キヴォトスにウォーハンマー40kの世界の武器がやってきた!   作:eriza7170

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キヴォトスにウォーハンマー40kの武器がやってきた!

 

これはウォーハンマーの世界の武器がブルーアーカイブのキヴォトスにやってきたクロスSSです、これに描写を追加してください

もちろんです! ウォーハンマー40,000の兵器がブルーアーカイブのキヴォトスに持ち込まれたクロスオーバーSSですね。

 

元の文章を貼り付けるか、ファイルをアップロードしてください。 原文の展開やキャラクターの個性を大切にしながら、描写を追加してブラッシュアップします。

 

特に、次の点を意識して仕上げます。

 

情景描写の強化:街並み、建物、光、煙、弾痕などを加え、場面を鮮明にする。

 

戦闘描写の強化:ボルトガンやラスガンなどの発砲音、反動、着弾の衝撃、武器ごとの破壊力を描き分ける。

 

キヴォトス側の反応:生徒たちが見慣れた銃器との違いに気づき、帝国の兵器の異質さや危険性に驚く様子を描く。

 

キャラクター描写の強化:台詞の前後に仕草、視線、表情、間を加え、会話に臨場感を持たせる。

 

ウォーハンマーらしさの維持:兵器の重量感、帝国の技術体系、戦場で培われた運用思想などを反映する。

 

原文の設定や展開を勝手に変更するのではなく、元の物語を尊重しながら、足りない描写を肉付けする方針で進めます。

 

また、これまでのご希望に合わせて、地の文同士の間には通常空白行を入れず、台詞の前後には一行空ける形式で整えます。

 

それでは、SSを送ってください!

 

第一話

その銃、弾が爆発するんですけど

 

キヴォトス。

 

そこでは、銃撃戦は珍しくない。

 

今日もどこかで学校同士が小競り合いをしている。

 

誰かが銃を撃ち。

 

誰かが爆発物を投げ。

 

誰かが戦車を持ち出し。

 

そして大抵の場合、翌日には何事もなかったかのように日常へ戻っていく。

 

そんなキヴォトスにおいて、銃というものは特別珍しいものではなかった。

 

むしろ、生徒のほとんどが何らかの銃器を持っている。

 

だからこそ。

 

シャーレの執務室に置かれた巨大な木箱を見て、先生は少し困っていた。

 

「……これ、何?」

 

机の横に置かれた木箱。

 

高さは先生の腰ほど。

 

幅は大人二人が並んで座れそうなくらいある。

 

そして何より。

 

木箱の側面には、見たこともない文字でこう書かれていた。

 

ARMAMENT OF THE IMPERIUM

 

「……インペリウム?」

 

先生が首を傾げる。

 

その隣で、アーカイブを確認していたセリナも眉を寄せた。

 

「シャーレ宛ての正式な荷物になっていますね」

 

「送り主は?」

 

「不明です」

 

「不明?」

 

「はい」

 

セリナは端末を操作する。

 

「送り主の欄そのものが存在しません」

 

「それは……荷物としてどうなんだろう」

 

「私もそう思います」

 

先生は木箱を見る。

 

何となく嫌な予感がした。

 

キヴォトスでは、怪しい箱を開けると大抵ろくなことが起こらない。

 

爆発。

 

罠。

 

大量の請求書。

 

あるいはネル先輩が仕込んだ何か。

 

しかし。

 

「……開けてみようか」

 

「先生、慎重にお願いします」

 

「うん」

 

工具を使って木箱を開ける。

 

ギィィ……。

 

蓋が開く。

 

中に入っていたのは――。

 

黒い金属製の巨大な銃だった。

 

「……銃?」

 

セリナが目を丸くする。

 

先生も覗き込む。

 

それはキヴォトスで一般的に使われている銃とは、明らかに違っていた。

 

太い。

 

長い。

 

そして異様に重そうだ。

 

銃身はまるで小型の大砲。

 

弾倉も巨大。

 

銃そのものに刻まれている装飾は、妙に荘厳だった。

 

「これ……誰の銃だろう」

 

「見たことがありません」

 

セリナが恐る恐る銃を持ち上げる。

 

「重い……」

 

「貸して」

 

先生が受け取る。

 

「……重い」

 

二人で顔を見合わせる。

 

そこへ。

 

「先生ー!」

 

勢いよく扉が開いた。

 

「お届け物があるって聞いたんだけど――」

 

入ってきたのはノノミだった。

 

そして。

 

彼女は箱の中身を見るなり、目を輝かせた。

 

「わぁ……!」

 

「ノノミ?」

 

「すごい銃ですね!」

 

「やっぱりそう思う?」

 

「はい!」

 

ノノミは嬉しそうに銃を眺める。

 

「ミレニアム製でしょうか?」

 

「いや、たぶん違うと思う」

 

「トリニティでもありませんね」

 

セリナが銃を調べる。

 

「ゲヘナ製でもないです」

 

「じゃあ、どこの?」

 

三人が黙り込む。

 

その時。

 

廊下から足音が聞こえた。

 

「先生、いる?」

 

ネルだった。

 

そしてその後ろにはアスナ、カリン、アカネまでいる。

 

「何か面白そうなものがあるって聞いたんだけど!」

 

ネルが部屋に入る。

 

そして銃を見る。

 

「……なんだこれ」

 

「銃です」

 

ノノミが即答する。

 

「見れば分かる」

 

ネルは銃を持ち上げる。

 

「重っ!」

 

「ですよね」

 

「誰がこんなの使うんだよ」

 

ネルが銃を眺める。

 

その時。

 

銃の側面に刻まれた文字が目に入った。

 

BOLT GUN

 

「……ボルトガン?」

 

「名前でしょうか?」

 

アカネが近づく。

 

「興味深いですね」

 

「でも、ボルトって何だ?」

 

ネルが先生を見る。

 

先生は説明書らしき紙を見つける。

 

そこには簡単な説明が書かれていた。

 

Boltgun

 

Mass-reactive projectile weapon

 

先生は翻訳する。

 

「……炸裂弾を撃つ銃?」

 

「炸裂弾?」

 

全員が黙った。

 

ネルがもう一度銃を見る。

 

「……これ?」

 

「たぶん」

 

「このサイズで?」

 

「たぶん」

 

「弾丸が?」

 

「たぶん」

 

ネルが笑う。

 

「へぇ」

 

そして。

 

「撃ってみようぜ!」

 

先生は即座に止めた。

 

「待って」

 

「なんでだよ」

 

「説明書に『取り扱いには十分注意してください』って書いてある」

 

「銃なんだから当たり前だろ」

 

「その下」

 

先生が指を差す。

 

小さな文字。

 

WARNING: AMMUNITION DETONATES AFTER IMPACT.

 

ネルが読む。

 

「……」

 

沈黙。

 

「……爆発するの?」

 

「どうも」

 

「弾が?」

 

「うん」

 

「当たったら?」

 

「爆発する」

 

ネルがゆっくり銃を机に戻す。

 

「……」

 

アスナが笑顔で言った。

 

「すごーい!」

 

「何が?」

 

「キヴォトスの銃って、普通は撃たれたら痛いだけじゃないですか」

 

「まあ……」

 

「これは撃たれたら爆発するんですね!」

 

「そうなるね」

 

アカネが真剣な顔で頷いた。

 

「合理的です」

 

「合理的なのか?」

 

カリンが銃を見つめる。

 

「でも……」

 

「どうした?」

 

「これ、弾が大きすぎませんか?」

 

「……」

 

全員が弾薬箱を見る。

 

中には巨大な円筒形の弾丸が整然と並んでいた。

 

普通の銃弾より遥かに大きい。

 

ノノミが一本持ち上げる。

 

「わぁ」

 

「ノノミ、それ触って大丈夫?」

 

「安全装置があるみたいですよ」

 

「そういう問題かな……」

 

すると。

 

廊下から新たな声。

 

「先生ー!」

 

今度はミレニアムの生徒だった。

 

「その箱、ミレニアムにも見せてください!」

 

扉から顔を出したのはウタハ。

 

その目は。

 

完全に技術者の目だった。

 

「……先生」

 

「何?」

 

「それ、どこから?」

 

「分からない」

 

「誰が作った?」

 

「分からない」

 

「材質は?」

 

「分からない」

 

「内部構造は?」

 

「分からない」

 

ウタハが笑った。

 

「最高だね」

 

「待って」

 

「少しだけ分解していい?」

 

「ダメ」

 

「なぜ?」

 

「危ないから」

 

「爆発するから?」

 

「そう」

 

「ならなおさら興味深い」

 

