村のチンチクリンがドメロイケ女になってて俺への距離が近い話する? 作:負け組カチ組
……やっぱみんな好きなんすねぇ!!
「ヴィトン。また残像出して」
「はぁ~? あのなぁ、俺今何してると思う?」
「昼寝してる」
「よくわかってんじゃないの。それじゃ話はおしまいもう来ないでね~」
「暇そうだから声を掛けたんだけど」
「暇ってのは必ずしも悪しきこととは限らねぇんだぜ? いいか、俺は今英気を養ってると言っても────」
「残像、出して」
「わ、わかったっピ……」
パン、と柏手を打てば、エンジェルの前に一体の残像が出現する。
それに果敢に向かっていくエンジェルに、残像は情け容赦なく腕を振り下ろして────、
────通り抜ける。
「ぶっ、くくく……お、おい初撃からぶち当たってんじゃねえか……!」
「笑わないで! ……っこの、次!!」
ま、当たらねぇのは当たり前だ。
だってあの残像、ただの幻だし。
画面の前の良い子ちゃんはもうわかっただろ?
これが俺の共鳴能力、名付けて『幻覚』!
柏手を打ち、その音を聞いた相手に幻覚を見せるってのが能力だ。
……ま、物理的な影響力なんぞ皆無だし、術中に嵌ってても外から平手打ち一発レベルの衝撃喰らえば覚める程度だけどな。
共鳴能力に目覚めた当時は、そりゃあ興奮したもんさ。
だって幻覚能力だぜ?それはもうイコール藍染惣右介だろうよ。
んで蓋を開けてみればこの通りさ。ガッカリしたもんだぜ……。
そもそもマジで鏡花水月まんまだったとしても、俺自身が貧弱すぎて意味ねぇんだわな。
んじゃ鍛えればいいって?
オーノーだズラ。俺の嫌いな言葉は、一番が『努力』で二番目が『ガンバル』なんだぜ?
あーあ、言いたかったなぁ藍染語録。
いや言うだけならタダだな。
今言うか?
言うか。うん言おう。
「一体いつから────鏡花水月を遣っていないと錯覚していた?」
「うるさい」
「酷くね? てか今のは独り言だろ」
「独り言にしては大きかったけど」
コイツ……とことんナメやがって……!
これはもう早急にやらねぇと駄目だな────『わからせ』をよォ!
とりま第一歩ってことで、いっちょ言い返してやりますかぁ!!
「はんっ。そりゃおめーが俺の言葉に耳澄ませてたからだよ。ったくエンジェルこの野郎。なんだ? 俺のこと好きすぎか??」
「なッ!?!?……そ────んなわけッ……こ、このォ!!!!」
「うおいどしたいきなり活発になるじゃねぇかってかあぶねぇ!? 残像あっち! こっち違うってんだろおいやめろ止まれヤメロォォ────!!??」
天元突破レベルでブチ切れたのか、顔を真っ赤にしながら突っ込んで来るエンジェルからガン逃げする俺。
無様だって?しゃーねぇだろアイツの共鳴能力バカ強いから勝ち目ゼロなんだって。
エンデヴァーがジェットバーン撃ってくるようなモンだぞ?ヤバすぎるだろ。
というわけで俺は逃げる。
逃げ足だけは誰にも負けねぇんだよ俺はァ!!
逃げるんだよォーッ!!
「逃げるんだよォーッ!!」
「っ、はぁ、はぁっ……ホント……逃げ足だけは……速い……」
体力の限界に到達し、遂に私は膝を突いてしまった。
滝のように汗を流して肩で息をするしかない私をよそに、今のうちと言わんばかりに大人気ない彼は軽い足取りで遠くへと逃げていく。
まるで彼だけ重力から解放されているかのような速度。
狭い世界しか知らない私だが、きっと彼の逃げ足の速度は凄腕のグラディエーターにも勝るだろう。
「あー……もう、疲れた!」
どさり、と草原に身を預ける。
本来、残像や危険生物がいる危険性のある外でこんな無防備を晒すのはご法度なのだが、ここは村が見える範囲なので平気だ。今まで長い間走り回っていたのに村近くの範囲から出ることがなかったのは、当然ヴィトンのおかげ。
あんなに必死に逃げ回っておきながら、裏ではこういう気を回すことを忘れない男……。
「……ずるいなぁ」
気恥ずかしいが、そういうところが本当に────素敵だと思う。
汗で冷えてきていた頬が再び上気し、赤く染まる。
それをなんとなしに隠したくなって、周囲には誰もいないのに思わず顔を覆ってしまって、こんな乙女チックな所作をした自分自身が恥ずかしくて、今度は耳まで赤く染まっていく。
────なんだ? 俺のこと好きすぎか??
