村のチンチクリンがドメロイケ女になってて俺への距離が近い話する? 作:負け組カチ組
「────あら、また二人一緒なのね?」
「む、ユーノか。……その、先日は迷惑をかけたな」
「そうだな……私からも謝罪させてくれ。それと、世話になった」
「あー……まあその、アレよね。二人とも、お酒はほどほどにね?」
「うむ……反省している」
「……肝に銘じよう」
「ところで聞きたいんだけど、なんであんなになるまで飲んでたの? ……ふふ、まさか恋バナしてたとか??」
「「ッッ!?」」
「……え、何その反応。まさかドンピシャ!? ウッソでしょちょっとなんで私も呼んでくれないのよ私も総督閣下とデビルハンターの恋バナ聞きたかったんだけどぉぉぉぉ!?!?」
「やめよ、やめよユーノ!! こんな往来でその話題を出すでない!!!!」
「本当に一回黙ってくれ!! どうしてもって言うなら後でこっそり教えてやるから!! な!?!?」
────ハハハ! あの男の話題となると貴様も形無しだな?
「黙れキメラ!!」
「「「「イッキ! イッキ! イッキ!」」」」
「────っ……ハァッ! っ、がぁ~っ喉にキクぅ~……ッ!」
「「「「うぇーい!!!!」」」」
「流石の飲みっぷりッスねアニキ!!」
「もはやノンアルの飲み方……お見事です」
「アニキはすげぇなぁ。オイラそんなに飲めねぇよぉ」
「んな無理に飲もうとしなくていいんだぜメタボ? あんま無理に飲ませるとアルハラになるらしいからな。もしされたら文句言うんだぜ」
「そうは言ってもよ兄弟! 俺ら悪の組織だぜ? んな労基なんてあるわけねぇだろうよ!?」
「あ、そりゃそうか」
「「「「「ワッハッハッハ!!!!」」」」」
拝啓、今どこにいるのやら皆目見当も付かないチンチクリンどもへ。
俺ちゃん、なんだかんだで生きてました。クロクロの黒潮人間になっちまってるので、まあ当分会いに行く気はありません。
オメーらはオメーらの人生を楽しんでください。マル。
んでもって本題です。
俺、今何してると思いますか??
「よし兄弟、今度はそっちの番だぜ!!」
「「「イッキ! イッキ! イッキ!」」」
「よっしゃあ盛り上がってきたァ!! 樽ごと持ってこいやぁぁ!!!!」
ハイ。見ての通り飲み会です。バカ騒ぎしてます。楽しくって仕方ありません。
でもほんのちょっぴり……相手が変かもしれないですね。
「兄弟……お前の底力、見せてもらうぜ?」
「ヘッヘッヘ……俺はこう見えても酒だけはアホみたいに強いんだ……ほな刮目しろや!?」
「「「うぇーい!!!!」」」
「いやあ楽しいぜ兄弟!!
うん、まあ、はい。
俺今、
メタクソ楽しいです。マル。
そもそもなんだって俺ちゃんが
黒潮に飛び込んで、そのまんま頭冷やすついでに黒潮遊泳を楽しんでた俺だったんだが、二・三周したぐらいで流石に疲れちゃいましてね?いやぁイケると思ったんだけどなぁ。
んでもって、ひとまずどっかで休もうと思って適当な近場の岸に上がって一息吐いたら────なーんとビックリ。そこは
いやもう俺もビックリしてたけど、キャンプ地でご飯食べようとしてたアーティファイサーの四人組も滅茶苦茶ビックリしてて。
まあ客観的に見りゃ、俺黒潮の沼からよっこらせって普通に上がってきた異常者だからな。
その時あちらさん焦りすぎて武器構えるのすら忘れちゃってたわけよ。
まあ鳴潮ルーキーだった俺だって、流石に一章から強烈に活動してらした
奴らが迷惑極まりない悪辣テロ集団だってのは理解してたのよ。
……してた、はずなのよ。
『マジ!?
長時間雑に泳ぎまくってたせいで脳に酸素が足りなくて、まるで
そんでもって、そこでチンピラのアーティファイサーらしく暴力でも振るってくるんならまだいいんだけどさぁ……。
『い、いやぁ照れるな。俺の手で良けりゃあいくらでも握手するぜ』
────なんでちょっと良い奴なんだよ。
くっそ赤面しながら手ェ差し出してくるんじゃねぇよ。ちょびっとだけキュンとしちゃったじゃねぇか!マスクであんま顔見えないけど!!
俺にそっちの気はねぇっての!!
