丁寧な口調の男=アバドンA
荒々しい男=アバドンB
オーケー?
静かなホロウの中に、罵声と発砲音と金属がぶつかるような音が響く
「くたばれェ!!」
声を荒げたアバドンBが、スラッシュアバドライザーを振り下ろす
しかし、フレイの硬い装甲には傷一つつかない
逆に腹にパンチを打ち込んで反撃する
「ぐはっ..!」
マスク越しに口を拭うような動作を見せたアバドンBは、プログライズキーを押し込む
必殺『クラウディングエナジーフォール』を繰り出してきた
頑丈な装甲を持つフレイでも、これには当たるわけにいかず
それでも
「...こんなのはどうだ?」
そう言ってフォースライザーのサイドについたホルダーから、緑色のキーを取り出す
【Berotha...】
レバーを戻してベローサゼツメライズキーをフォースライザーにセット
地面から『マイク』よりも二回りほど小さいカマキリ型のライダモデルが姿を現し、辺りを飛び回り始めた
【Force rize...】
レバーを引いた瞬間、リストレントケーブルがそれを捕まえて、無理やり腕に押し付けるようにして右腕にまとった
【Blake down...】
そこにはカマキリのような刃が携えられている
「かかってこい...」
左手の指を挑発するようにくいっくいっと動かす
「お前なんか怖くねぇ!野郎、ぶっ殺してやる!!」
スラッシュアバドライザーを逆手で持ち、飛びかかってくるアバドンBの腹を鎌で打つ
鎌と呼ぶにはそれは切れ味に乏しいように思える
しかし、それでいいのだ
後ろに転がっていったアバドンBの頭の前に鎌を突き立て、怯んだ隙に足払い、それをころばせる
その隙に腕と鎌で肩を挟み、腕の力だけで持ち上げる
「カマキリの鎌はなんのためについてるか知ってるか?」
「ウァアア...!!」
「切りつけるためじゃない。逃がさないためについているんだ」
【ZETSUMETSU...】
【Dystopia...!】
腕に装備された鎌から、緑色の電撃が溢れ出す
当然逃げられないアバドンBはそれをもろに受け、変身が解除されると同時に気を失った
「ふぅっ...──?」
仕留めた男の装備を調べていたフレイの頭を一発の弾丸がかすめた
それはクウガとアバドンAの戦いの流れ弾だ
どうやらクウガは苦戦を強いられているようで...
「ちょこまか動くな...!」
一定の距離を保って戦われているせいで
リーチが短く、機動力にも乏しいタイタンフォームでは腕一本分届かない
かといってドラゴンフォームなどに切り替えれば、銃撃をもろに受けて、劣勢に陥るデメリットも考えられる
正直手詰まりである
「貴方では私には敵いませんよ、降参してください。それとももう少し鬼ごっこを続けますか?」
「うっぜぇ!」
力一杯にアバドンAを殴りつけるも、その拳はもちろん空を切る
それを嘲笑うように一発の弾丸がクウガの頭にカツンとあたり、リョウジの神経を逆撫でする
(クソっ!アイツ舐めてやがる!)
イライラが態度に出やすいリョウジは、走りのフォームを乱し
もっとアバドンAとの距離が開いてしまった
(もっと足が早けりゃな...!)
そう思うと同時に
アバドンAが走る道のその先の壁のそのさらに向こうから、大きなエンジン音のような轟音が響く
次の瞬間、トライゴウラムが壁を突き破って飛び出し、アバドンAを轢き飛ばした
トライゴウラム到着から少し前...
リョウジたちと別れたグレースとクレタは、『フライデー』の捜索を続けていた
「見てろよ...捕まえたらぜってぇバラバラにしてやる!!」
「おチビちゃん...お姉さんの趣味を理解してくれて嬉しいよ」
『フライデー』の開けた穴に落とされ続けたクレタは怒り心頭といった様子だ
といっても、当の本人は放棄された建築物に阻まれ、身動きが取れなくなっているようだが...
