何!?ズァークとは「もう1人のボク!」ではないのか!? 作:辛味噌の人
デュエルスタンバイ!
「いただきまーす。あぐ、もぐ……」
「遊矢ってお弁当食べてる時いつも微妙な顔して食べるわよね、なんで?美味しくないの?」
「いや、美味しいんだけどね。自分で作った飯を食ってるとどうにもシケた気分になるというか……虚しさを感じるというか……」
少なくとも俺は断然他人の作った料理を食べる方が好きだね、うん。まあただでさえシングルマザー頑張ってる母さんにこれ以上負担かけられないから弁当くらい自分で作るけどさ。
俺と柚子は学校の昼休みの真っ最中であった。正直中学で給食出ないのってどうなの?とは思わなくもないけどなそもそも!給食食わせろ給食。
「そ、そういうことなら私が……」
「あ、そうそう、ジュニアユース選手権のことなんだけどさ」
「えっあっ……。そ、それがどうかしたの?」
「いや、俺もストロング石島に勝ったりしたし、ここらで目に見える実績を残しとかないとな、とおもって」
「じゃあ今年は遊矢も出場するのね?」
「去年は制度勘違いしてたせいで出られないもんだと勘違いしてたからな……。んだよ、無敗の6連勝でも出場可能なら先に言っといてくれよ」
後から知ってそりゃもう悔しがりましたよえぇ。俺だって最年少優勝したかった!最年少ってロマンだと思うんですよね。いやまあ先に赤馬零児がやってる以上後追いにしかならない訳ではあるが。
「いや大会要項にちゃんと書いてあったわよ?全くもう、遊矢ったら普段はしっかりしてるのに変なところで抜けてるんだから」
「あはは、当時は色々忙しかったんだよ」
主に裏デュエルとか裏デュエルとか裏デュエルとかな!
あの頃は大会荒らししすぎていよいよ恨みを買いすぎてたからな……。いくら匿名参加してたとはいえ、足を洗うのに色々手間取らされた。まあ最終的にデュエルで全員ボコして解決した訳だが……。
「それで?出るのはいいけど、遊矢の今年の公式戦成績ってどうなの?無敗なのは知ってるけど……」
「いやぁ、条件クリアしてるつもりでいたんだけどな。この間のストロング石島とのデュエルはあくまでファン感謝祭の一環であって公式戦じゃないことを忘れてたぜ……。だから5戦5勝になるな」
同学年には俺がめちゃくちゃ強いのバレてるからな……。それでもフリーなら割とデュエルを挑まれるのはありがたいけどな。強者故の孤独とかは感じたことないので俺は周りの人に恵まれてると思う。
「よーう榊遊矢、またやったらしいな」
「誰かと思えば沢渡じゃないか。お前こそ代わり映えしない面してて安心したよ。『命に関わる大怪我』とやらはもういいのかよ」
「フッ、おかげさまで、な!」
なんでこいつこんなにカッコつけられるんだ……?俺にはもちろん、もう一人のボクにもボコボコにされたって聞いたんだが。自尊心が底なしすぎるだよ……。
「つーかまたやったってなんだよ。俺ぁ何もしてないぞ」
「闇討ちだよ闇討ち!今度はLDSの講師がやられた」
「俺がお前にやったみたいにか?」
「そうそう思いっきり倉庫の壁にバーンと……って違うわ!アレ地味にアザになって痛かったんだからな!そっちじゃなくて辻デュエルだよ辻デュエル!」
「ははは、冗談だ、許せ」
つーかあの時地味に怪我してたのか。先に喧嘩売ってきたのは沢渡とはいえ、少し申し訳ないことをしたな。
「ったく、俺の方も冗談だよ。いや俺は今でも少しはお前を疑っちゃいるんだがな、悔しいがお前ならLDSの講師を軽く捻るのなんて屁でも無いだろうし。ただうちの社長がお前に無罪のお墨付きを与えちまったからな……」
「あ、零児のやつちゃんとその辺はやってくれたんだ」
「まあいいさ、ペンデュラム召喚がお前だけのものじゃ無くなる日も近い!その暁にはこの沢渡がお前に引導を渡してやるぜ!首を洗って待ってやがれ!」
「おーう、またジュニアユース選手権でな」
「沢渡はずっとあの調子なのかしら……」
まあへこたれないのは真面目に美点だと思うぜ?俺は。
そんなこんなで適当に授業をこなして放課後。俺と柚子は校門前で待っていたちびっ子3人組と合流し、遊勝塾に向かっていた。
ちなみに俺の学校の授業は爆睡がデフォである。いやだって今更中学レベルの勉強とかしても退屈で退屈で仕方ないから……。これでも小学校の頃よりは暇じゃ無くなったんだがな。
「それにしてもこの間の遊矢兄ちゃん痺れたよな〜!」
「うん、あの赤馬零児相手にあんな優位に戦うなんて!」
「優位どころかほとんど勝ってたようなものでしょ?私ドキドキしちゃった!」
「おいおいアユ、あの盤面でも確実に勝てるとは言えないぜ?零児の奴が何かしらの手札誘発を持ってた可能性もあるからな」
「遊矢兄ちゃん、手札誘発ってなに?」
「ったく勉強不足だぞフトシ。いいか?手札誘発っていうのは……。……どうした柚子、大丈夫か?」
「えっ?な、なんでもないけど……」
先程から元気がなく俯いている柚子に声をかける。一体どうしたというのだ。……あ。もしかしてこの間の試合のこと思い出して、それで気にしてんのかな。別に柚子は悪くないんだが……。さてどうやって励ましたものか。とりあえずちびっ子3人組に聞こえないよう3人を少し先に行かせて……。
「あー……柚子?この間の試合の件だが……前にも言った通りあれは相手が悪かった訳で……というか結局遊勝塾は守り切れたんだからそんな気にするなって」
「でも私、遊矢を助けるどころか、むしろ足手まといだったし」
うわあああなんて言えばいいのかわかんないよぉぉぉ!!助けてくれ遊星ぇぇえ!!!
