村のチンチクリンがドメロイケ女になってて俺への距離が近い話する? 作:負け組カチ組
そして前話の通り、今のヴィトンは普段通りじゃないです。
男が催眠状態になってもエロくないからやめて。
────雑魚の罪は速さを知らんこと。
誰も俺の逃げ足を理解してへんかった……。
「────いたぞーっ! こっちだー!!」
「止まれーっ!!」
(────お前らやないッ!)
あっち側(ラグーナ城外)に立つんは────俺や!!!!
「くそっ……速すぎる……!」
「なんて逃げ足の速さだ……!」
ハッハー!雑魚どもめ!!
そんなすっトロいんじゃあいくら頑張ったって俺は捕まえられんよォ!!
最高速度でブチ抜いたる!!!!
オット!挨拶を忘れるところだった。
ドーモ、ガメンノマエノオトモダチ=サン。ヴィトンです。
今現在俺ちゃん、絶賛逃走中。
これだけで説明がつくくらい単純明快な苦境に立たされているのだけれど、まあ俺の人生ずっと苦境みたいなモンだからな。
カワイイお嫁さん娶るまでこのハードモードは続くと思ってるぜ……。
あと何気に逃げてて気が付いたことが一つ。
この人たち、多分
「駄目だ! ファミリーに応援を要請しろ!」
「威信にかけて絶対に逃がすな!!」
ほら。ことあるごとに『ファミリー』って言ってるし。
多分
いやその場合あまりにも恐ろしすぎるんですけどね。
だってそうだろ?たとえ龍が如くが好きでも、実際にヤクザと関わってみたいなんて考える奴はいない……それと一緒さ。
(ん? 待てよ? つまり俺ちゃん今、
オラはにんきものってか?やかましいわ。
誰がテロ組織と反社会勢力に狙われて喜ぶマゾやねん。クソ失礼だぞ畜生。
ってかさぁ!なんでいつの間にか追って来てる奴がモブ顔の野郎共になってるワケ!?
「オメーらに追いかけられたってなんも嬉しくねぇんですけどォ!?」
「アイツ何言ってるんだ……?」
「さぁ……」
俺ちゃんてっきりあのドメロイケ女さん二人に追いかけられるのかなーなんて思ってたらさぁ!?なんかいつの間にかモブ顔どもに追いかけられてるんだけど!!
おめーらみたいなのに追われても何にも楽しくねぇわすっこんでろ!!
それにオメーら如きじゃまず俺の俊足にはついてこれないぜ!
どんだけチンチクリンどもに鍛えられたと思ってんだ?オメーら程度じゃあ一瞬で捕まるのがオチだな。へっ。
(とはいえ……俺はこの街の作りに慣れてねぇ。そこを突かれたりしたら────)
「────ここまでだ! 観念しろ!!」
「っとこうなっちゃうんですよねぇ!!」
しくじったな……。
なんて
ちょっと逃げ方が単調過ぎたか。次はもう少し立体的な動きをしないと……。
「何を笑ってる? お前はもう終わりだぞ!」
「んー……私が終わり、とおっしゃった? んふふふ……ん~違いますねぇまったく違います。えー、見当違いもいいところと言っておきましょうか」
「なんだと!?」
うおっすぐキレた。
流石は古畑任三郎……ちょっと”ぽい”喋り方しただけでこの効果。すげぇなこれ……次から使おうかな。
ん?なんで余裕こいてるのかって?
そりゃあお前……余裕があるから笑ってるに決まってんでしょうが?
「ハイハイじゃあちょっと皆さまお手を拝借……」
「! 動くな! 動いたら撃つ────」
「いよぉぉ~~~~……────」
────パンッ────
「────領域展開『無量空処』」
「ハッ!? こ、ここは……?」
公園────モンテリファミリーの職員たる青年が目覚めた場所を一言で表すのなら、それだけで事足りた。
とはいってもラグーナでよく見るような公園ではない。
金網のフェンスに、簡易的なベンチ。そして公衆トイレと思われる建物があるのみであり、その他は青々とした緑に囲まれている。
そんな謎の空間に突然放り込まれれば、誰だって困惑するというもの。
先ほどまで必死に危険人物を追っていたとなれば、なおのことであった。
「な……なんだ、ここは? 俺は確か、さっきまで────」
────と。
青年の目に、ベンチに座る人影が映った。
(なんだ、この男は)
青いツナギに身を包んだ若い男。
容姿について言及するならば、間違いなくハンサムの部類に入るぐらいには整っている。
一目見た感じでは武器を携えている様子はない。雰囲気もどこかやわらかく感じる。
だからだろうか……彼は一瞬だけ力を抜いてしまい────、
男に動く隙を与えてしまった。
プチ、プチ、と途端にツナギのホックを外し始める男。
青年が異様なものを見るような目で男を見てもなお、彼は一切動きを止めず。
そして、彼の引き締まった筋肉……何より男のモノが無遠慮に晒されるや否や────男は、言った。
「────やらないか」
「す────す、ごく……大き……」
「……Oh……コイツは阿部さんだったか……ご愁傷様」
ヤッホーおめーら!俺は無事だぜ!
