村のチンチクリンがドメロイケ女になってて俺への距離が近い話する?   作:負け組カチ組

14 / 14
勝ち目ない
やらねばならぬ
負け戦
  ヴィトン 心の俳句


『リュプチュール・ファンタジア』

「────何? それらしき人物を見ただと?」

 

「は、はい。正直変な人でしたよ。乗り遅れたからって泳いで追いつこうとするんだから……」

 

「うわ~やりそ~……」

 

「やりそうなのか……?」

 

「エンジェル、ユーノ。どうであった?」

 

「一応目撃情報はあった。だがラグーナ行きの船には乗り遅れたらしい」

 

「だから今もここにいるはずなんだけど……入れ替わりでセブン・ヒルズに戻ったのかしら?」

 

────それか、自力でラグーナまで行こうとしたか……ではないか?

 

「どういうことだ、キメラ」

 

────あそこの木の影……そこに小舟を作った跡があった。アレでは肝心の出来は悪いだろうがな。

 

「ハッ……ここからラグーナまでどれほどあると思っている? 流石にそんなことをするようなバカがいるとは────」

 

「ううん、やりかねないわ。ワムウなら」

 

「ッやりかねないのか!?」

 

「ふむ……となると追跡はもはや不可能。しかし漂泊者に会いに行くと言った以上、我らとしても無視はできまい────エンジェル」

 

「ああ、ラグーナ城まで先回りするぞ。……お前はどうする?」

 

「も、勿論一緒に行くわよ!」

 

「ならばグリフェックスを準備しよう。ではこれより、そのワムウという人物を追い────ラグーナ城へ向かう

 

 

 

 


 

 

 

 

────一方その頃……ペニテントの吹き溜まりにある、とある演劇場の廃墟にて────

 

 

 

 

「ちょっとちょっとフローヴァちゃん!? そっちもスタンド使いとか聞いてないんですけど!? もしかしてアレ? スタンド使いとスタンド使いは引かれ合うってヤツ!?!?」

 

「……」

 

「なんか言ってヨ!?!?」

 

 

 画面の前のみんな元気かい?

 俺は正直こんな挨拶してる暇ないぐらいヤバい状況だ!毎秒毎秒死ぬ一歩手前って感じ!!

 それでもなんか喋ってないと落ち着かないのって何なのかね!?俺別に喋るの好きってわけじゃないんだけど!

 たぶんアレだ、アドレナリンどっぱどぱだからか!

 

 

「ほらフローヴァちゃんも! 俺がこんなテンション高いんだからそっちも同じくらいテンション高くして戦った方が良いと思うよ!? 何がいいのかは俺もよくわかってないけれども!!」

 

「……」

 

「だからなんか言えや!?!?」

 

 

 本日のゲストであるフローヴァちゃんは滅茶苦茶ノリ悪いけど、彼女みたいな美人さんがいるとそれだけで場が華やぐからね。俺は大歓迎よ?

 俺のこと攫って解剖しようとしたりしなければな!!!!

 

 

「────♪────♪」

 

「防御しろッ! 『エンペラーズ・ニュー・クローズ』ッ」

 

 

 俺の指示に従って、エンクロが迫り来る回転刃を双剣で弾いてくれる。

 便利だなスタンドって*1……オーバークロックしないと使えないのが悔やまれるぐらい便利なんだが。

 だって今も俺じゃ絶対できない双剣乱舞繰り出してるし。

 スタンドってすっげー!!*2

 

 いやぁ〜マジで俺スタンド使いになったんだなあ〜っ!

 ヤバいわ。人生で一番テンション上がったかもしれん。最高にハイになりそう。

 いやでもハイになると負けフラグだからな……ここは抑えて、冷静に立ち回るとしよう。間違っても「勝ったッ」なんて言わねぇようにしないと……。

 

 あとフローヴァちゃんもスタンド使いだったとか驚いたんですけど?

 っていうのも、戦いが始まってすぐにフローヴァちゃんも何やら深紅の女性型残像を召喚してきまして。

 どうやら物理はそっちに任せるスタイルらしく、この回転刃もその残像が出してきたヤツだ。

 名前は……フローヴァちゃん曰く『ヘカテー』っていうらしい。

 舞い踊りながら攻撃を仕掛けてくるのは正直カッコいいが、その矛先が俺って時点でもうダメ。

 なんでエンクロ捌きながらフローヴァちゃんへの銃撃も防いじゃうワケ?

