何!?ズァークとは「もう1人のボク!」ではないのか!? 作:辛味噌の人
マスターデュエルやってると時間が無限に溶ける……。
もう昇格戦でのコイン裏は見とうない……。
「そこのお前、名前は?」
「……俺の名はユート」
「そうか、お前がユートか」
導かれるままにやって来た広場で、俺は俺とそっくりな顔の少年と、デュエルに負けたらしく倒れ伏す素良を発見した。おそらくこのユートがLDS襲撃犯その2だろう。
「何?俺の事を知っているのか」
「黒咲から少しな。お前と間違えられた。……それで、お前はこいつ……素良と敵対関係にあるという理解で間違いないか?黒咲の仲間なんだろう」
「その通りだ。お前こそ、そいつの仲間か」
「……いいや、仲間じゃない。こいつが侵略者だというのなら、俺の敵だ」
「遊、矢……」
残念だよ素良。別にお前のことは嫌いじゃ無かった……。だがそれはそれ、これはこれだ。お前がZEXAL次元を侵略していたのなら、許すことはできない。
「そういう訳で、素良はこっちで確保させてもらう。構わんな」
推定赤馬零王の手下である素良を確保すれば、零児もこちらに顔を出さざるを得なくなるだろう。その時に色々問いたださせてもらおう。
「……いや、それはできない。お前がそいつの仲間でないという確証が無いからな」
チッ、まあユートの言うことも彼の視点だと正しい。というか逆の立場なら俺だって疑う。さてどうしたものか……。
考えつつも、俺は今度こそ素良を逃がさないようにと監視していた……のだが。この期に及んで俺は自分の甘さを実感させられることになる。
突然、素良とそのデュエルディスクが光りだしたのだ。
「なっ、何が……!」
「ま、待て……僕はまだ、帰る訳には……!」
俺は全力で駆け寄ったが時すでに遅く、素良は光に包まれて消えてしまった。素良が口走った内容からして、おそらく強制送還されたのだろう。
「クソッ!!」
俺はユートを無視してでも素良のデュエルディスクを爆破しておくべきだったのだ。素良側にその機能が仕込まれていた場合はそれでも止められないが、この世界のデュエルディスクの機能過積載具合からしても十中八九はデュエルディスク側の機能だろう。
「……どうやら逃げられたようだな」
「そうらしいな……クソが」
ユートの側からしても素良は倒すべき敵のはずなのだが、どうにもユートの声色からは安堵の感情が滲み出ている。どうやら相当な甘ちゃんらしい。
最大の情報源であり、また確保対象であった素良が消えた以上、俺はこのユートから色々と聞き出す必要がある。だが果たして上手くいくか……。
「お前はユートと言ったな。そしてお前は黒咲と同じ世界の出身で、お前たちの故郷は素良達に侵略されている……その認識で間違っていないか?」
「ああ、その通りだ。俺達の世界……エクシーズ次元は、融合次元によって侵略を受けている。俺や隼はその侵略に抵抗されるため結成されたレジスタンスの一員だ」
……拍子抜けするくらいあっさり教えてくれたな。どう口を割らせるか色々考えていたんだが……。
「……いいのか?俺が素良の仲間かと疑ってたんじゃないのか」
「この程度のことはエクシーズ次元でも、そして融合次元でも常識のはずだ。それすら知らない時点で、お前が融合の手先である可能性は限りなく低いと推測した」
なるほどそういう事か。こうもあっさり疑いを晴らせるとは、いい意味で想定外だ。今日はずっとろくな事が無かったが、ようやく揺り戻しが来たらしい……。
にしてもエクシーズ次元と融合次元か。シンクロ次元やペンデュラム次元、リンク次元もあるのかな。いやARC-Vの放送時期を考えるとリンク次元は存在しないか。
「疑いが晴れたなら良かったよ。そういえばまだ自己紹介をしてなかったな。俺は榊遊矢だ、よろしくユート」
