村のチンチクリンがドメロイケ女になってて俺への距離が近い話する? 作:負け組カチ組
パワー!!
……ハッ☆
「はーるばる来たぜ────ラグーナ城ォ!!!!」
スゥー……
ハァー!!!!
青い空!青い海!綺麗な街並みに活気ある人々!
いやぁ〜これだけでもここまで来たかいがあったな〜!!
「おっとそうだ。キャプテン・ブラントにも多大なる感謝を……」
「その感謝を受け取ろう、冒険者!! だが忘れるな? 俺は最後の仕上げを手伝っただけ。その感動は、間違いなく君の遥かなる旅路への正当なる報酬だということを!!」
くぅ〜!流石キャプテン!いちいち言うことがカッコいいぜ!!
でも感謝は感謝だ。
船の上でも滅茶苦茶良くして貰ったからな。「疲れているだろうから寝ていてくれて構わない」なんて言ってくれたんだぜ?もうその時点で感激よ。
流石に申し訳なさ過ぎたんで航海のお手伝いぐらいはさせてもらったがネ?
俺としても良い経験させてもらいましたよ。気分はまさにジャック・スパロウ。……あの人甲板掃除とかすんのかね?
「ヴィトン……航海お疲れ様」
「オ〜ゥロココちゃん! そっちこそお疲れサマンサァ!」
「? おつかれさまんさ~」
ぐぅ……可愛い。
俺の真似して首こてん、ってするのズルいよ?めっちゃズルい。
せっかく旅の終着点まで来れたってのに、尊死で終了とか冗談キツイから!?
「ところでヴィトン。すぐ漂泊者と会う? 多分この街のどこかにいると思うけど」
「おおマジか。遂に生漂ちゃんと謁見が叶うのね」
「大袈裟」
漂ちゃんか……どんだけ可愛いんだろ。
もう性別は女性ってのは
ん?「お前オーガスタとエンジェルに会うって決めたんじゃなかったの」って?
チッチッチ……甘い甘い。チョコラテのように甘いぜ君たち。
あのね。俺が決心してすぐさま「じゃあ会おう!」ってなるとでも思ってんのか!?こちとら心の準備ってモンがあるんですぅ!?
まあ漂ちゃんを訪ねるのは、その件に関して聞きたいことがあるからなんよね。
とりま、漂ちゃんにはチンチクリンどもの名前に聞き覚えが無いか聞いて、もし知ってたらどこにいるのか教えてもらうのと、最初に何て言って話しかければいいか相談するかね。
「どーしよ。あっちが俺のこと覚えてなかったら結構ショックかもしれん」
「……話を聞く限り、そのチンチクリン?の子たちはヴィトンのこと忘れてないと思う。……それより、ヴィトンの方が心配」
「え? その心は?」
「16年も経ってるんだし、その子たちも成長してるはず。……ヴィトン、一目見てちゃんとわかる?」
ハッハァ!それこそ心配ご無用ってヤツよ!!
俺ちゃん前世で親戚の子どもとよく遊んであげてたからわかるけど、案外時間経っても一目見てわかるモンだぜ?
アイツらも大して変わってねぇって!!ガハハハ!!
「ンマ……アイツらが月までブッ飛ぶレベルのドメロイケ女になってたら話は別だが……ないわな! ハハハ!!」
「……まぁいいや。それより、どうするの?」
「おおそうだった。……ん〜すぐ会ってもいいんだけど、ちょっとご飯食べたいな。先にそっち済ませちゃおっかな」
「そっか。ならちょうどいいね」
ほえ?ちょうど良いって何さ、ロココちゃん?
「────あの、ヴィトンさん」
「わーおナディアさん! どうしたんスか?」
ロココちゃんの目線を追ってみれば、そこにはもじもじとするナディアさんの姿が。カワイイ。
ってかマジでどうしたんだろ?
俺になんか用かな?
「……ほら、言うならちゃんと言って?」
「うう……わ、わかってますよ……あの!」
「?」
「もし! ……もしよろしければ────その、一緒にランチでも、いかがでしょうか……? できれば、二人きりで……」
……。
────え?これもしかしてモテ期来た????