 怖いのでどっか行ってください。

 

 フローヴァちゃんもフローヴァちゃんで銃弾を一瞥しただけでただの花吹雪に変えるのやめて?なんなんマジでその共鳴能力??

 あと「これオマケね」みたいなテンションで大切な俺の銃ぶっ壊すのやめて?赤い鞭?鎖?それの動き全然見えなかったんですけど?

 マジでどっか行ってください。

 

 

「ま────それでホントにどっかいってくれんなら苦労しないわな!!」

 

 

 ヘイヘーイ、俺がいつまでもやられっぱなしだと思うかい?

 逃げてばかりじゃ始まらない!攻撃こそ最大の防御ォォ!!

 

 

「くらわせろ────ッ『エンペラーズ・ニュー・クローズ』ッ!」

 

「……いちいち名前を呼ぶ必要が?」

 

 

 あるに決まってんでしょうが!?

 

 

 

 


 

 

 

 

「せぇ~んろはつづくーよ♪どぉーこまぁでもぉ~~~~♪」

 

「……」

 

「くらえエンクロ式クラッカーヴォレ────ってウソォフレーム回避!?

 

 

 喧しい。

 戦闘開始から彼はずっとこの調子だ。

 

 死の危機に際してアドレナリンが出ているからというのもあるのだろうが、それにしたって騒々しいにもほどがある。

 図らずも彼は、意図せぬ内にこちらの冷静さを段々と削ぎ落とそうとしているのだ。

 煩わしさではきっとこの瞬間の彼を超える者はいないと思えるほどに、ベラベラと……。

 

 

(────なんて、不愉快な)

 

 

 この苛立ちは、なにも彼の喧しさに対してだけではない。

 本来であれば取るに足らない相手に、こうまで手こずっている自分自身への不甲斐なさにも向けられている。

 

 手こずっている原因ならわかっている。

 一つ────本来の『偽りの神王』と、ヴィトンのソレとの()

 二つ────ヴィトンと一体化し、彼の支配下となった黒潮についての未知性。

 そして三つ────そもそもの目的のため、下手に彼を傷つけられないこと。

 

 

「オラオラァッ!!」

 

「……近づかないで」

 

「ンンンンン女の子に言われたくないセリフナンバーワン!!」

 

 

 『差』の意味は単純だ。

 『偽りの神王』でできたことが、彼の神王────曰く『エンペラーズ・ニュー・クローズ』にはできない。

 今のように、ヴィトンの神王は()()()()直接的な攻撃ばかりを繰り出している。『偽りの神王』が使うような、黒潮を多量に用いた攻撃は行ってこない。

 恐らく、あの神王自体が彼の体内にある黒潮で構成されただけの存在だからだろう。

 つまり────身体を構成する黒潮の総量がオリジナルに及んでいないということ。それを承知しているからこそ、ヴィトンも神王をそのようには動かしていない。

 

 ────だが。

 

 

百斂(びゃくれん)────穿血(せんけつ)ッ!」*3

 

「っ!」

 

 

 瞬間、頬を掠める黒き一閃。避けきれなかったのか、つぅ、と傷から血が垂れた。

 

 ()()というのはこういうことだ。

 『偽りの神王』ができたことは、彼の神王にはできない────だが一方で、『偽りの神王』がやってこなかったことを、『エンペラーズ・ニュー・クローズ』はやってくる。

 

 今さっき放たれた攻撃は、仕組みとしてはシンプル極まりないもの。

 彼の神王が両手を合わせ、神王のパワーを利用して掌の中に集めた黒潮を高圧縮。そして圧縮が最大限に達した時に放たれる『黒潮のレーザー』は、恐らく初速なら音速に達している。

 私であれば見てから避けることは可能だが*4厄介なことに、ヴィトンはこれをほんの小さな意識の隙間に合わせて放ってくるのだ。

 最初に不用心にもヘカテーで防御した際、ヘカテーの堅牢な外殻に大きく傷を付けたことから、決して肉体的に頑強なわけではない私が喰らえば目も当てられないことになるだろう。

 

 

(まったく……一体何を食べたら黒潮を圧縮レーザーにしようなんて思うのかしら)

 

 

 呆れながら頬の傷に触れ、軽く『調律』する。

 黒潮は体内には入っておらず、傷口の周りに付着したものもごく少量だったこともあり、あっけなく黒潮は真水へと変換された。

 

