何!?ズァークとは「もう1人のボク!」ではないのか!? 作:辛味噌の人
冷静に考えるとあのファッションでカッコいいの意味わかんないよ社長……。
デュエル描写でちょっと苦戦しました。読みにくかったら申し訳ありません。
結論から言うと柚子は負けた。結局俺の懸念通りになってしまったわけだ。
柚子も頑張ってはいたのだが、相手のジェムナイト使い……光津真澄が1枚も2枚も上手だったな。手も足も出ないという程では無かったが、終始相手のペースに持ち込まれていたという印象だ。いやぁブリリアントフュージョンが出てきた時は目ん玉ひん剥きましたね。ネピリム落としたりし始めなくて良かった……。
「お疲れさん、柚子」
「あ、遊矢……」
「そんな落ち込んだ顔すんなって。気にすんなよ、今回は相手が悪かった……。あの真澄って子だいぶ強かったからなぁ」
「……私、遊矢の力になれなくて……。遊矢こそ、気にしてないの?」
「言ったろ?相手が悪かったって。そういう日もあるさ。安心しろって、こういう時のために素良がいるんだからな」
「……うん」
そう言って柚子は俯いたまま何処かに行ってしまった。トイレかな?
うーん、思ったよりメンタルにキてそうだなぁ。まあ確かに遊勝塾を守りたいという柚子の思いは俺以上だろう。それなのに肝心の試合で特にいいとこ無しとなっちゃああもなるか。後でトリシューラプリンでも奢ってやろう。
「遊矢お兄ちゃん……」
「ん?アユか、どうした?……いやマジでどうした?」
アユに声をかけられて振り返ると、そこにはジト目全開の表情をしたアユが立っていた。えっ何……?
「私でもちょっとどうかと思う」
「えっ何が!?」
困惑している俺をよそに、アユもどっかに行ってしまった。多分柚子の様子を見にいったんだろうが……。
「なんだったんだ……?」
首を傾げつつ、第3試合に向けて準備……という名の糖分補給をしている素良のところに向かう。コイツいつもお菓子食ってんな……。正直将来が心配である。
「お、権現坂もいたのか」
あとなんか権現坂もいた。お前部外者だよな……?
「いたのかって!遊矢お前な……!ぐぬぬ……この漢権現坂、こんな大事な時になんの力にもなれんとは……!素良!この俺の分も必ず勝ってきてくれ!」
「僕そういう暑苦しいノリ苦手なんだよね〜。そんなにやりたいなら代わるけど?」
えっちょっと待って?それアリなの?というか権現坂勝てるのか?
「なんと!俺が出てもいいのか!?」
「ちょい待ち?おーい理事長サーン!権現坂に選手交代するのってアリなのー!?」
反対側のスペースにいた理事長サンに叫んで問いかけると、一瞬考える素振りを見せたあと、コクリと頷いた。
『ええ、構いませんわ。どちらにせよこちらの勝利は決まっています』
「じゃあ俺が出るのは──」
『同一選手の再出場は認められません』
チッ、ケツの穴の小さい奴。
「あー、そういう訳で代打権現坂は許可された訳だが……あえて率直に聞くぞ権現坂。勝てるか?」
「無論!この漢権現坂、常に必勝を心がけている!必ず勝つと約束しよう!」
「ヨシ行ってこい!」
正直不安は残るが、やる気の無さげな素良を出すよりはマシだろう。そう思いながら権現坂を見送る。
「いつになくピリピリしてるね遊矢。そんなにこの塾が大事なの?」
「柚子の大切な居場所だからな……。というかお前が出てくれるならこんなピリピリしなくて済むんだがな」
「アハハ、僕そんなに期待されてたの?」
「期待してなかったら3番手にしないよ」
「ふーん……。遊矢ってナチュラルに残酷なとこあるよね〜」
「なして……?」
そんなこんなで始まった三本勝負第3戦、権現坂VS刀堂のデュエルはまさかまさかの引き分けに終わった。
正直、刀堂がXセイバー使いで、しかも普通にハンデスし始めた時は『終わった……あの理事長相手にどうやってゴネよう……』とか考えていたのだが、権現坂が意地で引き分けに持ち込んで見せたのだ。
