村のチンチクリンがドメロイケ女になってて俺への距離が近い話する? 作:負け組カチ組
しかしそう簡単に行くはずもなく。
前話誤字報告してくれた方感謝ァ!
「あらオーガスタ。どうだった? うわごとの町は奪還できた?」
「うむ……まあできたはできたのだが……少々妙でな」
「妙……?」
「うわごとの町に蔓延っていた残像たちが一切反撃してこなかった。それが少々不気味でな……」
「あ、ガルブレーナ……まあ後でいっか」
「?」
「むしろ我らが退こうとすると逃しはしないとばかりに立ち塞がる始末。もはや倒す他なかったが、何か狙いがあったのではと思っているのだ」
「……レビヤタンが消えた今、奴らに直接指令を下せるとしたら
「ユーノよ。お主はどう思う? 意見を聞きたいのだが────? ユーノ? どうした?」
「……えっとねオーガスタ。その……多分私、それ命じたっぽい奴に心当たりがあって────っていうかさっきまで一緒にご飯食べてたわ」
「は?」
「あとガルブレーナ? その人あなたのファン……? なんですって。是非会いたいとも言ってたわよ」
「は?」
「「……」」
「「は??」」
ブンブンハローソラリス。
どうもヴィトンです。
突然ですがこの俺ちゃん、今どこにいると思いますか?
念願のラグーナに到着?
それとも船に間に合わずに未だクリフポート?
ノンノンノン……そのどれもが違いましてよ。
このヴィトン、なんと今────……、
「────遭難しちゃってるんですよねぇーーっっ!!!!」
そもそもどうしてこうなったのか。
まあ発端はクリフポートに到着した時からなんですけども。
『ブチャラティィィィィィィィィィ!! 行くよッ! オレも行くッ! 行くんだよォ────ッ!!』
『ちょっとお兄さん危ないって!!』
『飛び込まないでください!! ってかブチャラティって誰』
目の前で遠ざかっていくラグーナ行き最後の船を無様に見送り、俺は途方に暮れてしまった。
チクショウ……!全部あのケンタウロスっぽい赤い残像*1のせいだ……!
ちょっと休もうと思って降り立った廃コロッセオみたいなとこにいたソイツは、俺の平謝りに反応すらせず怒涛の攻撃を仕掛けてきやがりまして。
推定【怒涛級】は間違いないと思われるケンタウロス擬きを倒すなんてこと当然ムリ。
結果的にソイツを撒くのにかなり時間を喰ってしまい、なんとか辿り着いた時には既に船は出港済み。
どんどん小さくなっていく船に追いつこうと思ったものの、普通にスタッフに止められちゃいました。いやまあ残当ではあるのですけれども。それで乗られちゃったらお金とか困るもんね。わかるとも。
ま、そこで終わりじゃないからこそのこの俺ちゃんよ!!
もはや船に追いつくのは無理だと悟った俺は、類稀なる行動力を発揮して速攻小舟を作成。
スタッフたちにバレないよう、慎重に俺の小舟────『ヴィトン丸』は出港を果たしたというわけなのよ!!
え?なんで船なんて作れたのって?
そりゃお前……DASH島見てたからに決まってんだろうがよ。
さて、んでもってしばらくは悠々自適に船を漕いでいたんですよ。
コンパスとかは持ってなかったが、方向についても問題はナッシング。さっき俺を置いて出て行ってしまったラグーナ行きの船の後を尾ければいいやって思ってたからな。
ただ問題は────手漕ぎのボートと帆船のスピード差を考えていなかったこと……!
追いついたと思ったのも束の間、あっという間に距離が離され、焦っている内に俺はだだっ広い海の上でポツンと一人。
「ま────こんな感じで遭難しちゃったワケなんですよねぇ」
ふふふ。
ひとりぼっちだからいくら独り言言っても気にならないぞ。
ふふふ、ふふふ。
……。
「────うおおおおぉぉーーん孤独だよォォーーッ!!!!」
死ぬ……死んでしまうぞヴィトン!!
鬼になれ!鬼になると言え!!!!
どちらもありうる……そんだけだ
……さっきからこんな一人芝居で暇をつぶしているけれど、流石に限界ってものがある!!