「ん~……いないわねぇ……こっちじゃないのかしら?」
「ユーノよ……まだ探し始めて五分も経っておらんぞ? 気が早いのではないか?」
「とはいってもねぇ……アイツがいるなら、それこそ二分もかからずに見つけられると思うんだけど……」
「それほど目立つのか……?」
「うん。黒潮の気配もアレだけど、それ以上に行動がうるさいから」
ふふん、と言ってのけるユーノに対して、残り二人は呆れた顔を浮かべる。
勿論ユーノに対してではなく、それほどまでに目立つワムウという男に対してだが。
ラグーナ城へ到着したオーガスタとガルブレーナ、そしてユーノは、早速ワムウの捜索を開始。
まだ五分と経っていないが、三人とも既に黒潮の気配を感じ取っている。この街に彼がいるのは間違いなかった。
「ガルブレーナ? そっちはどう? 何か見つけた?」
ユーノが振り返ってそう問うと、ちょうどガルブレーナはアイスを食べ終わったところだったらしく、二本目に手を付けようとしていたところであった。
相変わらず凄まじいアイス好きである。
「はむ────……いいや。黒潮の気配はするが、具体的な位置まではまだ掴めん。地道に歩いて探すしかないだろう」
「そう……ま、しょうがないわね」
「……それにしても妙な気配だ。黒潮にしては妙に澄んでいるというか、なんというか……」
ぽつりと漏らした彼女の一言はもっともだった。
元来、黒潮とはそれそのものが負の感情の塊のようなもの。
当然黒潮の気配を感じ取れる者であれば、その気配がおどろおどろしいものであるというのは常識だ。
しかし、今現在ガルブレーナが感じているものは違っていた。
黒潮であることは間違いない。黒潮らしいおどろおどろしさも感じられる。
しかし────それにしては妙な
(黒潮を完全に抑え込んでいるのか? ……いや、それならまず気配すら感じ取れないはず。となると一体……?)
そこまで考えて、思考を一旦放棄する。
アイスが溶けてきてしまっていたからだ。
「危ない危ない……はむはむ……うん、良し」
「『良し』じゃあないのよ。一体いくつ食べるのよあなた────ってもう一本行くの!?」
「あまり食べ過ぎるなよエンジェル」
「フッ……それは無理な話だ。アイスは私にとって必要不可欠な────っと、もう無いのか……」
「すっごい残念そうな顔するじゃない……」
そりゃあ飛んでる最中も食べてたら無くなるわよね、と言わないのはユーノの優しさである。
ちなみに二本、三本というのはあくまで
「仕方ない。『トラットリア・マルゲリータ』で買ってくるか」
「今ぁ? っていうかあそこってアイス売ってたかしら」
「ああ。しかも最近種類が増えた。なんでも私と漂泊者の食べっぷりが評判になって、アイスの売れ行きが倍増したらしい」
「……ふむ。では先に食事にするとしよう。思えば昼はまだだったな……エンジェル。この間教えてくれた三割引きの文言はまだ有効か?」
「ああ。まだ期間内だったはずだ」
そのままツカツカと歩いていく二人。
その後ろ姿を見ながら、ユーノは呆れと微笑ましさが綯い交ぜになった表情を浮かべ、仕方ないわねぇと言いながら後を追いかける。
────確かに、お腹が空いてきたところだ。ワムウを探すのは食事の後でもいいだろう。
香ってくる『トラットリア・マルゲリータ』の窯焼きピザの匂いに誘われるまま、三人は歩を進めるのだった。
「ユーノも言うか? 三割引きだぞ」
「ぜったいイヤ。甘んじて払うっての!」
「────んで俺は言ってやったわけよ! 『これが守るための力ってヤツだぜ』ってな!」
「ふふ……なんか、決め台詞にしてはイマイチですね」
「マジ? 俺結構気に入ってたんだけど……」
ハロハロ〜?画面の前の非リアども~?
俺今、ナディアさんと『トラットリア・マルゲリータ』でランチデートしちゃってまーす!
羨ましい?羨ましいよな??羨ましいって言え!!!!
