念能力者が行く多重クロス世界 作:匿名のななし
「どこかに隠れてる犯人! 聞いてるんでしょ!? あんた、私の慰安旅行を台無しにして、タダで済むと思わないでよね!!」
大広間に響き渡った二乃の叫び声は、窓の外で吹き荒れる猛吹雪の音すらも一瞬だけかき消した。
普段から気の強い彼女だが、今の怒り具合はちょっと尋常じゃない。顔を真っ赤にして、肩を震わせ、両手は強く握りこぶしを作っている。
それもそのはずだ。
うちの優秀なアシスタントである二乃は、日頃の事務所での面倒な仕事の疲れを癒やすために、この旅行を何ヶ月も前から楽しみにしてくれていたのだ。高いお金を払って北陸の高級温泉宿を予約し、わざわざ表参道で買ったとびきり可愛いコートまで着込んできたというのに。
待っていたのは、極上のカニのフルコースではなく、首を巨大なハサミでえぐられたような、ひどく気味の悪い死体だったのだから。
「おい、二乃。落ち着けって」
俺は慌てて彼女の腕を掴み、グッと手元に引き寄せた。
勢い余って俺の胸にドンとぶつかった彼女から、甘いシャンプーの香りがふわりと鼻をかすめる。二乃は少しだけ肩をビクッとさせたが、振り払うことはせず、そのまま俺の腕の中で悔しそうに唇を噛んでいた。
「あんたは悔しくないの!? せっかくあんなに美味しそうなカニが目の前に並んでるのに、血の匂いが充満してて全然食べられないじゃない! 私の胃袋はもう完全にカニを受け入れる準備ができてたのよ!」
「悔しいよ。俺だって泣きたいくらい悔しい。でも相手が悪い。ほら、見てみろ」
俺が顎でしゃくった先には、死体の前でしゃがみ込んでいる一人の高校生がいた。
後ろで結んだ髪。鋭い目つき。
彼は二乃の怒声なんてまったく耳に入っていないかのように、血まみれの畳を真剣な顔で見つめている。
「はじめちゃん……」
その後ろでは、幼馴染らしき女の子が不安そうに彼を見守っていた。
こういう「孤立した雪山の宿」には、必ずと言っていいほど彼らのような「探偵」が居合わせる。
彼らがいる場所では、人が死ぬ。それも、ただ死ぬんじゃない。わざわざ地元の不気味な言い伝えになぞらえたり、誰も部屋に出入りできないような複雑な仕掛けを作ったりして、やたらと手間暇をかけて人が死ぬのだ。
俺はそういう厄介事を避けて生きていきたいのに、どうして休日の旅行先でこんな目にあうのか。
「この傷……やはりただの刃物じゃない。巨大な力で、両側から挟み込むように切断されている……」
はじめと呼ばれた高校生探偵は、顎に手を当てながらブツブツとつぶやいている。
「それに、この部屋の窓はすべて内側から鍵がかかっていた。雪が積もった外庭には、犯人の足跡すら残っていない。これは……完全に閉ざされた部屋の中で起きた、見立て殺人だ」
探偵の言葉に、周囲の宿泊客たちがざわめき出した。
「閉じ込められた部屋の中で……じゃあ、犯人はどうやって逃げたんだ!」
「まさか、本当に蟹神様の祟りじゃ……」
「そんな馬鹿な! 人間の仕業に決まってるだろ!」
客たちがパニックになりかける中、高校生探偵は立ち上がり、キリッとした顔で皆を振り返った。
「みんな、落ち着いてくれ! 犯人は間違いなくこの宿の中にいる。俺が必ず、この謎を解き明かしてみせる!」
おお、かっこいい。
いかにもミステリーの主人公という感じだ。
