ゼンレスゾーンゼロ×仮面ライダー   作:トンファーエッジ

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第15話 虚ろな享楽の記憶

 

 

「──ン!ちょっとシン!聞いてんの?」

 

 

「あぁ、ごめんジュナ、最近戦闘続きで」

 

「アンタほんとに軍人なわけ?そのくらいで音をあげるようじゃ、まだまだ『ZECT』隊員とは言えないぞ?」

 

 

シンは軍の中でも最強の部隊、「ZECT」の隊員だった。

 

エリー都ではそのZECTの名前を知らないものはおらず、この部隊に入ることこそが、軍人の憧れだった

 

 

「シン、お前は頑張りすぎなんだよ!もっと肩の力抜けって」

 

「そうそう、この前だって僕らに内緒で銃の整備までしてくれてたし、ここんとこ、まともに寝てないんじゃないか?」

 

 

「いえいえ、俺なんてまだまだ。これでも足りないくらいです」

 

 

シンもこの部隊に憧れ、軍人になった

 

たゆまぬ努力の末、遂にZECTに入ることができたシンは期待に胸を膨らませ、これまでより、人一倍努力するようになった

 

そんなある日、シンに一機のゼクターが支給された

 

この部隊の中でゼクターを持つことが許されているのは、戦闘に長け、心身ともに屈強な戦士のみだ

 

その中の1人として選ばれたシンは飛び上がるほど嬉しかった

 

 

「シン、お前に渡すものがある」

 

「え、なんでしょう、まさか除隊通知とか...?」

 

「そんなわけないでしょ?ほら、この部屋の中」

 

 

そう言って鉄の扉を開けた仲間はシンに入るように言った

 

シンが部屋に入るとドアが突然閉められ、部屋にはシンと目の前の黒いゼクターの2人だけになった

 

机の上には銀色のベルトが置かれており、これがこのゼクターを使うために必要なものらしい

 

 

横には説明書も置かれている

 

 

「ホッパーゼクターβ...」

 

気性は穏やか、人間に協力的で基本的になんでも言うことを聞く

 

と書かれていた

 

 

小さな声で呼ぶシンに呼応するようにキュルルと鳴きながらシンに近づいてくる

 

なかなか可愛い奴だ

 

ついに自分にもゼクターを持つ資格が与えられたと思うと嬉しくてたまらない

 

すると突然ホッパーゼクターβがシンに向かって放電してきた

 

 

「──あぶな!!穏やかじゃないじゃん!!」

 

 

なぜかシンには懐かないようだ

 

その後も部屋の中でゼクターは放電を繰り返し、シンは部屋の中を飛んで回った

 

 

部屋の扉が開く頃にはゼクターもシンもクタクタに疲れた状態で、その日は変身することはできなかった

 

 

 

日を改めて次の日...

 

シンはゼクターを使って変身して訓練を受けることになった

 

だがゼクターがどこにいるかわからない。部屋の中、屋根裏、草むら、森の中、あの子のスカートの中

 

どこを探してもゼクターは見つからなかった

 

 

「アンタそこで何やってんの?」

 

「ゼクター探してんの」

 

「そんなのベルトで呼び出せばいいじゃない」

 

「え?」

 

「え?じゃないわよ、アンタのベルトにはゼクターを呼び出す機構がついてるじゃない」

 

 

そんなこと知らなかった。と言うか説明書を読んでいる暇がなかった

 

 

「これかな?」

 

シンはZECTバックル上部についているボタンを恐る恐る押した

 

ベルト全面のパーツがぱかっと開き、受け皿のようになった

 

ベルトからは不思議な音が聞こえる。これがきっとゼクターを呼び出している音なのだろう

 

 

すると遠くからホッパーゼクターβが異次元的な速度でこっちに近づいてきた。

 

途中途中消えたり現れたりを繰り返してこっちに来る

 

その動きを捉えきれず、シンはみぞおちに見事な頭突きを喰らった

 

 

「あはは!!最初はそうなるよね、あははは!はー、おっかしい」

 

「うぅ...ゼクターテメェ...ぜってぇ恨むからな!」

 

 

 

その日の訓練は散々だった

 

ゼクターとの足並みが揃わず、クロックアップもうまく使えない

 

このままではまずいとシンは部屋の中でゼクターとの対話を試みることにした

 

 

「おい、どういうつもりなんだ、今日の訓練は」

 

キュルル?