 ……少量とはいえ、油断はできない。

 これが手こずりの原因の二つ目。

 レビヤタンの黒潮とヴィトンの黒潮は、生物にもたらす作用こそ似通っているものの、本質的な周波数の構成はまるで異なっている。

 ()()()()()()()()のおかげで、レビヤタン由来の黒潮に対してならばやりようがあったが────彼の扱う黒潮は既にレビヤタンのものではない。

 つまり、私は現状彼の黒潮に対して何の対抗策も無く、触れれば浸食され、体内に入れば最悪の事態すら起こりかねないのだ。

 

 ヘカテーも同様に、直接彼の神王と鍔迫り合いになるような事態は避けさせている。

 当然だ。神王は成り立ちそのものが黒潮。必然的に肉体のすべては黒潮で構成され、常に身体からは黒い泥を滴り落としている。

 そんな相手と近接戦闘を繰り広げるなど、全身から強酸を分泌する怪生物か何かに組み付くようなもの。

 こうした理由もあり、こちらは遠距離からの攻撃に縛られてしまう。

 

 

「ヘイヘイヘーイそこのカワイイ彼女! 遠くからチクチク攻めるなんてナンセンスじゃねぇか? 近くに来て、俺と一緒に踊ろうZE☆

 

「……チッ」

 

「えっ舌打ち?」

 

 

 そして何より三つ目────できるだけ彼を傷つけずに捕らえたい以上、攻撃に手心を加えざるを得ないこと。

 理想は肉体的ダメージゼロの上での気絶。殺すなどもっての外だし、あまり傷も付けられない。

 

 たとえ、どれだけ動きの合間に隙があっても。

 どれだけ簡単に命を刈り取れる状況が訪れても。

 どれだけ彼が、こちらの神経を逆撫でするとしても。

 

 ……本当に、理解に苦しむ。

 一体何をどう生きていればここまでぺちゃくちゃと────、

 

 ────……。

 

 

(……そういえば……この男も、私と同じ────)

 

 

 

 


 

 

 

 

 ……いや、やべぇなコレ。

 マジでヤバい。ホントにヤバい。スゴくヤバい。

 俺、今まで下手したら死んでた場面滅茶苦茶あったんですけど。なんで俺今生きてんの?ってか動けてんの?

 多分俺今幸運の女神に愛されてる。メタクソに愛されてるよ?

 

 こうして戦っててわかったが────フローヴァちゃんは、強い。

 びっくりするぐらい強い。コロサウルスとかケルピーとかなんてレベルじゃ断じてねぇ。俺が今まで戦ってきた相手の中ならトップ間違いなしだろう。

 黒潮汚染を警戒してなのか、あの強そうな残像もフローヴァちゃん本人も遠距離攻撃しかしてこないのが救いだが……その攻撃ですら、防ぎきれずに当たりでもすれば一巻の終わりだ。

 

 しかも、こっちはまだ相手に目立ったダメージを与えられていない。

 さっきやっとノリと勢いでやった穿血がカス当たりした程度だ。これじゃあ倒すどころか撃退すら遠い。

 

 逃げればいいじゃんかって?あのねぇ……君それ「メガロドン素手で殺せ」って言ってるのと一緒よ?俺ちゃん花山薫じゃないんですけど??

 まず普通に逃げたら捕まるので幻覚を使わないとダメ。でもフローヴァちゃんの共鳴能力で幻覚は無効化されてしまうので結局捕まる。

 んじゃあ幻覚が通じるように隙を作れば、って話になるけど、それこそ範馬勇次郎に我儘を通すぐらいの無茶よ?現に今怯ませることすらできてないんだから。

 

 あーあ。ピンチもピンチ。大ピンチよ。

 

 だがしかァし!!

 此処で焦るのは二流、否、三流にて。拙僧は一流を志しておりますれば……。

 

 しゃあっここで俺の秘奥義が炸裂☆炸裂☆ゥゥ!脹相お兄ちゃん考案の『超新星』を────!!

 

 

「────ねぇ、あなた」

 

喰らえェェ────……っン何!? 急に話しかけてくるじゃん!?!?

 

 

 ぱしゃ、とエンクロくんの手にあった圧縮黒潮玉が解ける。

 いやだって急に戦意消して話しかけてこられたらビビるぢゃん!?!?

 今度からは弁護士を通してくださいっ!

