キヴォトスにウォーハンマー40kの世界の武器がやってきた! 作:eriza7170
朝。
シャーレ武器庫。
先生は。
巨大な箱を前にしていた。
箱には。
POWER FIST
と書かれている。
その文字だけで。
先生は。
昨日のパワーアーマーの騒ぎを思い出した。
「……」
嫌な予感しかしない。
箱を開ける。
中には。
巨大な装甲製の拳。
腕全体を覆うほどの大きさ。
分厚い装甲。
指。
拳。
そして。
内部に組み込まれた。
強力な動力機構。
先生は。
説明書を読む。
「……」
POWER FIST
Powered close-combat weapon.
Designed for heavily armoured assault.
先生は。
一度。
箱を見る。
もう一度。
説明書を見る。
「……」
「先生?」
背後。
声。
ネル。
「何それ?」
「パワーフィスト」
「へぇ」
ネルが。
拳を見る。
「……」
そして。
笑った。
「殴るやつ?」
「そう」
「強そう」
「うん」
「どれくらい?」
先生は。
少し考える。
「装甲車とかを殴れる」
ネルの目が輝いた。
「最高じゃん」
先生は。
頭を抱えた。
「やっぱりそうなるよね」
数分後。
武器庫には。
ネル。
ヒナ。
カリン。
アカネ。
イオリ。
シロコ。
ミカ。
そして。
なぜか。
ノノミ。
まで集まっていた。
「……」
先生は。
全員を見る。
「どうしてこんなに集まったの?」
ノノミが。
にこにこしながら言う。
「面白そうなものがあると聞きましたので」
「……」
先生は。
パワーフィストを見る。
「これは」
先生は。
全員に説明する。
「遊び道具じゃない」
ネル。
「分かってる」
「対戦車用に近い装備」
「分かってる」
「人に向けたら危険」
「分かってる」
「握手にも使わない」
ネルが。
少し黙る。
「……」
「ネル?」
「それは分かってる」
先生は。
少し安心した。
試験場。
パワーフィストが。
専用アームに取り付けられている。
まだ誰も装着していない。
まず。
動力を入れる。
ヴゥゥゥン……
拳が。
ゆっくり。
握られる。
ギギギ……
そして。
先生は。
耐久試験用の巨大な鋼鉄ブロックを見る。
「これを」
「はい」
ウタハが答える。
「パワーフィストで一度だけ殴ります」
「分かった」
ネルが。
「私がやる」
先生を見る。
「いい?」
先生は。
少し迷う。
「……」
そして。
「安全装備をつけて」
「了解!」
パワーフィスト装着。
ネルの右腕が。
巨大な装甲拳に包まれる。
腕。
肩。
手。
すべてが。
機械の塊になる。
ネルが。
ゆっくり拳を握る。
ギギッ。
「……」
ネルが笑う。
「重い」
「うん」
「でも」
ネルが。
鋼鉄ブロックを見る。
「これなら」
一歩。
踏み込む。
「いける」
拳を。
振り抜く。
――ドゴォォォン!!
衝撃。
鋼鉄ブロックが。
大きくへこむ。
周囲に。
金属音が響く。
「……」
全員。
絶句。
ネルが。
拳を見る。
「……」
そして。
一言。
「すげぇ」
先生も。
「……」
「先生」
「何?」
「これ」
「うん」
「めちゃくちゃ強い」
「うん」
「欲しい」
「ダメ」
「なんでだよ!」
「さっきの一発で修理費が発生してる」
ユウカが。
横から。
「はい」
「……」
ネルが。
黙った。
ユウカが。
へこんだ鋼鉄ブロックを見る。
「……」
「どう?」
先生が聞く。
「修理費」
「はい」
「いくらですか?」
「……」
ユウカは。
計算する。
「普通の訓練用装備の」
「うん」
「数十倍です」
ネルが。
「……」
「……」
「……」
「パワーフィスト」
ネルは。
ゆっくり。
拳を外す。
「……」
「どうしたの?」
「いらない」
先生が驚く。
「珍しい」
「金かかりすぎる」
「そこなんだ」
「そこだよ!」
次。
ヒナ。
「私も試していい?」
「もちろん」
ヒナが。
パワーフィストを装着する。
ネルと同じ。
巨大な拳。
しかし。
ヒナは。
すぐには殴らない。
「……」
「どうしたの?」
「力の伝達が」
「うん」
「想像以上に強い」
「そう?」
「うん」