いやぁ……ホントにここまで来て良かったなぁ……。
道中いろいろあったけど*1、やっぱ生きてて良かったなぁ……俺、今最高に幸せだぜ……。
なんかナディアさんの持ってきてくれたワイン滅茶苦茶美味しいし……。
飲まずにはいられない状態ですよコリャ……!
「ヴィトンさんのお話って、なんだか演劇みたいですね。おとぎ話みたい」
「あ~……そうかもねぇ。傍から聞くと作り話っぽく聞こえちゃうか」
「はい……でも────」
?
ちょいちょいナディアさん?
そこで何故テーブルの上の俺の手に手を重ねるの??
「────だからかな……まるで、おとぎ話の王子様みたいです。……私を悪い魔物から助けてくれた、白馬の王子様」
「……ならナディアさんは、囚われのお姫様……ってところかな?」
「ふふ……素敵」
────ッよォォーっし!!
いいぞ俺!!偉いぞ俺!!ちゃんと上手い返しできた!!すごくギリギリだったけれども!!
ぶっちゃけキョドって陸揚げされた魚みたいに「コッ……ココォッ……」ってなるとこだったが、そこはもう気合よ。童貞の本気ナメんな。
いやでも今度はポーカーフェイス大丈夫だよね?フローヴァちゃんの時みたいに感情が顔に出てないッスよね!?!?
「ねぇ……ヴィトンさん」
「うん?」
あっぶね。
何その猫なで声。ナディアさんそんな声出せんの??
今あとちょっとで高校球児レベルの返事するとこだったよ????
ホントマジで何で揃いも揃って美人さんって男性特攻攻撃常備してるんだろうかね────ッてェェェェ!?!?!?!?
ゆゆゆゆゆゆゆっ、指!!
ナディアさん指!!指が、指が!!絡んでますよ俺の指に!!
「ふふ……顔が赤いですよ……? 熱いんですか……?」
「ンンンンンままままままぁ? ちょちょちょっと暑いかもね?? 今日いい天気だし????」
「なら────ちょうどいいですね」
ン何が!?!?!?!?
てかさっきから俺の手をにぎにぎしないで!?!?ドキドキしちゃうから!!無いはずの心臓がドキドキバクバク!!
マズい。このままだと俺は死ぬ。
もうポーカーフェイスとか気にしてらんねぇ!!一刻も早く冷静さを取り戻さなくては────!!
「────ちょっと、寒いんです。だから……
それは「温めヨロシクゥ!」的な意味ですか??
があああああ畜生!!こんな時に堂島の龍が脳裏に過る俺ってなんなんやああああああ!?!?
「そ、それは……どういう意味かな」
「……女の子に、言わせるんですか? ────どこか二人っきりになれる場所、いきましょ?」
「────っ」
────拝啓、俺が今まで知り合った人たちへ。
俺は遂に今日、最後の大人の階段を上るかもしれません。
今まで大変お世話になりました。グッドラック。
いやいやいやいやいやいや!?!?!?
なんか早くない!?展開早くない!?こんなモンなの!?そういう関係になるのってこんなに早いの!?ってか女の子の方から持っていくものなの!?俺ちゃんその知識ないからわかんないよぉ!!
ハッ!?まさかアレか!?これはまさかハニートラップってヤツなのか!?!?
ええいフローヴァちゃんめ!確かに応援するとは言ったけどコレは手段選ばなさすぎやろ!!*2
え?じゃあお誘い拒否るのかって?
そんなワケねぇだろォ!?!?!?!?
ハニトラじゃなかった場合、女の子の気持ちを無下にすることなんざできるかい俺がぁ!!!!
だ……だがっ!
俺は据え膳を前にどうしたらいいかわからなくなるタイプの男!!すぐさま「男の恥ィ!!」できるほど度胸があるわけではないッ!!
~ッ、だ、駄目だッ!!駄目駄目駄目!!(IRIS OUT)
ここは『退く』のだ……『アプローチ』から身を隠し反撃の時期を待つ……ここで一時『退く』のは敗北ではない……!!
オレには頂点に返り咲ける能力があるッ!
な、何か────何か逃げ道は────!
「はわわ……」
アッ、マルゲリータさんッ!!
いやホントごめんなさいね白昼堂々!!