 

 

「待て! 待て待て! 俺と話すと30分5000円の相談料が発生するぞ」

 

「……」

 

「……冗談だ。ちょっと嫌な弁護士を演じてみたくてな」

 

「あなたは────」

 

「あやっぱスルーかぁ……」

 

 

 

 

「────ファビアヌムの人たちと、もう一度会いたいと思ったことはない?」

 

 

 

 


 

 

 

 

 ヴィトン。

 ファビアヌム村で生まれ、村が黒潮に浸食され滅びた16年後の今、蘇った男。

 

 フローヴァが彼の姿を見かけたのは、本当に偶然だった。

 鳴式が漂泊者たちの手によって討たれ、もはやリナシータに残星組織(フラクトシデス)が注力する理由はない。

 残星組織(フラクトシデス)と遠くない内に袂を分かつ予定であった彼女もまた、例外ではなかった。

 

 ────うわごとの町で、残像を扇動する『奇妙な男』を見つけるまでは。

 

 

「────そうか。君がそこまで俺を研究したがるのは……」

 

「ええ────遠い過去の約束を果たすためよ」

 

 

 語り終えた彼女の冷徹な鉄面皮に、少しだけ色が戻る。

 外見年齢相応に────沈み、俯いた表情が。

 

 

「今まで何度も、何度もあらゆる方法を試した────でも、どれも駄目だった。残星組織(フラクトシデス)に入り、レビヤタンの力を用いて『喪失の冥府』を完成させたかったけれど……それも頓挫した」

 

「……人と協力とかは、しなかったのかい。理解者は?」

 

「一人だけ。……でも

 

 

 一瞬、彼女の目が一際大きな悲しみの色に包まれ────すぐに消える。

 彼女はそれきり答えの続きを口にすることはなく、それを見たヴィトンもまた聞くべきでないと感じ話を切り替えた。

 

 

ま、とにかく……俺を見つけた、と」

 

「────あなたは、私に大きな『可能性』を見せてくれた。黒潮による浸食を一切受けないままの蘇生。そして何より『一度目の蘇生』……。そこにきっと、私の求めるべきモノがある」

 

「……」

 

「あなたも理解しているはずよ。親しかった人々を、優しかった隣人を一気に奪われる理不尽を。そして理不尽に殺された人々と、もう一度会いたいという……その願いも」

 

 

 ────紅き女のその瞳は、昏き情熱に燃えていた。

 見る者すべてを眼光で焼き払ってしまいそうなほどに、熱く、熱く。

 

 一体何が彼女をそうまでさせるのだろう?

 約束?執念?妄想?願望?

 話を聞いただけでは計り知れないモノが彼女の背後に揺らめいているのを、ヴィトンはハッキリと感じ取る。

 

 そして、目を閉じて────遂に、口火を切った。

 

 

「……そっか。応援してるぜ」

 

「────はっ?」

 

 

 思わず、フローヴァは素っ頓狂な声を上げた。

 何故なら、そんな返答は初めてだったから。

 これまでも多くの人々に自身の想いを打ち明けてきた。そしてその度に帰ってくるのは、決まって拒絶か同調のどちらかだ。

 まさかそんな無関心な答えが返ってくるとは、流石に思いもしなかったのである。

 

 しかしヴィトンは、決して彼女の想いを軽く見ていたわけではなかった。

 

 

「ああ、応援してるっていうのはアレだぜ? 君が『納得』を迎えられることを祈ってる……って意味よ?」

 

「……納得?」

 

「そ、納得」

 

 

 不用心にも瓦礫に腰を下ろしながら、ヴィトンは頷いた。

 隙を突かれることを危惧していないのか。それとも、フローヴァの想いに対する誠意の証のつもりか。

 真意は彼にしかわからなかったが────結果としてフローヴァは、攻撃する素振りを見せず、ただ耳を傾けた。

 

 

「正直なとこ……フローヴァちゃんの想いは、痛いほどよくわかっちまう」

 

 

 重苦しい息を吐くヴィトン。

 その吐いた息の中に、たっぷりと苦悩を含ませながら。

 

 

「アイツらを助けに走ってる途中……死んだ知り合いと、たくさん目が合ったんだ。それ見て思ったモンだよ……生きたかったんだろうな、って────少なくとも、あの人たちはあんな理不尽で死ぬべき人達じゃなかった」

 

「……」

 

「でもな────だからって、俺はあの人たちを生き返らせようとは思えない」

 

 

 フローヴァの目が、僅かに見開かれた。

 何故、どうして。

 そんな言葉無き疑問に、ヴィトンは言葉を続けることで答えていく。

 

 

「……フローヴァちゃんの話を聞いててさ。俺は俺で、自分の中にあった不確かな疑問に決着をつけて、この結論を出すことができたんだ。だから、うまく言えないかもしれねぇけど────俺たちはたぶん、そもそも見ているモンが違い過ぎるんだと思う