あれから第二波・第三波って続いたけど、その度に同じ方法でおねんねしてもらった。
具体的にどうしたのかって?そりゃお前、全員もれなく俺の幻覚で夢見て貰ってるのよ。
「ティーダ……てぃーだの、てぃー……」
「うわああああムキムキのおっさんが殴りかかってくるううううううう!?!?」
「何なんだこの文字の弾幕は……!? 目がっ…! 目がぁぁっ!!」
これただの悪夢じゃねぇだろって?それはそう。
にしても壮観だねぇこれは。
っていうかこれ結構悪いことしたんじゃねぇかな俺?揃いも揃ってカオス度高いからなぁ。耐性ゼロの人たちにやることじゃなかったかもしれん……。
まぁ『くそみそテクニック』に『おとわっか』とか『アームストロング上院議員』、『レッツゴー!陰陽師』とか流したのは悪いと思ってるよ……でも銃構えて撃とうとしてくるのに対する防衛行動としちゃあ、まあ優しい方なんじゃないかな〜……なんて思うわけなんですけれども。
まあ今はちょっと揺り起こしてあげるわけにもいかんのですわ。起こして脳天ブチ抜かれたら困るし。
ごめんね〜もうちょっと名作堪能してて。ネ?
「やり……やります……スギィ」
おっとコイツは『INMU KING』だったのか……流石に可哀想なことしたな……。
やっぱランダムじゃなくてある程度は選んで流すべきだったかなぁ……でもそんな暇なかったしなぁ……。
どーしよこれでこの人がPTSDになっちゃったら。
淫夢でPTSDとか最悪すぎるな。ちょ、ちょっとこの人だけできれば後で無事かどうかだけ確認────。
いや、やっぱいっか。
寄り道してる暇とかないもんな。
俺には
は?なんだよこの身を捧げるって。知りもしない奴のためなんかになんで俺が俺俺おれおれおれ何かなにかナニカおカシ????イ????
「 誰も信用してはいけませんよ……この、私以外は 」
────……。
……?
あ、違う違う。そうだ先急がねぇと。
さぁてとんずらとんずら……。
「おっと……あっぶねぇ踏んづけちまうとこだった」
しかも女の子じゃないスか。女の子踏んづけるとか許されないにもほどがあるからな。もし踏んでたらハラキリよハラキリ。
……にしても良い夢見てそうね君は……。
まぁ当たり前か。わざわざ君だけそういう風に設定したんだもんな。
そうそう、俺ちゃん実は今までできなかった対象の選択ができるようになったのよね。
つまり大人数に手拍子を聞かせた場合でも、それぞれ見せる内容をバラバラにすることができるということ!しょぼい強化だが、そのちんまい強化が大活躍することもあるから侮れない!
そう……こんな風にな!
「流石にレディに淫夢ファミリーなんて見せたら罪悪感半端ないからねぇ……君には心の奥底にある欲望を叶える夢を見せることにしたぜ?」
「うぇへへへ……ザンニーさんもっと叱ってぇ……満足に夜警もできないクズって言って罵ってぇ……」
あら、この子さては夢女子?てか性癖エグそうやね君。
どうやらザンニーって名前の上司に言い寄られる夢を見ているらしいね……うわぁ女の子がしちゃいけない顔してる……これ以上見るのは失礼だな。
それじゃ今度こそ退散退散────、
「────こちらザンニー……ターゲットと思われる男を確認。ファミリーの構成員が多数行動不能にさせられている様子。────これより確保します」
「おっとっとぉ……噂をすれば、ってヤツかね?」
なーるほど。あの子は百合夢女子だったっつぅワケだ。そして俺の背後にいるであろう人がそのザンニーさん……ふふ、声からして相当な美人と見ました!
