そろそろ投稿予約が無くなっちゃいそう
第23話 ソノ依頼は謎
ヴィジョンの一件がひと段落ついてからしばらくしたある日
リョウジはアークルをつけてH.D.Dのカメラの前でTポーズをしていた
「Fairy、もういいか?」
『否定、側面の文字が正確に写っていません。右に25°ほど向きを変えてください』
少し前、依頼をこなしていたリョウジはアークルに小さく文字のようなものが書かれているのを発見した
その文字の大きさは小指の爪の先ほどで肉眼で認識することは難しかったため、これまでは気づくことはなかったのだ
今はFairyの演算システムを使って、その文字を解読するためにアークル全体の写真を撮っている途中である
「わぁ、まだやってたの?それ...」
『申し訳ありません、マスター。カメラの精度が悪く、うまく文字を捉えることが困難です』
「うちのカメラのせいにすんな」
『助手2号、左に25°ずれてください』
「左に25°...ってそれさっき撮ったろ!」
Fairyにイタズラを仕掛けられたリョウジが喧嘩を始めた直後、工房の扉が開いた
「2人とも、話したいことが...って何をしているんだい?」
「この前見つけたアークルの文字解読してるんだって」
『肯定。これは必要経費であり、削減対象ではありません』
「削減?」
「ちょうどいい、今日はそのことについて話に来たんだ」
リョウジはアークルを引っ込めてリンと一緒にアキラの方へ向きを直す
腰に手を当てながら、落ち着いた口調でアキラが話し始める
「今日話したいことは二つあるんだ。まず一つ目は、うちの今月の収支についてだけど...」
「ち、違うのお兄ちゃん!確かにカプセルトイをいっぱい回したけど、あれは...」
まだ何も言っていないのに、リンが白状してしまった
それを黙認していたリョウジの頬に汗が伝う
「カプセルトイ?何のことだい?こっちは真面目な話をしているんだ、まずは話を聞いてもらっていいかな」
2人は鈍感なアキラに心の中でガッツポーズしながら汗を拭った
どうやら変化が大きかったのはプロキシ事業の方
インターノットで作った新しいアカウントはまだレベルが低いからか稼げる依頼が全然来なかった
そのため今月の収入は、以前の三分の一にも満たないらしい
「まぁ、それは仕方ないんじゃない?」
「問題はそこじゃないんだ。コホン...実はFairyが原因で、今月の電気代が以前よりも5倍も上がったんだ」
「5倍!?それって、いちじゅうひゃくせんまんじゅうま...ひえぇ」
「どうりでさっきから黙ってるわけだ...」
『否定。これは電気代の削減のため稼働を控えているためであり、罪悪感などではありません』
「今月のローン払えるかな...」
「そうだね...でもこういう時こそお金に目が眩まないように気をつけないと...これが二つ目の話なんだ」
アキラはさっきインターノットを介して入った高額の指名依頼について話し始める
具体的に何をして欲しいかは一切書かれておらず、詳細はDMで送られてくるらしい
「なんか、クサイな」
「そうなんだ。僕たちのアカウントはまだレベルが低いし、これと言った実績もない。そんな僕たちをこっそり指名するなんて、普通じゃないだろう」
「何か企んでるのかもね...最近はそういう詐欺もあるって聞くし、リョウジも気をつけないとだめだよ?」
「引っかからないって」
「いっそ誰だかわかればいいけど、そんなの無理だもんね...」
『意義あり。この指名依頼には、依頼人の身分に関する隠された情報がある可能性があります』
「隠された情報...?」
Fairyによればこのインターノットアカウントは投稿の前日に新規作成されたもので
アイコンには本人が撮影した写真が使われているのだそう
その場所は、現『旧都地下鉄改修プロジェクト』の工事現場と一致しているとのこと
「ん?待てよ、そういえば僕たちがヴィジョンの悪事を暴いた後、プロジェクトの競争入札は仕切り直しになったんだったね」
リンもそのことに気づいたようで、ハッとした顔をした
「今回の請負を勝ち取ったのは確か『白祇重工』だったはずだ」
「そうなのか?」