「ダメ」

 

その瞬間。

 

ウタハの背後からユウカが現れた。

 

「ウタハ!」

 

「……」

 

「また変なものを分解しようとしてるでしょ!」

 

「してない」

 

「その手に持ってる工具は何!?」

 

「……」

 

「先生!」

 

ユウカが先生を見る。

 

「それ、何なんですか?」

 

先生は答える。

 

「ボルトガン」

 

「ボルトガン?」

 

「うん」

 

「普通の銃?」

 

「いや」

 

先生は説明書を見る。

 

「巨大な炸裂弾を撃つ銃」

 

ユウカの顔が固まった。

 

「……」

 

「……」

 

「……それ、シャーレに必要ですか?」

 

「僕もそう思う」

 

「廃棄しましょう」

 

「でも……」

 

ノノミが悲しそうな顔をする。

 

「せっかく届いたのに」

 

「ノノミさん?」

 

「一度くらい撃ってみたいです」

 

「ダメ!」

 

ユウカが即答する。

 

しかし。

 

その横でネルがニヤリと笑った。

 

「一発くらいならいいだろ」

 

「ネル!」

 

「だって気になるじゃん」

 

「気になっても撃っちゃダメ!」

 

アスナも手を挙げる。

 

「私も気になります!」

 

「アスナまで!?」

 

カリンは少しだけ考える。

 

「……安全な場所なら?」

 

「カリン!」

 

アカネも頷く。

 

「実験は必要でしょう」

 

「アカネまで!?」

 

シャーレの部屋が一気に騒がしくなる。

 

先生は頭を抱えた。

 

その時。

 

箱の底から。

 

もう一つの紙が出てきた。

 

先生が拾う。

 

そこには、たった一行。

 

FOR HUMAN USE ONLY.

 

先生は固まった。

 

「……人間用?」

 

全員が先生を見る。

 

ネルが首を傾げる。

 

「どういう意味だ?」

 

「分からない」

 

先生はもう一度銃を見る。

 

この銃は。

 

一体どこから来たのか。

 

誰が作ったのか。

 

なぜキヴォトスに送られてきたのか。

 

そして。

 

なぜ「人間用」なのか。

 

その答えを知る者は、まだ誰もいなかった。

 

ただ一つだけ。

 

先生には分かっていた。

 

この日から。

 

キヴォトスの日常に。

 

少しだけ。

 

ウォーハンマー40,000の物騒さが混ざり始めた。

 

そして翌日。

 

シャーレには、さらに三つの箱が届いた。

 

中身は――。

 

ラスガン。

 

プラズマガン。

 

そして。

 

チェーンソード。

 

先生は静かに天井を見上げた。

 

「……誰か、送り返す方法を調べてくれないかな」

 

その横で。

 

ウタハが嬉しそうに呟いた。

 

「チェーンソード……」

 

「ウタハ」

 

「まだ何も言ってないよ」

 

「顔に出てる」

 

「……少しだけ、分解してみたい」

 

「ダメ」

 

「残念」

…

今回は、原文のコミカルなテンポと掛け合いを維持しながら、情景描写、ボルトガンの異質な存在感、各キャラクターの反応、そして「人間用」という伏線を強化しました。特に、キヴォトスでは当たり前の銃器が、ウォーハンマー40,000の世界から来た途端にまったく別の意味を持つ、という対比を意識しています。

 

第一話 その銃、弾が爆発するんですけど

キヴォトス。

 

そこでは、銃撃戦は珍しいものではない。

 

今日もどこかで学校同士が小競り合いをしている。

 

誰かが銃を撃ち、誰かが爆発物を投げ、誰かが戦車を持ち出す。

 

銃声が響き、爆発が起こり、建物の壁に新しい弾痕が刻まれる。道路には薬莢が散らばり、焦げたアスファルトからは薄い煙が立ち上る。

 

それでも、翌日になれば大抵の生徒たちは何事もなかったかのように学校へ向かい、カフェでお茶を飲み、友人と談笑する。

 

壊れた建物は修理され、吹き飛んだ看板は付け替えられ、昨日の銃撃戦はいつしか笑い話になる。

 

そんなキヴォトスにおいて、銃というものは特別珍しいものではなかった。

 

むしろ、生徒のほとんどが何らかの銃器を所持している。

 

拳銃、サブマシンガン、アサルトライフル、ショットガン。果ては重機関銃や対物ライフルまで、銃器の種類には事欠かない。

 

生徒たちはそれぞれ愛用の銃を持ち、整備し、時には自分の個性を表すアクセサリーのように扱っていた。

 

もちろん、銃が危険な道具であることに変わりはない。

 

ただし、キヴォトスの生徒たちにとっては、銃弾が飛び交うことそのものよりも、明日の小テストや食堂の新メニューのほうが、よほど切実な問題だったりする。

 

だからこそ。

 

シャーレの執務室に、見慣れない巨大な木箱が置かれているという事態は、少々奇妙なものだった。

 

「……これ、何?」

 

先生は机の横に置かれた木箱を見下ろしていた。

 

高さは先生の腰ほど。

 

幅は大人二人が並んで座れそうなくらいあり、厚みのある木板は頑丈な金属製の帯で補強されている。四隅には輸送時の衝撃を吸収するためらしい金具が取り付けられ、蓋には何重にも封が施されていた。

 

ただの荷物にしては、ずいぶんと物々しい。

 

それ以上に目を引いたのは、箱の側面に大きく刻まれた文字だった。

 

ARMAMENT OF THE IMPERIUM

 

見慣れない字体で記されたその言葉は、妙に威圧感があった。

 

装飾的な文字の周囲には、翼を広げた双頭の鷲を思わせる紋章が描かれている。

 

それは企業のロゴというよりも、国家や軍隊が掲げる紋章に近かった。

 

まるで、この箱の中身が単なる商品ではなく、何らかの巨大な組織の威信を背負った代物であるかのように。

 

「……インペリウム?」

 

先生が首を傾げる。

 

その隣で、端末を片手に配送記録を確認していたセリナも、訝しげに眉を寄せた。

 

「シャーレ宛ての正式な荷物になっていますね」

 

「送り主は?」

 

「不明です」

 

「不明?」

 

「はい」

 

セリナは端末を操作し、配送記録の詳細を開いた。

 

画面には、配達日時、荷物の寸法、重量、配送先といった情報が並んでいる。

 

しかし、送り主の欄だけは空白だった。

 

いや、正確には空白ですらない。

 

送り主を記録するための項目そのものが、最初から存在していなかった。

 

「送り主の欄そのものが存在しません」

 

「それは……荷物としてどうなんだろう」

 

「私もそう思います」

 

セリナは困ったように微笑んだ。

 

もっとも、彼女もシャーレに運び込まれる奇妙なものには、それなりに慣れている。

 

問題は、今回の荷物がいつもの奇妙な荷物とは少しばかり雰囲気が違うことだった。

 

木箱には配送業者のラベルが貼られていない。荷物を運び込んだ職員にも、誰がこれを持ってきたのかという記憶が曖昧だった。

 

気がつけば、シャーレの前に置かれていた。

 

まるで最初からそこに存在していたかのように。

 

先生は木箱を見つめた。

 

何となく、嫌な予感がする。

 

キヴォトスでは、怪しい箱を開けると大抵ろくなことが起こらない。

 

爆発。

 

罠。

 

大量の請求書。

 

あるいはネル先輩が仕込んだ何か。

 

最後の一つについては、決して冗談では済まない実績があった。

 

「……開けてみようか」

 

「先生、慎重にお願いします」

 

「うん。何かあったらすぐに離れよう」

 

先生は工具を手に取った。

 

金属の留め具を外し、封を切り、蓋を固定していた金具を一つずつ外していく。

 

カチリ。

 

ガチャリ。

 

最後の留め具が外れる。

 

先生が慎重に蓋を持ち上げると、古びた木材が軋む音が執務室に響いた。

 

ギィィ……。

 

中から現れたのは、黒い金属製の巨大な銃だった。

 

「……銃?」

 

セリナが目を丸くする。

 

先生も箱の中を覗き込んだ。

 

そこに収まっていたのは、見慣れたアサルトライフルでも、対物ライフルでもなかった。

 

太い。

 

長い。

 

そして、異様に重そうだ。

 

銃身はまるで小型の大砲を思わせる太さで、分厚い金属製の機関部には、複雑な機械構造が凝縮されている。

 

頑丈そうなグリップと大型の引き金。銃本体の各所には、通常の銃器ではあまり見かけない補強板が取り付けられ、側面には幾何学的な装飾と見慣れない文字が刻まれていた。

 

