どうも、常夏鳳梨です。
芋とかの根菜類って、生命力を含めたあらゆるパワーが割と強いそうな。
そういえば、たまにナーロッパとかのやつで中世にジャガイモはアリナシ論争があったっけ?
個人的には、あっても無くても物書きさんの好きなように書けば良いのになって思う今日この頃。
エルフィンド合衆国の主食は小麦であるが、その小麦に次ぐ形で最も多い作物は芋であった。
これは、当時のエルフ達から真の女王と讃えられたエルフィンド最後の女王の政策の一つで、飢饉に備えるという理由で馬鈴薯やら甘薯やらを育てたり、女王の命令を受けたエルフ達によって品種改良が行われたりと、傲慢さを捨て去ったエルフ達の血と汗が滲む努力により、エルフィンドの土壌でも育つ馬鈴薯や甘薯が爆誕したのである。
何せ、エルフという生物は長命種の代表格の存在であるが故に、その種族柄なのか時間に関する感覚が少々ズレていた。
なので、品種改良された馬鈴薯と甘薯のポテンシャルに気がついたエルフ達は、次第に料理開発に力を注ぎ始めたようで──あの頃の質素な食事(夕食を除く)はどこへやら、いつの間にかエルフィンドには馬鈴薯や甘薯を使った料理で溢れかえっていた。
潰した馬鈴薯に片栗粉を加えて混ぜた後、バターでこんがりと焼いた馬鈴薯焼き。
甘薯本来の甘さを生かすためにサッと揚げた後、たっぷりの蜜を絡めた揚げ芋。
イザベリア特有のオムレツに似せる形にて、馬鈴薯等の野菜を使ったイザベリア風オムレツ。
更には、潰した甘薯にバターやら牛乳やらを加えた後、丸めて卵液を塗った上でオーブンで焼いたスイートポテト──ではなく、甘薯のホクホク焼きといった料理の開発を数年を掛けて行ったからか、いつの間にかエルフィンド内では芋料理のレパートリーが増えていたのは言うまでもない。
ちなみにこれは余談ではあるが、当初のホクホク焼きはスイートポテトと名付けられそうになったものの、キャメロット語でスイートポテト=甘薯だと発覚したため、ホクホク焼きという名前になったのだとか。
いずれにしても、元々質素な料理を好む傾向のあったエルフ達にとって、馬鈴薯や甘薯はよっぽど魅力的な食材だったようで、その頃のエルフィンドは芋バブルと言っても過言ではない状態と化していた。
その影響もあってなのか、はたまたブームに乗っかる形なのかは分からないが、今度は馬鈴薯や甘薯で酒を作る猛者まで現れ始め、次第にエルフ達は芋を愛するようになっていた。
やがて、首都ティリアンを始めたとした各町村で焼いた馬鈴薯と甘薯を売り歩く屋台が現れ始め、エルフ達はその屋台で売られるホクホクでネットリとした焼いた芋の味を満喫していた。
なお、その屋台が出てくるのが秋から冬の時期のため、エルフィンドの秋冬の風物詩となったのは言うまでもない。
ともかく、エルフィンドの生活の一部に芋が根付いた頃──今から一二〇前、エルフィンドを含めた星欧大陸に冬の季節が到来していた。
しかし、星欧大陸の一部の国々が冬に伴う飢饉に襲われていたからか、当時のエルフィンド大統領であったキルシェ・ブリュームの元に、オルクセン王国の動きが怪しいという情報が流れてきていた。
それと同時に、オルクセン北部では飢饉が発生したという情報も耳に入っていたため、キルシェは悩みに悩んだ末にこんな判断を下した。
そうだ、国内で大量に採れた芋を分け与えよう──と。
と言うのも、この頃のエルフィンドでは数の暴力と言っても過言ではない程の量の馬鈴薯、または甘薯が収穫されまくっていたため、ここまでの量の芋を処理できずにいたのである。
そのこともあってか、エルフィンド側は今にもドワルシュタインを襲おうとしているオルクセンに対し、大量のエルフィンド産の馬鈴薯や甘薯を渡していた。
一方、その芋を渡された方のオルクセンからしてみれば、ここまでの量の芋ならば冬の飢饉を乗り越えられると言う希望を示していた。
そのためか、当時のオルクセンの国王であったアルブレヒトⅡ世は感極まったようで、そのまま固まった末に言葉を失っていた。
そして、その配給支援と同時並行でオルクセン王国の土地にも合う馬鈴薯や甘薯が開発されたのだが、これもまた奇跡的に栽培に成功した影響なのか、数年後にはオルクセン王国の飢饉は終わりを告げていた。
その際、ソーセージと馬鈴薯の相性が良いだけではではなく、コーヒーと甘薯のホクホク焼きの相性にも気がついたようで、結果的にはオルクセン王国にも芋文化が根付いたのだった。
それに伴い、対ドワルシュタインの戦争は取りやめになったことにより、本来の世界ならばロザリンド会戦と呼ばれた戦いは回避したのはここだけの話である。
「だから、そのことも踏まえた上でこの出来事は芋外交って呼ばれているんです」
