キヴォトスにウォーハンマー40kの世界の武器がやってきた!   作:eriza7170

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第十一話 パワーアーマーは制服ではありません

 

 

翌朝。

 

シャーレ。

 

先生は。

 

机の上を見ていた。

 

書類。

 

書類。

 

書類。

 

そして。

 

昨日より増えている。

 

「……」

 

ユウカが横に立つ。

 

「十七枚です」

 

「何が?」

 

「パワーアーマーの試着申請です」

 

「……」

 

先生は。

 

一枚ずつ確認する。

 

ゲヘナ学園・使用申請

 

トリニティ総合学園・使用申請

 

アビドス高等学校・使用申請

 

ミレニアムサイエンススクール・研究申請

 

ゲーム開発部・ゲーム資料申請

 

「……」

 

最後。

 

『着てみたい!』

 

署名。

 

ミカ。

 

「……」

 

先生は。

 

紙を置いた。

 

「予想はしてた」

 

ユウカが頷く。

 

「でしょうね」

 

パワーアーマー。

 

それは。

 

40k世界において。

 

ただの防具ではない。

 

人間の身体を。

 

超人的な戦闘能力へ引き上げる。

 

強化装甲。

 

生命維持。

 

動力補助。

 

通信。

 

照準。

 

そして。

 

極めて強固な装甲。

 

しかし。

 

キヴォトスでは。

 

先生が説明するより先に。

 

ネルが言った。

 

「要するに」

 

「うん」

 

「すげぇ鎧だろ?」

 

「……」

 

「着れば強くなる」

 

「まあ」

 

「じゃあ」

 

ネルは。

 

満面の笑み。

 

「着ればいいじゃん」

 

「そんな簡単じゃない」

 

格納庫。

 

巨大なパワーアーマーが。

 

一体。

 

立っている。

 

黒い装甲。

 

巨大な肩。

 

分厚い胸部。

 

背中には。

 

動力機構。

 

頭部には。

 

人間の顔より遥かに大きい。

 

ヘルメット。

 

その姿は。

 

まるで。

 

歩く戦車。

 

生徒たちは。

 

言葉を失っていた。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

ミカだけが。

 

「かっこいい!」

 

と叫んだ。

 

先生は苦笑する。

 

「そうだね」

 

ネルが。

 

装甲を叩く。

 

コン。

 

「硬っ」

 

「うん」

 

「これ」

 

「うん」

 

「戦車?」

 

「人間用」

 

「人間?」

 

ネルは。

 

パワーアーマーを見る。

 

「……これを?」

 

「着る」

 

「……」

 

「そう」

 

ネルは。

 

少し考える。

 

「人間ってすげぇな」

 

ウタハが。

 

装甲の周囲を歩く。

 

「動力源」

 

「うん」

 

「サーボ機構」

 

「うん」

 

「装甲材」

 

「うん」

 

「内部制御」

 

「うん」

 

「……」

 

先生を見る。

 

「これ」

 

「何?」

 

「ミレニアムで研究していい?」

 

「ダメ」

 

「なぜ?」

 

「全部研究する気だから」

 

「当然だろう?」

 

「当然じゃないよ」

 

最初の試着者。

 

ヒナ。

 

「……」

 

彼女は。

 

パワーアーマーの前に立つ。

 

先生が説明する。

 

「無理だと思ったらすぐ止めて」

 

「分かった」

 

「動力を入れる」

 

「はい」

 

装甲が。

 

低い音を立てる。

 

ヴゥゥゥン……

 

内部機構が動く。

 

ヒナが。

 

中へ入る。

 

肩。

 

腕。

 

脚。

 

胸部。

 

そして。

 

ヘルメット。

 

最後に。

 

胸部装甲が閉じる。

 

ガコン。

 

「……」

 

全員。

 

黙った。

 

巨大な戦士が。

 

そこに立っている。

 

先生が。

 

「ヒナ?」

 

「……」

 

「大丈夫?」

 

数秒。

 

返事がない。

 

「ヒナ?」

 