まあそこまで行ったら俺も退くに退けず、そのまま全員と握手して。
で、その流れで「一緒に飯でもどうだ?」って言われたモンだから腹減ってた俺は普通に快諾しちゃって、そしてノリと勢いで飲み会になっちゃったワケ。
それじゃあここで、
バカデカいロケラン持ってるちょっぴり髪型オシャレな奴、ノッポ!!
身長のわりには典型的なひと昔前ぐらいの舎弟キャラまんまな奴だ!!
なんかアサルトライフルっぽい銃を持ってて顔が赤い包帯でグルグル巻きの奴、マジメ!!
物腰柔らかくて基本丁寧語だし、恐らくこの四人組におけるしっかり者タイプ!!
デカいハンマー持ってるデブ、メタボ!!多分この名前を付けたコイツの親に愛は無い!!
頭の足りない典型的なパワーキャラで、恐らくこの四人組におけるマスコット的役割!!
唯一俺が鳴潮本編での呼び名覚えてた奴!四本腕がポイントの『処刑者』ニキ、ダズ!!
四人組を引っ張るリーダーで、彼らからは「アニキ」と呼ばれ慕われる男!!最初に俺と握手したのもコイツ!!
……いやなんで俺こんな性格とか把握できるぐらいコイツらと仲良くなってんの?
「────ガハァッ!! 喉っ、喉に刺激がァァ~ッ……っ、キ、キクぅ~ッ!」
「「「「うぇーい!!!!」」」」
……まあいいか!!よろしくなあ!
楽しければ大丈
「……ところでよ、兄弟。一つ聞いても良いか?」
「ん?」
「なんでお前、俺らみてぇなののファンやってんだ? ロクなモンじゃねぇだろ、
……おや?
おっかしいな……確か
それにも関わらず、今の
妙だな……なんて小さな名探偵っぽく脳裏で顎をさすりさすり。
てかコレ一応返答気を付けた方がいいな。
さっきの握手が本心からじゃなかったってこと気付かれたら怖いし。
「いや別に……大したことじゃねぇよ。俺昔からワルに憧れててさぁ。だからアンタらみたいな『ザ☆悪の組織』みたいなのが好きで。これが理由じゃダメかい?」
「全然大丈夫ッスよ。俺っちもそんな軽めな感じで
いやそんな軽い感じで入っていいところではないだろ。
おっとメタボは答えなくていいぜ。どうせ「腹が減ったから恵んでくれるところに入った」とか言い出しかねねぇし。
……いやでも、飢餓に喘いでってなると結構理由重いな……ごめんなメタボ……役所行って名前改名した方がいいよメタボ……
「成程な。……だがそうなると、俺らは兄弟の御眼鏡にはかないそうもないな」
「? どういうこったい」
え何?
オメーら急に酒置くなよ怖えよ。
アーティファイサーって自由にアルコール抜けるの??だとしたらちょっと羨ましいんだけど。
「実はな……俺ら全員、まだ何もしてねぇんだ」
「……えっ」
「嘘じゃないですよ? ホントに、この身体になってから────っていうかなる前から、我々悪いことなーんにもやってないんです。ついでに今となっちゃ仕事してるかすら怪しいです」
「毎日狩りしてご飯確保してレポート書いての繰り返しだもんねぇ」
「まあ最初で最後の指令が『うわごとの町』に発生する残像についての定期報告ってだけッスからね。グラディエーターとも戦うどころか見つからないように逃げ回ってるだけッス」
────おっと??
つまり?この人たちって?
平たく言うところの────、
「────つまりニートか、オメーら!!??」
「おっと……心は硝子だぞ?」
「そう言われるとなんにも反論できないッスね……」
「オイラなんて食ってるだけだしなぁ……こないだの鹿肉美味かったなぁ……」
「鹿肉? それって確か僕が苦労して溜めこんだのに結局一口も食べられないまま忽然と消えた備蓄でしたよね?」
「やべ」
ええ〜……ニートとか引くわぁ。
仕事はきちんとやらねぇとダメなんだぞぅ。俺だって確かにしょっちゅうサボってばっかだったけど、俺はあくまで最終的に納期とかあれば間に合わせられるぐらいには仕事はしてたしなぁ。
「じゃあオメーら給料とかどうしてんのさ。減給なんてモンじゃねぇだろ?」
「?
ウッソだろオイ。
ブラックなんてレベルじゃねーぞ!?!?