これはもうハードボイルドに振り向いてカッコよくご挨拶しないと駄目だな。うん。
「────ご機嫌麗しゅう。美しき声のかたああああああああああああああああああああ!?!?!?!?」
《 《 ボン!!!! 》 》
《 《 キュッ!! 》 》
《 《 ボン!!!! 》 》
アイエエエエエエエ!?!?爆美女!?!?爆美女ナンデ!?!?!?!?
ザンニーさんがとんでもなく好みドストライクな美女だった件について!?!?
「……急に大声出すから何事かと思ったけど……何?」
「ンッン……失礼、レディ。貴女の美しさに顎が外れてしまったようでね……驚愕の叫びを抑えられなかったのさ」
「あっそ……」
ウーンそっけない態度もイイネ!!
いやマジでビックリなんだが。ユーノちゃんとは別ベクトルの美女の登場に俺のハートはもはやズタボロです。ぐぅ……胸が苦しい!!
と、とりま挨拶挨拶ゥ!
名前もうわかってるけど一応聞いとこう!!話題作りだ!!
「俺はヴィトンといいます……貴女の名前は?」
「……ザンニー。あなたを捕まえるために絶賛残業中の、ね」
あらら……それはまた……。
っていうかやっぱり俺のこと捕まえに来てる人たちの仲間だったわけね?いやまあ薄々わかってはいたけどさぁ。それでも期待しちゃうじゃん?
ワンチャン俺とLove so sweetしに来てくれたのかもって……。
「ミス・ザンニー。何故貴女たちが俺を
「……抹殺? いや、私たちは────」
「やっぱり俺が黒潮人間だからとか?」
「……まぁ理由は正解。……でもこっちとしては手荒なことはしたくないんだ。普通に付いてきてくれない?」
おおぅ……この人、根は優しそうだな。
でも残念!俺ちゃんここで死ぬわけにいかないのよね。
「デートのお誘いならまた今度。急ぎの用事がありますので……」
「なら、多少強引にでも────」
「成程。ミス・ザンニー……『質問はすでに拷問に変わっているんだぜ』というアレですかそうですか逃げますッ!!」
「逃がすかッ!!」
うおおおおおキタキタキタキタキタァーッ!
爆美女に追いかけられるなんて普段ならむしろ自分から捕まりに行くレベルなんだが、如何せん今はちょいと間が悪い!
パッショーネなんかに捕まったらロクな目に遭わないのは目に見えてるからネ!生きたまま輪切りにされるのはゴメンなのよ!!
よっしゃ動け俺の脚────ッ!!
「っ、随分足が速いけど……いつまで走るつもり? ラグーナ城はもうアリ一匹逃がさないようになってるけど!?」
「何とも最悪なニュースをどーも! でもそこで諦めたら試合終了だと思うワケ!」
「ここで諦めてくれるなら、一回ぐらいデートしてあげてもいいけど?」
「────ッ、っゅ、ッッ────ッ、おおおおお断りしまああああああす!!!!」
「だいぶ迷ったな……」
うおおおおおおおおん……まさか俺が女性からのお誘いを断ってしまうとは……っ!
だが許してくれザンニーさん!俺はなんとしても
そうしたら絶対最高の一日にしてみせるからぁぁぁぁ!!!!
「────あら、レディのお誘いを断るなんてね」
ええい今度はなんだ!?
またもや美しい声で大変麗しゅうございまあああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?
《 《 ボン!!!! 》 》
《 《 キュッ!! 》 》
《 《 ボン!!!! 》 》
アイエエエエエエエ!?!?爆美女その②!?!?爆美女その②ナンデ!?!?!?!?
「カンタレラさん!」
「ふふ……残業お疲れ様、ザンニーさん。ここからはフィサリアも加わるわ」
なっ……ななっ、なっ────!?
なんっつー艶めかしい御人なの!?!?
マズい……!この人、長離さんタイプのエッチなお姉さんキャラか……!!
いやマジでなんなんその胸部装甲の薄さ??
それもうアレじゃん。まろび出てるのと一緒やん。包まれてはいるけども、メロンの形がわかっちゃう時点でもう意味なしてないじゃんそれは!?
ってかマズい……!どこを見てもオドオドしちゃうくらいどタイプだから、下手に目を合わせられない……!
