「ピュラーァァァ!!パパは、パパは悲しいぞぉぉぉ」
「ピュラー!貴方、私1人に
「うぅ、『大人になったらパパと結婚する!』と言っていた可愛いピュラーが反抗期……?」
「ピュラー!教えなさい。今から何処に行くつもりなのですか!」
我が名はピュラー。
戦神「アレス」の娘にして、前世の記憶がある元日本人。
赤ん坊のときに父に拾われ、スクスク育った人間である。
少し過保護な娘思いに父と、ツッコミ担当のオカン気質な幼馴染、父の信者な叔父さん(王様)に囲まれて元気に育った健康優良児。
人類滅亡の危機が近づくこの世界で、無意味な戦争を仕掛けて資源を無駄にするというお馬鹿なところがある父だが、私にとって非常に大切な存在である。
そんな私は現在、相棒のカリオン(馬の姿)と共にラキア王国の門を潜り抜けた所である。
背後から父と幼馴染の声が聞こえてくるが、私に甘い叔父さんには旅の許可をもらったので、気にしない。
目指すは極東の地。美味しい和食が恋しくて、武者修行も兼ねて旅に出た。この世界で生き抜くためには戦う力が必須であり、せっかく異世界転生をしたのだから二度目の人生を思いっきり楽しみたい。緊急時には帰るつもりだが、私がいなくても意外と政治が上手な父と策略が得意な幼馴染がいるうちの国はなんとか生き抜いてくれるだろう。何故父たちに旅先を教えなかったのかと言うと、単に謎に行動力がある彼らも着いてきそうだったからである。私はカリオンと一人旅がしたいのだ。
戦える馬「カリオン」に任せれば、極東には数週間くらいで着くだろう。道中モンスターや賊の襲撃にあったが、私は戦神の娘。父から教わった武術とカリオンの協力により、彼らは容易に撃退できた。ちなみに、一番好きなのは弓術と体術である。
慣れなかった野営も数週間続ければ、様になってきた。極東に着いたら父たちに手紙を送ろうか。
極東に到着後、海を渡る際に船酔いしたので辛かった。ここまで来るのにお金は全て底をついたので、極東で何でも屋をして金を稼いだ。全ては美味しい和食を食べるためである。収入が安定したので、「父さん達へ、私は今極東にいます」と生存報告の手紙をラキア王国に送った。時間はかかるだろうが、あんなに高い国際郵便代を払ったのだから、無事手紙は届けられるだろう。
ある日、何でも屋をしていたら武神様とお会いした。武神様に是非とも武術を教えて貰いたくて弟子入りをした。師匠らが庇護している、私より年下な子供達と仲良くなり、時々手紙を父さんたちに送りつつ、数年が経った。
師匠に「もう教える事はない。後は己で高みへ昇れ。ピュラーならオラリオに行くと良いだろう」と言われた。今のオラリオは相当荒れているらしいが、「お前なら大丈夫だ」というお言葉を貰えた。
極東で、美味しい和食の作り方を米の神様に教えて頂いていたのだ。せっかくなので、和食の布教もかねて、念願の「和食屋」をオラリオに開くことにした。来週にはカリオンと一緒にオラリオに行くつもりだ。
オラリオに行く前に久しぶりにラキア王国に帰還した。
「父さんたち、只今〜」
「……マリウス、大変だ。俺はついに久しく愛娘を供給していないせいで、ピュラーの幻覚を見始めてしまったのかもしれん」
「大丈夫ですよ。私も同じくピュラーの幻覚を見ています」
「父さんたち、幻覚じゃないですよ。本物です」
「ふっ、そんなお粗末な幻覚でこの俺が騙されるとでも?ピュラーは俺のこと『パパ』って呼ぶんですぅぅ」
「いや、呼んでませんよ。逆に、「父さん、気持ち悪い」って言われてたでしょうが」
「父さんは相変わらずでマリウス君はツッコミの切れ味が増してるね。叔父様は元気にしていらっしゃる?」
「元気ですよ。生き生きとアレス信者をしてます」
「父さんのお馬鹿な所に気がついて、信者卒業して欲しかったですね。戦争を何度か仕掛けているくせに、今のうちの国は安定してるようで何よりです」
「父への思いが滲み出てるその言い方……もしやっ」
「そのアレス神への少し対応が雑な感じ……」
「「本当にピュラーなのか?」」
「そうですよ。アレス神の娘であり、マリウス君の幼馴染です。昔、一緒にクリスマスの時に城を抜け出しましたよね。それで、えっちなお姉さんに絡まれたマリウス君を助けて——」