小腹が空いた時のために水とお菓子は用意したくせにな!? 流石に海図を持っていないのは致命的だぞ俺!!
「致命的DAZE☆」
あーーーーなんで肝心な部分だけ忘れんのや俺ぇーーっ!
うっかり属性?うっかり属性なのか?遠坂家の血を引いてるのか俺は!?
チクショウそんなモン野郎が持ってても何の役にも立たねぇんだよコラァ!!!!
「あ゛ー……寂しい。寂しいのだー……」
……。
ちょっと騒ぎ疲れたなぁ。
眠いってワケじゃねぇけど、ちょっと寝転がっちゃお。
「……俺、下手したら今知り合いゼロなのか」
そりゃそうか。もうファビアヌムの人たちみんな死んじゃってるもんな。
……みんな、苦しかったかな。
それとも、悲しかった?
俺は……まあ、心臓潰されてクソ痛えって感じではあったけど────オーガスタとエンジェルが逃げられたのを見たからか……結構、意外と……ホッとしてたのかなぁ。俺は。
死ぬ時に思うことって、人それぞれ違うのかね?
だとしたら俺って、もしかしたら恵まれた死に方したのかもな……少なくとも、未来に希望を託すなんて、ジャンプ漫画的なことやれてから死んだんだもんな……。
「何考えてんだか……哲学的なことなんざわかるかよ」
ちょいとばかしセンチになってるのかね?
四方八方、どっちを向いても水平線が続くだけ。そんなところにポツンといれば、そりゃおセンチにもなるってもんだ。
それより女の子!カワイイ未来のお嫁さんのこと考えよ!!うん!!
あ〜美人で可愛くてボンキュッボンで俺のこと大好きでドエロいお姉さん系の彼女ができたらなぁ〜……。
……なんだろうなぁ。
俺って結局、なんで彼女欲しいんだろ。
イチャイチャしたいは……そりゃ存分にあるんですけども。
というよりは────一人になりたくないから……なのかな。
こうして一人、海の真ん中に放り出されて初めて分かった気がする。
そっか。俺って寂しいのに耐えられないんだ。
俺は誰かと一緒じゃないと生きていけない。だから一人になるのがツラくてツラくてしょうがない。
だから俺は────人生をずっと俺と一緒に過ごしてくれる人を、待ち望んでるのかもしれねぇ。
「……今なんて猶更、俺一人だしな」
……あの時助けたオーガスタとエンジェルは、今どうしてるのかな。
会わないなんて言ったけど、現状俺にとっちゃアイツらが唯一の同郷だ。本心を言えば、会えるなら会いてぇ。
でもやっぱり────そこまで思い至ると、どうしても待ったがかかる。
アイツらの人生は、俺と違って16年前で止まってるわけじゃないって具合に。
嗚呼────でも、もし。
もしも偶然、出会えたら────、
その時は俺とまた、一緒に遊んでくれるかな────?
────うーん……むにゃむにゃ……。
こ、ここはどこ────ワタシはダレ────?
────ガリッ*2
「いやカニさんハサミギロチン痛ぇってばよォォーーッ!?!? ……あ、あれ?」
ど……どこだ、ここ?
ってか、地上?体ずぶ濡れ……ってか陸地に着いたのか?いつ?
それより、俺確か船に乗ってたはず────って、あ。
「────ヴィ、ヴィトン丸ゥーーッ!?!?」
お、俺の船が!!
世界に一つだけの俺のブラックパール号が!!
なんて見るも無残な姿にぃぃ……!?
────待てよ?
俺……船で寝ころんだ後どうした?
そのまま寝た?もしかして寝た?俺寝ちゃった??
「……」
恐る恐るって感じで周りを見渡してみれば────わーおまさしく「これぞ!」って感じの船の墓場的場所……。
んでもって、遠い遠い空は真っ黒な雲に覆われていて……。
「────ん? もしかして俺、嵐に遭ったカンジ?」
「そうみたいね」
やっぱりぃ?
いやぁ〜……俺ってばつくづく自分のことバカだって思うけど、今回ほど強くそれを感じたことはなかったな……。
なんやねん漂流中に寝るって。
ありえへんやろ遭難者として!?