 

「そんな声を出してもダメだ。あんなんじゃ前線張れないだろ?」

 

ギャインギャイン!キュルル キュルル

 

 

何かを訴えているようだがシンには理解できなかった

 

 

「おい!ウルセェぞ!こんな時間まで何やってんだ!」

 

 

部屋の中に隊長が入ってきてしまった

 

お前がうるさいからだぞとゼクターを睨みつけ、隊長の方へ向きを直す

 

 

「すいません...今日の訓練こいつのせいで散々だったんで、なんとか対話を図ろうと...」

 

「足並みなんて戦ってりゃ揃う。でも確かに俺もなぁ、初めてカブトゼクターと出会った時はあいつが認めてくんなくてなぁ──」

 

 

隊長は昔の話をし始めるともう止まらない

 

これは小一時間聞かされる奴だ...

 

ゼクターと顔を見合わせて互いにそう思った

 

 

たぶん...

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして、シンは立派な軍人になった

 

ZECTの副隊長として、新人たちを導き育てる役割を担いながら、戦いでは最前線を退かず、みんなが憧れる存在になった。

 

シン自身もその役割にやりがいを感じ、あの頃と変わらず一生懸命訓練に励んでいる

 

ジュナとは恋仲まで発展し、お互いに結婚を考え始め、全てが順風満帆だった

 

 

 

 

 

その日々がもうすぐ終わることをのぞいて

 

 

 

 

 

皆が苦しそうに呻き声をあげている

 

ある作戦の中、零号ホロウの中で巨大なエーテリアスに襲われ、やっとのことで逃げ出したZECTの部隊はホロウの中から出られなくなっていた

 

キャロットはとっくに有効期限を過ぎ、支給物資と食料もそこをつき、極限状態だ

 

残っている物資は作戦の成功を果たした時に飲む予定だった酒とジュースのみだ

 

 

「副隊長...、俺、腹減ったっス...」

 

「バカ言え...私だって減って減って仕方ないよ...」

 

「なんとかしてこの状況を脱しないとな....ホロウ外との通信が可能ならどれだけよかったか....」

 

「副隊長がそんなこと言うなんて珍しいっスねぇ...」

 

 

シンも限界状態が続いているせいでまともに頭が回らない

 

何日も食料を取っていないせいで全員の唇は乾き、青くなっていた

 

もはや死ぬまでは秒読みと言っても過言ではないだろう

 

 

その日の夜

 

隊長は立ち上がり、残り少ない物資の入った箱を出してきた

 

 

「隊長!それは成功した時に飲むって言ってたじゃないスか!」

 

「そうです!それにこのワインにはアルコールが含まれています。この図状況で飲むことは、お勧めできません」

 

 

隊員を押し除け、火の方に向かってフラフラと歩き出す

 

その目もどこか虚ろで、正常には見えなかった

 

「先輩...今日はもう寝ましょう、先輩のゼクターはこっちで回収しておきます」

 

 

「──it be a long day♪without you , my friend♪」

 

 

シンの静止も聞かず、火の目の前に向かって突然歌い出した

 

掠れた声で歌い始め、その声はだんだん大きくなっていく

 

 

乾いた喉を酒で潤し、続けて歌う

 

 

「── We've come a long way ♪」

 

 

周りにいた隊員はなんのことか分からず、哀れみのこもった好奇の目で見つめている

 

 

「隊長の脳が侵食を受けているのかもしれない、すぐに侵食緩和剤を」

 

「はいっ、今すぐ...」

 

 

この時隊長は侵食を受けて気が狂っていたわけではない

 

もはやこれまでと悟っていたのだ

 

 

そのことに他の隊員たちも気付いた

 

静かに隊長に近づき、声を重ねる

 

 

徐々に部隊の全員の声が重なり、皆で酒を交わす

 

 

 

シンにはこの光景が理解できなかった

 

なぜみんな歌い出したのか、この極地において歌を歌うことはリスクでしかない

 

周りのエーテリアスを誘き寄せてしまうかもしれない

 

歌うことによって体力を消耗するかもしれない

 

 

「おい....お前らどうした?おかしいぞ...?」

 

 

シンの声には耳を貸さず、むしろお前もこっちにこいと誘っているようだった

 

 

ついていけない

 

この状況を楽しんでいるのか?