 

「見ているもの? なら、あなたは何を見ているというの?」

 

「未来さ」

 

 

 あっけらかんと、ヴィトンは清々しさすら感じる表情でそう言ってのけた。

 

 

「俺はやっぱり未来を見たい。やって来る()()()()に存分に期待して、今を生きる。今を笑えなかった人たちの分まで、俺は笑いたいのさ」

 

「……意外ね。あなたに命を背負えるほどの強さがあるだなんて」

 

ないぜ? あるわけねぇだろそんなもん」

 

 

 は?と眉をひそめる彼女に笑って見せてから、彼はまた続ける。

 

 

「人の命背負えるほど上等な人間じゃねーもん、俺。……でもま、勝手に背負わされちまったんならしょうがねぇ。腹決めて、最後まで歩き切った方がカッコいいっしょ

 

「……なら……死んだ人たちが、蘇りを望んでいたとしても────あなたは未来だけを見て、彼らを見て見ぬふりをするの?」

 

「見て見ぬふりはしねぇよ。でも『生き残っちまって申し訳ない』なんて考えることもないかな。……あの人たちは死んだ。それは変えられないことで、たとえ変えられたとしてもそれをするのは間違いだ」

 

 

 ふと、ヴィトンは空を見上げる。

 ペニテントの空は、霧に覆われ真っ白だった。

 

 

「理由は────俺そのものかな。()()()で、たぶん数ミリ程度でも世界を変えちまってるかもしれねぇっていうのに────また無様に死んで、心臓も血も泥に置き換わった俺はもう……人だったとしても、()()じゃあない。……こんな有り様の亡霊は、本当ならいちゃいけないのさ」

 

「……なら、どうして? あなたが自分を存在してはいけない過去の亡霊だとするのなら、何故あなたはここまで来たの? 何故漂泊者に頼ろうと考えているの? ……蘇りを否定しておいて────ずるいとは思わない?」

 

「……思う。思うよ……ああクソ、マジでその通りだよ。……でも────言い訳っぽく聞こえるかもしれねぇけど────俺は、蘇りたいと思って蘇ったわけじゃないんだ。偶然生き返れただけなんだよ。……だからそこにはきっと、何か────『意味』みたいなものがあるんじゃないかって、信じたい」

 

「……」

 

「どうして俺が────あの時死んだ人たちの中から、よりにもよってこの俺だけが────ファビアヌムっていう墓から這い出てこれたのか。……こうやって旅してるのは、そこに意味を見出して『納得』したかったからってのもあるのかもな」

 

 

 語るヴィトンの顔は、凪いでいた。

 一目だけ見れば、それは諦念に見えることだろう。

 しかし────フローヴァにとって、その表情は……まるで未来に思いを馳せる、健気な詩人のような。

 そんな、気楽さと同居する希望を、彼から感じていた。

 

 

「……そう。ならもう、話すことはないわ」

 

 

 そう呟いた彼女の声と表情は、繕いようのないほどの悲哀と失望に塗れていた。

 

 ヴィトンとフローヴァ。

 その境遇はどこか似通っていて、彼女は無意識に再び理解者が現れることを求めていた。

 しかし、二人の考えは交わることはなかった。

 

 フローヴァは、どこかこうなるとわかっていた結末に嘆息し、そして今一度リコリスの指揮棒を振るおうとして────、

 

 

「ちょい待って。最後に一言」

 

 

 両手を上げて言う彼。

 なんとも間抜けな姿に、フローヴァも毒気を抜かれて眉間に深くしわを寄せながらも動きを止めた。

 

 そんな彼女に、彼は軽く感謝を言ってから。

 

 

「フローヴァちゃん。君の旅路に、幸多からんことを」

 

 

 これから己を害そうとする相手へと、祈りを捧げたのだった。

 

 

「……何のつもり」

 

「言ったろ? 応援するってさ」

 

「だからといって、敵に祈りを捧げるの? 理解できないわ」

 

 

 引き気味ですらあるフローヴァに、頬を掻きながらヴィトンは続ける。

 

 

「だって、君も『納得』のために命を張ってんだ。確かに俺にとっちゃ理解できねぇやり方ではあるが、気持ちは理解できる。なら頑張れぐらい言うさ。……俺は、君みたいな人が最後に『納得』できないまま終わるようじゃ、いよいよ世の中終わってんなって思うから