これでマフィアとかとんだ罠だよ!?地雷だよ!?
何!?この街の爆美女ってみんなマフィアさんなの!?パッショーネなの!?!?畜生これじゃあ危な過ぎてナンパなんざできやしないじゃないのよォ!!
「えーと……ミス・カンタレラ? 貴女も俺を狙ってのことで?」
「勿論。彼女の誘いは断ったようだけれど……わたくしの誘いは受けてくださるのかしら?」
「────ッ、っゃ、ッッ────ッ、ててててててて丁重にお断りする……!!!!」
(また迷ったな……)
(今迷ったわね……)
いやぁ〜困ったな。
前にはカンタレラさん、後ろにはザンニーさん……う、うーむホントならあの魅惑的過ぎる谷に身を委ねたいところではあるが、流石に今は理性が勝る!!
「ヘイッ! ヘイヘイそれ以上は近寄らないで欲しいッスね~……さもないと俺の共鳴能力が発動しちゃいますよぉ~……!」
「「……」」
よ、よし……とりあえず動きは止められたな。
散々逃走中にマフィアモブどもをMAD漬けにしてたのが効いてるみたいやね……あっちも下手には動けないらしい。しめしめ、誰だってあんな風にはなりたくないわなぁ!
(さぁ~て後はどうやってこの拮抗状態から抜け出すかだけれども────)
「────ザンニーさん。状況は……成程。既に詰めの段階だったようですね。流石です」
おっとここでおひとり追加か?
なんかドンドン人が増えていくな……。
ってか今来たあの子は何?まだ子どもじゃないの……。
「さて。ヴィトンさん……で間違いないですわね?」
おっとチンチクリンが話しかけてきた。
なんだァ……?もう勝った気でいんのかァ……?
「わたくしはモンテリファミリー次女、カルロッタ・モンテリ。……手荒な真似はしたくありません。よろしければ────このあたりで大人しくして頂ければと」
「モンテリ……ファミリー? ってか、次女だって?」
「……? 疑っているのですか?」
いやだって……次女ってオメー……!
「いやいやいやいや……マフィアの方針がどうなのかは知ったこっちゃないけどさぁ。流石に子どもを前線に出して仕事させるのはどうなのよ?」
「……は????」
おっと睨んできた。
自分はもう立派だって?だが残念。子どもは子どもとして、大人がしっかり守らなきゃいけない義務ってのがあるのよ!!
「カルロッタちゃんだっけか? 別に説教するわけじゃねーけどよォ、お仕事すんならもちっと後でもいいんじゃねーの? 子どもは子どもらしく、今の内は遊んでた方が華ってモンだぜ?」
「うふふふふふ。あなたはわたくしのどこを見て子どもだと????」
「……お嬢様? あの、抑えて……」
「え? そりゃその身長見りゃ一発────」
「────おくたばりあそばせ!!!!!!!!」
ぬおわああああああああああぶねぇ!?!?!?!
肩!肩掠ったよ今!!ねぇ今肩抉れかけたんだってば!!!!ねぇ!?!?
「お嬢様、お嬢様落ち着いてください!! 生け捕りですよ!?!?」
「ザンニーさん離してください!! もうあの無礼者をさっさとハチの巣にしないと気が済みませんわ!!!!」
「カルロッタ? こういう時こそお淑やかに────」
「ブッ殺しますわ!!!!!!!!」
「────お淑やかに……」
「くぉらあああああテメーこのDESUWAちゃんがよぉ!! 子どもに子どもって言って何が悪いねんコラァ!!!!」
「カルロッタは成人済みよ」
────なんて????
え、カンタレラさん今なんて????
「カルロッタは、成人済みの、立派な大人よ」
「……な、なーるほど……つまりただ単に背が低いだけと」
「なんでそこで煽るんだ!?!?」
「おのれよくも!! ”
「くっ、だからお嬢様────いや力つっよ」
う、うーんこれは普通に俺のミスだな。
謝りたいけど謝ったところでなぁ。頭に血が上った人にいくら話してもアカンやろうし……。
(────ヨシ! 逃げよう! この隙に!)
そもそもあの人たち俺のこと捕まえようとしてる人たちだしぃ?待つ理由無いっていうかぁ??
悪いねカルロッタちゃん!謝罪はまた今度ってことで!!
