四半世紀記念
マオウ邪悪すぎない?
「よう、『パエトーン』みっともねぇとこ見せちまったな。うちの信頼が揺らいでねぇといいが」
クレタという少女が社長だというこの現実に、理解が追いつかないリョウジとアキラは話を聞けているのか聞けていないのかわからなかった
「アンドーから連絡は来てる。お前ほどのデキるプロキシが力を貸してくれると聞いて、みんな内心ほっとしてたとこだ。アンドーから聞いてるかもしれねぇが...地下鉄工事が『敵』のしつこい妨害のせいで手こずっててな」
「あー、社長...プロキシさんの前であいつらを敵呼ばわりするのはどうなんだ...」
「おい、ベン...甘えたこと抜かしてんじゃねぇぞ!それにな、依頼を受けたその瞬間から、プロキシはオレらの兄弟になったんだ。兄弟に隠し事はしねぇもんだ!」
「兄弟...?」
「兄弟かどうかはさておいて...『敵』について詳しく教えてもらえるかい?今後の仕事の役に立つかも知れないからね」
そのことについて、ベンさんが詳しく説明してくれた
白祇重工は機械製造と建設業をやっているいわゆる新興企業で
最近は業界でも名が上がり、プロジェクトの請負を勝ち取ることができた
が、大手の競合他社がそれを良しとせず、それの請負を奪おうと、ヴィジョンのようにスキャンダルで失脚するのをいまだに待っているのだそう
その被害の例としては
銀行を買収し低金利の融資をやめさせたり、チンピラを送り込んで、工事現場をめちゃくちゃにしたり
審査を妨害したり、挙げ句の果てにはテレビ番組での小細工まで仕込んできた
そんな中、工事現場での「事故」が起こり、工事用重機が命令を無視して三台もホロウの深部で行方不明になったのだ
その重機たちは個々に意思を持ち、言語モジュールを用いて会話までできるのだそう
「反抗期ってことすか?」
「リョウジ、知能構造体は人間とは違うんだ。きっと何かの故障──」
「うんうん、リョウジくん!おねぇさんもそう思うよ!!」
「俺この人苦手かも...」
食い気味にリョウジの意見に賛同したグレースはしつこくリョウジに絡んでくる
その2人を放置しておいて原因について考えると、更新したチップのせいではないかという意見でまとまった
「...知能重機の性能は十分だったと思うけどな。わざわざ更新する必要あったのかよ?──あいつの残したコードを論理コアに組み込みさえしなきゃ、今頃こんなことには...」
「待っておチビちゃん。まだチップの不具合と決まった訳じゃないよ」
クレタの言葉を聞いたグレースはリョウジに絡むのをやめて、否定した
「それに、美しい機械には、そのボディに相応しい魂が必要なんだ!──知能機械の開発に関わる会社の社長として、そうは思わないかい?」
「魂がどうのなんつーのは、あたしの知ったことか──社長だからこそ、機械をただの資産としてみなきゃといけねぇんだろうが」
クレタはその年の割にはしっかりとした性格をしていて、社長としての素質は申し分ないようだ
「あんなバカたけぇ知能機械を失くしたら大損だ。『敵』の問題があろうがなかろうが、見つけるに越したことはねぇんだよ」
「じゃあ、それを探すのが俺らの仕事か」
「そういうワケだ。うち二台の位置はざっくりだがアタリがついてる。他に何かあればグレースやアンドーに聞いてくれ」
「あー、じゃあ皆さんの名前とか確認していいですか?まだちょっと覚えきれてないってか、顔と名前が一致してなくて」
「確かに、きて早々あんなことがあったからな。すまなかった」
「いやいや、謝んなくていいっす!」
いろいろな情報が重なって、リョウジの頭はキャパオーバーしている
名前くらい、一度で覚えられないこともあるだろう
「改めて、俺がベンだ。ドリルをいつも付けているのがアンドーで、機械に目がないのがグレース。そして赤い髪の女の子がうちの社長のクレタだ」
「ベン、一応兄さんのことも紹介しておかないかい?」
「ああ、そうだな。どうせこの後会うことになる」
「グレースさんの、お兄さん?」
「ここにはいないんだけどね、『ヒュメナ・ハワード』って言うんだ」
「頼りになる作業員だ。挨拶できればいいと思ったんだが、今はデモリッシャーの捜索に出ているんだ...」
グレースのお兄さん
どんな人なのだろう。やはり機械に目がなくて人と変わっている部分がある人なんだろうか
「なるほど...ありがとうございます。ベンさん、グレースさん」
「もう聞きたいことはないか?」
「大丈夫っす」
「じゃあそろそろ出発しようか」
「やりますか〜」
『くれぐれも慎重にね、リョウジ』
「わぁってるって」
今回は座標が割れている重機の一つ『Ⅲ型ホロウ用デモリッシャー』グレーテルの捜索のために、ホロウへと赴いた
おそらく、グレースの兄であるヒュメナにもここで会えるだろう
「おいリョウジ、お前生身で平気なのか?」
「大丈夫っすよ、これから生身じゃなくなるんで」
「ん?それってどういう」
リョウジが腰に手をかざし、アークルを出現させる
右手を前に出し小指と人差し指を軽く折り、左手はベルトの上へ
すると、腰あたりに違和感を覚える
なんだか、誰かに触られているような...
「はぁ...!はぁ...!こ、これってどうなってるのかなぁ?リョウジくん!お姉さんに教えてぇ...!」
「うわぁああああ!!!!」
視線を落とすと、いつのまにかグレースがアークルとキスしてしまうんじゃないかというほど至近距離にいた
手はリョウジの腰をがっちりとホールドし、離れられない
その口からは涎が垂れており、目は興奮してバッキバキだ
「おい、グレース離れろ!ベン、手伝え!」
「ああ、わかった...!」
ベンとクレタに抑えられ、遠くに離れたグレースを見て安心したリョウジは、もう一度変身ポーズを取り直し...
「変身!」
アークルから放たれた眩い光がリョウジの体を覆っていく
その光が収まると、赤いボディが顔を出す
リョウジはクウガに変身した
「あんな変身の仕方見たことない!!分解したい!仕組みを知りたいぃ!!」
「えぇ...えっと、これ外れないんすよ...」
「構わないから!リョウジくんっ...お姉さんの工房においでぇ...!!」
「寄るな、キメェんだよ!!」
「落ち着くんだグレース、今のお前はただの変態だ!」
しばらくグレースのヨダレと問題発言は収まらなかった
ちょうどそれが収まったころ、遠くで何かが崩れるような大きな音がした
『今の音はなんだ?』
「この座標...!グレーテルの位置と一致している!」
「急いだほうがいいんじゃないか?」
「そうだな、早く行こう!」
おれのグレースさんへの認識って間違ってないよなぁ...
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