銃身の周囲には放熱を意識したような構造が見える一方、機関部の一部には、装甲車の外板を思わせる厚みがある。

 

実用品なのだろう。

 

少なくとも、見た目を飾るためだけのものではない。

 

むしろ装飾そのものが、実用性を損なわない範囲で無理やり刻み込まれているようだった。

 

その黒い金属の表面は、使い込まれた工具のような鈍い光沢を放っている。

 

華美な装飾品ではない。

 

かといって、無骨な工業製品というだけでもない。

 

その姿には、奇妙な荘厳さがあった。

 

「これ……誰の銃だろう」

 

「見たことがありません」

 

セリナは銃の周囲を慎重に確認した。

 

銃身の先端には大型のマズルブレーキらしき部品が取り付けられている。弾倉は通常の小銃と比べて明らかに大きく、銃本体の重量を支えるためか、各部の構造もひどく頑丈だった。

 

「少なくとも、私たちが普段扱っている銃とは設計思想が違うように見えます」

 

「設計思想?」

 

「はい。普通の銃は、用途に応じて必要な性能を確保しつつ、取り回しやすさや重量との兼ね合いを考えますよね。でも、これは……」

 

セリナは言葉を切り、銃を見つめた。

 

「取り回しやすさを、あまり重視していないように見えます」

 

「なるほど……」

 

「それと、こちらの補強。銃そのものが受ける負荷を相当大きく見積もっているような……」

 

セリナはそこで、少し困ったように笑った。

 

「すみません。実際に撃ってみないと、詳しいことは分かりませんね」

 

「いや、撃つのはまだやめておこう」

 

先生はそう言って、銃を持ち上げた。

 

「……重い」

 

想像以上だった。

 

両手で抱えれば持ち上げられないほどではない。しかし、一般的な小銃のように片手で軽々と扱えるものではない。

 

重量があるだけではなく、前方に重心が偏っているらしく、持ち上げた瞬間に腕へずっしりとした負荷がかかった。

 

セリナと先生は顔を見合わせた。

 

そして、ほぼ同時に思った。

 

こんなものを、誰が使うのだろう。

 

その時だった。

 

「先生ー!」

 

勢いよく扉が開いた。

 

「お届け物があるって聞いたんだけど――」

 

明るい声とともに入ってきたのは、ノノミだった。

 

普段どおりの柔らかな笑顔を浮かべた彼女は、先生の姿を見つけて手を振りかけた。

 

しかし、その動きが途中で止まった。

 

視線が、先生の手元へ吸い寄せられる。

 

「わぁ……!」

 

目が輝いた。

 

「ノノミ?」

 

「すごい銃ですね!」

 

ノノミは箱のそばへ駆け寄ると、興味深そうに銃を眺めた。

 

その反応は、珍しいおもちゃを見つけた子供のようでもあり、新しい銃器を目の前にした熟練の射手のようでもあった。

 

「こんな形の銃、初めて見ました。ミレニアム製でしょうか?」

 

「いや、たぶん違うと思う」

 

「トリニティでもありませんね」

 

セリナが補足する。

 

「ゲヘナ製でもないです」

 

「じゃあ、どこの?」

 

三人が黙り込む。

 

銃を見れば見るほど、どこかの学校が製造した試作品という印象から遠ざかっていく。

 

そもそも、キヴォトスの銃器には、ある程度共通する特徴がある。

 

各学校の技術や趣味による差は大きいものの、銃器としての基本的な構造や運用思想には、共通の土台が存在する。

 

しかし、この銃にはそれが感じられなかった。

 

まるで、まったく異なる世界の常識から作り出された道具であるかのように。

 

その時。

 

廊下から、複数の足音が聞こえてきた。

 

「先生、いる?」

 

聞き慣れた声。

 

続いて扉から顔を出したのは、ネルだった。

 

その後ろには、アスナ、カリン、アカネの姿もある。

 

「何か面白そうなものがあるって聞いたんだけど!」

 

ネルは部屋に入るなり、机の横に置かれた木箱へ目を向けた。

 

そして、その中身を見て動きを止める。

 

「……なんだこれ」

 

「銃です」

 

ノノミが即答した。

 

「見れば分かる」

 

ネルは箱に近づき、銃を手に取った。

 

持ち上げようとして、わずかに眉をひそめる。

 

「重っ!」

 

「ですよね」

 

「誰がこんなの使うんだよ」

 

ネルは両手で銃を支え、左右から眺めた。

 

その顔には、困惑と好奇心が半分ずつ浮かんでいる。

 

重い武器なら珍しくない。銃身の長い武器も、威力を重視した武器も、ネルは何度も扱ってきた。

 

しかし、これは何かが違う。

 

銃本体の頑丈さも、機関部の大きさも、まるで別の尺度で作られているようだった。

 

ネルが銃の側面を見た時、その刻印が目に入った。

 

BOLT GUN

 

「……ボルトガン?」

 

「名前でしょうか?」

 

アカネが興味深そうに近づく。

 

「銃の名称である可能性が高そうですね」

 

「でも、ボルトって何だ?」

 

ネルが先生を見る。

 

先生は木箱の中に説明書らしき紙があることに気づき、それを取り出した。

 

紙は妙に厚く、表面には機械翻訳されたような不自然さのない英語が並んでいた。

 

そこには簡潔に、こう記されていた。

 

Boltgun

 

Mass-reactive projectile weapon.

 

先生は英文を読み、端末で翻訳する。

 

「……質量反応式の投射兵器?」

 

「投射兵器?」

 

アスナが首を傾げた。

 

「銃ってことじゃないの?」

 

「たぶん、そういう意味だと思う」

 

先生は説明書を読み進める。

 

そして、少し考え込んだ。

 

「……炸裂弾を撃つ銃、かな?」

 

「炸裂弾?」

 

全員が黙った。

 

ネルが、手に持った銃を見下ろす。

 

「……これ?」

 

「たぶん」

 

「このサイズで?」

 

「たぶん」

 

「弾丸が?」

 

「たぶん」

 

「……」

 

ネルは先生を見た。

 

「お前、さっきからたぶんしか言ってないぞ」

 

「僕だって初めて見るんだから仕方ないだろう」

 

「そりゃそうだけどさ……」

 

ネルは再び銃へ視線を戻した。

 

数秒の沈黙。

 

それから、口元をニヤリと歪めた。

 

「へぇ」

 

嫌な予感がした。

 

先生は直感的にそう思った。

 

「撃ってみようぜ!」

 

「待って」

 

即座に制止する。

 

「なんでだよ」

 

「説明書に『取り扱いには十分注意してください』って書いてある」

 

「銃なんだから当たり前だろ」

 

「その下」

 

先生は説明書の下部を指さした。

 

小さな文字で、警告文が記されている。

 

WARNING: AMMUNITION DETONATES AFTER IMPACT.

 

ネルはそれを読み上げた。

 

「……弾薬は、着弾後に起爆する」

 

沈黙。

 

ネルの顔から笑みが消えた。

 

「……爆発するの?」

 

「どうも」

 

「弾が?」

 

「うん」

 

「当たったら?」

 

「爆発する」

 

ネルは、手にしていた銃をゆっくりと机の上へ戻した。

 

コトリ。

 

普段なら乱暴に物を置きそうなネルが、驚くほど慎重に扱っていた。

 

「……」

 

「……」

 

「……いや、待てよ」

 

ネルは説明書を覗き込んだ。

 

「着弾後に起爆って、どういう仕組みだ? 弾が当たった衝撃で火薬が爆発するのか?」

 

「それなら、普通の炸裂弾と同じようなものだと思いますが……」

 

アカネが首を傾げる。

 

「わざわざ質量反応式と書いているのが気になりますね」

 

「質量反応ってことは、当たった相手の硬さとか、貫通した深さとかに反応するのかな?」

 

カリンも説明書を覗き込んだ。

 

「だとしたら、装甲に対しても有効かもしれません」

 

「なるほど……」

 

アカネの目が真剣になる。

 

「着弾しただけで爆発するなら、内部に侵入してから起爆することも考えられますね。外側だけでなく、装甲や遮蔽物の向こう側にも損傷を与えられる可能性があります」

 

「ちょっと待って」

 

先生は片手を上げた。

 

「まだ、そこまで分かってないからね?」

 

全員が先生を見る。

 

「……そうだった」

 

アカネは素直に頷いた。

 

その横で、アスナがいつもの笑顔を浮かべる。

 

「すごーい!」

 

「何が?」

 

「キヴォトスの銃って、普通は撃たれたら痛いじゃないですか」

 

