってる……魘されてるけど大丈夫かなこの人。強く腹パンしすぎたかな……。

 俺はひとまず黒咲をこっそり家に連れ帰り、自室のベッドに寝かせることに成功した。それにしても腹パン一発で寝込みすぎな気が……。もしかしてズァークが抜け切って無かったか?それだとむしろ内臓とかが心配になるんだが。

 

「瑠璃……はっ!」

 

「お、起きたな」

 

 良かった良かった、致命傷だったらどうしようかと。

 

「ここは、一体……?ユート……?」

 

「だから俺はユートじゃないって。俺は遊矢、榊遊矢だ」

 

「何?しかし……」

 

 そう言って俺の顔を凝視する黒咲。まあ何となく察したけどそのユートが沢渡をボコッたりしてたもう一人のボク(2人目)なのだろう。そんなに顔似てんのかな……。

 

「で、アンタ名前は?なんでLDSを襲ってたんだ」

 

「……貴様に言う必要はない」

 

 うーん取り付く島もない。いや名前は知ってるんだけどね?行動の理由とか知ってた方がいいと思うんだよね。

 

 ピンポーン

 

「んお、誰だ?」

 

 玄関のインターホンが鳴った。正直黒咲が家にいる状況での来客は面倒なことこの上ないのだが……。

 

「……出てやったらどうだ」

 

「いやまあ出るけどさ、逃げようたって無駄だぞ?お前のデュエルディスクに仕掛けたチェーンをベッドに繋げてある。無理に外そうとすれば爆発するぞ」

 

「何だと!?くっ……!」

 

 いやぁ非合法デュエルでの経験も役に立つもんだねぇ。デュエルディスク爆破デスマッチを裏の連中に仕掛けた時の余りがあったからちょちょいとな。

 え?余裕で犯罪?なーにこれくらい蟹もやったことあるからセーフセーフ。

 

「はーいどちら様?」

 

『私だ、榊遊矢』

 

 げぇっ赤馬零児!……もしかして黒咲がここにいることもバレてらっしゃったりする……?

 

『君がLDS襲撃犯を確保したという情報は既に掴んでいる。よくやってくれたな』

 

「なーんで知ってるんですかね……」

 

『防犯カメラの映像に写っていた』

 

 いち企業の社長がそんなもんをなんで見れるのか?とかはまあ聞かない方がいいだろう。遊戯王だし。海馬社長とかの方がよっぽどヤバいことやってるしな。

 

「それで、身柄を引き渡せってことか?」

 

 まあ正直そうしてくれるならめちゃくちゃありがたいんだけどさ。家に置いておくのはちょっと無理がある……。母さん帰ってきたらそれだけで詰みかねない。部屋には柚子とかもくるわけだし。

 

『場合によってはそうなるだろう。だがその前に彼と話をさせて欲しい』

 

「ふーん?まあいいけどさ」

 

 まあ俺としては構わないんだが、正直黒咲が零児と話すかと言われると微妙に思える。さっきは名前すら教えてくれなかったし。まあでもとりあえず入れてやるか……。

 

「お邪魔させてもらう」

 

「はーいいらっしゃい」

 

 玄関の鍵を開け、零児を自室に案内する。そういえばコイツナチュラルに俺の家の場所知ってやがったな……。なんかもうこいつにプライバシーとか気にしない方がいいのかもしれない。

 

「貴様は……?」

 

「赤馬零児。レオコーポレーションの現社長だ」

 

「赤馬零児……!」

 

「君はこの舞網市で、レオコーポレーションの直属であるLDSの関係者を襲い続けていた。おそらくその狙いは私だ。違うか?」

 

「貴様が赤馬零王の息子か……!!」

 

 あーね、なんか父親関連で因縁があると……。だから黒咲はLDSを襲って零児をおびき出そうとしてたわけね?

 

「俺とデュエルを……!クソッ!このチェーンさえなければ……!」

 

「遊矢、あれは?」

 

「デュエルディスク爆破チェーン。デュエルに負けたり無理に外そうとするとディスクが爆散する仕掛け」

 

「…………。……君はいつも私の想像を超えていくな」

 

 いやぁそれほどでも。つーか蟹の奴の劣化版だしねこれ。結構アナログな仕掛けだし、設置にちょい時間かかるせいで強制デュエルとかは無理だから。

 

「ま、まあいい。おそらく君は私の父である赤馬零王に対しての人質として使おうと考えていたのだろう。その理由は……金銭というのは考えにくい。金銭目的なら父には関係のない話だからな。では何故か。答えはおそらく、私の父に囚われた仲間との人質交換」

 

「な、何故それを……!」

 

「図星のようだな」

 

 ひぇ〜怖、思いっきりカマかけやがったよコイツ……。というか零児の父親……赤馬零王だっけ?そいつが黒咲の仲間を捕まえてるってことは零児の父親って悪い奴なのか?