「——や、やめなさい!確かにその事を知っているのはピュラーしかいないし、そのデリカシーの無さが正しく貴方です」
「父さんは!!不純異性交友なんて許さんぞ!!!」
「今、全くそんな話していないでしょうが!!」
「——うっ、父さん。そんなに強く抱きしめないで下さいよ」
「うぉぉぉ、ピュラァァァ!!ついに反抗期が終わったのだな!パパは嬉しいぞ!!」
「こ、鼓膜が。マリウス君助けて……」
「今まで碌に帰ってこなかったんですから、その反動です。受け入れてください」
「マリウス君!?」
「私も貴方の事を心配していたんです。流石に数年間手紙のやり取りしかないのはその、寂しいというか」
「マリウス君…」
「コホンッ、とりあえず、おかえりなさい。ピュラー」
「只今、マリウス君。心配かけてごめんね」
「パパだけ除け者にしないでぇ!おかえり、我が愛しの娘よぉぉ」
「只今、父さん。——ちょ、そんなに抱きしめるとく、苦し」
と数年ぶりに直接わいわい話せたのはとても嬉しかった。その後叔父さんにも挨拶をして、オラリオに行く前に暫くラキアに滞在することにした。ラキア王国は戦争大好き人間という名の父の信者が多いと見せかけて、実は平和主義者が多いのだ。だから、黒竜討伐が失敗した時からこの世界が更に荒れていても、生活は厳しくない。殆ど賢すぎる幼馴染と苦労人な貴族のお陰ではあるが、外と比べて凄く治安が良く平和である。
「おお!カリオンよ。お前も立派な馬になったな!俺の代わりにピュラーの側にいてくれてありがとな!」
「ヒヒーン」
「ふむ、そんなに娘はお転婆に育ったのか」
「ヒヒーン?」
「俺もそう思うぞ。ピュラーは世界一可愛いんだからな!」
「ブルル」
「カリオン、普通の馬と比べて流石に筋肉つき過ぎでは?」
「アレぐらいが健康だって医者に言われたから多分大丈夫」
「それなら良かったです。そう言えば、貴方とカリオンは昔からよく一緒に居ましたよね」
「父さんが私を拾ったときに小馬のカリオンが近くで私の事守ってたらしいよ」
「あの馬、やはり普通の馬ではないのでは?」
「そりゃあ、精霊だし」
「せ、精霊!?はぁ!?」
「ほら、私の近くに黒猫が居た事あったでしょ?アレもカリオンだよ」
「えっ、あの猫もカリオンだったのですか!?」
「うん。姿を変えれるらしいの。一番落ち着く姿は馬だけど、基本的外出時以外は猫の姿だよ」
「……カリオンって凄いですね」
と考える事を放棄したような幼馴染。私は知ってるよ、マリウス君が猫姿のカリオンを吸っていたの。
ラキア王国に戻ってきて、半年が経った。父さんたちに詳しく私の夢を説明した。説得には時間がかかったが、オラリオ内部の情報をカリオンと通じて渡すという仕事をすることで、許可は出た。
「って事で、オラリオに行ってくるね」
「やっぱり、ここで店を開けばいいじゃないですか。私にまたこの馬鹿を任せるのですか?」
「いざとなったら帰ってくるし。マリウス君なら出来るでしょ」
「私もオラリオで冒険者したいです」
「王子なんだから仕方ないでしょ、貴方が居なくなったらこの国大変なことになるよ?」
「わかってますよ。とりあえず、オラリオの情報はしっかり伝えてくださいね」
「わかった。カリオンに手紙を持たせるから、宜しくね」
「はい、ではお気をつけて」
「うん、いってきます!健康に気をつけてね、マリウス君」
「勿論です」
「後、父さんの事宜しくね。困った事があったら手紙で連絡してね」
「はいはい。早くこの馬鹿が縄を引きちぎらないうちに行きなさい」
「はーい。じゃあ、父さんもバイバイ!時々帰ってくるから安心してね。マリウス君をあんまり困らせないように」
「んー、ん!んー!!」
少々父さんが暴走したので、口も塞いで椅子に括り付けた。「まあ、(数年で更にゴリラ力が増した)貴方なら渋とく(気に入らない人を殴って)生き残れるでしょうね」とも幼馴染に言われた。幼馴染に言われた通り、オラリオで密偵の役はするので安心して欲しい。この世界で生き残るために情報はとても大事だからね。
数年で更に強くなったカリオンにかかれば、オラリオなんて一瞬だ。
「アレが迷宮都市オラリオか。聞いていた通り、凄く治安が悪そうだね」
「ニャーン」
「んー、コレ。私の店出せなくないか?」
「ニャン」
「何とかなるって?そうだね、早くオラリオに入国しないと」