「まあ……」

 

「これは撃たれたら爆発するんですね!」

 

「そうなるね」

 

「すごい進化です!」

 

「進化なのかなあ……」

 

先生は頭を抱えた。

 

キヴォトスの生徒たちにとって、銃弾とは基本的に相手を撃つためのものだ。

 

もちろん、銃器の種類によって威力も弾種も異なるし、爆発物を使用する兵器だって存在する。

 

しかし、この銃は明らかに様子がおかしい。

 

弾丸そのものが、着弾後に爆発する。

 

しかも、その弾丸を撃ち出す銃自体が、普通の小銃とは比較にならないほど頑丈に作られている。

 

何を相手にすることを想定しているのか。

 

何を破壊するために作られたのか。

 

考えれば考えるほど、疑問ばかりが増えていった。

 

アカネが感心したように頷く。

 

「合理的です」

 

「合理的なのか?」

 

「はい。命中させるだけで貫通と爆発による損傷を期待できるなら、攻撃手段として非常に効率的です」

 

「いや、効率的なのは分かるけどさ……」

 

ネルが腕を組む。

 

「撃たれる側からしたら、たまったもんじゃないな」

 

「そこは同感です」

 

カリンは弾倉を見つめていた。

 

「でも……」

 

「どうした?」

 

「これ、弾が大きすぎませんか?」

 

全員の視線が、木箱の底へ向けられた。

 

そこには、銃本体とは別に、整然と並べられた弾薬箱が収められていた。

 

蓋を開けると、内部には円筒形の弾丸がぎっしりと詰め込まれている。

 

一発一発が、通常の小銃弾とは比較にならないほど大きい。

 

太い薬莢。

 

重量感のある弾頭。

 

そして、弾薬全体を覆う頑丈な金属の表面。

 

弾丸というよりも、小型の金属製カプセルと呼んだほうが近い。

 

ノノミが一本を持ち上げる。

 

「わぁ」

 

そのまま、光にかざすようにして眺めた。

 

「ノノミ、それ触って大丈夫?」

 

「安全装置があるみたいですよ」

 

「そういう問題かな……」

 

先生は思わず額を押さえた。

 

ノノミが持っている弾丸の先端には、小さな刻印があった。

 

銃本体に刻まれていたものと同じ、見慣れない文字。

 

弾薬の側面にも、双頭の鷲の紋章が刻まれている。

 

それは単なる製造元の印というより、所有者の所属を示す軍用装備の標章のようだった。

 

「これも、どこかの学校が作ったものなのかな?」

 

先生が呟く。

 

「だとしたら、ミレニアムの技術部でも知らないのは不自然ですね」

 

セリナが答える。

 

「少なくとも、今のところ心当たりはありません」

 

「うーん……」

 

先生は弾薬を見つめた。

 

箱の中には、銃本体を固定するための緩衝材が敷き詰められていた。

 

その緩衝材も、ただの布や発泡材ではない。

 

金属製の固定具と、衝撃を吸収するための厚い素材が組み合わされている。輸送中に銃が動かないよう、かなり厳重に固定されていたようだ。

 

それほどまでに慎重に運ばれてきた兵器。

 

にもかかわらず、送り主は不明。

 

製造元も不明。

 

説明書に記された情報も、最低限のものしかない。

 

そして、何より。

 

なぜ、これがシャーレに届いたのか。

 

その疑問が解決する気配はなかった。

 

すると。

 

「先生ー!」

 

廊下から、新たな声が響いた。

 

「その箱、ミレニアムにも見せてください!」

 

扉から顔を出したのは、ウタハだった。

 

その背後には、ユウカの姿も見える。

 

どうやら、奇妙な荷物の噂は、すでにシャーレの外へ広がり始めているらしい。

 

ウタハは部屋に入ると、挨拶もそこそこに木箱へ近づいた。

 

そして、銃を見た。

 

その瞬間。

 

彼女の表情が変わった。

 

普段の落ち着いた技術者の顔。

 

その奥にあった好奇心が、急激に熱を帯びる。

 

「……先生」

 

「何?」

 

「それ、どこから?」

 

「分からない」

 

「誰が作った?」

 

「分からない」

 

「材質は?」

 

「分からない」

 

「内部構造は?」

 

「分からない」

 

ウタハは銃の側面に刻まれた文字を確認し、銃身を覗き込み、機関部の構造を目で追った。

 

その視線は、もはや銃を眺めるというより、未知の技術体系を読み解こうとしているようだった。

 

「なるほど……」

 

彼女は小さく呟いた。

 

「既存の銃器とは、設計の前提から違う可能性があるね」

 

「そうなの?」

 

「銃身の太さも、機関部の補強も、弾倉の構造も、私たちが知っている兵器の延長線上にあるようには見えない。もちろん、外見だけで断言はできないけど……」

 

ウタハは銃を見つめたまま、口元を緩めた。

 

「最高だね」

 

「待って」

 

先生が即座に反応した。

 

「少しだけ分解していい?」

 

「ダメ」

 

「なぜ?」

 

「危ないから」

 

「爆発するから?」

 

「そう」

 

「ならなおさら興味深い」

 

「ダメ」

 

即答だった。

 

しかし、ウタハは諦めていなかった。

 

銃の機構を調べたい。

 

内部構造を確認したい。

 

可能ならば、弾薬の起爆機構についても知りたい。

 

技術者として、これほど魅力的な未知の兵器を目の前にして、何もせずに帰るという選択肢は存在しなかった。

 

少なくとも、彼女の中では。

 

「分解しなくても、外部から観察するだけなら――」

 

「ダメ」

 

「非破壊検査なら――」

 

「ダメ」

 

「銃身の寸法を測るだけでも――」

 

「……それくらいなら、危なくない範囲で」

 

「ありがとう、先生!」

 

ウタハの手が、素早く工具箱へ伸びた。

 

その瞬間。

 

「ウタハ!」

 

鋭い声が響いた。

 

背後から現れたユウカが、彼女の手首をつかんでいた。

 

「……」

 

「また変なものを分解しようとしてるでしょ!」

 

「してない」

 

「その手に持ってる工具は何!?」

 

「……測定器具」

 

「今、分解用の工具も一緒に持っていたわよね!?」

 

ウタハは視線を逸らした。

 

「気のせいじゃないかな」

 

「気のせいで工具箱の中身が増えるわけないでしょ!」

 

ユウカは深々とため息をついた。

 

そして、先生へ向き直る。

 

「先生!」

 

「はい」

 

「それ、何なんですか?」

 

先生は少し考えてから答えた。

 

「ボルトガン」

 

「ボルトガン?」

 

「うん」

 

「普通の銃?」

 

「いや」

 

先生は説明書を持ち上げた。

 

「巨大な炸裂弾を撃つ銃」

 

ユウカの顔が固まった。

 

「……」

 

「……」

 

「……それ、シャーレに必要ですか?」

 

「僕もそう思う」

 

「廃棄しましょう」

 

「判断が早いね!?」

 

「だって、送り主不明の荷物から出てきた、用途も製造元も分からない、撃ったら弾が爆発する巨大な銃ですよ!? どう考えても危険物じゃないですか!」

 

ユウカの言葉には、正論以外の何物もなかった。

 

先生は反論できない。

 

むしろ、全面的に同意したいくらいだった。

 

しかし。

 

「でも……」

 

ノノミが悲しそうな顔をした。

 

「せっかく届いたのに」

 

「ノノミさん?」

 

「一度くらい撃ってみたいです」

 

「ダメ!」

 

ユウカが即答した。

 

「まだ誰も撃ってないんですよ? どれくらいの威力なのか、反動はどの程度なのか、安全性はどうなのか、何一つ分かっていないんですから!」

 

「それはそうなんですけど……」

 

「それに、撃った弾が爆発するなら、試射場の設備だって無事とは限りません!」

 

「うっ……」

 

ノノミは残念そうに銃を見つめた。

 

その横で、ネルがニヤリと笑う。

 

「一発くらいならいいだろ」

 

「ネル!」

 

「だって気になるじゃん」

 

「気になっても撃っちゃダメ!」

 

「安全な場所なら問題ないだろ?」

 

「その安全な場所を確保するのが大変なの!」

 

アスナが元気よく手を挙げた。

 

「私も気になります!」

 

「アスナまで!?」

 

「だって、撃つと弾が爆発するんですよね? どんな感じなのか、一度見てみたいです!」

 

「好奇心だけで兵器を撃とうとしないでください!」

 

カリンは少し考え込んだあと、真面目な顔で口を開いた。

 

「……安全な場所なら?」

 