 

 つーか待てよ?黒咲の関係者が捕えられている……?

 

『瑠璃!?瑠璃が何故ここに……逃げたのか?自力で脱出を?瑠璃!』

 

「……その仲間というのは、瑠璃という女性のことか?」

 

「!?貴様ァっ!!どこでその名前を……!!」

 

 あっやべ、つい言っちゃった。いやでもさっき寝言で言ってたからそれを言えばいいか。危うく何故か瑠璃の名前を知ってる謎の男みたいになるところだったぜ、危ない危ない。

 

「アンタが気絶してる間にその瑠璃って奴の名前を口に出してたからな」

 

「くっ、不覚……!」

 

「ふむ……やはり私を人質交換の材料にしようと考えていたのだな」

 

「……ああその通り!LDSを襲い続けたのも、その魂を封印したカードを送り付けたのも、全ては貴様を誘い出すため!実の息子との交換なら赤馬零王も決してノーとは言わないはずだからな……!」

 

「どうだろうな。あの男がそこまで私を大事に思っているとはとても思えない」

 

 ……待った、今なんつった?

 

「おいお前今なんつった?魂を封印したカードだと?」

 

 俺を追ってた連中が消えたのはおそらくそのためか……!

 

「ああそうだ。俺が襲ったLDSの連中はカードにして、赤馬零児に送り付けていた」

 

「貴様……!デュエルで人をカードにするだと……!?許さん!!」

 

「遊矢……?」

 

 昔、アニメで見ていた時は闇のゲームの類を見ても「悪役のやること」としか思っていなかった。だが今この世界に転生し、この身でデュエルに、カードに触れて改めて思い知ったのだ。

 

「デュエルとは!人々に笑顔を、光と希望を与えるものだ!決して、闇と絶望を与えるものじゃない!」

 

『…………』

 

 結果として傷つくことも、負けて嫌な気持ちになることもあるだろう。だが無辜の人々を傷つけることにデュエルを使うやつを、俺は許せない。

 

「お前がそんな事をやっていたって言うなら、やはりそのデュエルディスクを吹っ飛ばして……!」

 

「待て遊矢!気持ちは分かるが落ち着け。この男にはまだやってもらわなければならないことがある。それを以て償いとさせて欲しい……。カード化された人々はレオコーポレーションの総力を結集して必ず元に戻してみせると誓おう」

 

「零児……。……分かった、ならお前に任せる」

 

 いかんいかん……。柄にもなく熱くなってしまった。黒咲を許した訳では無いが、さすがにデュエルディスク爆破は焦りすぎたな。

 

「待て、俺はお前に協力すると言った覚えはないぞ!」

 

「私に協力することが、瑠璃を助け出すことに繋がると言ったら?」

 

「なっ……!?本当か!」

 

「事情の全てを話せる訳ではないが、赤馬零王は私と敵対関係にある。赤馬零王は私の……いや、全ての次元の敵だ」

 

「全ての次元……?」

 

 つまり零児の父親が次元戦争を引き起こそうとしている、ということか……?

 

「詳しい内容は追って話す。今日は外に護送車を待たせているから、君にはレオコーポレーションに来てもらおう。遊矢、チェーンを外してもらえるか」

 

「分かった、コイツのことは任せる」

 

 カチャカチャ……カチャカチャ……ここをこうして……ほいっと。

 

「君にも、また後ほど腰を据えて話す機会を設けたい。色々と伝えなければならないことがある。しばらく時間はかかるだろうが……」

 

「気にすんな、そっちにも事情があんだろ?」

 

「……気遣い、痛み入る」

 

 その後、黒咲を護送車に乗せたあと、レオコーポレーションに戻る零児を玄関先で見送ることにした。こいつも思ったより色んなものを背負ってるらしいからな……。

 

「……デュエルとは笑顔を、光と希望を与えるもの。闇と絶望を与えるものではない、か……。いい言葉だ」

 

「い、いやそれは親父や尊敬する人からの受け売りで……」

 

「いや、君がこの言葉を本心から言っていることはよく伝わってきた。確かに他人から受け継いだ言葉かもしれないが、それでも確かに君の心から出た言葉なのだろう」

 

「零児……」

 

「やはり君は尊敬に値するデュエリストだ。これからもその心を失わないで欲しい……。ではまた会おう、遊矢」

 

 迎えの車に乗って去っていく零児を、俺はどことなく清々しい気持ちで見送るのだった。

 

 





 オマケの小噺
 実は最初にこの話を考えついた時、社長をTSさせるかどうかで1晩悩んだりしました。
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