ってかそんな顔真っ赤にして指の隙間から覗きこんじゃうとか、マジでそんなベタなことする人いるんだな……。
いやコレはチャンス!!
瞬きだ!!瞬きでマルゲリータさんに助けを求めるのだ!!
モールス信号わかるよね?わからないか?わかってくれ頼むから!!
「
「……!!」
おおっ、表情が変わった!!
コレは期待でき────ん?
「────っチュ!」グッ!
いやグッ!じゃねぇよ!?!?
SOSしてんだよこちとら!?助けて欲しいって言ってるの!!オメーアレだろ!!絶対「邪魔しないでね」とかそういう意味に受け取っただろ!?!?
真逆だよ真逆!!うーわめっちゃ良い顔で頷きやがって……!
クッソよく考えたら料理人がモールス信号理解してるワケないわな!!はいはい私のミスでした!!!!
「ヴィトンさん……? どうしてそんなに瞬きしてるの……?」
「いやー目にゴミが入っちゃってね!! 参った参った!! でももう取れたから大丈夫なんでそんな顔近づけないでね恋しちゃいそうだから!!!!」
「なぁんだ……取ってあげようと思ったのに。……まぁでも────」
「────どうせ、後でもっと
だめだ……
やはりこのオレがここで……逃げるわけにはいかない……!!
『誇り』が消える……ここでこの人から退いたら!!
オレは『(童)帝王』だ
オレが目指すものは『絶頂であり続ける』ことだ*3
ここで逃げたら……その『誇り』が失われる
次はないッ……!
(『(童)帝王』はこのヴィトンだッ!! 依然変わりなくッ!)
「!?!?!?!?!?」
ヘアッ!?何!?滅茶苦茶ゾッとしたんですけど今!?
多分俺の頭上に『危』マークが出た気がしたんですけど??ここって鳴潮かと思ってたけど実はSEKIROだった……?
それにしてもマジで今の何?覇王色の覇気??
とにかく凄まじい殺気ってヤツだッ!ケツの穴にツララを突っ込まれた気分だ……!
「……ヴィ、ヴィトンさん? 後ろで……歩いてくる、あの……お知り合い……ですか??」
「えっ」
いやちょ、やめて?
俺ホラー無理だから。お化け屋敷とかビビって直前で逃げるタイプだから。
つーか今、ナディアさん俺の後ろ指差したよね?いや怖。振り向きたくないんですけど。
いやでも振り向かないと始まらないよなコレなぁ?
────ええいままよ!!最大最強の振り返りィィーッ!!!!
「ちょ────ちょっと!? どうしちゃったのよ二人とも!? 共鳴能力ダダ漏れよ!?!?」
ユーノの必死の制止も、今の二人には届いていない。
オーガスタとガルブレーナ────リナシータを救った立役者二人は今現在、これまで経験したことのない凄まじい激情に駆られていた。
最初にその姿を見た時、二人は夢を見ているのだと考えてしまった。
無理もない。
眼前には、かつてファビアヌム村で共に過ごし、想いを寄せ、そして自分たちを庇って死んだ────ヴィトンとまったく同じ男がいたのだから。
最初は混乱した。
ヴィトンと瓜二つの外見をした男が『トラットリア・マルゲリータ』の一席に座り、楽し気に女性と談笑しているのだから。
ユーノの言葉により、彼が今までずっと追って来ていた黒潮人間『ワムウ』であることも混乱に拍車を掛け、黒潮が創り出した造物かとすら思いかけていた。
しかし────それを否定したのは、他ならぬガルブレーナだった。
彼女には、かつて取り込んだ【怒涛級】残像、バロールの『魔眼』が備わっている。
その能力は『見抜く』ことに特化しており、今まで彼女が対峙したあらゆる事象を見抜いてきたそれを、ガルブレーナは当然この時にも使用していた。
だからこそ理解できた。
目の前にいる、これまでワムウと名乗ってきたあの男が────間違いなく本物のヴィトンであるということを。
無論、
しかし、ヴィトンという男と幼少期を共に過ごした二人だからこそわかる『感覚』のようなもので、二人は眼前の男が間違いなくヴィトンであるという確信を持ったのであった。