「カリン!」

 

「いや、でも、性能を確認すること自体は必要だと思います。敵が持ち込んだ兵器だった場合、どの程度の危険性があるか分からないまま放置するわけにもいきませんし」

 

「それはそうだけど……!」

 

アカネも静かに頷いた。

 

「未知の兵器に対して、情報収集は重要です。安全性を確保したうえで、構造や性能を調べるべきでしょう」

 

「アカネまで!?」

 

「もちろん、十分な安全対策を講じることが前提です」

 

「そこは分かってるけど!」

 

気がつけば、執務室は大騒ぎになっていた。

 

撃ってみたいネル。

 

目を輝かせているノノミ。

 

純粋に興味を持っているアスナ。

 

現実的な観点から試験の必要性を訴えるカリンとアカネ。

 

そして、未知の技術を前にして、今にも工具を持ち出しそうなウタハ。

 

それを必死に止めようとするユウカ。

 

セリナはいつの間にか少し離れた位置へ移動し、万が一に備えて救急用品の準備を始めていた。

 

先生は頭を抱えた。

 

どうして、こうなるのだろう。

 

ただ荷物を開けただけなのに。

 

どうして、未知の兵器を巡って、こんなにも大勢の生徒が集まってしまうのだろう。

 

いや、原因は分かっている。

 

キヴォトスの生徒たちは、銃に慣れている。

 

だからこそ、未知の銃を見れば興味を持つ。

 

そして、銃が好きな生徒たちにとって、未知の銃というものは、それだけで魅力的な研究対象なのだ。

 

たとえ、それが着弾すると爆発する弾丸を撃ち出す、正体不明の巨大な兵器であっても。

 

「……とりあえず、撃つのは保留」

 

先生が宣言した。

 

「えー!」

 

「当然です!」

 

ノノミとユウカの声が重なる。

 

「まずは製造元と用途、それから安全性を確認する。試射はそのあと」

 

「先生、約束ですよ?」

 

ウタハが言った。

 

「約束というか、必要性が確認できたらね」

 

「分かった。必要性を証明すればいいんだね」

 

「そういう意味じゃないんだけどなあ……」

 

ウタハの目は、すでに次の段階へ進んでいた。

 

先生は嫌な予感を覚えた。

 

その時だった。

 

木箱の底から、もう一枚の紙が見つかった。

 

「……あれ?」

 

先生は緩衝材の隙間に挟まっていた紙片を取り出した。

 

先ほどの説明書とは違い、こちらには何の説明もない。

 

ただ、中央に短い一文が印字されているだけだった。

 

FOR HUMAN USE ONLY.

 

先生は、その文字をじっと見つめた。

 

「……人間用?」

 

その一言で、部屋の空気が変わった。

 

「人間用って、どういう意味ですか?」

 

ユウカが尋ねる。

 

「さあ……」

 

先生は紙を裏返した。

 

何も書かれていない。

 

「人間が使うことを想定している、という意味でしょうか?」

 

アカネが考え込む。

 

「でも、それならわざわざ書く必要はないんじゃないですか?」

 

カリンが言った。

 

「普通の銃器なら、人間が使うことは当然ですから」

 

「……」

 

全員が、改めて銃を見つめた。

 

キヴォトスでは、生徒たちが銃を扱う。

 

しかし、キヴォトスには生徒以外にも、ロボットや自律機械、さまざまな異形の存在がいる。

 

それでも、わざわざ人間用と記す理由は分からない。

 

そもそも、この銃は誰が使うことを想定して作られたのか。

 

なぜ、これほど頑丈に作られているのか。

 

なぜ、弾丸そのものが爆発するのか。

 

そして、なぜ送り主は、製造元も用途も記さず、ただこの一文だけを残したのか。

 

先生は、もう一度銃を見た。

 

黒い金属の表面に刻まれた双頭の鷲。

 

重厚な機関部。

 

巨大な弾倉。

 

そして、着弾後に爆発する弾丸。

 

それらは一見すると、単に過剰な威力を追求した兵器のようにも見えた。

 

しかし、説明書の一文が頭から離れない。

 

人間用。

 

まるで、人間ではない何者かが存在する世界で作られた兵器であるかのように。

 

「……」

 

先生は紙を折りたたみ、説明書と一緒に机の上へ置いた。

 

今のところ、分かることは何もない。

 

この銃がどこから来たのか。

 

誰が作ったのか。

 

なぜキヴォトスに送られてきたのか。

 

そして。

 

なぜ、人間用なのか。

 

その答えを知る者は、まだ誰もいなかった。

 

ただ一つだけ。

 

先生には分かっていた。

 

この日から。

 

キヴォトスの日常に。

 

ほんの少しだけ。

 

ウォーハンマー40,000の物騒さが混ざり始めたのだ。

 

そして翌日。

 

シャーレには、さらに三つの箱が届いた。

 

一つ目の箱には、独特の形状をしたエネルギー兵器。

 

二つ目の箱には、内部に何かを秘めているような複雑な機構を持つ銃。

 

三つ目の箱には、刃の代わりに鋸歯状の金属を備えた、見るからに物騒な剣。

 

先生は、届いた箱の側面を順番に確認した。

 

最初の箱には、こう書かれていた。

 

LASGUN.

 

二つ目には。

 

PLASMA GUN.

 

そして、三つ目には。

 

CHAIN SWORD.

 

先生はしばらく黙っていた。

 

それから、ゆっくりと天井を見上げた。

 

「……誰か、送り返す方法を調べてくれないかな」

 

その横で。

 

「チェーンソード……」

 

ウタハが、うっとりとした声で呟いた。

 

「ウタハ」

 

「まだ何も言ってないよ」

 

「顔に出てる」

 

「……少しだけ、分解してみたい」

 

「ダメ」

 

「残念」

 

そう言いながらも、ウタハの視線は、箱からまったく離れていなかった。

 

そして先生は、まだ知らなかった。

 

この三つの兵器が、ボルトガン以上に厄介な問題をシャーレへ持ち込むことになるのを。

 

何しろ、プラズマガンには、ボルトガンとはまた別の意味で取り扱いに注意が必要な理由があったのだから。

 

そしてチェーンソードに至っては。

 

そもそも、キヴォトスの生徒たちが「剣」というものに対して抱いている常識そのものを、根底から覆しかねない代物だった。

 

先生は机の上に並んだ三つの説明書を見た。

 

そして、心の底から願った。

 

せめて次に届くものは、もう少し平和なものであってほしい。

 

その願いが叶うかどうかは。

 

今のところ、誰にも分からなかった。

 

行間を整理して、セリフを一行開けて書いて、描写分は一行ずつにして

第一話 その銃、弾が爆発するんですけど

キヴォトス。

そこでは、銃撃戦は珍しいものではない。

今日もどこかで学校同士が小競り合いをしている。

誰かが銃を撃ち、誰かが爆発物を投げ、誰かが戦車を持ち出す。

銃声が響き、爆発が起こり、建物の壁に新しい弾痕が刻まれる。

それでも、翌日になれば大抵の生徒たちは何事もなかったかのように学校へ向かい、カフェでお茶を飲み、友人と談笑する。

壊れた建物は修理され、吹き飛んだ看板は付け替えられ、昨日の銃撃戦はいつしか笑い話になる。

そんなキヴォトスにおいて、銃というものは特別珍しいものではなかった。

むしろ、生徒のほとんどが何らかの銃器を所持している。

拳銃、サブマシンガン、アサルトライフル、ショットガン。

果ては重機関銃や対物ライフルまで、銃器の種類には事欠かない。

生徒たちはそれぞれ愛用の銃を持ち、整備し、時には自分の個性を表すアクセサリーのように扱っていた。

もちろん、銃が危険な道具であることに変わりはない。

ただし、キヴォトスの生徒たちにとっては、銃弾が飛び交うことそのものよりも、明日の小テストや食堂の新メニューのほうが、よほど切実な問題だったりする。

だからこそ。

シャーレの執務室に、見慣れない巨大な木箱が置かれているという事態は、少々奇妙なものだった。

 

「……これ、何?」

 

先生は机の横に置かれた木箱を見下ろしていた。

高さは先生の腰ほど。

幅は大人二人が並んで座れそうなくらいあり、厚みのある木板は頑丈な金属製の帯で補強されている。

四隅には輸送時の衝撃を吸収するためらしい金具が取り付けられ、蓋には何重にも封が施されていた。

ただの荷物にしては、ずいぶんと物々しい。

それ以上に目を引いたのは、箱の側面に大きく刻まれた文字だった。

ARMAMENT OF THE IMPERIUM

見慣れない字体で記されたその言葉は、妙に威圧感があった。

装飾的な文字の周囲には、翼を広げた双頭の鷲を思わせる紋章が描かれている。

それは企業のロゴというよりも、国家や軍隊が掲げる紋章に近かった。

まるで、この箱の中身が単なる商品ではなく、何らかの巨大な組織の威信を背負った代物であるかのように。

 