俺は心の中で適当に拍手を送った。よし、ここは彼にすべてを任せよう。俺たち揉め事処理屋の出番なんてどこにもない。大人しく部屋に戻って、持ってきたお菓子でもかじりながら吹雪が収まるのを待てばいいんだ。
そう思って二乃の背中を押して部屋に帰ろうとした、まさにその時だった。
「蟹神の祟りだと? ばかばかしいにもほどがある! この世に、科学で証明できない超常現象など存在しない!」
男はズカズカと土足で上がり込むような勢いで、大広間の中心へと歩み出てきた。
「どんな不可解な事件も、通信教育で鍛え上げた私の空手と、この天才物理学者・上田次郎の頭脳をもってすれば、すべて論理的に解明してみせる! なぜベストを尽くさないのか!」
そして彼は、バサァッ! と見えないマントを翻すような大げさなポーズをとった。
さらに、カメラ目線でも決めるように、ビシッと空を指さす。
「どんと来い、超常現象!」
……なんだこいつ。
高校生探偵が作り上げていたシリアスで張り詰めた空気が、一瞬にして木端微塵に砕け散った。探偵の少年も、目を丸くしてポカーンと上田と名乗った男を見ている。
「ねえ八雲、あのおじさん、誰?」
二乃が俺の袖を引きながら、ドン引きしたような声で聞いてきた。
「さあ……関わらないほうがいい部類の人間だということだけは確かだ」
上田は周囲の冷ややかな視線などまったく気にする様子もなく、大広間の奥にある床の間のほうへと歩いていった。
「ふん、こんな古ぼけた掛け軸など、ただの子供だましの小道具にすぎん!」
上田は、床の間に飾られていた『蟹神』と書かれた不気味な掛け軸を指さした。
「犯人はこの裏に隠し通路でも作ったのだろう。どれ、私がこの手で暴いてやる!」
上田が掛け軸の端を勢いよく引っ張った。
その瞬間。
バキッ! という嫌な音とともに、掛け軸を吊るしていた太い木の棒が外れ、上田の頭に向かって真っ直ぐに落ちてきた。
ゴツンッ!!
「ひえっ!」
ものすごく痛そうな音が響き、上田はカエルが潰れたような変な声を上げて床にうずくまった。
「ちょっと! 大丈夫ですか!」
探偵の幼馴染の女の子が慌てて駆け寄る。しかし上田は、額から少し血を流しながらも、プルプルと震える足で無理やり立ち上がった。
「ふ、ふふふ……なんともない。今のはただの静電気だ。私の鍛え上げられた肉体の前では、この程度の衝撃など、そよ風のようなものだ!」
強がっているが、足元が完全にフラフラしている。涙目になっているのを俺は見逃さなかった。なんなんだこいつは。完全にギャグ要員じゃないか。
俺が呆れてため息をついていると、今度は上田の足元から、黒髪のボサボサ頭をした女が這うようにして姿を現した。
なんだあの女、いつの間に広間に入ってきてたんだ?
「エヘヘヘ……」
女はニチャアと笑いながら、周囲の騒ぎなどまったく気にする様子もなく、テーブルの上に並べられたままになっている豪華なカニの皿へと一直線に近づいていく。
「見ろ。みんな死体や次郎の真似事に夢中で、この極上のカニには誰も手をつけていないぞ。もったいない、実にもったいないことだ」
女は自分の着ている変な柄のセーターの袖をまくり上げ、大きな鞄をガサゴソと探り始めた。
「これは私が、責任を持って保護してやらねばなるまい」
そして女は、近くに立っていた仲居さんの前にサッと手をかざした。
「見なさい! あそこにUFOが飛んでいるぞ!」