「いやホントバカ。俺ってマジでバカ」
「そうね」
「だよね? あー自分で言ってて悲しくなってきた……ねぇ水持ってる?」
「どうぞ」
「おうさんきゅ────んぐ、おいピー!」
いやぁ生き返るゥー!
こんなに美味いものはじめて口に入れたってぐらい美味いぜこれ。
……ん?いや、あれ?
────今、俺の隣にいる人……誰だ?
いや声は可愛いから絶対美少女の類ではあるんだろうけども!!
ここはなんてことない風に、ゆっくり、ゆ~っくり振り返って正体を確認して────……ッ
────マジか
「……嫌な顔ね。到底初めて会う相手に向けるような顔じゃないわ」
……確かに俺は、この世界で二度目の生を受けてからずっと、誰でもいいから知ってるキャラに会いたいと願い続けてた。
長離さんとか、今汐ちゃんとか……漂泊者が女性ってんなら、漂ちゃんにも会っておきたいとは思ってた。
「私の自己紹介は必要? ……いいわ。
だが────まさか。
そう、まさかだ。
よりにもよって、最初に俺が会ったのが────、
「────フローヴァよ。よろしくね、ファビアヌム村のヴィトン」
────『ペニテントの吹き溜まり』。
何時如何なる日も深い海霧に包まれており、険しい崖に聳え立つ巨大な円環状の遺構が特徴的な無人島。海底の暗流に流されることにより、よくこの島の干潟に流された船が座礁するらしい。
今回、俺がここまで漂流してきたのもその暗流によるものだろう────と、前を歩く彼女は零していた。
「……どこまで行くのか聞いてもいいッスかね? フローヴァちゃん」
「ちゃん付けしないで。……落ち着いて話ができるところまでよ。ここは残像が多すぎるから」
「さいですか……」
帰りたい。
いやもはや帰れるような場所じゃないのはわかりきっているのだが、とにかく今この状況から抜け出したい。
何せ、相手はあの
危険極まりないあのスカーと同じポジションにいる人物であり、少なくとも彼と目的は一致しているようにも見えた。
────つまり、漂ちゃんとはバチバチな関係にある存在なのだ。
(そして何が一番怖いって────この子のことあんましまだよく知らないんだよなァ……)
一章時点では、まだ名前が出てきた程度の敵キャラクター……それがフローヴァちゃんだ。
中途半端にだけ知っているというのは、むしろ何も知らないことよりもタチが悪い。相手が悪側であることを知ってはいても、肝心の彼女にとっての地雷などが一切わからないのだから。
まるで「ある行動をするとあなたの身体の中にある爆弾が爆発しますよ」とだけ教えられて放置されるかのよう。少なくとも、今の俺の気分はまさにソレだった。
「……ここなら良さそうね」
「え、え~……なんでよりによってこんな闘技場みたいな所でぇ……」
「代替案があるなら聞くけれど」
「あ、ここで問題ないッス」
ぐぅ、やりにくい……。
俺の話を聞いているのか聞いていないのか怪しい感じなのがやりにくさに拍車を掛けている。ぐうう……この子苦手だぁ……滅茶苦茶美人さんだけども。
そんなこんなで闘技場────よりかは舞台のステージっぽい廃墟で足を止めた俺へ、彼女は早速と言わんばかりに口火を切った。
「確認よ。あなた、一度死んだはずよね?」
「……地獄から蘇った男! スパイダーマッ」
「真面目に答えて」
「あ、ハイ。一応そんな感じッス。ハイ」
うう……悲しいよぉ。
ユーノちゃんの優しさが懐かしい……いちいちツッコんでくれてたあたり、ユーノちゃんって滅茶苦茶優しかったんだな……。
よよよ……と目元を抑える俺には当然目もくれず、フローヴァちゃんはただジッと俺を見ながら言葉を続ける。
「────しかし、蘇った」
「まあクロクロの黒潮人間になってだけどね? ……あの、俺からも質問いいスか?」
「……何」
「なんでそこまで俺のこと知ってるのかな~って……あ、もしかして俺に興味あるとか?」
「……そうね。確かにあなたに興味があるわ」
え゛っ。
えぇマジすか。こちとら半ば冗談で言ったんですけどぉ……。
「ち、ちなみにいつからとか……」
「あなたがうわごとの町で、残像相手に見事な演説を披露しているところを見てからかしら」
「あそんな序盤から……」
「偶然見かけたのよ。少し野暮用があってあのあたりに行った帰りに」
なんてこったい。
いやまあダズたちから漏れたとかではなかったから安心したけども……。
「黒潮の濃厚な気配を漂わせていたから、少し足を止めたのだけれど────あなたの周波数のメロディーを聞いた途端、私はあなたに夢中になったと言ってもいい」
「はっ!? それってラブでソングな感じな意味って捉えても」
「私の共鳴能力は、周波数の調律」
(無視された……)
「調律師は自然と音色に敏感になる。だから聞いて、あなたが何らかの手段で蘇生していることは手に取るように理解できた────それに、驚くべきことに……あなたは二回も蘇生している」
「ッ!?!?」
はっ……!?