サンキュー権現坂フォーエバー権現坂。お前に任せてよかった。
「よくやったぞ権現坂!よっ不動の漢!お前が親友でよかった!」
「むぅ……しかし遊矢、俺は勝つと約束したにも拘わらず……」
「んなこといいんだよ気にすんなって!これで一勝一敗一引き分け!決定戦に俺が出たら勝ちだ!Vやねん遊勝塾!」
案の定理事長サンは苦々しげな表情である。一勝を取った真澄を俺にぶつけるつもりのようだが、正直な話それならまあ問題なく勝てる。ぶっちゃけ刃を出されて先攻ハンデスされるのが1番嫌だったのだが、わざわざそんなことを教えてやる義理もないということで……。
「つーわけで俺と勝負だな真澄さんよ。ついでに柚子の仇も取ってやるぜ」
「いいわよ、私が他の2人とは違うってところ見せてあげる!」
そして決戦が始まろうとしていたその時である。
「そのデュエル、待った」
そう言い放ち、部屋に入ってきた1人の男。ローファーを素足で履き、パーカーを羽織った謎のファッションをした男を見て、理事長サンが驚いたような顔をした。
「零児さん!?」
「決着は私がつけよう」
「零児……?もしかしてお前が赤馬零児か」
「いかにも」
「知ってるの?遊矢お兄ちゃん」
「知ってるもなにも、この赤馬零児がLDSの2代目社長だよ。ついでに史上最年少でプロデュエリストになった天才でもある」
極東チャンピオンみたいな声してるだけあってめちゃくちゃな強豪らしい。というかLDSが発表してる公式情報によると16歳らしい。俺の2歳上?このビジュアルで?見えねぇ〜!
「君ほどのデュエリストに覚えられているとは、光栄だな」
「イヤミか?別に俺は大した実績も残してないだろ。ストロング石島の件についてはペンデュラムありきだしな」
「フッ、それこそ嫌味というものだろう。確かに君は公式戦では無敗とはいえ、そもそも数える程しか戦っていない。だが君ほどのデュエリストはこの世界にも僅かしか居ないだろう、榊遊矢。いや、『ファントム』と言った方がいいか」
「ゲッ」
ば、バレてる……うそーん。
「ファントム?何よそれ」
「あー柚子、それはだな……」
よりにもよってこんな所で暴露してんじゃねぇよ赤馬零児!バレないようにコソコソやってたんだぞ!あと普通にその異名恥ずかしいんだぞ!
「およそ3年前から1年前までの2年間、この舞網市のありとあらゆる非公式デュエル大会が1人の少年に蹂躙され、賞金を総なめされる事件が起きた。その少年は顔を隠し、匿名で参加していた。大会が終わるとすぐに姿を消し、また1年前を境にパタリと行方をくらませたことから、裏の界隈では
「遊矢お兄ちゃん、そんなことしてたんだ!」
「痺れるくらいカッケェ!」
「すごいわ遊矢お兄ちゃん!」
「遊矢お前!この漢権現坂にも黙ってそんなことを!」
「ウワーッ!!」
むず痒いむず痒いむず痒い!100パー金目的で参加してただけになんかそんな都市伝説みたいに扱われると恥ずかしすぎる!
いや違うんすよ、親父が失踪したからウチの家計大丈夫か?って心配した側面が2割ほどあるだけであと8割は純粋にカード買いまくりたかっただけなんですよ。
なお目当てだった汎用カードはほぼ手に入らなかった模様。もしかしてこの世界にバロネスとか存在しなかったりします?
「遊矢、本当なの?ひとりでそんなこと……」
「あー柚子さん、えっとこれはですね……あはは……」
おのれ許すまじ赤馬零児!人の秘密をいきなり暴露しやがって!
怒りを込めて零児を睨みつけるも、零児は飄々とした態度を崩さない……いやちょっと気まずげな顔してるな。反省してください。
「ええい俺のことはいい!決着をつけるぞ赤馬零児!」
「望むところだ、榊遊矢……!」
『ふぃ、フィールド魔法発動!アスレチック・サーカス!』
戦いの殿堂に集いし以下略!