 

完全にイカれている

 

 

「お前ら、目を覚ませ!ここはホロウの中だぞ!」

 

「...シン、みんなそんなことわかってるの。さっき通信が入ったわ。このホロウの外では、式輿に塔が爆破された。だから、もうアタシたちもここで終わりなの」

 

 

ジュナの言葉を聞いて膝から崩れ落ちた

 

式輿の塔が爆破されれば、その衝撃で零号ホロウの周りには大きな断層ができるだろう

 

そうなればもうここの中にいる者は何人たりとも外に出ることは叶わない

 

 

これまで積み上げてきたものが、崩れ落ちていくのを感じる

 

視界がどんどん色を失っていく

 

 

 

絶望しているシンにジュナが口を開く

 

 

「だから、隊長はこの地獄を楽しむことにしたの。みんなもそれに気づいたのね...」

 

 

ゆっくりと立ち上がり、みんなの方へ向かった

 

「は、ははっ」

 

隊長と同じフラフラの足取りで、虚ろな目でみんなに近づく

 

「はははははははっ」

 

 

隊長の手から酒を受け取り、瓶ごと持ち上げ、勢いよく口に流し込んだ

 

 

「そうだなぁ...楽しもう!お前ら、死ぬまで飲むぞぉ!」

 

 

周りの隊員は沸き上がり、歌を歌う声も笑う声も大きくなった

 

 

そう言えばみんなが歌っている歌には聞き覚えがある

 

友との選別を惜しみながらもそれを受け入れて生きていくといった歌だったはずだ

 

最悪な選曲だ

 

 

ここにいる奴らは全員死ぬのに、誰が生きていくって言うんだ

 

そう思いながら爆笑し、歌を歌い、夜を明かした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧のかかった場所でシンは目を覚ました

 

どれくらい眠っていたのだろう

 

 

起きあがろうと、上半身を起こすと何かがシンの身体からずり落ちた

 

侵食を受け、身体じゅう結晶だらけになっていた

 

だが誰だかはすぐにわかった

 

 

ジュナだ

 

 

それに手の中にはエーテル侵食緩和剤が握られていた。その管はシンの腕へとつながっている

 

記憶がだんだんと鮮明になっていく

 

 

「ジュナ...?ジュナ!!」

 

声をかけても揺さぶっても、返事は返ってこない

 

 

「どうして....どうして余計なことを....!!」

 

ジュナの体を抱き寄せ、シンは叫んだ

 

その声を聞きつけたエーテリアス、元は隊員だったものたちがぞろぞろと近づいてくる

 

そのエーテリアスたちは皆上級エーテリアスばかりだ

 

この作戦で死ななければ後世に語り継がれる戦士だったのだろう

 

 

今度こそは殺してくれ

 

 

 

そう思ったその瞬間

 

ホッパーゼクターβが霧を裂き、エーテリアスに突進した

音速を超えるスピードがぶつかった衝撃でエーテリアスは吹き飛ばされた

 

 

ゼクターはこちらを向き、シンの顔に頭突きをした

 

 

 

続けて2発3発と頭突きをかまし、シンのそばに着地した

 

「なんだよ、お前...また邪魔すんのか」

 

 

涙を流しながら講義するシンの声を聞こえているのか聞こえていないのか、ホッパーゼクターβはキュルルと鳴いた

 

突然ゼクターから何かジーと音がして何かが再生された

 

 

『これ、録れてるのかしら?オッケー?コホンっ、おはよう、シン』

 

その声の主はジュナだった。おそらくこの作戦に出る前に録ったのだろう

その声はまるでひまわりのように明るい

 

 

『もし、その時が来たらゼホッパーゼクターβが自動再生することになっています』

 

『おい?何録ってんだ?』

 

『ちょっと!これはアタシがシンに向けて録ってるのよ?勝手に入ってこないで』

 

 

録っている最中に隊長が入り込んでしまったのだろう

隊長はケラケラと笑いながらはけていった

 

『えっと...この前あげたコートは気に入ってもらえたかしら?あれ私が3日迷って買ったやつなんだから大切にしてよね!あなたのイメージだと明るい色かなって思ったんだけど、やっぱり黒色が大人っぽいあなたには似合うから』

 

 

『先輩!この装備って...何やってんすか?』

 

『空気くらい読んでよ!だから──』

 

『これ録音してるんですか?私もやりたいです!』

 

 

次々と隊員たちが集まってきてジュナの録音を邪魔する

 

こんなに集まっている日なんてあっただろうか、自分の観察眼のなさには呆れてしまう

 

『元気かー!シン』

 

『体調まで!さっき邪魔しないでって言ったじゃない!』

 

『はっはっは!いいだろう?もう手遅れだ!』

 

 

『....もう...そろそろ本題に入るわ...もし、この部隊に何かあったら、みんなは多分あなたを生かす道を選ぶと思うの。もし本当にそうなって...あなたが1人になって、本当に辛くなったらこの言葉を思い出してほしいの』

 

 

『アタシたちはずっと一緒だから!』

 

 

 

 

そこで録音は終わった

 

それを聴き終わったシンはホッパーゼクターβを手に取り、ZECTバックル上部のボタンを押した

 

 

「変身...」

 

 

 

 

 





辛さがうまく表現できねぇ

ここまで読んでいただきありがとうございます!!

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