「えっ!?」
仲居さんが驚いて窓のほうを振り向いた、そのほんの一瞬の隙を突いて。
女は目にも止まらぬ早業で、テーブルの上にあった一番大きなカニの甲羅と、太い足を何本も掴み取り、自分の大きな鞄の中へと滑り込ませた。
その動きは、まるで手品師のように無駄がなく、そしてひどく卑小だった。
「よし、これで三日は食いつなげるぞ……エヘヘヘ……」
女は鞄を大事そうに抱え込み、満足げに笑っている。
「ちょっと待ちなさいよ!!!!」
またしても、二乃の怒声が広間に響き渡った。
二乃は鬼のような形相で、女に向かってズカズカと歩み寄っていく。
「あんた、今何したか見えてたわよ! それ、私たちが食べるはずだった一番美味しそうなカニじゃない! なに自分のカバンにこっそり隠してんのよ、この泥棒猫!」
女はビクッと肩を揺らし、二乃のほうを振り返った。
「な、なんのことだ。私は何も知らない。これは私が長野の母から送ってもらった、ただの……赤い書道用の文鎮だ!」
「ふざけたこと言ってんじゃないわよ! カバンからカニの足が思いっきり飛び出してるじゃないの!」
「おい山田! お前、こんなところで何をやっているんだ! 今は私の天才的な頭脳を披露する見せ場だろうが!」
頭を押さえながらフラフラと戻ってきた上田が、女──山田を大声で怒鳴りつけた。しかし山田はまったく悪びれる様子もなく、逆に上田に向かってビシッと指を突きつけた。
「うるさい! お前が頭を打って間抜けな声を出している隙に、私がこの場の食料を確保しておいてやったのだ! お前のやったことはすべて、スリッとお見通しだ!」
山田はふと、目の前で怒り狂う二乃の姿を下から上までジロジロと舐め回すように見た。そして、二乃の浴衣越しでもわかる豊満な胸元に視線をピタリと止めると、急にギリッと奥歯を噛み締めた。
「なんだお前は! 宿の食料を気にする前に、その不謹慎にでかすぎる脂肪の塊をどうにかしろ! 脳に栄養がいっていない証拠だな。女は貧乳こそが至高なのだ!」
完全に理不尽な言いがかりをつけてくる山田に対し、二乃は鼻でフンと笑い飛ばした。
「はあ? 貧相な体の泥棒猫に言われたくないわね。ひがむならもっとマシな嘘つきなさいよ」
二乃はさらに堂々とその豊かな胸を張り、余裕の笑みを浮かべて山田を見下ろした。
「くっ……! こいつ、生意気な……!」
死体。深刻な顔で床の血痕を調べる高校生探偵。頭から血を流しながら威張っている自称天才学者。他人の夕食を盗み食いしようとして、二乃のプロポーションに嫉妬してキレている手品師の女。
本格的なミステリーの空気と、めちゃくちゃな不条理コメディの空気が、ひとつの部屋の中で見事に衝突して大事故を起こしている。
俺はもう、頭が痛くなってきた。頼むから、俺を暖かい部屋に帰してくれ。布団をかぶって寝たい。
「二乃、もういいから。そのカニはあきらめろ。東京に帰ったら、俺が一番高くて美味いカニを奢ってやるからさ」
俺は二乃の肩を抱き寄せ、山田から引き離そうとした。
「嫌よ! 私は今ここで、この北陸の新鮮なカニを食べたかったの!」
「あー、すいません探偵さん。俺たち、もう部屋に戻ってもいいかな? 死体を見たらなんだか気分が悪くなってきちゃって」
俺が高校生探偵のほうに向かって声をかけると、彼は床から顔を上げ、少し困ったような顔をした。