「やっと追い詰めた...──Ⅲ型ホロウ用工業パイルドライバー『フライデー』!」
追い詰められた『フライデー』は威嚇するようにドシンっとロッドを地面に突き刺し、後退りした
「さぁ、お姉さんたちと一緒に戻ろう!」
『...』
『フライデー』は何も言葉を発することなく、また一歩後退りした
すると突然、大きな足音を鳴らしながら、クレタに向かって走り出した
あわやぶつかる寸前、大きな体に見合わない軽やかな跳躍でクレタをかわし、走っていってしまった
「ボサっとすんな!すぐ追うぞ!」
「...あぁ、うん!」
華麗なジャンプに見惚れていたグレースを一喝し、後を追う
予想以上にすばしっこいがなんとか追い詰め、今度こそ逃がさないと言わんばかりに足を開き、フライデーを威圧した
「諦めろ『フライデー』、もう逃げ場はねぇぞ」
『...!』
やばり先ほどからフライデーは一言も発さない
言語モジュールが故障してしまったのだろうか
「おい、もう小芝居はやめろ。お互い腹を割って話そうぜ」
クレタが歩み寄った
フライデーはそれを警戒して、また一歩下がってしまう
「お前もハッキングされちまったのか?」
『渇っ!無礼者ぉ!!』
「はぁ?」
突然大声をあげたかと思えば、出たのは無理して作ったような古風な口調
流石のクレタもこれには『はぁ?』しか出ない
『この我がハッキングなど受けるはずが無かろうっ!凡俗の徒ごときが無礼にも口を挟み、我が使命を阻むとは!』
「いやいや、かわい子ちゃん。そうとは限らな──」
『我が名は明星の断罪者。我が師の命を受けこの地の封印を固めに参ったのだ!控えろ!』
明星の断罪者(笑)の話は止まらない
こちらの警告を無視しておしゃべりを続けるフライデーに嫌気がさしたクレタが口を開いた
「断罪者だか裁断機だかしらねぇが、一緒に来てもらうぞ!」
『なんだとっ!ひとたび封印が破れた暁には、この地に破滅が訪れるのだぞ!──いたし方なし...!ここは問答無用で突破するのみ!!』
先ほどと同じようにクレタに向かって走り出し、ぶつかる寸前に跳躍
クレタに大きな影を落としながらきた道を引き返し始める
「クソっ!またか!!」
「どうしたものか...」
そうして考えているうちにも、足音はだんだんと遠ざかっていく
このままではリョウジたちが戦っている場所へ行ってしまうだろう
そうなった時に起こる問題は想像しただけでもかなり厄介だ
「とにかく追わねぇと!!」
「待ってくれ、おチビちゃん」
足踏みするクレタをグレースが引き留めた
「何か、聞こえないかい?」
そう言われて初めてクレタはそのエンジンのような音に気がついた
その音は何かを薙ぎ倒していくような音と共にだんだんと大きくなっていき、確実にこちらに近づいてきている
「バイクか?」
「わからない。でも、こんな大きな音を出せるエンジンなんて...聞いたことないよ!」
ワクワクするグレースの気持ちに呼応するように、エンジン音が近づいてくる
その音は耳を塞がなければならないほどに大きくなり、ついに...
ドゴォォォオオオン!!
道を塞いでいた建築物の壁に大きな穴を開けて、トライゴウラムが姿を現した
そのボディは砂煙を突き抜け、『フライデー』の足に激突し、なおも止まることなくその先へ走り去った
「え、えぇ...」
ほんの一瞬の間に嵐が来て去っていったような光景に、クレタは開いた口が塞がらない
「な、なな、ななな...」
これには流石のグレースも、『な』を羅列することしか出来ない
「な、なんだいっ!?!?今の!スーパーウルトラ!きゃっわいこちゃぁんはぁぁぁあああ!!!!」
ということはなくいつも通り、いや、いつも以上に、エンジンがかかっているようだ
今にもよだれを撒き散らしながら走り出しそうなグレースにクレタが組み付いた
「落ち着けっ!」
「止めないでおくれ!おチビちゃんん!!いっ、今すぐ行かないとまたどこで巡り逢えるかわからないだろうっ!?!???」
「だから落ち着けって!!まずは『フライデー』を回収しなきゃなんねぇだろ!」
「はっ!そうだね、早くうちの子を助けないと!」
『フライデー』の方に目を向けると、ぶつけられた足からは火花が散り、動けなくなってしまっているようだった
それを見たグレースは、我が子を見る母親のような目で心配し、小走りで駆け寄った
『ぐっ!近寄るな!!まだ我が師ホルスからの命が果たされておらぬのだぁ!!』
「「──!?」」
その言葉を聞いた瞬間、2人の動きが止まった
「どういうことだ?なんで...そいつの名前が出てきやがる...」
「何事ですっ!?」
トライゴウラムに轢かれて地面に転がったアバドンAはクウガに視線を向けた
クウガもなにが起こったのかがわからず、デカクワガタムシが合体したトライチェイサーを見つめた
「はっ、え?なんで...???」
ブォォオオオン!!
頭の中に『?』しか浮かんでこないクウガに返事をするようにエンジンを吹かした
リョウジはもっと頭が混乱した
「かまいませんよ...これしきのことで私の計画は狂いません...!」
アバドンAは体を起こし、ショットアバドライザーを構えた
ブォォオオン!ブォォオオン!!
その発言を挑発と受けたのか、トライゴウラムは威嚇するように2回吹かした
「お前、意外とかわいいな〜」
ツンツンと黒いマットなボディをつっつき、それにまたがった
右ハンドルの『トライアクセラー』を引き抜き、警棒状になったそれを、タイタンソードへ変化させる
が、剣の先が出てこない
「あれ?」
ちょっと待ってと伝えるつもりでトントンと黒いボディを叩いた
しかし、トライゴウラムはそれを誤解して、そのまま発進してしまった
「ちょっ待ってって!!!」
もはや加速したゴウラムは止まらない
アバドンAも、キーを押し込み『クラウディングバーストキャノン』を構えている
どうやらここから入れる保険はないようだ
「あぁもう!ちっと我慢しろよ!」
ゴウラムの上に立ち上がり、タイタンソードを両手で持つ
両の手に力を込め、封印エネルギーを送り込む
そうしてやっと出てきた剣先で、アバドンAが放った巨大なエネルギー弾を真っ二つに切り裂き
「これで、決まりだ!」
すれ違いざまにベルトを一文字切りで切りつけ、破壊した
「そんな...この...私が...!」
変身が解除された男はその場に膝をつき、倒れた
Q、ゴウラムって自動操縦機能ついてるんですか?
A、(^^)
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
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