「俺は全然気にしてないから、な?むしろ柚子を支えられるなら願ったり叶ったりというか……」
「っ……!遊矢のバカ!」
「あっ柚子!?柚子ぅぅぅぅ!!!」
静止する暇も無く、柚子は走り去ってしまった……。
わ、分からない……女心が理解できない……。
「遊矢お兄ちゃん……」
「あ、アユ?聞いてたのか!?」
気づけばアユが近くにやってきていて、ジト目で俺のことを見つめていた。タツヤとフトシはどうやら先に遊勝塾へ行ったようだ。
「うん。あのね遊矢お兄ちゃん……。下手っぴ」
「う゛お゛お゛お゛お゛お゛っ!!!!」
〈榊遊矢 LP0〉
「オーマイボーイ!久しぶりです遊矢く……だ、大丈夫ですか?」
「」
「ゆ、遊矢兄ちゃんが灰になって燃え尽きてるぜ……」
「遊矢お兄ちゃん!?お願い死なないで!」
「ご、ごめんね遊矢兄ちゃん。そこまでショック受けるとは思わなくて……」
「よし、俺に任せろ!遊矢ーっ!!!しっかりしろ!!熱血だー!!!!!」
「押忍!!……はっ!?」
お、俺は一体なにを……確か柚子に逃げられて……うぐぐ、頭が……。
「はっ、柚子!柚子はどこだ!探しにいかないと!」
「落ち着け遊矢、柚子からはさっき連絡があった。今日は塾には来ないってな。お前らが喧嘩をするとは珍しいが、あとでちゃんと仲直りするんだぞ?柚子にも言っといたからな!」
「わ、わかりました。ありがとうございます修造さん」
修造さんの心遣いが心に染みるぜ……。うん、後で柚子に謝りにいこう。
「ハッハッハ、気にするな!ほら、スマイリーさんの相手をしてやりなさい。吉報を持ってきてくれたそうだからな」
「あ、いたのかニコ・スマイリー。お久しぶ、それで吉報って……?」
何故か遊勝塾に来ていたニコ・スマイリー。正直この人の魂胆はなんとなく読めるんだが……まあ話を聞くだけ聞こうか。ちょうど頼みたいこともできたしな。
「いえいえ、元気を取り戻してくれたのなら何よりです!それでですね、吉報というのは!遊矢くん!あなたはジュニアユース選手権に無条件で出場してもいい、というお墨付きが舞網市デュエル協会から与えられたのです!」
「どーせアンタがゴリ押したとかそんなんでしょ。それで俺に恩を売っといて、俺がプロになった暁には俺のプロモーターにちゃっかり収まろうって訳だ」
ストロング石島が海外に武者修行に行ったせいで職を失ったのは知ってるんだぜ?なので次のプロデュース候補として俺にロックオンしたって訳だ。まあ正直この人のこういう強かさは嫌いじゃない。
「そ、そんなことはありませんよ???」
「はいはい。それでその件なんだけど、無条件出場に関しては別にいいよ。ここで贔屓して貰って後の禍根になっても困るしな。それよりアンタにひとつ頼みがあるんだよ」
「頼み?遊矢くんの頼みなら喜んで検討させて頂きますが……」
「別にそんな難しいことじゃない。ただ公式戦を1試合組んで欲しい。ちょうど俺今5戦5勝だし、あと1試合勝てばいいだけなんだよ」
ま、この人が職を失ったのは俺のせいっちゃ俺のせいだしな。少しくらい恩を売らせてあげよう。
「なるほど、その程度のことでしたら、はいすぐにでも!では今日のところは帰らせて頂きますね。予定が組めましたらまた連絡いたします!ではまた!」
「はーい、よろしく〜」
さて……柚子に謝りに行くか。
そんなわけでやって来ました海沿いの倉庫。いや柚子が行きそうなところを片っ端からあたって行ったのだが、なかなか見つからなくてこんなところまで来てしまった……。もしかして俺から隠れてたりするのかな……。
「おーい柚子!いるなら返事を……ってうん?」
「榊遊矢!?やっぱりお前も仲間か!」
アイエエエエ光津真澄!?光津真澄ナンデ!?柚子と素良がいるのはいいとしてなぜ真澄がここに!?