いや、マジか。正直今人生で一番ビビったぞ!?
この子……黒潮で蘇生した件だけじゃなくて、俺が転生して生き返った存在だってことにまで気付きやがった……!?
「私でも聞き落としかねないほどだったわ……本当に、本当に微細な違和感」
「……じゃあ、ワンチャン聞き間違いの線もあるねぇ?」
「そうね……だからこそ直接会って話す必要があったのだけれど────もう周波数を読み取る必要すらないわ。あなたのその表情が、この仮説が真実だってことの何よりの証明になってくれているもの」
オア゛ーーッ!?俺の表情筋ンンーーッ!?!?
ポーカーフェイスしっかりしてーーッ!?!?!?
「それだけ確認できればもういい。どうせ『一回目の蘇生』に関して話すつもりはないでしょう?」
「い、いやぁその、話したくないっていうか、説明が本当にしづらいといいますか……」
「安心しなさい。どっちにしろあなたは本部に連れて帰って、隅々まで身体を調べるつもりだったもの。その黒潮による蘇生の方も気になるわ」
「いやどこで安心しろって!?!?」
いやいやいやマズいぞコレは!?
あちらさんマジだ!!マジの目をしていらっしゃる!!このままだと俺は解剖されて、下手すると二度と日の目を見られない可能性すらあるぞ!?
くっそそれが目的だって知ってれば最初っからついて行ったりなんかしなかったのにィ!!
あ、あーマズい。フローヴァちゃんがじりじり近づいてくる!
あ。
あ────、
あ゛ーッ!!
「────ヘイッ! それ以上近寄るんじゃあねーぜッ!!」
「……」
マジメくんに拳銃貰っといて良かったァ~っ!
なんか今の俺ジョジョに出てくるグロい死に方するモブみたいなムーヴしてるけど気にしてられねぇよもう!?!?
「……その拳銃、
「たぶんそう部分的にそう」
「ハッキリしないわね……まあいいわ。そこも含めて、
あ、拳銃なんて意に介さない感じ?
いやまあそうだよねぇ!?あのスカーと同格っぽいもんねぇ君!?!?
ここはもういつも通り幻覚で逃げるしかないけれど────、
(フローヴァちゃんが言ってた『周波数の調律』……これがマジだとすると、最悪効かない可能性が……)
俺の幻覚は確かに精巧だ。
傍目じゃ本物かなんて触りでもしない限りわかりはしない自信がある。
────でも、それはあくまで常識の範疇での話。
賭けにしては分が悪すぎる。
なにせ、俺の見せる幻影は幻影だと理解された瞬間無力になる。
手を叩くっていうわかりやすい発動条件がある以上、幻を初見で見抜けるような相手がいたとすれば、それはもはや天敵なのだ。
そして今、その天敵が目の前に、俺に明確な害を及ぼそうと近づいて来ている。
なら、物理で戦う?
論外だ。あの戦闘狂スカーと同じ監察の立場に座れている彼女が、俺みたいなクソ雑魚ナメクジ男に制圧できるわけがない。はっ倒されて終わりだ。
万事休す────、
────と思っていたのか?(ブロリー)
「フッ……仕方ねぇ。これだけは使いたくなかったんだが────まさか、あんたみたいな美人に使うことになるなんて、な」
「オーバークロックするつもり? なんでもいいけど、手間を取らせないで」
「あーもうなんでもお見通しなのね畜生せっかくカッコつけたのに!!」
俺のメンタルが早くも瀕死だが、構ってられん!!