「知っている。大会の映像は俺も見ていたからな。見事なデュエルだった」
「あ、あらそう?」
初対面なのに褒められるとなんかこう……照れるな。思わずポリポリと頭をかいてしまう。
「ま、まあそんなことはいいさ。それよりお前には聞きたいことが山ほどある。俺は次元戦争について知らないことがあまりにも多すぎる……。そして、どうやら融合次元は俺たちにとって共通の敵のようだからな」
おそらくは融合次元が赤馬零王の本拠地だろうからな。
「分かった。俺としても君ほどのデュエリストが仲間になってくれるのならありがたいからな」
「じゃ、まあとりあえず座って話そうぜ。立ちっぱだと疲れるだろ……あ、そうだ飲み物もあるぞ、ほれ」
俺はスタジアムから帰る前に買っておいた2本の缶ジュースのうち1本をユートに投げて渡す。ユートはそれを受け取ると、出会ってから初めて表情を綻ばせたのだった。
そして俺はユートから様々なことを聞いた。エクシーズ次元は元々平和だったこと。ある日突然、融合次元からアカデミアが攻めてきたこと。エクシーズ次元の人々は次々にカード化されていったこと。ユート達がレジスタンスを結成し、抵抗していること。この世界はスタンダード次元と呼ばれていること……。
「アカデミア……融合次元のアカデミアねぇ……」
……まあたまたま名前が被っただけだろう。俺の知るデュエルアカデミアはデュエル戦士育成機関なんかじゃねえからな。
「それで黒咲は瑠璃って子を取り戻そうと……」
「ああ。瑠璃は俺たちにとって大切な仲間だ。必ず取り戻さなくてはならない」
「それだけ?」
「それだけ、とはなんだ?」
いやだって……ねぇ?
「つまりだな、お前はその瑠璃って子にホの字なんじゃねえかって聞いてんだよ」
「なっ……!い、いや瑠璃は大切な仲間であって、決してそういう感情では……!」
「ですが……?なんと……?今回に限り……?」
「う、うるさい!というか遊矢こそ、あの瑠璃にそっくりな……柚子だったか?柚子のことが……」
「うん、好きだけど?」
「んなっ!?」
ははは、顔真っ赤にしてら。こいつ純情すぎんだろ面白すぎる。
「じゃ、じゃあつまりその……お前たち2人は付き合っていると……?」
「んーそれはまだだな」
「まだ……?」
「まー年齢的に早いんじゃね?ってのもあるけどな。何より次元戦争がもう始まってるってんなら尚更だ」
柚子を危険な目には遭わせたくない。ただでさえ巻き込まれる可能性が高いのに、これ以上はな……。
「……そうか。では何故お前は次元戦争に関わろうとする?いずれ融合次元の魔の手がスタンダードに伸びるかもしれないが、まだお前たちと直接関係のない問題なのも事実だ」
「んまあ、まずお前が言ったように融合次元がいつスタンダードに攻め込んで来るのか分かんねぇってのが一つ。侵略を受けてるお前たちを放っておけないってのが一つ。デュエルで戦争なんかしてる奴が許せねぇってのが一つかな」
「デュエルで戦争をしている奴を……許せない……」
「そ。侵略を受ける前のエクシーズ次元でもそうだったように、デュエルってのは戦争の道具なんかじゃない。娯楽であり、興行であり、対話のツールだ。皆に笑顔を、希望を、光を与えるもんだ。侵略して人をカード化するようなクズどもにデュエルはもったいねぇよ」
「……ああ、そうだな。俺達の世界でも、そうだったんだ……」
ユート曰く、エクシーズ次元の生き残った人々の間では、デュエルを忌避する風潮ができているらしい。彼らを責めることはできない……全ては融合次元の、赤馬零王のせいだ。
「ま、色々話せて良かったよ。そうだ、俺の連絡先を……うお、なんの光!?」
「この光は……!」
デュエルディスクを取り出そうとしたところで、突然辺り一帯が光に包まれた。えっマジで何?