「あ、はい。今はまだ警察も呼べない状況ですし、皆さんにずっとここにいてもらうわけにもいきません。ただ、犯人がこの中にいる可能性が高いので、なるべく一人での行動は避けて、部屋の鍵はしっかりとかけておいてください」
真面目だ。こいつは本当に、芯からの探偵なんだな。
俺は少しだけ感心しながら、「わかった、気をつけるよ」と返事をした。
俺はまだ山田を睨みつけている二乃の腕を引っ張り、大広間から出ようとした。
その時だった。
「きゃあああああああああああああああああっ!!!!」
またしても、悲鳴だ。
今度は、大広間ではなく、建物の奥のほうにある別館へと続く廊下から聞こえてきた。一度目の悲鳴よりも、さらに切羽詰まった、恐怖に引きつった声。
「今度はなんだ!?」
高校生探偵が弾かれたように立ち上がり、悲鳴のした方向へと全速力で駆け出していく。幼馴染の女の子も「はじめちゃん、待って!」とその後を追う。
「どんと来い! どんな怪現象も私が……ひえっ、待ってくれ山田、私を置いていくな!」
上田と山田の二人も、ドタバタと騒がしい足音を立てて廊下へ飛び出していった。
大広間に残された客たちは、恐怖で顔を引きつらせながら、お互いに身を寄せ合って震えている。
「八雲……また誰か殺されたの……?」
二乃の冷え切った指先が、俺の服の裾をギュッと強く握りしめている。その小さな震えが、分厚い布地越しに俺の肌まで伝わってきた。
「……多分な。嫌な予感がする。二乃、絶対に俺から離れるなよ」
「うん……」
俺たちも、ゆっくりとした足取りで、探偵たちが向かった別館の廊下へと進んでいった。
廊下の空気は、さっきよりもずっと冷たくなっている気がした。窓の外では、吹雪がさらに勢いを増し、ガラスを叩き割らんばかりの音を立てている。
角を曲がると、別館の突き当たりにある部屋の前に、探偵や上田たちが集まっていた。
部屋のふすまは大きく開け放たれている。俺は二乃を自分の背中側に隠すようにして、部屋の中を覗き込んだ。
そこには、第二の犠牲者がいた。
ロビーで愛想笑いを浮かべながら、亡くなったオジサンにペコペコと頭を下げていた、あの神経質そうな若い甥っ子だ。
彼は部屋の中央で、奇妙な姿勢で仰向けに倒れていた。
首には、細くて赤いロープのようなものが何重にも巻き付けられ、ギリギリと肉に食い込んでいる。
そして、彼の両手と両足もまた、関節の方向とは逆に、ありえない角度でポキリとへし折られ、カニの足のように放射状に広げられていたのだ。
「また見立て殺人か……!」
探偵の少年が、ギリッと歯を食いしばりながら言った。
「それに、この部屋も中から鍵がかかっていた。誰も出入りできない部屋での殺人が、連続して起きたんだ」
周囲に集まってきた客たちから、ひときわ大きな悲鳴が上がった。
「もう嫌だ! 早くここから出せ!」
「殺される! 次は俺たちがカニみたいに手足をバラバラにされるんだ!」
「誰か、助けてくれえっ!」
パニックに陥った客たちが、泣き叫び、廊下を逃げ惑おうとする。
「みなさん、落ち着いて! 部屋から出ないほうが安全です!」
探偵が必死に声を張り上げるが、恐怖に支配された大人たちの耳には届かない。
このままでは怪我人が出る。そう判断した俺が、極薄のオーラを放って強引に場を鎮圧しようかと息を吸い込んだ、まさにその時だった。
ドンッ!!