通信装置から。

 

声。

 

「……大丈夫」

 

しかし。

 

その声は。

 

いつものヒナの声より。

 

少し低く。

 

機械的だった。

 

「動ける?」

 

「うん」

 

一歩。

 

ズン。

 

床が。

 

少し震える。

 

二歩。

 

ズン。

 

三歩。

 

ズン。

 

ネルが。

 

目を輝かせる。

 

「すげぇ」

 

ヒナは。

 

腕を動かす。

 

装甲が。

 

ほとんど遅れずに追従する。

 

拳を握る。

 

ギギッ。

 

「……」

 

ヒナが。

 

自分の手を見る。

 

「力が」

 

「どう?」

 

「すごい」

 

「どれくらい?」

 

「普段より」

 

少し考える。

 

「かなり」

 

ネルが。

 

すぐに手を挙げる。

 

「次、私!」

 

「待って」

 

「なんで?」

 

「一人ずつ」

 

「早く!」

 

ヒナが。

 

パワーアーマーを脱ぐ。

 

ネルが。

 

待ちきれない様子で。

 

装甲の前へ。

 

「……」

 

装着。

 

動力。

 

起動。

 

ヴゥゥゥン。

 

ネルが。

 

拳を握る。

 

「……」

 

そして。

 

「おおおおおお!」

 

その場で。

 

ジャンプ。

 

ドン!

 

着地。

 

床が揺れる。

 

「ネル!」

 

先生が叫ぶ。

 

「何だよ!」

 

「ジャンプしない!」

 

「すげぇんだよこれ!」

 

ネルが。

 

腕を振る。

 

「これなら!」

 

「何?」

 

「戦車相手でも――」

 

「ネル」

 

先生が。

 

静かに言う。

 

「試着だからね」

 

「……」

 

「壊さないで」

 

「分かった」

 

ネルは。

 

渋々。

 

動きを止める。

 

その後。

 

カリン。

 

アカネ。

 

イオリ。

 

シロコ。

 

次々と試着する。

 

そして。

 

全員。

 

共通した感想。

 

「重いのに動ける。」

 

パワーアーマーは。

 

ただの重装甲ではない。

 

着用者の動きを。

 

動力によって補助する。

 

そのため。

 

生徒たちは。

 

驚くほど自然に。

 

歩くことができた。

 

シロコが。

 

装甲の手を見る。

 

「……」

 

「どう?」

 

先生が聞く。

 

「これ」

 

「うん」

 

「自転車乗れる?」

 

「……」

 

先生は。

 

固まった。

 

「なんで?」

 

「砂漠で移動するとき」

 

「……」

 

シロコは。

 

真面目だった。

 

「この装備なら」

 

「うん」

 

「もっと速く走れる」

 

「そうだね」

 

「じゃあ自転車より便利」

 

「……」

 

先生は。

 

また一つ。

 

キヴォトスの常識を学んだ。

 

そして。

 

問題の人物。

 

ミカ。

 

「私も!」

 

「うん」

 

ミカは。

 

パワーアーマーの前に立つ。

 

「……」

 

少し小さい。

 

先生が心配する。

 

「サイズ大丈夫かな?」

 

「大丈夫!」

 

「本当に?」

 

「たぶん!」

 

「たぶんって」

 

装着。

 

動力。

 

起動。

 

ヴゥゥゥン……

 

ミカの身体が。

 

装甲に包まれる。

 

巨大な肩。

 

巨大な腕。

 

巨大な脚。

 

完全な重装甲。

 

「……」

 

ミカが。

 

動く。

 

一歩。

 

ズン。

 

もう一歩。

 

ズン。

 

そして。

 

「先生!」

 

「何?」

 

「これ!」

 

「うん」

 

「すっごく楽しい!」

 

先生は。

 

苦笑する。

 

「そうだろうね」

 

ミカは。

 

腕を広げる。

 

「これなら」

 

「うん」

 

「先生を抱っこできる!」

 

「……」

 

「抱っこしていい?」

 

