番外編 第1話 カラオケがつなぐ友情
ある日の朝、リョウジが目を覚ますと
「リョウジ、おはよう。」
「何で!?」
アンビーがリョウジの隣で寝ていた。
「昨夜は楽しかったわね。」
「!?!?!?」
「冗談よ。」
アンビーの笑えない冗談はいつ聞いても心臓に悪い。
知らないうちにアンビーと子を成したのでは無いかと心配していたリョウジは胸を撫で下ろし、
イヤホンを──
「いや何でいんだよ!?」
「遊びに誘おうと思って、ビリーとニコも外で待ってるわ」
「...それで、何で俺の部屋にいんだ?」
「...」
リョウジの疑問に答える気はないようだ。
部屋に勝手に入ったことはもうどうしようもないので
「何はともあれ、一旦出てくんない?」
「...」
「俺、着替えたいんだけど...」
「...」
部屋を出るそぶりを見せないアンビー
「...」
「...」
これは、、、、最終手段に出るしかなさそうだ
「姉ちゃーん!!兄ちゃーん!!」
勢いよくドアを開けてアキラとリンが入って来た。
その勢いのままアンビーの腕を掴み、ズルズルと引きずりながら部屋を出てく。
抵抗しながら部屋を出されるアンビーを横目に、イヤホンをつけてお気に入りの曲を聴きながら着替えを始める。
「──♪♪」
昨日部屋に入って着替えずに寝てしまったため、いつもよりうんと汚い私服を脱ぎ、キレイな外出用の服を手に取る。
イヤホンから流れてくる曲に合わせて小さくダンスしながらジャケットを手に取り鏡に向かって合わせてみる。
「こっちのがいいかな...」
今度はステップを踏みながらまた違うジャケットを手にして
「よし、」
今日の相棒となるジャケットに袖を通し、イヤホンを外す
さぁこれで準備万端とドアに目を向けると
ドアの隙間からこちらを見ているリンとアキラと目が合った。
「リョウジ、今日もノリノリだねぇ!アンビーたちと遊びに行けるから?」
「なっ──!!クソ!絶対今の撮ってただろ!」
「すまないリョウジ、でもいい動きだったと思うよ」
「消せ!今すぐ消せー!!」
ビデオ屋のドアを開けると邪兎屋の3人が待っていた
「ずいぶん遅かったじゃない、何かあったの?叫び声が聞こえたけど?」
「いや!、何もない。気にしないで」
ダンスしていてそれを撮られたため、醜態のデータが入ったスマホをめぐってラグナロクしていたとは言えない。
ちなみにリョウジの醜態の映像はリンのスマホから消しておいた。
が、クラウド保存されていることをまだこの時のリョウジは知らない
「リョウジ、今日は私たちとカラオケに行かない?」
「この前店長たちのこと売ろうとしてたの結構怒ってただろ?だからそのお詫びとしてさ...!おっと、金のことは心配するな!ニコの親分がクーポン持ってんだ」
「余ってるクーポン使いたいだけじゃないの?」
「...失礼ね!確かに財布の奥底にある期限ギリギリのヤツだけど大変な依頼をこなしたお礼よ!」
早速ルミナスクエアの中にあるカラオケに向かって邪兎屋の社用車を走らせる。
今度は安全運転で
「よぉし!今日は歌うぜぇ!手始めにスターライトナイトメドレーだァ!」
「またかよ!?前回もそれやったろ?」
「リョウジ、残念ね。今日はビリーの歌を聴くふりするしかないわ」
「ビリー!今回のカラオケの趣旨は仲直りなんでしょ!?そんなことしてどうするのよ!」
他愛無い会話を挟みながら車はルミナスクエアの中を進んでいく。
ここ数日忙しいことが多く、こういった日常が新鮮に感じる
しばらくしてカラオケに着き
「お客様、J◯YとD◯M、ご希望ありますか?」
「D◯Mで!!」
ビリーがカウンターに身を乗り出し店員に言う
「申し訳ありません、D◯Mの部屋はもう埋まってまして...部屋が空くまでお待ちになられますか?」
「何だよぉ....空いてねぇのかぁ...」
説明しよう!