ならば後は決まっている。
誰が言い出すでもなく、二人同時に懐かしい彼のもとへと向かおうとして────、
『────どこか二人っきりになれる場所、いきましょ?』
────聞き捨てならない言葉に、
『ヴィトンさん……? どうしてそんなに瞬きしてるの……?』
やめろ。
それ以上、彼の名前を口に出すな。
彼を呼ぶな。誘惑するな。近づくな。
……本来彼女たちにとって、この程度の光景はどうということはないはずだった。
レビヤタンの『ささやき』にはこういった類のものもあったし、現に二人はそれを乗り越えているからこそここにいる。まったくもって問題はないはずだった。
『なぁんだ……取ってあげようと思ったのに。……まぁでも────』
しかし────今だけは悪い状況が重なってしまった。
あまりにも突発的過ぎたこと。
本物で十中八九間違いのない彼との再会。
レビヤタンとの戦いが終わり、多少なりとも気が緩んでいた部分があったこと。
16年という歳月が知らず知らずのうちに積み上げていた『想い』。
そうして重なりに重なったそこへ、『思いもよらず再会できた愛しの人に言い寄る女』という撃鉄が落ちた結果────。
『────どうせ、後でもっと
「「────ッッ」」
二人の激情は、臨界点を突破した。
やあ皆。ヴィトンだ。
挨拶が遅れてしまい申し訳ない。
え?どうしてそんなにキチっとしてるのかって?
それは勿論────、
「「……」」
────こちらに凄まじい殺気を纏いながら近づいてくる、あのドメロイケ女さん二人に殺されそうだからさ……。
いや俺なんかしたぁ!?!?
してないよ?俺あんな美人さん知らんし、会ってたら絶対覚えてるって!!記憶にございません!
ま、まぁいいや。
こういう時は話すのが肝心だな!
ワタシナニカシマシタ~カ?うし。予行練習完璧。俺は大人だからね……言葉で解決できるならしちゃわないとぉ!
「────さぁーていっちょ俺の口の回転率をご覧あれ……って、アレ??」
「……」
お、おーいナディアさ~ん?
手を握ってくれるのは嬉しいんスけど、今それどころじゃないっていうかぁ?
なのでちょっと、ちょっと一瞬だけ手を離してくれませんかねぇ??その代わり後で抱き付いてくれてもいいので!!
「あともう少しだったというのに……まあいい。なら────」
……あの、ちょっと~?聞いてますかナディアさ────
「 ヴィトンさん 」
「……!」
「 アナタは今狙われています。逃げてください。誰にも捕まらないように、なんとかラグーナ城の外まで逃げて 」
「────……」
「 誰も信用してはいけませんよ……この、私以外は 」
────……。
……。
……ハッ!?
アレ!?今ASMR音声が聞こえたような気がしたんですけど!?
いやってかそれよりナディアさん!!
ナディアさん連れて逃げんとヤバ────
────って……い、いない……?
えっもしかしてナディアさん逃げたァ!?
俺より先に!?普通に逃げた!?峰不二子か何か!?!?
ふむ。つまり「ごめんねぇ~ルパァ~ン♡」ってことか。なるほど……嫌いじゃないわ!!
「……ヴィトン……」
あやっべこっち見た。
ゆっくりズンズン歩いてくるの怖いんですけど?
殺気はなんでか緩んだけど、まだその……何?オレンジ色の稲妻と青い炎立ち上らせてんの滅茶苦茶怖いんですけど????俺のことすぐにでも始末できるよって????*4
いやもうアレだけで俺をここで始末する気満々な感じ。
てかなんだって急に俺の方見たんだ……?
さっきまでナディアさんの方見てたよな?なのにいなくなった途端俺に……。
────あ、そっかそっか。なるほどね?
あのドメロイケ女さん二人の目的って、俺か!!
俺を攫おうとして、人質にするためにナディアさんを狙ってたって考えれば筋通る!!
ってなると────おのずと正体もわかってくるってモンだぜ!
そう、ズバリあの二人は!
