追放されても、リーダーぶん殴ってスッキリするぜえええ!!!! 作:匿名の筆者
冒険者ギルドに登録されている無数のパーティ。その中でも、ついさっきまで俺が所属していた【最強フルパワー】という名前は、控えめに言ってもかなり攻めのネーミングだったと思う。
パーティ名というものは、ギルドの規定上、一度登録すると基本的には改変することができない。
最初に決めた看板を、引退するか解散するまでずっと背負って活動することになるのだ。
だからこそ、大抵の冒険者は自分たちの得意分野や特徴、あるいは高尚な理念を名前に盛り込むし、慎重になるべきだ。
俺があのちょっぴり痛い名前のパーティに入ったのも、
自己活性持ちの前衛を急募!
というピンポイントな募集要項があって、とりあえず潜り込みやすそうだったからに過ぎない。
決してフルパワーという強そうな雰囲気とか響きに惹かれたわけじゃないんだ……
先ほど、動けない元リーダーの懐からきっちり手切れ金を回収した俺たちは、そのままギルドが所有している酒場へとさっさと移動して飲み食いしていた。
品揃えが良いし、割引券がある。こんなの通わない方がおかしいまであるような名店で、人が予想通りごった返している。
餃子の皮だけ注文して、ハムを乗せて食ってる幸せそうなヤツがさっきから目に入る。
が、とりあえず無視した。
「ということでだ」
俺はテーブルにドンとジョッキを置き、向かいに座る重戦士──これからは元・仲間ではなく、新たな相棒となる男──に向けて居住まいを正した。
「改めて、俺たちで新しいパーティを組もう。とりあえず俺をリーダーにして、お前には初期メンバーとして入ってほしい。どうか頼む!」
重戦士は、ジョッキに口をつける手を止め、呆れたように目を瞬かせた。
手に入れた金は貯金に回し、あとは自由な金。俺が注文したのは溶岩竜の甘辛炒め。うまいのだが、コイツは辛いのは好きじゃない。偏食屋の目の前のコイツが注文したのは……お酢漬けマンドラゴラサラダに、コーンスープ、クラーケンの輪切りレモン。
とにかくスープとか深皿系の料理が多い。
「なんだ、さっきまで悪党みたいな顔をしていたのに。そんな急に畏まってどうした」
「ケジメだよ、ケジメ。これから命を預け合うんだからな、キッチリしなきゃダメだろ」
「ふむ。ま、……もちろんOKだ。お前のような自己回復持ちで、おまけに厄介な毒を使える奴なんてそうそういないし、断る理由もないな。私としてはパーティ結成に大賛成だ」
俺がジョッキを掲げ、追加注文したところ、彼もまた空になったジョッキを同時に掲げ、俺の提案にあっさりと頷いてくれた。
「よし、交渉成立だな。となると、次はパーティの名前だが……何がいいと思う?」
俺は腕を組み、天井を見上げて思案した。
「せっかくの再出発だし、とりあえず王道要素を加えてカッコよくしたいよな。そうだな……【勇気の極み】とかどうだ? いかにも冒険者っぽくて良くないか?」
「勇気か。響きは前向きでいいね……ん?」
重戦士は一度頷いたものの、すぐに顎に手を当てて渋い顔をした。
「だが、どうにも私たちには似合わん気がするぞ。ぶっちゃけ毒漬けにしながら行動不能になった敵を斬りつけ、タコ殴りにし、HPを回復しながら進むヤツらということになる。客観的視点で見た時の絵面がひどすぎないか?」
「おい、言い方」
「そこはこうしよう。あえて、【毒蛇と鎧】にしないか?」
「毒蛇と鎧?」
「ああ。毒使いは、敵に回すと軒並み恐ろしくて強いからな。麻痺だけじゃない。そもそもスキルによる毒は一瞬で行動不能にさせられるし、ただ毒を塗るだけじゃ再現出来ない。そういうことも厄介極まりないし、毒の種類によっては即死もありうる力だ」
重戦士は真剣な眼差しで、俺のスキルを的確に評価してくれた。ふーむ、たしかに絵面が悪いな。これでは勇気は似合わない気がする。
「お前を象徴する『毒蛇』と、重戦士である私を象徴する『鎧』。悪くない組み合わせだと思うが、どうかな」
なるほど。確かに【最強フルパワー】や【勇気の極み】といった抽象的な名前より、よほど実態に即していて、なんか……それっぽい響きがある。
「毒蛇で君の要素、そして鎧で私の要素だ。まあ、今後メンバーが増えた時の『名前の拡張性』についてはさておき、仮でこの看板を掲げようじゃないか!どうだ、名案だろう!」
「……いいな、それ。採用だ!」
かくして、俺たち二人の新しいパーティ【毒蛇と鎧】が結成された。
作戦はこうだ。二人で突撃し、まずは敵を麻痺で動けなくさせて捕まえる。そして回復しながら進んでいき、奥に進んでから魔物を倒す。
うん、完璧じゃないか!深層に進むほど魔力がより多く取り込めるし、この完璧な作戦に従えば、いずれスキルだけじゃなくて魔法が使えるようになるんじゃないか?
─重戦士の習得スキル─
【ハングリーライフ】
スタミナを使用して能動的にHPの即時回復が可能。
食事を行うことでスタミナ上限の二倍まで余剰の回復が可能。
攻撃時のスタミナ消費を能動的に軽減する。
防御時のスタミナ消費を能動的に軽減する。
が、魔素の吸収効率が4分の1になり、4分の3をスタミナ上限の増設に当てる。
魔素の転化によって増設されたスタミナ上限はベースとして計算される性質を持つ。
【自己活性】攻撃を与えている間、自分のHPが定量的に一回回復し、HP上限の二倍まで余剰の自己回復をすることが可能。が、常に防御力が低下する。