J◯Yサウンドのカラオケは採点が甘く、高得点を取りやすい代わりに、若干曲数が少ないぞ!反対にD◯Mは採点が厳しい代わりに曲数が多く音質がいいんだ!
「ビリー、残念ね、スターライトナイトメドレーはまた今度ね」
「しょうがないでしょ、諦めなさいビリー」
部屋番号の書かれたレシートが挟んである伝票を受け取り、部屋に入る。
久しぶりのカラオケだ。
部屋で歌うと壁が薄いため、外に漏れて近所迷惑だったり、アキラとリン(主にリン)に隠し撮りされるから控えている
現に多くの隠し撮りがクラウド保存されており、もうリョウジにはどうすることもできない。
「ふぅ...やっと荷物を下ろせるわ。カラオケに着いたらまず何をするかわかるわね!?」
「え?何だ?」
「ドリンクバーを空にするわよ!!!」
「や!!め!!ろ!!!!!迷惑だろうが!」
コップを持って部屋の外に出ようとするニコを力ずくで静止しようとするリョウジ
「スターライトナイトの曲がオープニングしかねぇ...」
「一曲でもあるだけマシよ。私の好きな映画の主題歌はどこにも無いわ。」
スターライトナイトの曲が少ないことに嘆くビリー、それをなだめるアンビー
10分間の格闘の末、ニコを説得完了。
不服そうなニコを尻目に普通に烏龍茶のボタンを押して、こぼれないようにコップを見守る。
ちょうどボタンから手を離した時にニコが話しかけて来た
「アンビーもビリーも、悪気はなかったのよ。だから許してくれると嬉しいわ」
「──?あぁ、別にもう気にして無いって。」
意外にあっさりしているリョウジに、ニコは一瞬驚いたような顔を見せたが、すぐに安堵の表情に変わった
「じゃ、戻りましょ。今頃ビリーがはしゃいでるわ」
──君にも見えるかァァァア!♪
暁月の空にィィィイ!♪
眩しぃくかがァァやく、みんなで交わした誓いがァァァァ!♪
部屋に戻るとビリーが“暁の空に、輝ける誓い”を熱唱していた
その歌声はお世辞にも上手いとは言えなかった。
気持ちが先行しすぎていて声が不安定になっている
「戻って来たのね、助かったわ。」
カラオケの照明越しに照らされたアンビーの顔は氷河期の地球くらい色が白かった
「ビリー、今日は調子がいいみたい...」
今にも倒れそうなアンビーをニコが支えながらデンモクを渡して来た
「リョウジ、今のアンビーには
「──ニコの親分!そいつはひでぇぜ!?!」
リョウジは黙ってデンモクを受け取り、曲を入れた
─MAZE OF LIFE─♪川村ゆみ、平田志穂子
「やっぱうめぇな...」
リョウジは実はめちゃくちゃ歌が上手い
本人は過小評価しているが、実力で言えば新エリー都の歌姫、アストラとも並ぶレベルだろう
灰のように白くなって天に召されるアンビーを膝枕しながらニコも聴き惚れている。
──
|We forgot to ask where this magic's taking us《この魔法が俺たちを何処に導くか聞くのを忘れてたな》♪
|You really don't know why But it makes you wanna shout:《何故だかは分からないけど 叫びたくなるんだ》♪
その後も邪兎屋のみんなと大騒ぎして1日を過ごした。
こういう1日も悪く無い。
仲直りしたアンビーとビリーと共に車窓から見えるビルに沈んでいく夕陽を見ながらリョウジは思った
学校始まっちゃうぅぅうううう!!!!!!
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