(フローヴァちゃんと同じ、
なにせつい最近フローヴァちゃんから命からがら逃げだしたばっかりだからな。煮え湯を飲まされたフローヴァちゃんが、今度は仲間に協力を仰いで俺を襲っても不思議じゃねぇ。
人質についてはまぁ……フローヴァちゃんもやろうとしてたし……まぁ卑怯ではあるが、俺に対する戦略としちゃ最善も最善。それをされたら俺は降参するしかない。
これはただの推測だが、あながち間違ってるってワケでもねぇだろう!
そしてそうと決まればやることは簡単だ!
さっさとこっから逃げ出す!いつも通りな!!
「ヴィトン……っ」
いやその時々名前呟くのは何?ターゲットの名前忘れないようにってか勘弁してくれェ!?!?
それにいつまでゆっくり歩いてんだよ!!
「近づかなきゃてめーをブチのめせないんでな」ってヤツ?
ちょっとフローヴァちゃんから聞いてないのぉ!?生け捕りだって言われてんでしょうが!!!!怒るよ!?フローヴァちゃんが!!!!
い、いやまあとりあえず逃げの一手なんでしょうけども、肝心の逃げる隙というものが無くてですね?
いやどうすっぺ────おや?誰か……?
「ちょっと二人とも! こんなところで共鳴能力使って……一体どうしちゃったのよ!?」
「アイエエエエエエエ!?!?!? ユーノ、ユーノチャンナンデ!?!?!?」
いやいやいやいやいやいやセブン・ヒルズにいたよねユーノちゃん!?なんでラグーナ城にいんの!?
もしやセブン・ヒルズから直通でラグーナ城まで行ける特急線みたいなのある?あるんならそれ俺に教えてよぉ!?!?
ってかそもそもなんでユーノちゃんそのドメロイケ女さんたちと仲良さげなん?
ハッ!まさか……ユーノちゃんも俺のことを……!?い、いやでもな────って、二人の視線がユーノちゃんに向いた!?
いやまあ俺の前に立ちはだかったんだから当たり前ではあるけどネ!?!?
こ────これは庇うべきか庇わないべきか!?
いやでも────……、
……クッソもうわかんねぇ!!
残された道は────一つ!!!!
「久しぶりねワムウ……ってかヴィトン? 早速で悪いんだけど、聞いてほしいことが────」
「ヘイッそこのイケメンレディ二人組!! そもそもこの俺が目的だろ? ならユーノちゃんより俺のこと捕まえてみなーッ!!!!」
「えっちょ何してんの!?!?」
ユーノちゃん……!俺に構うな。この隙に逃げなさい……っ!!っていう感じで俺が引き受けた風にして逃げる!!これがベスト!!それが最善ンンンンン!!!!
「オオオオルルルァァァ!!!! 追ってこんかいィィィッ!!!!」
「……オーガスタ」
「わかっている。……追うぞ。絶対に逃がさん」
「ああ────お前は左」
「「行くぞッ!!」」
「行くなァァ待てェェ!!!!」
瞬間ッ!ユーノは跳躍した!
彼女を取り巻くカオスな状況への怒りをパワーへと変換し、彼女は純粋な脚力のみで『トラットリア・マルゲリータ』の屋根へ到達したッ!
そのまま体勢を反転────屋根を発射台のように使い……ユーノはッ!!
「────ルナオーラム(の弓)だッ!」
二人を、その弓にて思いっきり押し潰したッ!!
ドグオオン、といった風に初動を潰された二人。
しかし二人はセブン・ヒルズの英雄王とデビルハンター。彼女らがその程度でダウンするわけもなく、すぐさまユーノごと弓をどかし、怒りの表情で立ち上がった。
「ッ、何のつもりだユーノ!? 今はそれどころではないのだ────」
「てぇいっ!!」
「余っ!?!?」
意外!それはビンタッ!
パッシイァ、とでも言わん限りに振るわれた平手打ちは見事オーガスタの頬を打ち据えた!!
「な、お前なにを────」
「そぇいっ!!」
「きめらっ」
続いてガルブレーナにも同じく平手の一撃ッ!
店内に反響するほどの威力を連続で喰らわせたユーノ────だが!
「いいから一旦────ッ落ち着けェェェェェ!!!!」
彼女の目は!まだ燃えていた!!