すべては俺の未来のため!未来で待つ、俺のお嫁さんのため!!
「────俺は生きるッ!! オオオォォバァーッ、クロックゥーッッ!!!!」
「……はぁ。面倒な────……?」
ハアアアァァァ!!!!
うおおおおドラゴンボールの要領でオーバークロックだァァ!!
叫んで
「……あれは」
ん?フローヴァちゃんの動きが止まった?
てっきり妨害してくるかと思ったんだけど……まあいっか好都合!!
この隙にオーバークロックしてやるぜェ────!!
「……成程ね。あなたの共鳴能力が何かは知らないけど────見立て通り、限定的に共鳴能力も黒潮の浸食を受けて、変化していたようね」
……アレ?
覚悟していた痛みが来ない?
えええ嘘でしょ。結構気合入れて待ってたんですけど。覚悟決め損じゃんこんなん────?
……?え?
なんか俺の身体から黒潮が────!?
な、なんだぁっ
────身体から、ドロリとした気配が完全に抜け切って、俺は凄まじい虚脱感に襲われる。
まるで何日も徹夜したみたいな身体のだるさに耐えながら、俺は感覚的に体から抜け出たものを見ようと、後ろを振り返って────、
「────ひょ?」
────俺の側に立っていた、なんか生物的な質感の西洋甲冑みたいなヒトガタを見て、素っ頓狂な声を上げた。
────瞬間、俺の脳裏に電流が走る。
思い出されるのは、前世の記憶……!
『そばに現れ立つというところから、その
「────どうやら俺も────『悪霊』に取り憑かれちまったみたいだ、な……」
「……なんでもいいけど、足が震えているわよ」
ちょっとフローヴァちゃん!?
男の子がカッコつけてるんだから、邪魔しないのっ!!!!
「お?」
ヴィトンの動きを真似て、ヒトガタもまた右腕を上げる。
「おお?」
同じく左腕。
そうして彼は、その後何度か試すように体を動かしてから────、
「────うっふぅ~ん♡」
「やめて」
クネクネと気色悪い動きをするヴィトンと背後のヒトガタに、思わずといった様子でフローヴァは吐き捨てる。
さもありなん。
フローヴァはこういうノリが大の苦手であったし、何より今現在、ヴィトンから出現し追従した動きを見せる彼の背後のヒトガタのイメージ的に、なんだかとても嫌悪感が強かったからであった。
(────それにしても、驚いたわね)
気分を切り替え、今一度観察に徹するフローヴァ。
彼女の驚きは当然、ヴィトンから出現したヒトガタに向けてのものだった。
「……あなた、どうして『偽りの神王』を?」
『偽りの神王』。
黒い泥に覆われし擬人の造物であり、鳴式・レビヤタンが構築した『融合』の権能によって誕生し、黒い泥が形をなしたもの。
かつてはサングイス狩猟大地にて漂泊者一行を追い詰めた、無限の成長性を秘めた恐るべき残像である。
問題は、何故ヴィトンがそれを従えて────否、己が半身としているのか。
「い、偽り? はえーコイツってそんな名前なのか……。でもそれだとなんかスタンド名っぽくないな……うし、君の名前は今から『エンペラーズ・ニュー・クローズ』だッ!! 略してエンクロ!!」
肝心の本人はこのザマ。
『偽りの神王』の名前すら知らないのだ。ますます疑問だった。
(レビヤタンが消えたことで、この男が新たなる黒潮の主になったとでも?)