「「デュエル!」」
〈赤馬零児 LP4000〉
〈榊遊矢 LP4000〉
「先攻は私だ。私のターン!私は永続魔法、地獄門の契約書発動!効果でDDケルベロスを手札に加える!」
ってDDDじゃねぇか!!うわーん!ここ最近見覚えのあるテーマが多すぎます!ストロング石島が癒し枠に見えてきたぜ……。
「私は2枚目の地獄門の契約書を発動!効果でDDリリスを手札に!」
「エクセレント!そのカードは1ターンに何度も効果を発動できるのですか!」
「……?あ、ああその通りだ」
というかこれはまずい(本当にまずい)。アニメ効果だと名称ターン1ねぇのかよ!インチキ効果もいい加減にしろ!
『ほう、あの男、今までのデュエリストとは明らかに違うな。我も昂ってきたぞ』
「私はさらに魔神王の契約書発動!効果でDDケルベロスとDDリリスを融合!牙むく地獄の番犬よ、闇より誘う妖婦よ!冥府の渦で一つとなりて、今新たな王を生み出さん!融合召喚!生誕せよ、DDD烈火王テムジン!そして私はカードを2枚伏せてターンエンド!」
〈DDD烈火王テムジン Lv6 ATK2000〉
「俺のターン!ドロー!お前が融合なら、俺はシンクロでいくぜ!俺は永続魔法、星霜のペンデュラムグラフを発動!そして俺のフィールドに永続魔法がある場合、EMスカイマジシャンガールは特殊召喚できる!さらにEMオッドアイズシンクロンを召喚!」
〈EMスカイ・マジシャン・ガール Lv5 ATK2000〉
〈EMオッドアイズ・シンクロン チューナーLv2 ATK200〉
「『俺はレベル5のスカイマジシャンガールに、レベル2のオッドアイズシンクロンをチューニング!輝く翼、神速となり天地を照らせ!シンクロ召喚!!現れろ、レベル7!クリアウィング・ファスト・ドラゴン!』」
〈クリアウィング・ファスト・ドラゴン Lv7 ATK2500〉
「『バトル!俺はクリアウィングでテムジンを攻撃!』」
「私は永続罠戦乙女の契約書を発動!テムジンの攻撃力を1000上昇!」
〈烈火王テムジン ATK2000→3000〉
「『クリアウィングの効果!テムジンの効果を無効にし攻撃力を0にする!』」
〈烈火王テムジン ATK3000→0〉
「アクションマジック、回避!クリアウィングの攻撃は無効!」
チッ、アクションマジックを取ってやがったか。ならば俺もアクションマジックを取りに行った方が良さそうだな。
「俺はカードを2枚伏せてターンエンド!」
「私はここで、場の契約書の効果を無効にすることにより罠カード契約洗浄を発動!エンドフェイズに契約書カードを全て破壊し、その枚数分、よって4枚ドロー!」
やっぱしっかりその手のカードを伏せてやがったか。ここでレッドリブートでも発動出来れば気持ちよくなれそうなのだが、生憎とこの街のカードショップを駆け回ってもそんなものは見当たらなかった……。
「ふっ、相変わらず情け容赦のないデュエルをする……。こういう言い方は君に失礼になるかもしれないが、お父上のデュエルとは似ても似つかないな」
「相変わらずってなんだよ、もしかして君も俺のファンになったのかな?」
「ああファンだとも。もう随分と前からね」
「マジ?」
普通にびっくりしてしまった。てかそういえばコイツ俺の非公式デュエルも見てた的なこと言ってたな……。
「最初は榊遊勝の息子がどんなデュエルをするのか、もしかすると彼のデュエルを受け継いでいるのか、などと思っていたがね。すぐに君は君のデュエルスタイルを確立していることに気づかされた……。君のワンショットキルをメインに据えた戦法は榊遊勝とは全く違うものだったが、同じように魅了されたよ」
「そ、そりゃどーも」
普通にデュエルしてるだけなのだが、こうべた褒めされると背中が痒くなるぜ毎回。
「だから……いや、だからこそ本気でいかせてもらう!私のターン、ドロー!私はレベル3のチューナー、DDナイトハウリングを召喚!効果で墓地のDDリリスを攻撃力を0にして蘇生!」
〈DDナイトハウリング チューナー Lv3 ATK300〉
〈DDリリス Lv4 ATK0〉
「私はレベル4のDDリリスに、レベル3のDDナイトハウリングをチューニング!闇を切り裂く咆哮よ、疾風の速さを得て、新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!生誕せよ!レベル7!DDD疾風王アレクサンダー!」
〈DDD疾風王アレクサンダー Lv7 ATK2500〉
「そしてテムジンの効果!」
「『させん!クリアウィングの効果!テムジンの攻撃力を0にして効果を無効にする!』」
「くっ、ならばバトル!アレクサンダーでクリアウィングを攻撃!」
「今だ!底知れぬ絶望の淵へ沈め!」
「なにっ!?」
「トラップカード発動!!聖なるバリア-ミラーフォース-!お前の場の攻撃表示モンスターを粉☆砕!」
『もう1人の我、なんだ今の舞は』
これがハノイの崇高なる力らしいぜ!