「……インペリウム?」

 

先生が首を傾げる。

その隣で、端末を片手に配送記録を確認していたセリナも、訝しげに眉を寄せた。

 

「シャーレ宛ての正式な荷物になっていますね」

 

「送り主は?」

 

「不明です」

 

「不明?」

 

「はい」

 

セリナは端末を操作し、配送記録の詳細を開いた。

画面には、配達日時、荷物の寸法、重量、配送先といった情報が並んでいる。

しかし、送り主の欄だけは空白だった。

いや、正確には空白ですらない。

送り主を記録するための項目そのものが、最初から存在していなかった。

 

「送り主の欄そのものが存在しません」

 

「それは……荷物としてどうなんだろう」

 

「私もそう思います」

 

セリナは困ったように微笑んだ。

もっとも、彼女もシャーレに運び込まれる奇妙なものには、それなりに慣れている。

問題は、今回の荷物がいつもの奇妙な荷物とは少しばかり雰囲気が違うことだった。

木箱には配送業者のラベルが貼られていない。

荷物を運び込んだ職員にも、誰がこれを持ってきたのかという記憶が曖昧だった。

気がつけば、シャーレの前に置かれていた。

まるで最初からそこに存在していたかのように。

先生は木箱を見つめた。

何となく、嫌な予感がする。

キヴォトスでは、怪しい箱を開けると大抵ろくなことが起こらない。

爆発。

罠。

大量の請求書。

あるいはネル先輩が仕込んだ何か。

最後の一つについては、決して冗談では済まない実績があった。

 

「……開けてみようか」

 

「先生、慎重にお願いします」

 

「うん。何かあったらすぐに離れよう」

 

先生は工具を手に取った。

金属の留め具を外し、封を切り、蓋を固定していた金具を一つずつ外していく。

カチリ。

ガチャリ。

最後の留め具が外れる。

先生が慎重に蓋を持ち上げると、古びた木材が軋む音が執務室に響いた。

ギィィ……。

中から現れたのは、黒い金属製の巨大な銃だった。

 

「……銃?」

 

セリナが目を丸くする。

先生も箱の中を覗き込んだ。

そこに収まっていたのは、見慣れたアサルトライフルでも、対物ライフルでもなかった。

太い。

長い。

そして、異様に重そうだ。

銃身はまるで小型の大砲を思わせる太さで、分厚い金属製の機関部には、複雑な機械構造が凝縮されている。

頑丈そうなグリップと大型の引き金。

銃本体の各所には、通常の銃器ではあまり見かけない補強板が取り付けられ、側面には幾何学的な装飾と見慣れない文字が刻まれていた。

銃身の周囲には放熱を意識したような構造が見える一方、機関部の一部には、装甲車の外板を思わせる厚みがある。

実用品なのだろう。

少なくとも、見た目を飾るためだけのものではない。

むしろ装飾そのものが、実用性を損なわない範囲で無理やり刻み込まれているようだった。

その黒い金属の表面は、使い込まれた工具のような鈍い光沢を放っている。

華美な装飾品ではない。

かといって、無骨な工業製品というだけでもない。

その姿には、奇妙な荘厳さがあった。

 

「これ……誰の銃だろう」

 

「見たことがありません」

 

セリナは銃の周囲を慎重に確認した。

銃身の先端には大型のマズルブレーキらしき部品が取り付けられている。

弾倉は通常の小銃と比べて明らかに大きく、銃本体の重量を支えるためか、各部の構造もひどく頑丈だった。

 

「少なくとも、私たちが普段扱っている銃とは設計思想が違うように見えます」

 

「設計思想?」

 

「はい。普通の銃は、用途に応じて必要な性能を確保しつつ、取り回しやすさや重量との兼ね合いを考えますよね。でも、これは……」

 

セリナは言葉を切り、銃を見つめた。

 

「取り回しやすさを、あまり重視していないように見えます」

 

「なるほど……」

 

「それと、こちらの補強。銃そのものが受ける負荷を相当大きく見積もっているような……」

 

セリナはそこで、少し困ったように笑った。

 

「すみません。実際に撃ってみないと、詳しいことは分かりませんね」

 

「いや、撃つのはまだやめておこう」

 

先生はそう言って、銃を持ち上げた。

 

「……重い」

 

想像以上だった。

両手で抱えれば持ち上げられないほどではない。

しかし、一般的な小銃のように片手で軽々と扱えるものではない。

重量があるだけではなく、前方に重心が偏っているらしく、持ち上げた瞬間に腕へずっしりとした負荷がかかった。

セリナと先生は顔を見合わせた。

そして、ほぼ同時に思った。

こんなものを、誰が使うのだろう。

その時だった。

 

「先生ー!」

 

勢いよく扉が開いた。

 

「お届け物があるって聞いたんだけど――」

 

明るい声とともに入ってきたのは、ノノミだった。

普段どおりの柔らかな笑顔を浮かべた彼女は、先生の姿を見つけて手を振りかけた。

しかし、その動きが途中で止まった。

視線が、先生の手元へ吸い寄せられる。

 

「わぁ……!」

 

目が輝いた。

 

「ノノミ?」

 

「すごい銃ですね!」

 

ノノミは箱のそばへ駆け寄ると、興味深そうに銃を眺めた。

その反応は、珍しいおもちゃを見つけた子供のようでもあり、新しい銃器を目の前にした熟練の射手のようでもあった。

 

「こんな形の銃、初めて見ました。ミレニアム製でしょうか?」

 

「いや、たぶん違うと思う」

 

「トリニティでもありませんね」

 

セリナが補足する。

 

「ゲヘナ製でもないです」

 

「じゃあ、どこの?」

 

三人が黙り込む。

銃を見れば見るほど、どこかの学校が製造した試作品という印象から遠ざかっていく。

そもそも、キヴォトスの銃器には、ある程度共通する特徴がある。

各学校の技術や趣味による差は大きいものの、銃器としての基本的な構造や運用思想には、共通の土台が存在する。

しかし、この銃にはそれが感じられなかった。

まるで、まったく異なる世界の常識から作り出された道具であるかのように。

その時。

廊下から、複数の足音が聞こえてきた。

 

「先生、いる?」

 

聞き慣れた声。

続いて扉から顔を出したのは、ネルだった。

その後ろには、アスナ、カリン、アカネの姿もある。

 

「何か面白そうなものがあるって聞いたんだけど!」

 

ネルは部屋に入るなり、机の横に置かれた木箱へ目を向けた。

そして、その中身を見て動きを止める。

 

「……なんだこれ」

 

「銃です」

 

ノノミが即答した。

 

「見れば分かる」

 

ネルは箱に近づき、銃を手に取った。

持ち上げようとして、わずかに眉をひそめる。

 

「重っ!」

 

「ですよね」

 

「誰がこんなの使うんだよ」

 

ネルは両手で銃を支え、左右から眺めた。

その顔には、困惑と好奇心が半分ずつ浮かんでいる。

重い武器なら珍しくない。

銃身の長い武器も、威力を重視した武器も、ネルは何度も扱ってきた。

しかし、これは何かが違う。

銃本体の頑丈さも、機関部の大きさも、まるで別の尺度で作られているようだった。

ネルが銃の側面を見た時、その刻印が目に入った。

BOLT GUN

 

「……ボルトガン?」

 

「名前でしょうか?」

 

アカネが興味深そうに近づく。

 

「銃の名称である可能性が高そうですね」

 

「でも、ボルトって何だ?」

 

ネルが先生を見る。

先生は木箱の中に説明書らしき紙があることに気づき、それを取り出した。

紙は妙に厚く、表面には機械翻訳されたような不自然さのない英語が並んでいた。

そこには簡潔に、こう記されていた。

Boltgun

Mass-reactive projectile weapon.