そして続いて衝突音。しばらくして光が止んだ時、その衝突音の正体が分かった。電灯が何者かに追突され、倒れていたのだ。
「痛ってぇ……!なんだってこんなもんが突っ立ってやがんだ?」
……俺はその追突した物体を知っている。いや、それそのものに見覚えはないが、それに似たものを幾つも見たことがある。
「Dホイール……だと……?」
「アイツは……!」
何やらユートが知っているらしい。謎のDホイールに乗った少年がヘルメットを外すと……そこには、またしても俺と、ユートとそっくりな顔があった。
「あ、オメーは!此処で会ったが百年目!探したぜ……!」
「なんだユート、お前ら知り合いか?」
多分だが、エクシーズ次元にももう1人のボク、ユートがいたように、あいつはシンクロ次元のもう1人のボクなのだろう。というかDホイールに乗っててシンクロ次元じゃなかったらなんなんだ。
というかズァークも入れたら3人目なんだが……?もしかして融合次元にもいらっしゃる感じ?
「この間は余計な邪魔が入っちまったが……一対一なら負けるわけがねぇ!さぁ!俺とデュエルだ!」
「いいだろう、相手になってやる!遊矢、あいつは融合の手先だ……!」
「何が融合だ!俺の名前はユーゴだ!」
いやぁユートさん、多分アイツ融合の手先とかじゃないと思いますよ。Dホイール乗ってるんだからどう考えてもシンクロ次元の人でしょこのユーゴくんは。と言ってもこれは俺のメタ知識込の推測だしな……。あとまあシンクロ次元と融合次元が協力関係にある可能性は捨てきれないし。
『デュエルモードオン オートパイロットスタンバイ』
マジでDホイールだ!すげぇ!ユートには悪いが、ここはデュエルしてもらおう。生ライディングデュエルはあまりにも見たすぎる……。いや待て、ユートは俺と同じようにスタンディングだよな?えっどうすんのこれ。
「行くぜ……!」
「来い!」
「「デュエル!」」
ウワーッ普通にユーゴが走り出した!それに対してユートは直立不動!そんなんアリかよ!!
「先手必勝!俺のターン!俺は手札からSRベイゴマックスを特殊召喚!」
げげっ、スピードロイド使いか。
確か柚子は、ユートはダークアンセリオンによく似たドラゴンを使っていたと言っていた。おそらくダークリベリオンエクシーズドラゴンのことだろう。つまりおそらくユートは幻影騎士団使い……。
逆に、SR使いであるユーゴは、おそらくクリアウィングシンクロドラゴンを所持しているのだろう。
俺が思考している間にも、2人のデュエルは続く。まったく互角の戦いのようだ。
「結構やりやがるな……!」
「融合の手先に負ける訳にはいかないからな」
「だから俺はユーゴだっつってんだろうが!何度も何度も融合融合言ってんじゃねぇ!」
ユートさん?やっぱりこのユーゴは融合の手先じゃないんじゃないでしょうか?次元を超えてきた理由は謎だが、融合次元と手を組んだりはしてないんじゃないかと……。デュエル終わったら謝った方がいいと思うの。
「あーもうあったま来た!俺から大事なもん奪い取った上に、俺の名前を何度も間違いやがって!」
「奪い取ったのはお前らだ!」
「うるせぇ!話はテメェをぶっ倒してからだ!」
……なんか本当に話が拗れてきたな。ユーゴも何かを奪われている?エクシーズ次元に?……黒咲が誰かしらをカード化したって線が1番ありそうだが……。デュエルが終わった後、色々聞く必要がありそうだなマジで。
そう思っていたのだが、ユーゴとユートがお互いにクリアウィングとダベリオンを出してから雲行きが怪しくなってきた。何やらまたしても俺の心臓が熱くなり始めたのだ。
というかやっぱりユーゴはクリアウィング使いでもあったか。……あれ?確か覇王龍ズァークの召喚条件は確か……。つまりこれはどういうことだ……?
「『よかろう、決着をつけてやる……!俺のダークリベリオンエクシーズドラゴンで、貴様を……全てを、破壊する……!』」
ユートの様子がおかしい。なんならユーゴの様子もおかしい。
「『滅ぼす……!貴様を……全てを……!』」
「『全てを破壊し……!全てを焼き尽くし……!』」
「「『全てを……消滅させる……!』」」
これは本格的にマズいな、2人とも明らかに正気じゃない。
「おいズァーク!聞いてるのかズァーク!お前なんか知ってるだろ!」
『今こそ一つに……!我らを一つに……!』
がああっズァークも正気じゃねえ!そして心臓の痛みがいよいよマジで深刻になってきた!このデュエル、これ以上続けたらマジでなんかヤバい気がする。
止める方法は……なんだこれ、バトルロイヤルモード?