「ユノユノユノユノユノユノユノユノユノユノユノユノユノ────ッ!!」
ビンタッ!
スパパパパパァンッと鋭い音の響くような、凄まじいビンタ・ラッシュ!!
それらが一切の抵抗を許さないまま、二人の頬を打ち据えていく!
しかし何故?
何故歴戦の英雄である二人は、ユーノからの平手打ちを受け続けているのか!?
答えは単純明快────即ち、『愛』ッ!
ユーノには、二人を「邪魔してやろう」だとか「攻撃して痛めつけてやろう」などという気持ちは一切なかった!
彼女にあるのはただ一つ────「それでいいのか」という静かな問いかけのみ!
「あなたたち……そんなんでいいのッ!? せっかくの再会なのに、それでいいのッ!?」
「「……!」」
ラッシュを止め、幾重にも真っ赤な紅葉が張り付いた頬を痛そうにさする二人に向け、ユーノは吠える。
彼女とて、二人の気持ちを理解していないわけではない。
目の前にはもう二度と再会は叶わないと思っていた、死んだはずの大切な想い人。そんな人が、眼前で知らない女に誘惑されているなど────腹が煮えくり返るというものだろう。
しかし、ユーノはそれにあえて待ったをかけた。
嫉妬もするだろう。許し難いことだろう。
────だが、それをぶつけるのは今ではない。
「せっかく会えたなら……せめて笑顔か、涙で行きなさい! その嫉妬も怒りも────ワム……ヴィトンに自分たちがあの時のあの子たちだって、きちんと理解してもらってから存分にぶつけなさいよ!」
「……ユーノ」
「……台無しにしないの。こういうのって一生ものなんだから……ね?」
果たしてユーノの想いは────届いた。
まるで冷水に漬けたように頭が冷え、二人はやっと冷静さを取り戻したのであった。
「……すまぬ。おかげで怒りで曇っていた目が晴れた」
「私もだ。……確かに、今は嫉妬に怒り狂っている場合じゃないな」
すっかり普段の様子に戻った二人は、そのまま眼差しを真剣なものへと変える。
二人の目が見るのは────この騒動によって巻き起こりかねない『最悪の結末』から、この街の人々と、何よりヴィトンを守るための未来だった。
二人とも、ワムウ
彼の共鳴能力には違和感があり、もしかすればオーバークロック時に何らなかの異常が発生するのではないか────と。
ヴィトンの状態は不明だ。
一見安定しているように見えても、しっかり検査したわけではない以上それは『シュレーディンガーの猫』でしかない。
しかももし彼が追い詰められ自発的にオーバークロックした場合、黒潮によって変質している可能性のあるそれが、果たしてどんな結果を招くかわからないのだ。
冷静さを取り戻した彼女たちは、改めて『ヴィトンが追い詰められてオーバークロックしない内に確保する』ことで一致した。
「さ────そうと決まれば早く行きましょ。あなたたちの愛しの彼を、さっさと迎えに行ってあげないとね?」
「ユーノよ……私が悪かったから揶揄うのはやめてくれぬか……」
「あらごめんなさい。……そうそう、ガルブレーナは『あなた
「……私が悪かった。だからやめろ……!」
顔を真っ赤にして口を引き結ぶ二人を笑いながら、ユーノはひょいと弓へ飛び乗る。
────仕返し代わりの揶揄いは、全部が終わってからにしよう。
そんな思いと共に、いよいよ二人とともにヴィトンを追おうとしたところで────。
「────はい。至急応援頼みます!!」
「「「……ん?」」」
店の端で連絡を行う、一人の男の姿が目に付いた。
「ね、ねぇちょっといい? あなた何してるの?」
その姿に嫌な胸騒ぎを覚えたユーノは恐る恐る、服装からしてモンテリファミリー所属と見られる男に声を掛けた。
彼女の不安は単純だ。
……その連絡は、果たして誰に??
「これはこれはお三方! ……この連絡はファミリー全体への緊急連絡です。先ほどユーノ様があの男と黒潮に明確な関連があるとおっしゃっていたことと、お二人が尋常ならざる様子でしたことを鑑みて、勝手ながら応援要請をさせて頂いておりました」
「────あ、そお」
ヒク、とユーノの口の端が震える。
それはつまり、これ以上事態がこじれる……ってコト────?
