何卒よろしくおねがいします
第0話 変身
「うわあああああああ!!」
「キャァッ!」
「どけっ!」
「おかあさあああん!!」
「助けてください!娘がまだ中にッ!!」
まるで地獄のような光景に少年は泣いて声を上げることしかできなかった。
エーテリアスと怪人が跋扈し、人々を襲っていく
毎日見ていた建物が炎に包まれ、崩れていく
「グルルルル....」
既にエーテリアスとなってしまった人間が1人、また1人と顔を出す
その1人が少年へと切り掛かったその瞬間...
「はぁっ!」
何ものかがエーテリアスを蹴り飛ばした
赤い体と瞳
虫の顔に金のツノ
腰に巻いた銀のベルト
「仮面ライダー....クウガ....!」
そこにいるのはクウガだけではない
龍騎、ブレイド、カブト、キバ、フォーゼ、ウィザード、、、その中には少年が知らないライダーもいる
「もう大丈夫だ、怪我はないかい?」
「あ、あ...」
クウガはこちらにサムズアップした後、少年の体に傷がないかあちこち触ったり見たりしている
怪我がないことを確認したクウガは少年をひょいと持ち上げて、裂け目に向かって走り出す
「君、名前は?」
「リョウジです...」
「リョウジくんかぁ、いいかリョウジくん、この裂け目の向こうに着いたらたくさんの大人が君を助けるために頑張ってくれるから、ちゃぁんと挨拶するんだぞ!」
「......はい。」
「よし!もうすぐ着くぞ──!!」
裂け目まであと10メートルほどのところでクウガは足を止めた。
そこには上級エーテリアス“トラキアン”が人々を避難させまいと裂け目の前を浮遊していた
「リョウジくん、かけっこは得意かな?」
「え?」
「お兄さんが合図したら全速力で裂け目に走ってくれ...。」
そう言ってクウガはトラキアンと交戦を始めた
トラキアンの攻撃を避けながら距離を詰め、拳を振るう
その攻撃は巨大な槍によって受け止められ、反撃の蹴りがクウガの腹に向かって迫ってくる
それを避け、後ろに飛び退く
戦力は互角。一進一退の攻防だ
その戦いの中、トラキアンは突然槍を投げた
投げやりになったのではない。これは落下攻撃の合図である。そしてその標的になったのは
リョウジだった
「───!!少年、危ない!!」
間一髪のところでクウガが助けに入り、リョウジは無傷
が、クウガは肩に大きな傷を負ってしまった
動きの鈍ったクウガにトラキアンは追い打ちをかけていく
クウガの体はボロボロになり、そこらじゅうから血が出ている
─汝、力を求めし者よ─
頭の中から何かが聞こえる。が、それどころではない
クウガにトドメを刺そうとトラキアンが近づいていく
─我、汝の心の声也...─
─傾聴せよ、汝の底から聴こえし『力』の渇望に─
『力』その言葉がリョウジの意識を引き離していく
「─ねん!少年!!GO!!!」
クウガの声を聞いて意識が引き戻される
戸惑いながらリョウジは走り出す。クウガの方へ
「リョウジ!!こっちじゃない!裂け目に走るん、だ...」
トラキアンはクウガが喋り終わる前に心臓を貫き、リョウジの方へと向きを直す
クウガは変身が解けて無惨な死体とベルトだけになってしまった
それに気づいた他のライダーがトラキアンの方へ向かっていく
駆けつけたのはカブト
クロックアップでトラキアンを圧倒していく
その隙にリョウジはクウガのベルトを持ち去り、裂け目から出た
自分は何をやっているんだろう
あの時に聞こえた得体の知れない声を信用してクウガを犬死にさせた自分を殺してしまいたい
アークルを地面に落としてうずくまる
─傾聴せよ...真なる渇望を─
「なんで...この声のせいで...!」
「そこの僕、大丈夫?どこか怪我してるんじゃ、──ってそのベルト、そんな....クウガが...!?」
少年はアークルを拾い上げ、逃げるように走り出してしまう
「あっ、ちょっと君!!」
「どうかしましたか!?上官!」
「今逃げて行った少年を追え。絶対に逃すな」
軍人たちが追ってくる
捕まって訳を知られれば、追われるだけでは済まないかもしれない
リョウジの自責の念が罪を重くしていく
一心不乱に逃げる中、ついに行き止まりに行き着いてしまった
「そこの君、悪いようにはしないから!お兄さんたちと一緒に戻ろう!」
汗と涙が溢れて出てきた
頭はもうすでに正常ではない
黒いクレヨンで塗りつぶしてしまったように、何も考えられない
何も見えない
─傾聴せよ、汝の真なる渇望を─
またこの声だ。この声のせいでクウガは
─我、汝に今こそ与えん─
─永遠の時を統べる戦士の“力”を─
リョウジはクウガのベルトについた血を拭い
「おい!!待て!」
腰に当てる
白い光と共にベルトが装着された
そして...
変身.....
リョウジは白い光に包まれ
仮面ライダークウガ グローイングフォームに変身してしまった
その瞳は黒く、禍々しい
「おい何やってんだ!このガキを捕えろ!絶対に逃すな!」
軍人が何か言っている
耳に何かが詰まったように何も聞こえない
全ての感覚がこもっているような感覚だ
体の制御が効かない
スクリーンに映る殺戮劇を見ることしかできないリョウジは次第に考えることを放棄していく
血が飛び散り、あたりに悲鳴が響く
骨が折れる音
肉を引きちぎる音
何かを踏み潰す感覚
何かを抉り取る感覚
それがしばらく続いた後、襲って来る人はいなくなった
ひとしきり暴れ終わったクウガは変身を解き、元の姿に戻る
血の色で赤くなった白い鎧が腐り落ちるように外れていく
やがて視界が晴れて、リョウジの目の焦点があっていく
死体。死体。死体。
そんな光景を見たリョウジは人が違ったように混乱し、逃げ出した
どれほど走っただろうか
足の裏の痛さも無視して走り続け、隣の救助ポイントまで来てしまった
そこでは多くの人が救助の順番を待っている
そこには見慣れた顔が2つ
「あ!リョウジ!!」
「リョウジ!!よかった...無事で...」
兄のアキラと姉のリンである
「にぃちゃん...ねぇちゃん...お、おれ...」
「大丈夫!大丈夫だから!私たち2人はもうどっか行ったりしないよ」
「そうさ、だから一度深呼吸しておくれ。顔色が悪いよ?」
これまでの事が急に頭の中で事実として受け止められていく
絶え間なく続く吐き気と頭が割れそうなほどの頭痛に耐えきれず、リョウジは気を失った
「リョウジ?ねぇリョウジ!」
「息はしている...きっと疲れて寝てしまっただけさ。今は休ませてあげよう」
こうしてリョウジは仮面ライダーとなった
これ自分の罪に耐えられないほどの弱い人間が、人を守る仮面ライダーになるための話である
ここまで読んで頂きありがとうございます!!
こんな重い話になるとは思わんかった...
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