「正確には、俺っちたちみたいなアーティファイサーには無いってだけッス。監察ぐらいの立場なら普通にあるらしいッスよ」
「ええ〜……ドン引きなんですけどォ……。じゃあ何のために働くのさ。アンタら以外の一般アーティファイサーの方々は」
「改造手術の時に忠誠心植え付けられるんで、『働けて嬉しい』状態になるんス。なんで給料とか無くても死ぬまで働くッスよ」
こっわ。
まあテロリストだし、当たり前っちゃ当たり前か……。
「おろ? じゃあ何でオメーらは何もしてないの? 忠誠心あるんだったら働かなきゃ。さっきダズが言ってた発言も
「えっとですね……アーティファイサーになりたいって人間、実はかなりいるんです。なのでもう
マジかよ。
マジメくんの衝撃のカミングアウトに、俺は今日イチの衝撃を受けた。
てっきり仮面ライダーみたいな改造手術やってると思ってた……夢破れるってこういうことなんだな……。
ってか、待てよ。
まさかその話の流れで行くと……。
「えっともしや……皆さんって、いわゆる生産過程で生まれたエラー品……??」
「急に憐れみを感じて丁寧になるのやめてくれませんか????」
いや今日イチのビックリが早くも更新されちゃいましたわ……。
つまり?コイツらはたまたまミスで忠誠心植え付けにだけ失敗した、まさしく本郷猛的境遇の持ち主で?
んでもって
いやまあ生産過程を自動化したら万に一つは起こり得ることではあるが!!
それが四人もいることに驚きだわ!!
それをそのまま言ったら何故か照れた。いや照れんな。
「えーっと……じゃあ何でアーティファイサーになろうと思ったの? 今こうして怠惰を貪ってるのを見る限り、力を得て好き勝手やりたかったってわけでもなさそうだけど」
「怠惰言うな。……まあそうだな。別にそう言う理由で志願したワケじゃねぇしな……」
「というと?」
「俺っちは普通に共鳴者になりたくて志願したッス!」
「僕も同じく。共鳴者のいじめっ子に成績で負けたので、その腹いせに」
マジメくん結構アグレッシブぅ……。
「オイラはご飯恵んでくれるって言われて~」
「メタボくんは思った通りで安心……はできねぇな。ま、まあいいや。んでダズは??」
「も……モテたかったから……」
「ゴメンなんて??」
「きょ、共鳴者になれば!! あの日見たリコリスの似合う美女と付き合えるって考えたんだ!! 当時の愚かな俺はぁ!!!!」
Oh……。
なんつーか……気持ちは痛いほど理解できるというか……。
んで結局多分コイツ、未だにモテてないんだろうなぁ……可哀想に……。
「────安心しな。童貞なのは俺も一緒だぜ」
「気ィ利かせて貰って悪ぃんだけどそっとしといてくんねーか??」
「まあこんな顔になるって知ってたら最初から志願しないッスからね……」
「僕も変わり果てた体を見て冷静になりましたよ。『こんなになってまで人様に迷惑掛けて何が面白いんだ?』って。まあその時にはもう何もかも手遅れだったわけなんですけど」
「わあ善人。今オメーら絶対その悪趣味レッドな組織カラーで損してるよ」
「ていうかヴィトンってやっぱり女性経験無いんだなぁ」
「おっ……とぉメタボくんテメーそこに言及したらもう戦争だぜ? 血で血を洗う殺し合いしか無くなるぜ??」
「やめとけ兄弟。できもしねぇのに殺すとか言う奴が一番カッコ悪いんだぜ」
「アニキそれ今の僕らにもブーメランですよ」
くっそぉ俺だって必要に迫られれば犯罪くらいできるわぁ!!
口にするのも憚られるが────もしも大切な人が人質にでも取られれば!!俺はきっとレディのスカートを背後から捲り上げることだってできる!!
「く……とはいえなんて恐ろしい非道……!!」
((((紳士か))))
あ、人殺しは流石に無理です。ムリムリ!!
だって俺人の命背負えるほど上等な人間じゃねーもん。助けるので精一杯よ?