探偵の少年が、廊下の壁を思い切り殴りつけた。
突然の大きな音に、逃げ惑っていた客たちがビクッと肩を跳ねさせて動きを止める。
その一瞬の静寂を縫うように、少年の、腹の底から絞り出したようなよく通る声が空気をビシッと切り裂いた。
「みんな、聞いてくれ!!」
そのただならぬ気迫に押され、客たちの視線が一斉に彼へと集まる。
「犯人は間違いなく、この宿の中にいる人間の誰かだ! 外からやってきたバケモノでも、伝説の祟りなんかじゃない! 俺にはもう、犯人が誰なのか、そしてどうやってこの連続殺人を引き起こしたのか、そのすべてのトリックがわかってるんだ!」
「えっ……本当なの、はじめちゃん?」
幼馴染の女の子が、信じられないというような顔で彼を見つめた。
「ああ。謎はすべて解けた。だからみんな、もう一度あの大広間に戻ってくれ。あそこに、犯人が残した『証拠』がある。そこで犯人の正体を暴いてみせる!」
その力強い宣言に、怯えていた客たちがざわざわと顔を見合わせる。
俺は小さくため息をつき、隣で俺の袖をぎゅっと掴んでいる二乃の顔を見た。
「行くぞ、二乃。探偵さんが謎解きショーを始めるらしい」
「ちょっと、なんでまたあんな血の匂いがする部屋に戻らなきゃいけないのよ! 私はもう疲れたわ、早くお部屋の暖かい布団に潜り込みたいのに……」
「まあそう言うなよ。あの探偵の言う通りなら、これで事件は終わる。そしたら、ゆっくり休めるさ」
俺たちは、ぞろぞろと歩き出した客たちの後ろについて、再び大広間へと向かった。
大広間の真ん中には、まだ最初の被害者の男が倒れていた場所がある。遺体は宿の従業員たちが持ってきた白い布で隠されていたが、畳に染み込んだ赤黒いシミと、鼻をつく鉄のような匂いはどうしようもない。
そして、そのすぐ横のテーブルには、俺たちが食べるはずだった極上のカニのフルコースが、すっかり冷え切った状態で放置されている。
「あーあ……せっかくの焼きガニが、完全に冷たくなっちゃってるじゃない。私のカニ味噌も、もうカチカチよ……」
二乃が恨めしそうにテーブルの上を睨みつけている。彼女の怒りの矛先は、もはや殺人鬼に対する恐怖よりも、自分の慰安旅行と美味しい夕食を台無しにされたことへの不満のほうに向かっているらしい。うちのアシスタントは本当にたくましい。
「我慢しろって。あとで宿の人に言って、温め直してもらうか、新しいのを出してもらおうぜ」
「当たり前よ。慰謝料として、カニの足を三倍は追加してもらわないと割に合わないわ」
そんなふうに俺たちが小声で文句を言い合っていると、大広間の中心に、探偵の少年が歩み出た。全員の視線が彼に集まる。
少年は、まるでステージの上に立つ役者のように、自信に満ちた顔で客たちをぐるりと見渡した。
「みんな、今夜この宿で起きた二つの殺人事件……最初の被害者は、大きな会社の社長。そして二番目の被害者は、その甥っ子さんだ。犯人は、地元に伝わるカニの神様の伝説を利用して、まるでバケモノが首をハサミで切り裂いたかのように見せかけた。しかし、これはまぎれもなく、人間が考え出した巧妙なトリックだったんだ!」
少年がビシッと指を突き出す。
おお、かっこいい。俺は心の奥底で、ポテトチップスでも食べながら映画を見ているような気分になっていた。こういう探偵の謎解きって、横で見ている分にはけっこう面白いんだよな。自分が巻き込まれるのは絶対に嫌だけど。
「そして、俺はもう、そのトリックの全貌も、犯人の正体もわかってる。ジッチャンの名にかけて!」
キタ──────────ーッ!!
俺は心の中で、両手を突き上げてガッツポーズをした。
すげえ! 本物だ! 本物の「ジッチャンの名にかけて」だ!
声のトーン、指を差す角度、間の取り方、どれをとっても完璧すぎる。まるで背景に集中線が見えるかのような、ものすごい迫力だ。
俺が一人で勝手に感動に打ち震えていると、隣から冷たい視線が突き刺さってきた。
「ちょっと。あんた、なんで一人でニヤニヤしてるのよ。人が死んで、犯人がこの中にいるって言ってるのよ。少しは緊張感を持ちなさいよ」
二乃が俺の脇腹をツンツンと小突きながら、呆れたような小声で言った。
「いや、違うんだよ二乃。これはもう、ある種の伝統芸能みたいなもんなんだ。あの決め台詞を聞けただけで、今回の旅行の元は半分くらい取れたようなもんだぞ」
「わけがわからないわ。本当にあんたの頭の中はどうなってるのよ……」
二乃が肩をすくめている間にも、探偵の少年……金田一は、いよいよ事件の謎解き、つまりトリックの解説を始めた。