村のチンチクリンがドメロイケ女になってて俺への距離が近い話する? 作:負け組カチ組
アルゼンチン・バックブリーカーってプロレス技を知っているだろうか?
ほら、花京院に化けたラバーソールがひったくりに掛けてたヤツ。
掛け方は意外と簡単に見える。
まず自分の肩の上に相手を仰向けに乗せて、顎と太ももを掴んで、自分の首を支点にして相手の背中を反らせるだけ。
これだけで背骨を圧し折れるってんだから、中々凶悪な技だ。
しかしこの技、相手の身体をそのまま持ち上げている関係上、掛ける側にもかなり負担がかかる……特に腰。腕力より体幹が要求される技ってこった。
だから当然、子供なんかが仕掛けられる技じゃない。
それも相手が自分より五歳年上の男だってんなら、なおのことだ。
……そう、だから────。
「────い゛だだだだだだ!?!?!?!?!?」
「ぐっ……お、おもたい……!」
「だよな重たいよな!? そこで最高の提案だ今すぐ俺を下ろせ楽になれるぞ!?」
「耳を貸しちゃ駄目だエンジェル! 今日こそ魔王『ロクデナシ』を打倒する……昨日したあの誓いを忘れたのか!」
「ッ、まさか! ……今日がお前の最後だ!! 覚悟しろーっ!!」
「「うおりゃあああああ!!」」
「おめーらホント俺のことナメちゃってくれてるよなあい゛だだだだだだ折れる折れる折れるおれるぅ!?!?!?!?!?」
ありえないはずだ。
俺よりも五歳も下のチンチクリンの女の子二人が徒党を組んだ程度で、俺にバックブリれるわけがないんだ。
リアルじゃねぇ。
まったくもってリアルじゃねぇよ。これもうフィクションだろくそぅ。
ちっくしょうそれにしたって────、
────ソラリスの子供ってのは、こんなにたくましいモンなのかぁ!?!?
さて、こんな冴えない俺のことを紹介させちゃあくれないか?
ヴィトン。それが俺の名前で────今世の名前でもある。
前世の名前は転生した時に忘れた。
そう、何を隠そう俺は転生者。
不幸にも黒塗りの高級車に追突されてしまった俺は、すべての責任を負う……なんてことなくあっけなくぽっくり逝ってしまい、目が覚めたら赤ん坊として、ここ『ファビアヌム村』に産声を上げていたってわけだ。
そりゃもうパニックだ。
泣いて泣いて泣きまくったね。赤ん坊なのを良いことに。
しかし泣いていても始まらないから、さっさと泣き止んで大人しく成長することにした。
「腰……俺の腰……てか背骨……」
「その……ごめんヴィトン。やりすぎた」
んでもってすくすく成長した結果が、今こうして無様に地面と熱烈なキスを交わすナイスガイってわけ。
これでもし俺を心配そうに見てくるレディーが、こんなチンチクリンじゃなくてボンキュッボンナイスバデーなドエロ姉ちゃんなら完璧だったんだけど。
まあ、現実ってのはいつだって思い通りにいかないものだ。
今になってやり過ぎたかと気まずそうな顔のチンチクリン二人を前に、俺はなけなしの年上プライドを振り絞り、痛む背骨と腰に鞭打って立ち上がる。
あごめんやっぱ痛いわ膝立ちで許して。
「うおお゛いってぇ゛……聞きてぇんだけど、俺なんかおめーらにした? したなら五体投地で謝罪したいんだけど」
「え、いや別に何も……っていうか五体投地とか大人が簡単にしたら駄目なんだぞ」
「理由ねぇのかよ。ってかオメーみたいなチンチクリンに説教されるほど落ちぶれてねぇわ。あと俺まだ大人じゃねえし。高校生だぜ高校生。16は高校生だろうが」
「コーコーセー? ……また例のヴィトン語録? わからないからやめてほしい」
「そりゃすまなかったですよっと……」
やっぱり膝立ちもキツかったので草原に背中を預ける。
そんな俺の腹の上で、このチンチクリンどもはあろうことかお手製のどんぐり人形でごっこ遊びを始めやがった。
もうすでに俺への負い目はどこかへ吹っ飛んでいったらしい。
切り替えの早さだけは見習いたいところだ。
ちら、と青空からチンチクリン少女たちの方へ目を向けてみる。
『どんぐりグラディエーター』と名付けられた人形で遊ぶ彼女たちは、何とも年相応で可愛らしいものだ。ミリ単位だが庇護欲に駆られる。
どんな時も自分優先な俺に庇護欲を抱かせるとは、真面目に侮れない奴らだ。
(……コイツらマジでなんで俺に懐いてんのかなあ)
このチンチクリンどもとの関わりはなんだかんだ長い。
そのせいで人の名前を覚えるのがニガテな俺も、すっかりこの二人の名前は暗記しちまった。
オレンジ髪のツインテール少女の名前はオーガスタ。
パツキンのメッシュが混じった銀髪少女はエンジェル。
二人とも美少女の部類には入る程度には見目も整ってる……ムカつくから言わないが。
なんかいつの間にか仲良くなってたのだが、マジできっかけがわからない。
俺は子供が好きなわけではないので、ここまで懐かれるはずがないのだが。
(原作知識でいつのまにか救済してたか? ……ないな。ここ知らねー土地だもん)
俺は転生者だ。しかも前世で『鳴潮』ってゲームをやってて、ビックリ仰天転生したらそこは鳴潮世界『ソラリス』でしたーっていうタイプの転生者だ。
ここが”そう”って気が付いた当時こそ「原作知識活かしてチーレム生活間違いナシだぜヤッホーイ」なんて調子乗ってたモンだが、今に至っちゃとっくにそんな熱は冷めきっている。
何故って?