『……?』
「まさかミラーフォースとはな……!シーザーを出せていれば……。クッ、私はカードを1枚伏せてターンエンド!」
「リバースカードオープン!サイクロン!その伏せカードを粉☆砕!」
「ぐっ、DDDの人事権が……」
ただ次のターンで仕留められるかは微妙なんだよな……。まあやるだけやってみるか!
「俺のターン!ドロー!……よし!俺はスケール2のEMペンデュラムマジシャンと、スケール5の慧眼の魔術師でPスケールをセッティング!そして慧眼の魔術師のP効果!反対側のPゾーンに『EM』か『魔術師』がある時発動できる!このカードを破壊し、デッキからスケール8の調弦の魔術師をPゾーンにセット!そして星霜のペンデュラムグラフの効果発動!Pゾーンの魔術師カードが場を離れたことによりデッキからもう1枚の調弦の魔術師を手札に加える!」
「サーチコンボ……!ペンデュラムを完全に使いこなし、自分の力としているのか……!そして先程も見せた、ペンデュラム召喚の更なる可能性……!」
「いつまでも俺だけの力じゃ困るんだけどな!」
「なんだと?」
いやほんとに。1人だけが使える力って不健全だと思うんですよ。カードだけならともかくルール丸ごとってなんか……嫌じゃない?
「続けるぜ!俺はペンデュラム召喚!手札から現れろ、調弦の魔術師!さらにEXデッキから慧眼の魔術師!調弦の魔術師の効果で、デッキから降竜の魔術師を守備表示で特殊召喚!そして俺はレベル4の慧眼の魔術師にレベル4の調弦の魔術師を──!」
「なんですって!?」
「「!?」」
俺が更なるシンクロ召喚を見せようとしたところで、切迫した理事長サンの叫び声が割って入った。そちらを見ると、何やら理事長サンの側近らしき男が何かを伝えていた。
「どうした中島!」
零児がデュエルディスクでその男と通信して何事かを話すと、零児の顔が少しだけ強ばる。
「……すまない榊遊矢、この勝負はここまでとさせてもらう。急用が入った。勝負はそちらの勝ちということで構わない。……次があれば、リベンジしたいものだ」
「お、おう。そりゃいいけど……」
最後に少しだけ表情を柔らかくした零児は、そのまま足早に去っていった。
「……勝った、のか」
『チッ、下らん幕切れだ』
流石の俺も、こんないきなりのことでは無邪気に喜ぶことはできない。
こうして零児と俺の初デュエルは、なんとも煮え切らない結末となったのであった。
・オマケ解説:原作トマトと転生トマトの差異について
性格は本編を読んでも分かる通り、メンタルの脆弱さが無くなった代わりに好戦的に。またアクションデュエルはそこまで好きではなく、それもあってかエンタメに対しては特に執着はしていない。それはそれとして榊遊勝のエンタメデュエルそのものは評価しており、デュエリストとして自分に無いものを持っているため尊敬している。ちなみに人としての評価は本人視点だと失踪理由が不明なため可もなく不可もなく。詳細な経緯を知ったらかなり下がる。
精神年齢としては本編トマト、ひいては同年代の子供よりも高いのだが、中身が中身のため落ち着きはあんまりない模様。周囲の子供からは「大人びてる割によく変なことを言い出す」と思われている。
外見に関しては大きな差は無いが、ゴーグルは付けておらず、ペンデュラムもお守りとして懐にしまっている。
誤字報告等よろしくお願いします。