「普通の人が地下鉄の工事現場に行くってこともなさそうだし...依頼を出したのって、もしかして白祇重工の人だったり?」
「そうなんだ?」
何も知らされていないリョウジはその場で置いてけぼりにされている
『マスター。現在、とあるチャンネルのテレビ番組にて白祇重工の関係者がゲストとして出演しています』
それを聞いたリョウジは一刻も早く事態を理解するために、置いてあったリモコンを手に取り、次々にチャンネルを変えた
それらしい人物が見えた番組は『ボンプは知っている』だ
「子ども向け番組...?」
『どんなギモンも〜?』
『ボンプは知っている〜!』
番組では白祇重工のアンドーという男がゲストとして出演していた
今回のテーマはヴィジョンと白祇重工のどちらの回収プランが優れているかというもの
ある男の子と、レオンくんと名乗る着ぐるみを着た司会者が討論をしている
男の子が言うには
白祇重工のプランでは、重工業機械なる技術の力で古い地下鉄設備を再利用することで、コストや環境への負荷を減らすことができるらしい
会場にいる子供たちがその意見に賛同し、白祇重工の方が優れていると口を揃えた
そこに、レオンくんが割って入る
『白祇重工の方が優れている?くくっ、それはどうガオ?』
レオンくんが言うことには
市民が求めているのは完全なリニューアルをされた安心安全の地下鉄であり、白祇重工のやり方は非効率的で安全性に欠けるとのことだ
それを聞いた子供たちは今度はヴィジョンが優れていると口を揃えた
それにどうやら白祇重工には『大金を持ち逃げした社長がいる』らしい
「こんなもんお茶の間に流していいのか...?」
「けど意外だね。白祇重工は世間からの評判もいいのにいまだに黒歴史を掘り起こされるなんて...」
そこにH.D.Dから通知が鳴った
『マスター、指名のあった依頼人からDMが届きました』
「向こうから連絡が?読み上げてくれ」
『パエトーン。俺たちに力を貸してくれ!恥を忍んで言うが、オレらは今、生きるか死ぬかの瀬戸際だ。力を貸してくれ──頼れる相手はおまえしかいねぇんだ!』
『事情が事情なんでな、依頼をここに書けば1発でこっちの正体がバレちまう。つうことで、ここは一つサシで会おうや。明日の朝5時に、六分街の交差点に来てくれ。頼む!』
3人はおそらく同じことを思った
(((誰が書いたかわかるな...)))
依頼人の文章からは切羽詰まっている様子が見て取れる
だが依頼内容を説明せずに面会を要求してくるのは怪しいにも程がある
「...?待てよ、この一行目...『パエトーンオレらに力を貸してくれ』って」
「このアカウントでパエトーンって名乗ったことなんてないよね?何で知ってるの?」
『マスター、依頼人からもう一通DMが届きました──『報酬の20%を前金として振り込んだ。こいつは心ばかりの誠意ってやつだ。マジに頼んだからな!』インターノットのアカウントに振り込みを確認』
「リン、この面会は罠かもしれない。この依頼は断っておかないか?お金か命かなんて二択を天秤にかけるのはやめよう」
「そうだね、Fairy、やっぱり前金は返しちゃお、」
『かしこまりましたマスター。振り込まれた金額は先月のインターノットにおける総収入の1.1倍に相当します。本当に返金しますか?』
「──待ってくれ、いくらだって?」
『先月のインターノットにおける総収入の1.1倍です』
その場にいた3人が顔を見合わせる
「まぁ、顔を合わせるくらい行ってやってもいいかもな?」
「そうだね、リョウジ。私が行くよ、だってほら...ね?」
「こらこら、お金か命かなんて二択はやめようって言ったばかりだろう?──けど、どうしてもって言うなら朝にランニングにでも行くふりして様子を見に行ったらどうかな」
その日の夜は誰が行くかで揉めたが、最終的にはアキラとその護衛にリョウジがついていくことで合意した
果たして依頼人とはどんな人なんだろう()
いったい、なにイワノフなんだ〜?????
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