「んじゃ俺はこのへんで────」
「────悪いけど、逃がさないよ」
「……ほえ?」
……あらら?
なんだかとっても聞き覚えのあるお声が真後ろから────……?
えーっと誰だったかなこの声~……鳴潮で一番良く聞いてたような気がするんですけど────、
「────来てくれたのね……漂泊者」
え゛っ。
「あなたが『黒潮人間』のヴィトンね。少し、話をさせて」
おっ、俺の後ろに立ってるのが漂ちゃんってマジッスかァァァ────ッ!?!?!?
待って待って!?
俺まだ心の準備が!!!!
「漂泊者!」
「お待たせ。ザンニー、カンタレラ。それと────その、カルロッタはどうしたの?」
「ああ……これはそこの彼がお嬢様を怒らせて────」
「キャッツアイ! その無礼者を今すぐとっ捕まえてわたくしの前に!! この手で眉間をブチ抜いてやりますわ!!!!」
「……あなた、一体彼女に何を言ったの?」
「いやあの違うんスよ漂ちゃんさん。俺ちゃん悪気は全然無くてぇ……」
「悪気が無くてもそんなの────って……ひょ、漂ちゃん?」
「おうよ。漂泊者の『漂』で漂ちゃん! 良いネーミングでしょ? わはは」
「……あだ名で呼ばれるほどあなたと仲良くなった記憶はないけど?」
「ンンンンン冷たい拒絶ゥゥゥ!?!?!?」
クッソそうだった……ッ!
漂ちゃんって結構ストーリーでもドライな感じだったわ……!てっきり主人公だから俺みたいなモブにも優しいかななんて思ったのがすべての間違い!!
うおおおおおおおおん恥かいたああああああああ……!!
「まあそれはそれとして漂ちゃんのお姿は一度くらい目に入れておきたくてですね────ってハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?!?」
「!?」
振り返った途端、俺は無意識の内に叫んでいた。いやもう叫ぶっていうか咆哮(大)みたいなモンだったけど。
デケェ声出すなって!?無理に決まってんだろうが!!!!
漂ちゃんっ……漂ちゃんお前っ……!!
「────なんだその服としての機能をサボりまくっている服はアアアア!?!?!?」
「えっ」
そんな見た目相応に可愛らしい呆け顔しても騙されへんぞ!!
横乳!!!!
背中!!!!
谷間!!!!
太もも!!!!
果てにはそもそも布地が薄くてちょっと肌が透けてるとかいう異常事態!!!!
漂ちゃんさてはオメー好きで露出してるだろ?
そうだろ?そうだよな?そうじゃなきゃおかしいぞテメー!?!?
皆もそう思うよな?
そう思うなら俺に続いて手を叩こ〜う!!はーいパチパチパチー!!!!
「そ……そんなこと言われても」
「────おいお前! 漂泊者のことを悪く言うなら我が容赦しないぞ!!」
「出やがったないまいちマスコットキャラに成り切れてない感のあるアブラクサイさんよォ!?」
「アブだ!! っていうかなんだアブラクサイって!? 我は油臭くなんかないぞ!!」
「やかましいわ今忙しいんだから引っ込んでなさいこのカワイ子ちゃんがぁ!!」
コラ見世物じゃねぇんだよオラァ!?
俺はなぁ!今人生で一番の使命感に燃えてんだよチクショウ!!
漂ちゃんの装甲の薄さは、何としてでも正さなければならんからな────!!
「漂ちゃん厳しいって。その服装で『そういうの興味ないです』は苦しいって。もうちょっとあったかくしなさい悪いこと言わないから!!」
「……あの、そんなに……?」
「……そんなにって何が?」
「な────っいやだから、私の服って、その……そんなにすけてるのって……」
「つまり『私はエッチですか?』って聞いてるワケね? そうでーす!!!! 漂ちゃんの服装はぶっちゃけかなりブッ飛んでると思いまーす!!!! その服装でどんだけ健全な青少年の癖を破壊してきたんでしょうかね~このクロネコモロチチハミデヤンはァ!!!!」
「は……ちょ、何その名前ッ!? や、やめてっ!!」
よくよく考えたらさぁ!!!!
俺なんでこんな目に合わなきゃいけないんですかねぇ!!!!
黒潮人間だからってなんでもしていいわけじゃあないんだぞー!!!!そこんとこわかってんだろうなコラァ!?!?