可能性はゼロではない。
何せ彼は16年という長い時間を黒潮の中で過ごし、そして一切の精神浸食を受け付けなかった男。
勿論タネも仕掛けもあったものの、それでも今や主を失った黒潮にとって、彼ほどの『適任』はいなかったということだろう。
厄介なことになった、とフローヴァは内心で舌を打つ。
彼女にとって、ヴィトンという男は取るに足らないただのサンプルでしかないはずだった。
うわごとの町より出立してから暫し観察を続け、戦闘能力が無いと判断したが故に、こうして彼が一人になったタイミングで早々に姿を現したのである。
(はぁ……あまり大事にすると、面倒なことになる)
フローヴァにとって、あくまでこの無人島で仕掛けたのはヴィトンを簡単に制圧・誘拐できる相手だと踏んでいたからに過ぎない。
さもなければ、ペニテントの吹き溜まりという────『愚者の劇団』が根城にするこの場所で動くことは決してなかっただろう。
『愚者の劇団』────特にその団長であるブラントという男や、劇団の二番手を務めるロココという少女とは、鳴式決戦の時以前にカルネヴァーレの舞台で直接戦ってすらいる。
もしも騒ぎを聞きつけ、彼らがやってきて姿を見られでもしたら────すぐにでも彼らと親交の深い漂泊者やモンテリファミリーなどが援軍にやってくることだろう。
そうなれば、さしものフローヴァといえどどうにもならない。
最悪そのまま捕縛されてしまう可能性すらあるのだ。出来る限り、ヴィトン相手に時間は掛けたくなかった。
────こうなった以上、仕方がない。
大きく溜息を吐き、割り切る。
彼をここで逃すことだけはありえない。聞けば彼の旅の目的は、よりにもよってあの漂泊者と会うことだという。
もしもここで取り逃がし、彼が漂泊者と会って自分のことを話されでもすれば、ヴィトンを攫うことはかなり難しくなってしまう。
すべては────己の悲願のために。
こういった考えをたった0.5秒ほどで完了させたフローヴァは、最短最速でヴィトンを制圧し、愚者の劇団に気取られる前にヴィトンを連れて退却することを決意した。
(うーんコイツ……まあ見た目からして、黒潮の化身……みたいなモンだよな?)
一方のヴィトンもまた思考を巡らせ、生じた混乱と向き合っている。
ファビアヌム村が滅んだあの日、オーガスタとエンジェルを逃がすために発動したオーバークロック状態は、黒潮の汚染により奇妙に変質した。
まるで自身の身体に、急に羽が生えたかのよう。
見知らぬ器官をすぐには自由自在に操れないのと同じように、ヴィトンもまた変質したオーバークロックを把握しようと必死だった。
(あの時と違って、直感的に『何ができる』ってわかるわけじゃないのがツラいとこだが────間違いなく元のヤツよりはイイな、コレ)
楽観的に構えるヴィトンの目に映るのは、あの時ケルピーを握りつぶした、腐った巨神兵のような酷い出来故の脆さではなく────泥から形成されたとは到底思えないほど堅牢な漆黒の外殻。
────これなら、問題なく攻撃を受けきれるハズ。
理由はどうあれ、強力な半身を得たとわかったヴィトンの目に闘志が灯る。
どうせできることなど今はわからないのだ。それは動きながら理解していくしかない。
激痛の代わりにのしかかる虚脱感は相変わらず消える様子はないものの、全身の骨が毎秒粉砕骨折しているかのような痛みに比べればずっとずっとマシだった。
戦う覚悟はできた。
となれば、後は────我が身を奮い立たせるための、熱き宣言が必要だ。
「────覚悟はいいか? オレはできてる」
「……来なさい。矮小なその覚悟ごと、私がフィナーレを飾ってあげる」
もはやヴィトンは臆さない。
他ならぬ、自分が行く
今ここに、戦力差歴然の戦いの火蓋が切られた。
スタンドになった『偽りの神王』を得たけど代わりに今幻覚能力使えないヴィトン
VS
短期決戦&ヴィトンの負傷は最小限かつ生け捕り狙いのフローヴァちゃん
ファイッ!!
リコリスの似合う美女に挨拶されたい人は評価、並びに感想・質問など盛大に歓迎致します。
以下、蛇足でしかない神王の捏造スタンドパラメータ妄想
※この設定が本編に反映されるかは現状不明です。
【STAND NAME】
エンペラーズ・ニュー・クローズ
【STAND MASTER】
ヴィトン
破壊力:B / スピード:B / 射程距離:C / 持続力:E / 精密動作性:C / 成長性:A
【能力】
取り込んだ『黒潮』を支配する能力を持つ。