「あいつをどこへやった!」
「ちょいちょいちょい待ち?あいつis誰??」
「とぼけるな!」
うわーっ話の通じなさが遊戯王すぎる!そして顔が近い!怖い!気の強い女の子は好きだがだからと言って初会話でガン詰めされたいとは言ってない……!
「LDSに闇討ちを繰り返している奴のことだ!」
「もう一人のボク!?」
「もう一人のお前だと!?」
違う!口が勝手に!めちゃくちゃ誤解を招く言動してしまったんだが!!
「あっあそこにいた!あっちに逃げてったよ!」
素良!露骨に嘘だけどナイスアシストだ素良!血が頭に登っているらしい真澄ちゃんは素良の指さした方向にダッシュで消えていった。た、助かった……。
「サンキュー素良、助かったぜ」
「あの人がいると特訓の邪魔だしねー」
「修行?お前ここで特訓してんの?」
なんでこんなところで……?遊勝塾はお世辞にも設備が整っているとは言えないが、こんな倉庫よりはマシでは?
「あーいや僕じゃなくて、柚子が……あ、僕から融合召喚習うの、遊矢には秘密だったりした?」
「あ、いや、その……」
「へー、柚子が融合ねぇ」
確かに柚子の使う幻奏デッキは、確かOCGだと融合やペンデュラムの存在するカテゴリだったはず。ペンデュラムはあいにく教えろと言われてもカードが無いからなんともならないが、融合ならまあ柚子ならすぐに身につけられるだろう。
「あっそうだ柚子、学校帰りの時はごめんな。お前の気持ちを分かってやれなくて……」
「あ……。う、ううん。私の方こそごめんなさい。遊矢は私の事を心配してくれただけなのに……」
「ふーん?2人とも喧嘩してたの?あーそれで柚子ってば『遊矢に頼られるくらい強くなりたい』とか言って……」
「ちょ、素良!?」
お、柚子のハリセンが炸裂した。なんか久々に見た気がするな。それにしても、俺に頼られるくらい、ねぇ……?十分頼りにしてるつもりなんだけどな。
「まあ柚子が強くなるなら俺も得しかないしな。素良、柚子のことしっかり鍛えてやってくれ」
「了解!でも大丈夫?うかうかしてると遊矢も柚子に抜かされちゃうかもよ?」
「それくらい強くなってくれたらそりゃもう安心して頼りにしまくっちゃうよ」
いやもうほんとに。次元戦争が始まるんだとしたら強い戦力は1人でも欲しいからね。柚子に限らず権現坂も沢渡も零児も素良もそれくらい強くなって欲しいよマジで。
柚子は俺の命に替えても守り抜く覚悟はあるが、皆の命を背負えるほど俺の背中は広くないからな……。
「ほんと!?……い、言ったわね遊矢!見てなさい、今に強くなってボコボコのけちょんけちょんにしてやるんだから!」
「お、ストロングな柚子が戻ってきたな。やっぱ柚子は元気いいのがいちばん可愛いよ」
「かわっ……!?……って誰がストロングよ!」
「イタッ!イタイ!ハリセンはやめて!あー待ってグーはもっとダメ!」
何にしても柚子が元の調子に戻ってくれて良かったよ、いやほんとマジで。
「……あれ?もしかして僕、この2人のイチャつきのだしにされてるだけなんじゃ……?」
本来はミエル戦もやる予定だったのですが想定外に長くなったので今回はデュエル無しです。
オマケ:転生トマトに対する遊勝塾メンバーの感情について
・フトシの場合
頼れる兄ちゃん。デュエルはシビれるくらいカッコよくて憧れ。でもたまに怖い。あとお菓子の制限してくるのだけは嫌。
・タツヤの場合
頼れるお兄ちゃん。デュエルしている姿に憧れているが、ちょくちょく口走る意味不明なワードには首を傾げている。遊矢が怖くなるのでダークアンセリオン等の一部ドラゴンは若干苦手らしい。
・アユの場合
大好きなお兄ちゃん。初恋かもしれないしそうでないかもしれない。同じ女子として柚子に共感することも多いので、遊矢のクソボケっぷりに腹を立てることも。
・修造の場合
自分の息子のように可愛がっている。暑苦しいのは苦手と言われてショックを受けていたが、たまに遊矢が熱血しているのを見かけて持ち直す。ナチュラルに将来義息子になるものだと思っている。
・素良の場合
絶対に、何がなんでも勝ちたい相手。それはそれとして遊矢と仲良くするのは楽しい。自分がやや疑われ気味なことは気づいているが、そこはむしろ評価ポイントらしい。
・柚子の場合
最愛の幼なじみ。重い想いを向けているが、このあとがきはそれを全て記すには狭すぎる。
誤字報告等お願いします。