あー駄目だ。も〜駄目だ。
我慢の限界だわ。こうなったら好き勝手言ってしっちゃかめっちゃかにしたる……!!
「────こんのっ……私のキャッツアイになんてことを!! 待ってなさい今ブチ抜いて差し上げますわ!!!!」
「お嬢様!! お嬢様一回! 一回落ち着いてください流石に抑えてる手が痺れてきました!!!!」
「……これはわたくしがどうにかするしかないのかしら?」
おっと一人だけ蚊帳の外なんて可愛そうだよなぁ!?
正直好みドストレートなもんで、貴女に至っては最初っから疑問に思ってましたよ!?なんで今言わせてもらいますねーッ!!
「ミス・カンタレラ!! 貴女も大概でしょうが!?」
「はっ……?」
「そこのDESUWAちゃんに『淑女』を説くというのならば問いましょう!! 果たしてその服────そのように胸部を強調するのは『淑女』として正しい恰好だとでも!?!?」
「……はぁ。何を言うのかと思えば……当たり前でしょう? あくまでこれはオシャレの一環。そんな視線を向けられる謂れはな────」
「あ、あの……カンタレラ」
おや?漂ちゃんの様子が……?
「────ごめん。実は私もカンタレラは胸出し過ぎなんじゃないかなって……ちょっとだけ思ってた」
「────っ!?!?」
おっと一気にカンタレラさんの顔が耳まで赤く!!
そんなに漂ちゃんへの好感度高いのかぁやっぱ割と本気で憎いぜチクショー!!!!
「……ってかそれさ。漂ちゃんが一番言えたことじゃなくね。クロネコモロチチハミデヤンのくせに」
「だからその呼び方やめてっ!?」
「ねぇ! 追いかけるのはいいけど、ワム……じゃなくてヴィトンの共鳴能力で幻覚に掛かったらどうするつもり? アレ、かなり厄介よ!」
一方その頃。
ユーノ、オーガスタ、ガルブレーナの三人は、ヴィトンに追い付くため猛スピードで先を急いでいた。
冷静さを取り戻すために遅れてしまったぶんを取り戻すべく、三人は先を急ぎながら、ヴィトンの貧弱ながらも厄介な共鳴能力への対策について話し合う。
彼自身は己の共鳴能力を「くだらねー能力」と言って
事実、彼女たちは道中で彼の幻覚に苦しむモンテリ職員たちを多く確認している。
意味不明な言動を繰り返す彼らを一人ずつ叩き起こしながら、三人は改めて彼の共鳴能力の厄介さを理解することとなった。
知らなければ十中八九術中に嵌まってしまう、圧倒的な初見殺し性能は見逃せるものではない。
とはいえ────、
「問題ない。我らは子どもの頃に嫌というほど喰らっているからな……あの幻覚は、掛かれば掛かるほど効果が薄れるのだ」
「加えて、今は私の『魔眼』もある。ヴィトンの幻覚程度なら問題なく見抜けるはずだ」
「そ……わかったわ。頼りにしてる」
────問題はない。オーガスタとガルブレーナの二人は、幼少期から彼と過ごしてきているのだから。
ニッと笑うユーノに、二人もまた笑みで返す。
オーガスタとユーノ。
ガルブレーナ────エンジェルとオーガスタ。
それぞれ、一度は分かたれた仲だ。ユーノは己の存在を抹消し、幼馴染は黒き泥により離れ離れに。
────けれども、彼女たちはこうしてまた巡り合った。まるで星と星が引き合うように。
オーガスタとユーノは再び親友となり、エンジェルとオーガスタもまた共に居る。
だからきっと、ヴィトンとも────。
かつて想いを寄せた相手との再会を目指し、二人は前へ前へと進んでいく。
そして────。
「……っ追い付いた! 観念なさいヴィト……ン……?」
ビシィ、と勢いよく指を差したユーノの言葉が、段々と尻すぼみになっていく。
それも無理はない。何故なら彼女が見たのは────
「ユーノ。来たんだね」
「え、えぇ。来たけど……皆何してるの?」
「何って……あなたたちが追ってた彼が逃げないように、一応見張っていたの。観念はしたようだけど、つかみどころのない相手だから……」
ほら見て、あの余裕の笑み。
そう言って目をやる漂泊者だが、どう見てもそこには何もいない。ただ美しい装飾のなされた広場の床があるのみである。
彼女以外の面々もまた、いないはずのヴィトンの姿に呆れた表情を浮かべていた。彼女たちにあんな顔をさせるとは、一体幻影のヴィトンはどんな顔をしているのやら。