人を殺して、殺した相手の人生まで背負うとかキツイキツイ。
生きてりゃいいことあるってばよ。
「……兄弟にはやっぱワル向いてねぇよ」
「あ、そお?」
照れますな☆
そんなこんなで大騒ぎしていた俺たちだったが、流石に酔いも無限には続かない。
樽をいくつも空にしてようやく宴もたけなわを通り過ぎ、自然と俺の身の上話に話題が移る。
ファビアヌム村での日々、突如襲い掛かった黒潮、チンチクリン二人を逃がして死んで、そしてついさっき生き返ったこと。
こうして話してみるとなんとも荒唐無稽もいいところだったが、ダズたちは鼻で笑うどころか、要所要所で外国人のアニメリアクション動画みたくオーバーに反応してくれた。
絶対コイツらアーティファイサーの恰好で損してるって。
そんでもって、俺の話が今現在へと差し掛かり、大きくなっているであろうチンチクリンどもに会うつもりはないということを言ったのだが────、
「いや、そこは会いに行けよ兄弟」
ダズから思いもよらない待ったが掛かっちまった。
「話聞く限りだけどよ……お前の言うそのチンチクリンどもなら十中八九間違いなく、兄弟に会えるなら会いたいって言うはずだぜ?」
「いやしかしだな────」
「同感です。僕がその子どもたちの側なら、絶対に今もアナタのことを誇りに思っているはずですよ」
「で、でももう俺人じゃないんだぜ? クロクロの黒潮人間なんだぜ??」
「だとしても、会っちゃダメってことはないんじゃな~い?」
「しかもそれ、俺っちたちを前に言います? 見てくださいッスよほら、俺の腕なんてモロ残像だし、顔だってホラ……バケモンッスよ。それに比べれば、ヴィトンさんは心臓と血が黒潮になっただけじゃないスか」
「う、うーん……」
……果たして、過去の遺物である俺なんかが、今のアイツらの人生に関わっていいんだろうか?
いやそりゃ、会いたいか会いたくないかって言われたら会ってみてぇけど……それとこれとは違うだろ?
アイツらにだってアイツらの人生がある。
それをぶっ壊すようなことになるのが、俺は怖くて仕方ねぇんだ……。
あーでもないこーでもないと、うんうん唸って考え込む俺を見かねたのか、その時マジメくんが溜息しつつ、肩に優しく手を置いてくれた。
「どうしてもというのなら……漂泊者を頼るのはどうでしょう?」
え゛っ。
いやビックリトンペティ。ここでその名前出てくると思わねぇじゃんアゼルバイジャン。
「漂泊者は今州、そして今やリナシータすら救った『救世主』です。しかも旅の合間合間では、猫探しなどの些細な頼み事すら快諾し、解決してきたという話も聞きます。そんな彼女であれば、ヴィトンさんの力にもなってくれるのでは?」
「マジメの言う通りだ。どうしても勇気が出ねえってんなら、漂泊者を探して相談してみな。……
ホントそれな。
「────兄弟にとっちゃ、悪い案でもねぇはずだ。とにかくそのチンチクリンどもには会え!! これは決定事項だぜ兄弟!!」
「……マジかよ兄弟」
そうだそうだー!
会いに行くッスよー!
────なんて声に背中を押されながら、俺は今日イチデカくて長い溜息を吐く。
正直、納得なんかまったくしてねぇ。
やっぱり俺はアイツらに会うべきじゃねぇし、関わることすらするべきじゃない。
だからあのチンチクリンどもが今どうしてるかなんて、調べることだってやりたくない。
だが────そうだな。
どっちにしろ、鳴潮主人公の漂泊者には会っておくつもりだったし。
それに、漂泊者が漂ちゃんだってなら、美人らしいから一応会っておきたかったし。
そう、だからついで……ついでに────相談とか、してみてもいいのかも────しれねぇ……な。
「────わかったよ。会う会わないは別として、ひとまず漂泊者は探してみる。探すだけ、探すだけな……」
「最高だぜ兄弟!! ってんなら、先立つモンがいるだろ。ちょっと待っててくれ」
……?
ダズがなんかテントの方に入ってった。
にしても前世から思ってたけど、
目立ちすぎだろマジで。
「待たせたな。ほらよ」
「お……っと……。────!? お、おいこれ……」
「おうよ。デバイスだ。兄弟持ってねぇだろ? 長旅をする共鳴者には必須だぜ??」
いや……いやいやいやいや!?!?!?!?
流石に申し訳なさ過ぎんだろ!?
しかも俺の知ってる今州のデバイスと比べ物にならないくらいデザイン好みなんですけど!
何?なんでこんな良いの作れんのに肝心のテントはそのザマなの??
「おや……確かそれ、ジャンク品でしたよね? 少し前になんやかんやで回ってきた」
「おー! 遂にそれが日の目を見るんスね! なんか焦げ茶のぬいぐるみ付きのヤツ!!」
掲げて見てみると……成程?
確かに
んだコレ、クマ?いやでも目無いしな……?