〈バトルロイヤルモード JOINING〉
〈榊遊矢 LP4000〉
違う!デュエルディスクが勝手に!というかなんだこの機能!?
いやだが好都合!2人まとめてぶっ飛ばして正気に戻す!クリアウィングが厄介だから、先にユートからだな!後攻ならダベリオンは怖くねぇ!
「俺のターン!ドロー!俺はスケール4のEMオッドアイズディゾルヴァーと、スケール8のオッドアイズミラージュドラゴンを、Pスケールにセッティング!!現れろ、我がしもべのモンスター達!オッドアイズペンデュラムドラゴン!オッドアイズファントムドラゴン!降竜の魔術師!相克の魔術師!」
〈オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン Lv7 ATK 2500〉
〈オッドアイズ・ファントム・ドラゴン Lv7 ATK2500〉
〈降竜の魔術師 Lv7 ATK2400〉
〈相克の魔術師 Lv7 ATK2500〉
「ぐあああああああっ!!!」
し、心臓が爆発しそうだ……!頭も痛い……!い、意識が飛ぶ……!助けてくれ遊星……!
『今こそ一つに……我らが一つに……!』
黙れズァーク!お前も後でボコって正気に戻してやる!どうやってボコるのか分からんけど!
「があああ……!!俺はオッドアイズディゾルヴァーの効果発動!ファントムドラゴンと相克の魔術師で融合!現れ出でよ!レベル7、オッドアイズボルテックスドラゴン!さらに俺はペンデュラムドラゴンと降竜の魔術師でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!現れろ、ランク7!ダークアンセリオンドラゴン!」
〈オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン Lv7 ATK2500〉
〈ダーク・アンセリオン・ドラゴン ランク7 ATK3000〉
少し心臓の痛みが落ち着いて……ない!一瞬落ち着いたかと思ったら今度は何やらダークアンセリオンとダベリオンが共鳴しはじめた!お前ら兄弟みたいなもんだろ多分!落ち着け!
「クソッタレが!俺はダークアンセリオンの効果発動!オーバーレイユニットを一つ取り除き、ダークリベリオンを対象に発動!ダークリベリオンの攻撃力を半分にし、その分ダークアンセリオンの攻撃力を上昇させる!」
〈ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ATK2500→1250〉
〈ダーク・アンセリオン・ドラゴン ATK3000→4250〉
既にユーゴとのデュエルでライフを削ってるユート相手ならこれで十分!
「今正気に戻してやるからなユート!バトルだ!俺はダークアンセリオンで、ダークリベリオンを攻撃!反逆のライトニングフルブラスト!」
「ぐあああっ!」
〈ユート LP0〉
「ユート!大丈夫か、落ち着いたかユート!」
まだデュエルは続いているが、俺がターンエンドするまでまだ猶予はある。俺は大慌てで吹っ飛んだユートに駆け寄り、抱き起こす。
「遊、矢……」
「元に戻ったかユート……。……な、なんだこの光は……?」
今度はユートと、ユートが持っているダークリベリオンのカードが光り始めた。なんだってんだ一体……!?
「頼む……お前の力で……デュエルで……希望、を……」
「おい!死ぬみたいなこと言うなよユート!おい!ユート!!」
必死でユートを揺する俺を嘲笑うかのように、ユートは俺の腕の中で光となって消えた。その途端さらに激しくなる心臓と頭の痛み。到底意識を保って居られない。
「ダメ、だ……!まだユーゴも、正気に戻ってな……」
「遊矢!?遊矢ーっ!!」
柚子の声が聞こえたのは果たして現実か幻聴か。
それを確かめる前に、俺の意識は激痛と熱さによって闇へと消えていった。
※恋バナしてる所も社長&黒咲はバッチリ見てます。黒咲はユートの反応見てシスコン全開でした。
誤字報告等よろしくお願いします。