「成程……してやられたようだな」
「? オーガスタ……?」
「皆の者。目を覚ますといい……全員、まんまと嵌っているぞ」
「「「「……!」」」」
オーガスタの共鳴能力で操られた鉄剣が、全員の頭をそれぞれ柄で小突いた途端────全員が目を見開いて動揺する。
彼女たちからすれば、今までそこにいた男が一瞬にして消え失せたように見えたのだ。
「これは……」
「それがヴィトンの共鳴能力だ。幻覚を見せる力がある」
「逃げられちゃったみたいね……なんて厄介な」
ユーノの言葉に、漂泊者は苦虫を嚙み潰したような顔で悔しげだ。
「まさかここまで精巧な幻影を作り出せるだなんて……」
「油断していた……というのは言い訳ね。してやられたわ。私も幻を扱うというのに、見抜けなかった」
毒に関する共鳴能力を持ち、その延長で幻覚能力をも扱うカンタレラですら初見では見破れないほどの幻覚能力。
その完成度に、カルロッタも舌を巻く。
「一体いつ幻影と入れ替わったのかすら見当がつきませんでした。何かきっかけがあったはずなのですが……お恥ずかしい限りですわ」
「手を叩き、その音を聞くことが発動条件となる。とても単純で、それをきっかけに見破ることができるが……あの人は手拍子そのものを上手く動作に溶け込ませてしまうのだ」
「……気にすることはない。アイツの共鳴能力を初見で見破れるのは、よっぽどメタを張れるような能力を持っている者だけだ。ほとんどは大抵翻弄される」
「やけに詳しいな……もしかして知り合いですか?」
「うむ。同じ村で生まれ育っていてな。……ところで漂泊者よ。彼が向かった先はわかるか?」
オーガスタはそう漂泊者に問いかけ────というより、彼女ならばわかっているだろうと踏んでの問いだった。
そして予想通り、漂泊者はしっかりと彼の居場所を探知できていた。彼女の共鳴能力があってこそ成せる技である。
「彼は今、どうやらマーキュリー礼拝堂のあたりにいるみたい。……まんまと包囲を抜けられたみたいだね」
「はぁ……してやられたね。すぐに追いかけよう」
「人員を増やします。思った以上に厄介な相手のようですね……」
「今度こそ逃がさないわよ……! 行きましょオーガスタ、ガルブレーナ!」
「「……」」
「……? ど、どうしたのよ」
今度こそはとやる気を漲らせる面々とは対照的に、何やら考え込む二人。
ユーノはそんな二人を訝しげに見て首を傾げていたが、ふと考えがまとまったのか、二人は頷き合い、そしてオーガスタが口火を切った。
「────すまぬ。皆……ここは我らだけに任せてはもらえぬか?」
「えっ……!?」
思いもよらない言葉だったのか、一瞬にして驚きの視線を向けられる二人。
特にユーノなど、直接詰め寄るほどに驚いていたようだった。
「ど、どうして? 確かにあなたたちには彼の幻覚は効かないみたいだけど……それでも、人は多い方がいいんじゃ……」
「────これはただの予想なのだが」
オーガスタは一度言葉を切り、ヴィトンが逃げていったマーキュリー礼拝堂へと視線を向けながら、言った。
「────先ほどユーノが────恥ずかしい話だが、怒りで我を忘れていた我々の前に立ちはだかり、ヴィトンを庇った時のことだ。あの人はユーノに対しても明らかな警戒を見せ、対話の選択肢すら持たずに逃走を選んだ」
「それがどうかしたの……? 現にあの状況じゃ、逃げるのが普通じゃない」
「いや。アイツならそれはやらないはずだ」
ユーノの疑問を打ち消すように、今度はガルブレーナが口を開く。
「アイツは確かに強くはないし、逃げ足が速い。だが決して愚か者というわけじゃない。……ユーノ。お前は既にヴィトンと友好的な関係を結んでいたんだろう? そんなお前が庇ってくれたのなら、普段のアイツであればすぐさま便乗するか、少なくとも言葉を交わして助けを請うはず。────あそこまで周囲を過剰に警戒し、問答無用で逃走一辺倒になるなど……不自然極まりない」
「……」
言われてみれば……とユーノは思い返す。
確かにあの時のヴィトンは、セブン・ヒルズで言葉を交わした時に比べてどこか余裕がなく、自分も含めた周囲すべてを『敵』として認識しているかのような、過敏な反応を見せていた。