先生は英文を読み、端末で翻訳する。

 

「……質量反応式の投射兵器?」

 

「投射兵器?」

 

アスナが首を傾げた。

 

「銃ってことじゃないの?」

 

「たぶん、そういう意味だと思う」

 

先生は説明書を読み進める。

そして、少し考え込んだ。

 

「……炸裂弾を撃つ銃、かな?」

 

「炸裂弾?」

 

全員が黙った。

ネルが、手に持った銃を見下ろす。

 

「……これ?」

 

「たぶん」

 

「このサイズで?」

 

「たぶん」

 

「弾丸が?」

 

「たぶん」

 

「……」

 

ネルは先生を見た。

 

「お前、さっきからたぶんしか言ってないぞ」

 

「僕だって初めて見るんだから仕方ないだろう」

 

「そりゃそうだけどさ……」

 

ネルは再び銃へ視線を戻した。

数秒の沈黙。

それから、口元をニヤリと歪めた。

 

「へぇ」

 

嫌な予感がした。

先生は直感的にそう思った。

 

「撃ってみようぜ!」

 

「待って」

 

即座に制止する。

 

「なんでだよ」

 

「説明書に『取り扱いには十分注意してください』って書いてある」

 

「銃なんだから当たり前だろ」

 

「その下」

 

先生は説明書の下部を指さした。

小さな文字で、警告文が記されている。

WARNING: AMMUNITION DETONATES AFTER IMPACT.

ネルはそれを読み上げた。

 

「……弾薬は、着弾後に起爆する」

 

沈黙。

ネルの顔から笑みが消えた。

 

「……爆発するの?」

 

「どうも」

 

「弾が?」

 

「うん」

 

「当たったら?」

 

「爆発する」

 

ネルは、手にしていた銃をゆっくりと机の上へ戻した。

コトリ。

普段なら乱暴に物を置きそうなネルが、驚くほど慎重に扱っていた。

 

「……」

 

「……」

 

「……いや、待てよ」

 

ネルは説明書を覗き込んだ。

 

「着弾後に起爆って、どういう仕組みだ? 弾が当たった衝撃で火薬が爆発するのか?」

 

「それなら、普通の炸裂弾と同じようなものだと思いますが……」

 

アカネが首を傾げる。

 

「わざわざ質量反応式と書いているのが気になりますね」

 

「質量反応ってことは、当たった相手の硬さとか、貫通した深さとかに反応するのかな?」

 

カリンも説明書を覗き込んだ。

 

「だとしたら、装甲に対しても有効かもしれません」

 

「なるほど……」

 

アカネの目が真剣になる。

 

「着弾しただけで爆発するなら、内部に侵入してから起爆することも考えられますね。外側だけでなく、装甲や遮蔽物の向こう側にも損傷を与えられる可能性があります」

 

「ちょっと待って」

 

先生は片手を上げた。

 

「まだ、そこまで分かってないからね?」

 

全員が先生を見る。

 

「……そうだった」

 

アカネは素直に頷いた。

その横で、アスナがいつもの笑顔を浮かべる。

 

「すごーい!」

 

「何が?」

 

「キヴォトスの銃って、普通は撃たれたら痛いじゃないですか」

 

「まあ……」

 

「これは撃たれたら爆発するんですね!」

 

「そうなるね」

 

「すごい進化です!」

 

「進化なのかなあ……」

 

先生は頭を抱えた。

キヴォトスの生徒たちにとって、銃弾とは基本的に相手を撃つためのものだ。

もちろん、銃器の種類によって威力も弾種も異なるし、爆発物を使用する兵器だって存在する。

しかし、この銃は明らかに様子がおかしい。

弾丸そのものが、着弾後に爆発する。

しかも、その弾丸を撃ち出す銃自体が、普通の小銃とは比較にならないほど頑丈に作られている。

何を相手にすることを想定しているのか。

何を破壊するために作られたのか。

考えれば考えるほど、疑問ばかりが増えていった。

アカネが感心したように頷く。

 

「合理的です」

 

「合理的なのか?」

 

「はい。命中させるだけで貫通と爆発による損傷を期待できるなら、攻撃手段として非常に効率的です」

 

「いや、効率的なのは分かるけどさ……」

 

ネルが腕を組む。

 

「撃たれる側からしたら、たまったもんじゃないな」

 

「そこは同感です」

 

カリンは弾倉を見つめていた。

 

「でも……」

 

「どうした?」

 

「これ、弾が大きすぎませんか?」

 

全員の視線が、木箱の底へ向けられた。

そこには、銃本体とは別に、整然と並べられた弾薬箱が収められていた。

蓋を開けると、内部には円筒形の弾丸がぎっしりと詰め込まれている。

一発一発が、通常の小銃弾とは比較にならないほど大きい。

太い薬莢。

重量感のある弾頭。

そして、弾薬全体を覆う頑丈な金属の表面。

弾丸というよりも、小型の金属製カプセルと呼んだほうが近い。

ノノミが一本を持ち上げる。

 

「わぁ」

 

そのまま、光にかざすようにして眺めた。

 

「ノノミ、それ触って大丈夫?」

 

「安全装置があるみたいですよ」

 

「そういう問題かな……」

 

先生は思わず額を押さえた。

ノノミが持っている弾丸の先端には、小さな刻印があった。

銃本体に刻まれていたものと同じ、見慣れない文字。

弾薬の側面にも、双頭の鷲の紋章が刻まれている。

それは単なる製造元の印というより、所有者の所属を示す軍用装備の標章のようだった。

 

「これも、どこかの学校が作ったものなのかな?」

 

先生が呟く。

 

「だとしたら、ミレニアムの技術部でも知らないのは不自然ですね」

 

セリナが答える。

 

「少なくとも、今のところ心当たりはありません」

 

「うーん……」

 

先生は弾薬を見つめた。

箱の中には、銃本体を固定するための緩衝材が敷き詰められていた。

その緩衝材も、ただの布や発泡材ではない。

金属製の固定具と、衝撃を吸収するための厚い素材が組み合わされている。

輸送中に銃が動かないよう、かなり厳重に固定されていたようだ。

それほどまでに慎重に運ばれてきた兵器。

にもかかわらず、送り主は不明。

製造元も不明。

説明書に記された情報も、最低限のものしかない。

そして、何より。

なぜ、これがシャーレに届いたのか。

その疑問が解決する気配はなかった。

すると。

 

「先生ー!」

 

廊下から、新たな声が響いた。

 

「その箱、ミレニアムにも見せてください!」

 

扉から顔を出したのは、ウタハだった。

その背後には、ユウカの姿も見える。

どうやら、奇妙な荷物の噂は、すでにシャーレの外へ広がり始めているらしい。

ウタハは部屋に入ると、挨拶もそこそこに木箱へ近づいた。

そして、銃を見た。

その瞬間。

彼女の表情が変わった。

普段の落ち着いた技術者の顔。

その奥にあった好奇心が、急激に熱を帯びる。

 

「……先生」

 

「何?」

 

「それ、どこから?」

 

「分からない」

 

「誰が作った?」

 

「分からない」

 

「材質は?」

 

「分からない」

 

「内部構造は?」

 

「分からない」

 

ウタハは銃の側面に刻まれた文字を確認し、銃身を覗き込み、機関部の構造を目で追った。

その視線は、もはや銃を眺めるというより、未知の技術体系を読み解こうとしているようだった。

 

「なるほど……」

 

彼女は小さく呟いた。

 

「既存の銃器とは、設計の前提から違う可能性があるね」

 

「そうなの?」

 

「銃身の太さも、機関部の補強も、弾倉の構造も、私たちが知っている兵器の延長線上にあるようには見えない。もちろん、外見だけで断言はできないけど……」

 

ウタハは銃を見つめたまま、口元を緩めた。

 

「最高だね」

 

「待って」

 

先生が即座に反応した。

 

「少しだけ分解していい?」

 

「ダメ」

 

「なぜ?」

 

「危ないから」

 

「爆発するから?」

 

「そう」

 

「ならなおさら興味深い」

 

「ダメ」

 

即答だった。

しかし、ウタハは諦めていなかった。

銃の機構を調べたい。

内部構造を確認したい。

可能ならば、弾薬の起爆機構についても知りたい。

技術者として、これほど魅力的な未知の兵器を目の前にして、何もせずに帰るという選択肢は存在しなかった。

少なくとも、彼女の中では。

 

「分解しなくても、外部から観察するだけなら――」

 

「ダメ」

 

「非破壊検査なら――」

 

「ダメ」

 

「銃身の寸法を測るだけでも――」

 

「……それくらいなら、危なくない範囲で」

 

「ありがとう、先生!」

 

ウタハの手が、素早く工具箱へ伸びた。

その瞬間。

 

「ウタハ!」

 

鋭い声が響いた。

背後から現れたユウカが、彼女の手首をつかんでいた。

 

「……」

 

「また変なものを分解しようとしてるでしょ!」

 

「してない」

 

「その手に持ってる工具は何!?」

 

「……測定器具」

 