「ダメ」

 

「なんで!?」

 

「危ないから!」

 

「大丈夫だよ!」

 

「大丈夫じゃないよ!」

 

その時。

 

ウタハが。

 

何かを見つけた。

 

「先生」

 

「何?」

 

「この装甲」

 

「うん」

 

「背部に」

 

「……」

 

「何か接続端子がある」

 

先生が確認する。

 

そこには。

 

武器を接続するための。

 

大型の装備ポート。

 

「……」

 

ウタハが。

 

目を輝かせる。

 

「武器を」

 

「……」

 

「外部接続できる」

 

「うん」

 

「つまり」

 

「……」

 

「この装甲に」

 

ウタハは。

 

隣に置かれていた。

 

アスタルテス用ボルトガンを見る。

 

「これを装備できる」

 

沈黙。

 

ネル。

 

「……」

 

ヒナ。

 

「……」

 

カリン。

 

「……」

 

イオリ。

 

「……」

 

シロコ。

 

「……」

 

ミカ。

 

「……!」

 

そして。

 

ネルが。

 

ゆっくり言った。

 

「先生」

 

「何?」

 

「それ」

 

「うん」

 

「やろうぜ」

 

先生は。

 

即答した。

 

「ダメ」

 

「なんで!?」

 

「試着だから!」

 

「一回だけ!」

 

「ダメ!」

 

「じゃあ安全な訓練場で!」

 

「ダメ!」

 

「先生!」

 

ネルが。

 

パワーアーマーの中から叫ぶ。

 

「これ、武器を持って初めて完成だろ!」

 

先生は。

 

言い返せなかった。

 

なぜなら。

 

その言葉が。

 

あまりにも。

 

40kらしかったから。

 

しかし。

 

ユウカが。

 

別の問題を指摘した。

 

「先生」

 

「何?」

 

「武器を装備した場合」

 

「うん」

 

「弾薬費が」

 

「……」

 

「さらに増えます」

 

ネルが。

 

固まる。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

ネルは。

 

静かに。

 

パワーアーマーのヘルメットを脱いだ。

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

「今日は」

 

ネルは。

 

真剣な顔で。

 

「やめとく」

 

「珍しいね」

 

「弾薬高いなら仕方ねぇ」

 

ユウカは。

 

満足そうに頷いた。

 

「分かってもらえて何よりです」

 

夕方。

 

試着会終了。

 

パワーアーマーは。

 

格納庫へ戻された。

 

先生は。

 

一人で装甲を見上げる。

 

「……」

 

ほんの一日。

 

生徒たちが着ただけ。

 

それなのに。

 

すでに。

 

「誰が一番似合っていたか」

 

という話が。

 

校内で始まっていた。

 

そして。

 

翌朝。

 

シャーレに届いたアンケート。

 

【パワーアーマー試着会アンケート】

 

Q. また着たいですか?

 

ヒナ:はい

 

ネル:当然

 

カリン:機会があれば

 

アカネ:整備検証のため必要

 

イオリ:もう一回

 

シロコ:砂漠で使いたい

 

ミカ:毎日着たい!

 

先生は。

 

最後の回答を見て。

 

頭を抱えた。

 

しかし。

 

その下に。

 

もう一枚。

 

匿名のアンケートがあった。

 

Q. パワーアーマーに何を装備したいですか?

 

回答:

 

「チェーンソード」

 

「ボルトピストル」

 

「ボルトガン」

 

「フレイマー」

 

「全部」

 

先生は。

 

しばらく。

 

紙を見つめていた。

 

「……」

 

そして。

 

小さく呟く。

 

「全部は無理だよ」

 

その瞬間。

 

武器庫の奥から。

 

ガコン。

 

何かが動く音。

 

先生が振り返る。

 

そこには。

 

まだ開けていない。

 

巨大な箱。

 

箱に書かれている文字。

 

POWER FIST

 

先生は。

 

ゆっくり目を閉じた。

 

「……」

 

「今度は拳か……」

 

――第十一話・終。

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