「それに加え、我らが店で見たヴィトンの隣にいた女性……あの時から、あの人の周波数は妙に不安定に感じられた。……おそらく、今の彼は何者かに思考を誘導されている。……一種の洗脳状態にあるのだろう」
オーガスタの脳裏に、あの時彼に言い寄っていた謎の女性の姿が思い返される。
服装そのものは『愚者の劇団』のものではあったが────どうにも違和感を拭えない。まず只者ではないだろう。
「周囲への敵対意志を刷り込まれ、誰も信用できない状態に陥っている。……そんな状態の彼を、これ以上の大人数で包囲し、強硬手段で追い詰めればどうなるか……」
「……最悪の場合、オーバークロックを引き起こすかもしれないわね」
険しい顔でカンタレラが静かに呟く。
『黒潮人間』であるというヴィトン。そんな彼の共鳴能力は、ユーノの見立てによれば、オーバークロック時には変質した部分が表出するという。
もとよりオーバークロックで自他共に悪影響が出ないケースの方が珍しい。まず良いことは起こらないだろうと、彼女は確信していた。
オーガスタとガルブレーナも頷き、彼が逃げて行ったと思われるマーキュリー礼拝堂へと目を向けながら言葉を続ける。
「その通りだ。だからこそ、大人数での追跡は逆効果になるだろう。……だが、彼の幻覚が意味を為さない我らならば、彼を必要以上に刺激せず、落ち着かせることもできる────否、してみせる」
「……アイツを傷つけるような結果にだけはしたくないんだ。言ってしまえば、これはただの我儘だが────私たちに任せてくれないか?」
そう言って、二人は頭を下げる。
思いもよらない行動に周囲は慌てたが、そんな中一人だけ────漂泊者だけは、二人のその姿に静かな納得を感じていた。
(そうか……この二人にとって、彼は────)
ヴィトンをよく知っていたこと。傷つけたくないという言葉。
他にも推察できる要素は多い。むしろ何故気付けていなかったのかというぐらいだ。
────二人にとって、彼はとても大切な存在なんだろう。
わからないことも多々ある。
黒潮と確実に繋がりがあるところについても無視はできない。
……だが、それでも────。
「────わかった。二人に任せる」
「漂泊者……」
「彼を信じているあなたたちを信じるよ」
頷く漂泊者に、カルロッタ、ザンニー、カンタレラも続いた。
全員、異論はないようだった。微笑みとともに無言の激励を送ってくれている。
「……私が行っても警戒されるんじゃ仕方ないわね……一応これでも、あいつのことはもう友達だと思ってたんだけど────ま、16年モノの想いには勝てないか」
ユーノは呆れたように笑みを零す。
このまま自分が行っても恐らく逆効果。下手に関わりがあるせいで、むしろ一層警戒されかねないのなら仕方がない。
……それに、もし可能性があるとすれば、それはきっと────。
「……ヴィトンとたくさん思い出のある────あなたたちだけでしょうし、ね……」
────思い出は、消えない。
ユーノ自身、漂泊者に自身の存在を『アンカー』してもらった経験から、思い出の大切さを人一倍理解していると言っても良かった。
だからこそ、ユーノは頷いた。
頷き、激励の笑みを浮かべながら、二人の肩を叩く。
「行ってきなさい。でもわかってるわね? 私を待たせるんだもの……戻ってくるならヴィトンと一緒じゃないとダメよ」
「無論だ。任せてくれ」
「必ず、アイツを連れ帰る」
そうして、一瞬で二人は姿を消した。
礼拝堂の方へ飛んでいく蒼と赤の光芒を見送りながら、ユーノはこっそりと祈った。
────どうか、彼らの再会が良きものとなりますように……と。
今度は私たちが、あなたを助けたい。
あの時少女だった二人が、今走る。
次回、本当の再会。
更新が少し遅くなるかも……しれません。
……ちなみに催眠状態じゃないヴィトンだった場合、ザンニーが来た時点で捕まってました。勿論自分から。
ナディアさん(偽)はあなたに逃げ切って欲しいんだ
ナディアさん(偽)にありがとうと言って
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