「今、分解用の工具も一緒に持っていたわよね!?」

 

ウタハは視線を逸らした。

 

「気のせいじゃないかな」

 

「気のせいで工具箱の中身が増えるわけないでしょ!」

 

ユウカは深々とため息をついた。

そして、先生へ向き直る。

 

「先生!」

 

「はい」

 

「それ、何なんですか?」

 

先生は少し考えてから答えた。

 

「ボルトガン」

 

「ボルトガン?」

 

「うん」

 

「普通の銃?」

 

「いや」

 

先生は説明書を持ち上げた。

 

「巨大な炸裂弾を撃つ銃」

 

ユウカの顔が固まった。

 

「……」

 

「……」

 

「……それ、シャーレに必要ですか?」

 

「僕もそう思う」

 

「廃棄しましょう」

 

「判断が早いね!?」

 

「だって、送り主不明の荷物から出てきた、用途も製造元も分からない、撃ったら弾が爆発する巨大な銃ですよ!? どう考えても危険物じゃないですか!」

 

ユウカの言葉には、正論以外の何物もなかった。

先生は反論できない。

むしろ、全面的に同意したいくらいだった。

しかし。

 

「でも……」

 

ノノミが悲しそうな顔をした。

 

「せっかく届いたのに」

 

「ノノミさん?」

 

「一度くらい撃ってみたいです」

 

「ダメ!」

 

ユウカが即答した。

 

「まだ誰も撃ってないんですよ? どれくらいの威力なのか、反動はどの程度なのか、安全性はどうなのか、何一つ分かっていないんですから!」

 

「それはそうなんですけど……」

 

「それに、撃った弾が爆発するなら、試射場の設備だって無事とは限りません!」

 

「うっ……」

 

ノノミは残念そうに銃を見つめた。

その横で、ネルがニヤリと笑う。

 

「一発くらいならいいだろ」

 

「ネル!」

 

「だって気になるじゃん」

 

「気になっても撃っちゃダメ!」

 

「安全な場所なら問題ないだろ?」

 

「その安全な場所を確保するのが大変なの!」

 

アスナが元気よく手を挙げた。

 

「私も気になります!」

 

「アスナまで!?」

 

「だって、撃つと弾が爆発するんですよね? どんな感じなのか、一度見てみたいです!」

 

「好奇心だけで兵器を撃とうとしないでください!」

 

カリンは少し考え込んだあと、真面目な顔で口を開いた。

 

「……安全な場所なら?」

 

「カリン!」

 

「いや、でも、性能を確認すること自体は必要だと思います。敵が持ち込んだ兵器だった場合、どの程度の危険性があるか分からないまま放置するわけにもいきませんし」

 

「それはそうだけど……!」

 

アカネも静かに頷いた。

 

「未知の兵器に対して、情報収集は重要です。安全性を確保したうえで、構造や性能を調べるべきでしょう」

 

「アカネまで!?」

 

「もちろん、十分な安全対策を講じることが前提です」

 

「そこは分かってるけど!」

 

気がつけば、執務室は大騒ぎになっていた。

撃ってみたいネル。

目を輝かせているノノミ。

純粋に興味を持っているアスナ。

現実的な観点から試験の必要性を訴えるカリンとアカネ。

そして、未知の技術を前にして、今にも工具を持ち出しそうなウタハ。

それを必死に止めようとするユウカ。

セリナはいつの間にか少し離れた位置へ移動し、万が一に備えて救急用品の準備を始めていた。

先生は頭を抱えた。

どうして、こうなるのだろう。

ただ荷物を開けただけなのに。

どうして、未知の兵器を巡って、こんなにも大勢の生徒が集まってしまうのだろう。

いや、原因は分かっている。

キヴォトスの生徒たちは、銃に慣れている。

だからこそ、未知の銃を見れば興味を持つ。

そして、銃が好きな生徒たちにとって、未知の銃というものは、それだけで魅力的な研究対象なのだ。

たとえ、それが着弾すると爆発する弾丸を撃ち出す、正体不明の巨大な兵器であっても。

 

「……とりあえず、撃つのは保留」

 

先生が宣言した。

 

「えー!」

 

「当然です!」

 

ノノミとユウカの声が重なる。

 

「まずは製造元と用途、それから安全性を確認する。試射はそのあと」

 

「先生、約束ですよ?」

 

ウタハが言った。

 

「約束というか、必要性が確認できたらね」

 

「分かった。必要性を証明すればいいんだね」

 

「そういう意味じゃないんだけどなあ……」

 

ウタハの目は、すでに次の段階へ進んでいた。

先生は嫌な予感を覚えた。

その時だった。

木箱の底から、もう一枚の紙が見つかった。

 

「……あれ?」

 

先生は緩衝材の隙間に挟まっていた紙片を取り出した。

先ほどの説明書とは違い、こちらには何の説明もない。

ただ、中央に短い一文が印字されているだけだった。

FOR HUMAN USE ONLY.

先生は、その文字をじっと見つめた。

 

「……人間用?」

 

その一言で、部屋の空気が変わった。

 

「人間用って、どういう意味ですか?」

 

ユウカが尋ねる。

 

「さあ……」

 

先生は紙を裏返した。

何も書かれていない。

 

「人間が使うことを想定している、という意味でしょうか?」

 

アカネが考え込む。

 

「でも、それならわざわざ書く必要はないんじゃないですか?」

 

カリンが言った。

 

「普通の銃器なら、人間が使うことは当然ですから」

 

「……」

 

全員が、改めて銃を見つめた。

キヴォトスでは、生徒たちが銃を扱う。

しかし、キヴォトスには生徒以外にも、ロボットや自律機械、さまざまな異形の存在がいる。

それでも、わざわざ人間用と記す理由は分からない。

そもそも、この銃は誰が使うことを想定して作られたのか。

なぜ、これほど頑丈に作られているのか。

なぜ、弾丸そのものが爆発するのか。

そして、なぜ送り主は、製造元も用途も記さず、ただこの一文だけを残したのか。

先生は、もう一度銃を見た。

黒い金属の表面に刻まれた双頭の鷲。

重厚な機関部。

巨大な弾倉。

そして、着弾後に爆発する弾丸。

それらは一見すると、単に過剰な威力を追求した兵器のようにも見えた。

しかし、説明書の一文が頭から離れない。

人間用。

まるで、人間ではない何者かが存在する世界で作られた兵器であるかのように。

 

「……」

 

先生は紙を折りたたみ、説明書と一緒に机の上へ置いた。

今のところ、分かることは何もない。

この銃がどこから来たのか。

誰が作ったのか。

なぜキヴォトスに送られてきたのか。

そして。

なぜ、人間用なのか。

その答えを知る者は、まだ誰もいなかった。

ただ一つだけ。

先生には分かっていた。

この日から。

キヴォトスの日常に。

ほんの少しだけ。

ウォーハンマー40,000の物騒さが混ざり始めたのだ。

 

そして翌日。

シャーレには、さらに三つの箱が届いた。

一つ目の箱には、独特の形状をしたエネルギー兵器。

二つ目の箱には、内部に何かを秘めているような複雑な機構を持つ銃。

三つ目の箱には、刃の代わりに鋸歯状の金属を備えた、見るからに物騒な剣。

先生は、届いた箱の側面を順番に確認した。

最初の箱には、こう書かれていた。

LASGUN.

二つ目には。

PLASMA GUN.

そして、三つ目には。

CHAIN SWORD.

先生はしばらく黙っていた。

それから、ゆっくりと天井を見上げた。

 

「……誰か、送り返す方法を調べてくれないかな」

 

その横で。

 

「チェーンソード……」

 

ウタハが、うっとりとした声で呟いた。

 

「ウタハ」

 

「まだ何も言ってないよ」

 

「顔に出てる」

 

「……少しだけ、分解してみたい」

 

「ダメ」

 

「残念」

 

そう言いながらも、ウタハの視線は、箱からまったく離れていなかった。

そして先生は、まだ知らなかった。

この三つの兵器が、ボルトガン以上に厄介な問題をシャーレへ持ち込むことになるのを。

何しろ、プラズマガンには、ボルトガンとはまた別の意味で取り扱いに注意が必要な理由があったのだから。

そしてチェーンソードに至っては。

そもそも、キヴォトスの生徒たちが「剣」というものに対して抱いている常識そのものを、根底から覆しかねない代物だった。

先生は机の上に並んだ三つの説明書を見た。

そして、心の底から願った。

せめて次に届くものは、もう少し平和なものであってほしい。

その願いが叶うかどうかは。

今のところ、誰にも分からなかった。

 

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