「まあとにかくそれ持ってけよ。ソレ、結構イイヤツだぜ? ラハイロイで動く奴用に作られてっからか、持ち主の『本質的な周波数』を記録する機能付きのスグレモノだ」
「本質的な周波数……?」
「ラハイロイ特有の海蝕現象に対応するためには必須の機能なんだと。俺もそれ以上詳しいコトは知らねぇが────ま、あっても損はねぇだろ。いいから起動してみな。初期化は済んでるし、詳細設定とかは今一緒にやってやっから」
「ええ? そういうのって普通の人でもわかるモンなのか?」
「ま、普通じゃ無理だろうが……へへっ、まあ安心しな。俺、こう見えても昔は先駆条約勤めだったんだぜ?? その関係上、平均よりは詳しいと自負してるぜ」
「超一流企業じゃねぇか。マジでなんで
「人生、就職先が良いぐらいじゃ何も変わらねぇことだってあるんだぜ、兄弟……」
「だからってアーティファイサーになろうってなるのは流石にバカですけどね」
「それオイラたち全員に当てはまるよぉ」
なんだかんだとそのまま賑やかに言い合い始めた四人組を背景に、俺はしばらくデバイスを見つめていた。
なんというか……心がじーんと温まるような感じだ。
(……俺って、まだ人間なのかもしれない)
もう血の通わない、黒く淀んだ汚らしい泥人形みたいになっちまった俺は、皮肉にも
人生、マジで何が起こるかわからねぇな……。
「────うし、じゃあ行ってくる。諸々世話になっちまったな、兄弟! みんな!!」
デバイスの設定を終え、いよいよ潮蝕地からソアーで飛び立つ時が来た。
そんな俺に、コイツらは無事を祈って固い握手を交わしてくれた。
「道中気を付けるッスよぉーっ? 俺たち以外のアーティファイサーに会っても、絶対同じテンションで関わっちゃダメッスからねーっ!!」
「オイラたちが特別なだけだよぉ~?? あと、どんな時でもご飯は食べてねーっ?」
「旅の無事をお祈りします。どうか、お気をつけて」
ノッポにメタボにマジメ。
この数時間ですっかり仲良くなっちまった奴らの激励をしっかり受け止めて、俺はいよいよ高台に登る。
ソアーの使い方はすっかりマスターしたぜ。今ならきっと戦艦ハルバードにだって乗り込めるね!
……っと。その前に。
「おーい兄弟! おいってばよ!!」
「グスッ、ズビッ……っ! なっなんだ、どうした兄弟!」
いや泣くなよ。
ほんの数時間でしょ俺と関わったの。
確かにダズだけはなんか俺のこと「兄弟」呼ばわりして距離近かったけどさ。
まさかそこまで入れ込んでるとは思わんやん??
まあいいや。
とりあえず────伝えたいことだけ伝えて、俺は行くとしますかね!!
「────オメーら、せっかくなら楽しく生きろよ!!
「「「「!!」」」」
「オメーらの人生はオメーらだけのモンだろ!? なら、こんな薄暗いところでじっとしてないで、好きなことでもすりゃいいじゃねぇか!! 勿論、悪いコト以外でな!!」
「兄弟……」
そうだ。アイツらだって自由だ。
例え世界規模のテロ組織の部下になって、改造手術で人と残像の合間の異形になったって。
アイツらはまだ人間だ。こうして関わって、俺はそう確信した。
だから生きるべきだ。
姿形も、立場も、持っちまった力も、もうどうにもならなくても────、
────全部振り切って、第二の人生を生きる権利は、アイツらにだってあるはずなんだ。
「ひとまずはその服!! 趣味の悪い真っ赤な恰好なんとかしろーっ!! その見た目だけでメタクソ損してるぜ、オメーら!!!!」
「……っへ。こんな俺らでも、まだやり直せる、か……」
「────ありがとな、兄弟!! なら俺たちも、ここから頑張ってみる!! まっとうな人生を、まっとうじゃねぇ姿で全力で、生き抜いてやるぜ!!!!」
「「「おおーーっっ!!」」」
そして俺は飛び立つ。
まるでメーヴェに乗るナウシカのように、黒潮の黒さから解き放たれた青い空へと。
ダズたちの力強い見送りの手に応えるように、俺の、俺だけの翼は、高く高く、俺を旅へと駆り立てた。
「さて……どうやら今漂泊者は、ラグーナ城って都市で
スターダストクルセイダースみたいな、御大層な旅立ちってわけじゃあないが────一応言っとくか!!
目指すはリナシータ最端、海上都市ラグーナ城ッ!!
「────行くぞッッ!」
「再会を願ってるぜ、兄弟……。────さて、んじゃあまずはこの服染めるか! 色は……青とかでいいか! うん!!」
この後、リナシータ各地で『青い
遥かなる旅路に旅立ちたい方は評価、並びに感想・質問など盛大に歓迎致します。