「……ばか」
先ほどの言葉が、耳に焼き付いて離れない。
彼の言葉の反響は、もはや永遠に続くのではないかと思えてしまうほどだった。
このままでは、きっと本当に顔から火が出てしまう。
そう思い至った私は、ひとまず何故私があんな男にこんな思いをしなければならないのか、それを思い返すことに決めた。
────ヴィトンと出会ったのは、オークのうつろの前だった。
当時、私はまだオーガスタと出会えておらず、いつも一人だった。
生まれつき強力な共鳴能力を持っていて、その扱いを両親からよくよく言い聞かされていた私は、感情に任せて能力の暴発を起こさないよういつも心を平静に留めていた。
誰からも一歩引いた私を、周りの子たちは避け、もしくは倒すべき相手のような扱いを受けた。
冷たい女の子……いつか言われた一言に、子供ながらひどく傷ついた覚えがある。
私だって、本当は皆と仲良くしたかったのだから。
その日も私は行くあてもなく外に出て、村のはずれにあるオークのうつろの中に座り込んでいた。
いつも行くフェロおじさんの鍛冶屋はあいにく今日はお休みで閉まっていたので、仕方なくそこで時間を潰すことにしたのだ。
それでも、やっぱり寂しいものは寂しかった。
過ごしているうちに、なんでか急に泣きたくなって。
ポロポロと、目から涙が零れ落ちたその時に────、
────一本の、真っ白なアイスが差し出されたのだ。
『……食べな。甘いモン食うと落ち着くぜ』
そのアイスを差し出してきた人物こそ、ヴィトンだった。
その時の私はどうしてここに人が、なんてことを考える余裕はなくて、泣き腫らしたままアイスを受け取って、ただ静かに食べていた。
その間、彼は何も言わずにただ静かに隣に座っていてくれて……それが、その時の私にとってはすごくありがたかった。
その後、落ち着いた私が少し話したところによると、どうやら彼はオークのうつろをサボり場所として活用していたらしい。
いつものようにサボろうとしたところで、うつろの中で泣く私を見て、こっそり食べようと思っていたミルクセーキのアイスを渡してくれたのだとか。
『いいって……別にいらねぇからあげただけだっつーの。……それに、その……子供が泣いてんのに知らんぷりってのは……ほら、違うだろ? そんだけだよ』
とっておきのスイーツを取ってしまったことに頭を下げる私に、少しだけ残念そうな表情をしながら、それでもニヤリと笑って見せた彼の言葉が忘れられない。
────それが、私と彼の出会いだ。
それから、彼とはよく会うようになっていった。
ヴィトンが便利屋の仕事の一環で、フェロおじさんのところに手伝いをしに来ているところで再会してからというもの、よく話すようにもなった。
オーガスタと出会ったのもその頃だったっけ。
そこから私、オーガスタ、ヴィトンの三人組は、ファビアヌム村でのちょっとした名物みたいなものにもなった。
一緒に遊んで、また遊んで、たまに皆でご飯を食べて……。
友達も段々と増えていって、まるでヴィトンが幸せを運んで来てくれたみたいだった。
『ほれ……今日、誕生日だろ? 手作りで悪いんだけどよ……』
そう言って渡してくれた、不格好ながら手間暇かけて作られたことの伝わる工芸品。
私をイメージしたのか、黄色や金色で彩られたそれは、どんな宝石よりも綺麗に思えて────それからずぅっと、肌身離さず持っている。
渡した本人からは、持っているところを見られるたびに「恥ずかしいからもっと良いの買え、なんなら買ってやるから」と言われるが、その度に断固として拒否している。
だって、きっとこれ以上のものなんて存在しないから。
どんな代物でも替えになんてならない。
だから今でも、これは大切な大切な宝物だ。
そして────忘れちゃいけない、いや、忘れられないのは……やっぱりあの時。
私の、ヴィトンを見る目が、がらりと変わってしまった日のこと。
『────どーよ……これが……ゼェ……「守るための力」ってヤツだぜ……コノヤロー』
血と泥でぐっちゃぐちゃで、お世辞でも、私やオーガスタの好きだった『英雄王』とは似ても似つかなかったけれど。
それでも、たった一人でコロサウルスから私たちを守って戦い抜いてくれた彼は────どこまでもカッコいいヒーローで。
『……へへ、怪我ないな?』
そして────そんなことを言って、優しく頭を撫でてくれたあの瞬間。
私はきっと、ヴィトンに心を奪われたんだ。
そして私は決めた。
いつか必ず、ヴィトンも惚れ惚れするようなグラディエーターになって────
────彼を、私のお婿さんにするんだ。
「……そのためにも、まずは捕まえられるようにしなくっちゃ」
求婚するのに逃げられては叶わない。
それに、これは勘だが────多分、私とまったく同じタイミングで、オーガスタもヴィトンに恋している。
だからこれは、どっちが先に彼を”モノ”にするかという競争。
誰もが見惚れる女になって────あんたを、私のものにする。
「────そのためにもまずは、セブン・ヒルズの『若手養成選抜試合』で優勝しなくっちゃ……こうしちゃいられない。今日も特訓しないと────!」
ヴィトン:泣いている女の子がいたので、ジブリを参考に握り飯────は無かったので、アイスをあげた。レアものだったけどまーいっか。てか、これでやり方合ってましたっけかねニギハヤミコハクヌシ先輩……?
エンジェルちゃん:キュン……♡
次はオーガスタ側。
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