彼女の頭は既に真っ白になりかけていたが、男は彼女の様子に気付きもせず、むしろ笑顔で
「ご安心ください。連絡したファミリーの者たちには、見つけ次第有力な方々へ随時応援を要請するよう言いつけております。きっと漂泊者様をはじめとした方々の協力があれば、あの男の捕縛は容易いでしょう!」
ユーノはめのまえがまっくらになった!
事態を重く見たモンテリファミリーの男の判断は、決して間違ってはいない。
ヴィトンが黒潮と関連があることは間違いなく、大きな不安要素となるのも致し方ない。
────この場合問題だったとすればそれは……人を巻き込みすぎたことだろうか。
「成程、わかりました。すぐにファミリーの人間を増員し、ことに当たります。わたくしも出ますわ」
「黒潮人間? ……はぁ。どうしてこう面倒ごとが重なって……ついさっきやっと業務が終わったところなのに」
「鬼気迫る様子で……あの二人が? 成程、ただ事ではなさそうね。フィサリアからも人を出して。わたくしも行くわ」
「黒潮人間……新たな黒潮の代行者ということ? とにかく捕まえよう。行くよアブ!」
モンテリファミリー次女、カルロッタ・モンテリ。
アヴェラルド金庫防衛課所属、ザンニー。
フィサリアファミリー当主、カンタレラ・フィサリア。
そして今州、リナシータを救いし救世主、漂泊者。
かつて、鳴式決戦にて活躍した名だたる『リナシータの英雄』たち。
彼女らは皆、新たなる脅威と思われる存在を前に協力を放棄するようなことはしない。連絡はあっという間に広がっていき、今や多くの人を巻き込んだ『ヴィトン包囲網』が敷かれようとしていた。
オーガスタとガルブレーナとユーノは、事態の収束のため。
そしてその他大勢は、ラグーナ城の平和を守るために走った。
────斯くて、リナシータ最大の鬼ごっこが幕を開けたのであった。
邪魔が入ってしまったな……もう少しで連れ出せたというのに、まったく不愉快だ……。
さて……これであとは隙を見て────
────あの男の中にある、新たなる黒潮を貰うとしよう────。
「……あれ、ナディア? どうしてここにいるの? ヴィトンとランチデートに行ったんじゃないの??」
「へぇっ!? らららランチデート!? い、いえ確かにヴィトンさんは素敵な人ですけどっ! そ、そんなのに誘うだなんてぇぇ……」
「え……でも確かに二人で『トラットリア・マルゲリータ』に……」
「いやいやいやいや!! 行ってないですって! し、しかも私ずっと荷下ろし作業してましたよ!?」
「……どういうこと?」
◉ヴィトン:
うおおおおおお捕まってたまるかアアアア!!!!俺はチンチクリンどもの成長を見るんだアアアア!!!!
◉オーガスタ&ガルブレーナ:
ユーノのおかげでヤンデレルートは回避。それはそれとしてヴィトンをもう二度と失いたくない。なので絶対に安全に確保する。
◉ユーノ:
ど う し て こ う な っ た。親友二人のヤンデレ化を阻止した大英雄。
◉漂泊者&カルロッタ&ザンニー&カンタレラ:
黒潮人間……?とは思いつつも、放ってはおけないので協力。なお微妙にオーガスタとガルブレーナの二人と目的が違っていることには気が付いていない。
◉ナディア?:
(オリチャーだけど)計 画 通 り
ちなみにセリフの無かったキャラ達はそれぞれ、
〇フィービー
シャコンヌと共に『そよ風のヘイヴン』へ行っているため不在。
〇シャコンヌ
フィービーと一緒に『そよ風のヘイヴン』に行っているため不在。
〇ブラント&ロココ
〇ルパ
セブン・ヒルズでの音骸闘技大会出場のため不在。
〇カルテジア
今現在リナシータのどこか。なんでも気になることがあるらしく。
……です!
大量の鳴潮キャラに追いかけ回されたい方は評価、並びに感想・質問など盛大に歓迎致します。
……現在次話執筆中ですが迷走してます。ぐすん。