 

 

 だから、どうかその旅の果てに『納得』がありますように。

 

 そう言ってニッと笑って見せるヴィトンに、フローヴァは不愉快そうに深く深く息を吐いて────、

 

 ────最後に、ほんの一瞬だけ、小さな呆れ笑いを零した。

 

 

「……なら、私の『納得』のために────大人しく捕まってちょうだい」

 

「それは別〜。言ったろ? 俺は俺の人生の『納得』のためにこんなザマになってまで生きてんだ。一生モルモット生活なんざ、御免こうむるね」

 

「じゃあ────多少強引にでも……具体的には、四肢をちぎってでも連れ帰った方が良さそうね」

 

「いやそれは勘弁して」

 

 

 こうして似通った境遇の二人は決裂した。

 しかしどこか、その決裂は明るく、朗らかで。

 

 フローヴァの隣に再度顕れたヘカテーの花弁は、より赤々と輝いていた。

 

*1
スタンドじゃないよ『偽りの神王』だよ

*2
だからスタンドじゃねぇって言ってんだろ

*3
加茂先輩式

*4
共鳴者こんなんばっか……




Q.あれ?これ次回に続くパターン?そういうのはナシにしたんじゃなかったの?
A.スマンありゃウソだった。っていうか今回のお話はここで切った方がいいなって思ったので。


どうも。最近赤から橙に評価が落ちそうで焦ってる筆者です。
朝確認したら
週間ランキング39位月間71位日間加点20位
に入っていました。
感謝の極みとはまさにこのこと!!

それと前回誤字報告してくれた方にも感謝の極みを。てか前回誤字多すぎたので普通にケジメです。
阿波野の兄貴、どこでもケジメセット一つおねがいします。


フローヴァちゃんに幸せになって欲しい方は評価、並びに感想・質問など盛大に歓迎致します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ピンク髪とどうも縁があるらしい(作者:詞(みょん))(原作:鳴潮)

鳴潮の世界に転生したが、この世界は転生者がどうこう出来る世界ではない。▼それ故大人しく、静かに、目立たずに過ごしていたシオンだが……彼はどうにもピンク髪のヒロインたちと縁があるようだ。


総合評価:3334/評価:9.09/連載:11話/更新日時:2026年06月22日(月) 16:27 小説情報

起きたら超絶美少女が嫁になっていた件(作者:理 想 な ん か ね ぇ よ)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

▼タイトルのまんまです▼深夜テンションで書いたから続くかは未定▼記憶喪失のオリ主が死ぬほどゼンゼロキャラを曇らせていた話▼追記、リメイクします


総合評価:1737/評価:7.88/未完:6話/更新日時:2026年08月31日(月) 22:22 小説情報

開拓者を開拓者した夜について(作者:ひまなめこ)(原作:崩壊:スターレイル)

前世崩壊スターレイルと言うソシャゲを遊んでいた主人公はある日原因不明の死を遂げて崩壊スターレイルの世界へと転生してしまう。▼崩壊スターレイルの世界はかなり過酷であるが、運が良いことに彼は親にも環境にも、そしてそこそこの才覚にも恵まれて順風満帆な人生を送る事が出来た。▼そんな彼の人生が大きく変わる転換点となるのは大学の入学式直後、憧れの折り紙大学に首席で入学出…


総合評価:1680/評価:8.33/連載:9話/更新日時:2026年09月03日(木) 09:07 小説情報

フィジギフオリ主in新エリー都(作者:しじみを食べるクジラ)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

裏社会、ひいては治安局やH.A.N.D.にまで出回る一人のホロウレイダーの噂。▼「強きエーテリアスの近くに必ずその影あり」▼「戦う様子はまさに鬼神のごとく」▼その戦う姿を見た人々が口を揃えて「影すら目で追うことができなかった」と言ったことから「絶影」、そう呼ばれるようになった。▼そんな「絶影」は・・・▼「頼むリン。俺に接客業なんて無理だ。考え直してくれ」▼「…


総合評価:2219/評価:8.55/連載:5話/更新日時:2026年07月30日(木) 20:23 小説情報

ゼンゼロのキャラに好かれ過ぎた男の話(作者:しいたvol.3)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

我、流浪のものなり。▼強さと童貞の卒業を求む。▼全身鎧の男がゼンゼロのキャラたちから狙われる話。▼ガバ設定・キャラ崩壊多めです。


総合評価:2270/評価:8.42/連載:13話/更新日時:2026年07月31日(金) 20:44 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>