オルクセン王国からやって来たオークの観光客に向け、黒エルフのニリエナは焼き芋の手押し屋台を背景にそう説明していた。
この時期のエルフィンドでは、バイト的な感覚で焼き芋の屋台を手伝っている年頃のエルフも少なくなく、たまに彼女のように観光客を相手に色々と説明することもしばしばあった。
その際、観光客から心ばかりのチップをもらえることもあるとか。
それはともかく、ニリエナの話を聞いていた観光客はどこかへと向かおうとしていたものの、緊張のあまり身振り手振りで行きたいところを彼女に伝えていた。
その様子を見たニリエナは、彼がパブに行きたいのだとすぐさま察したようで
「美味しい芋酒が飲めるパブはここの角を曲がればあるので、ぜひ楽しんでみてください!!」
ニコッと笑いつつ、そう答えていた。
すると、それを聞いた観光客はありがとうとばかりに手を握ると、ブンブンと大きく振る形で感謝の念を伝えていた。
そして、そのまま立ち去るのを見送ったニリエナは屋台へと戻ったのだが、そこには親友でバイト仲間のグルティナが現れたため、彼女の顔に笑顔が映ったは言うまでもない。
「グルティナ!!」
「お疲れ、ニリエナ。交代の時間だよ」
冬の冷たい空気により、口から白い息を出しながらそう言った後、ニパッとした笑顔を浮かべるグルティナ。
その顔を見たニリエナもまた笑顔になったようで、彼女が持ってきていたホットアップルサイダーを一口飲んでいた。
グルティナとニリエナはかれこれ数百年前からの付き合いで、ニリエナがパン屋として働いているのに対し、普段の彼女は農家として畑仕事に邁進していた。
ただし、冬の時期になると焼き芋の屋台の人手が足りなくなるため、その人員として駆り出されることがよくあった。
しかし、ニリエナもグルティナも仕事柄なのかパワーはある方なようで、手押し屋台で街を練り歩くのは造作でもなかった。
それに加え、バイト代もそこそこ弾むので懐が暖かくなることもあってか、二人は冬の時期は焼き芋のバイトに勤しんでいるのである。
「そういえば、さっきのオークって観光客の人?」
「あ、うん。何か仕事の都合でオルクセンからエルフィンドに来たみたいで、そのついででここの観光をするみたい」
「へぇ、そうなんだ」
さっきの観光客の話題が出たからか、ホットアップルサイダーを飲みながらそんな会話をする二人。
その二人の視線の先には、馬鈴薯や甘薯を原材料した酒──もといケーニギンの工場と店があり、次第にバイトが終わったら一杯やりたいね〜と言う顔になっていた。
芋が原材料の酒であるケーニギンは、今となってはエルフィンドを代表する酒の一つとなっていた。
ブランドの肩書きが付いたケーニギンはともかく、安い方のケーニギンですら美味しいためか、今となってはビールよりもそっちを好んで飲むエルフも多くなっていた。
それはグルティナも同じだったようで、あの酒には何が合うのかな〜?と妄想していたため、すぐさまニリエナに呆れられたのは言うまでもない。
「そういえば、最近のドワルシュタインのドワーフとコボルトの仲が悪いんだって」
「え!?何で!?」
「詳しくは分からないけど──ドワルシュタインでトラブルがあったとか何とかって知り合いが言ってたんだよね」
少しだけ不穏な気配を感じる会話をした後、ニリエナは焼き芋の屋台をグルティナに任せると、そのまま冬の寒さが充満する街の中を歩いていた。
ふと、その視線をズラすと....屋台で買ったであろう甘薯の焼き芋を食べているエルフの親子連れを見たからか、その頬は優しく緩んでいた。
すると、今度は栗が焼ける匂いがして来たからか、ニリエナは冬の到来をこれでもかと肌身で感じていた。
そして、何かしらのマルクトの準備をしているエルフ達を見て、ニリエナはもうすぐ冬の祭りが──
「そっか、そうだよね。もうすぐ
そう呟いた後、その祭りにてふかし芋のバター乗せが出るのではないか?とニリエナは一瞬だけ思ってしまったようで、さっきよりも表情を緩めていた。
ただ、彼女のその想像はたまらくなってしまったのか、思わずお腹が鳴ったニリエナはすぐさま来た道を引き返したかと思えば、
「あれ?どうかしたの?」
「あ〜、その、ちょっとお腹が空いちゃって──」
グルティナの居る焼き芋の屋台に引き返したかと思えば、そのまま焼き芋を買って食べたのだった。
オルクセン世界の魔種族って、長命種だからこそ一つのことにこだわりそうな気がする。
例えば、何かの研究とか品種改良とか。
──そう考えたら、エルフって割と研究職に向いているのでは?
でもまぁ、黒エルフと違って原作の白エルフが白エルフだからなぁ(遠い目)