そりゃだって……原作知識無双しようにも、ここ今州じゃねえし。
同じくブラックショアでもねぇし。
そう、何を隠そう俺は鳴潮のベテランでもなんでもなく、初めて間もない────具体的には第一章をちょうど終わらせたあたりでしかないルーキーだった。
加えてここはファビアヌム……『セブン・ヒルズ』ってところにある、辺境の村なんだとか。
知らねーよどこだそれ。
こんな感じで、俺の原作知識無双でウハウハチートハーレム計画は無惨に幕を閉じたってワケ。
「あーあー……どっかに俺のこと大好きでキレーなねーちゃんいねぇかな~……」
「「……」」
具体的にはまぁ……長離さんとか?
長離さんとか、長離さんとか??
もし会えたら俺の全てをかけて口説くって決めてるんだ。
まあ十中八九失敗するだろうけど……ほら悟空も言ってただろ?「やってみなきゃわかんねぇ!」って。
「……ヴィトン」
「そうそうやってみなきゃわか────って、ん? なんだよ」
「ヴィトンって、今好きな人いるの?」
「な────」
こ、このチンチクリンども────!!
俺のウィークポイントに捕鯨銛突き立ててきやがった……!?
その話したら戦争だぞ戦争!!?
「や、いや? いないとも限らねえだろほら俺ナイスガイだし」
「いるの? いないの?」
「や~……あの~……」
「……いないのか?」
ぬわあああああコイツらぁ!?
人の心とかないんか!?
エンジェルはなんでそんな氷点下の冷たい目で俺を見る!?
仕方ねぇだろ男は彼女できにくいモンなの!!!!
オーガスタはオーガスタでその生暖かい視線をヤメロォ!!
憐れんでんのか!?憐れんでんだな!?
ふざけんじゃねぇこんなチンチクリンに俺の恋愛事情なんぞ心配される謂われはねぇぞ!!!!
「────い、今はいない!!」
「! そうか────」
「だが! 将来できる予定だ!!!!」
「「!?!?!?」」
何驚いてんだチンチクリンども!
当たり前だろ俺だぞ!?(根拠ゼロ)
将来ド級の美人を口説き落とすのが俺の人生設計なんだよ文句あっか!?!?
……いやマジで驚きすぎじゃない?
そんな意外だった?その「ホモだと思ってた……!」みたいな顔ヤメロよ傷つくんだけど普通に……。
「……しょ、将来……私に……」
「……ふふ、養える……!」
……?
なんかボソボソ言ってるようだが、どうせ俺への陰口なので無視しておく。
さて……それはそれとして、チンチクリンどもに公言した以上、俺の道は決まったも同然だな。
待ってろよ可愛くて美人でボンキュッボンな愛しのレディ!!!!
俺が迎えに行くからなァァ!!!!
「くぉらァヴィトン!! いつまでサボってんだ仕事しろ仕事ォ!!!!」
────ま、まずはこのブラック極まりない労働環境から抜け出してやるぜ!!!!
ヴィトン:うおおお待ってろよ将来のお嫁さん!!!!
エンジェルちゃん(11):……♡
オーガスタちゃん(11):私が養う……♡
Q.『うわごとの町』って知ってますか?
A.なにそれおいしいの?
はい。