ヒナは。
ゆっくり。
拳を動かす。
「これは」
「うん」
「扱いを間違えると」
ヒナは。
鋼鉄ブロックを見る。
「日常生活では使えない」
先生は。
ほっとする。
「そうだね」
ヒナは。
頷く。
「でも」
「……」
「戦闘なら」
「うん」
「非常に強い」
先生は。
苦笑した。
「まあ」
「先生」
「何?」
「一つ聞いていい?」
「うん」
「これ」
ヒナは。
パワーフィストを見る。
「パワーアーマーと組み合わせたら?」
先生は。
黙った。
ネルが。
「……」
イオリが。
「……」
シロコが。
「……」
ミカが。
「……!」
全員。
同じことを考えている。
パワーアーマー+パワーフィスト。
先生は。
「……」
「ダメ」
全員。
「えー!」
しかし。
ウタハが。
冷静に言う。
「先生」
「何?」
「技術的には」
「……」
「可能です」
先生は。
ウタハを見る。
「……」
「……」
「……」
「ウタハ?」
「はい」
「今」
「はい」
「やろうとした?」
「少し」
「少し?」
「かなり」
「……」
先生は。
額を押さえた。
その後。
結局。
パワーフィストは。
正式な戦闘用装備として。
厳重管理されることになった。
ただし。
キヴォトスの生徒たちは。
それで終わらなかった。
午後。
ゲヘナ。
「なあ」
イオリが。
黒板を見る。
そこには。
パワーフィスト使用訓練
と書かれている。
「……」
「何これ?」
カヨコが答える。
「先生が作った資料」
「ふーん」
イオリが。
資料を見る。
「……」
「……」
「……」
そして。
「これ」
「何?」
「殴るだけ?」
カヨコ。
「基本的には」
イオリ。
「……」
「……」
「分かりやすいな」
その頃。
トリニティ。
ミカが。
パワーフィストの模型を作っていた。
「できた!」
ナギサ。
「……」
「どう?」
ナギサは。
模型を見る。
「ミカ」
「なーに?」
「これは」
「パワーフィスト!」
「……」
「かっこいいでしょ?」
「はい」
「これで握手したら?」
「壊れます」
「だよね」
「絶対にやめてください」
「はーい」
そして。
アビドス。
シロコが。
砂漠を歩いている。
「……」
「シロコ?」
アヤネが呼ぶ。
「何?」
「さっきから何を見てるんですか?」
シロコは。
遠くの岩を見る。
「……」
「岩?」
「うん」
「どうしたんですか?」
「パワーフィストがあれば」
「……」
「掘れるかな」
アヤネ。
「何を?」
「地下室」
「……」
「アビドスの新しい地下室」
「普通にシャベル使いましょう」
「……」
「パワーフィストは使わないでください」
「分かった」
シロコは。
少し残念そうだった。
夜。
シャーレ。
先生は。
武器庫を整理していた。
パワーフィスト。
ボルトピストル。
ボルトガン。
メルタガン。
フレイマー。
グラヴガン。
チェーンソード。
そして。
パワーアーマー。
先生は。
しばらく。
それらを眺める。
「……」
「最初は」
先生は呟く。
「武器だけだったのにな」
いつの間にか。
キヴォトスには。
40kの装備が。
少しずつ増えている。
しかも。
生徒たちは。
それを恐れるどころか。
自分たちの生活に合わせて。
理解していく。
「……」
その時。
武器庫の奥。
まだ開けていない箱が。
一つ。
先生は。
嫌な予感を感じながら。
近づく。
そこには。
見慣れない文字。
CHAINFIST
「……」
先生は。
固まった。
「……」
チェーンソード。
パワーフィスト。
その二つを。
組み合わせたような名前。
先生は。
ゆっくり。
箱から離れる。
「……」
そして。
静かに。
扉を閉めた。
「今日は見なかったことにしよう」
しかし。
背後。
「先生?」
「……」
ミカ。
「何を隠したの?」
「何も」
「箱?」
「何でもない」
ミカが。
箱を見る。
「CHAINFIST?」
「……」
「なにそれ?」
先生は。
答えたくなかった。
しかし。
武器庫の扉が。
また開く。
ネル。
「先生!」
ヒナ。
「先生?」
シロコ。
「先生」
イオリ。
「先生!」
そして。
ウタハ。
「先生」
先生は。
目を閉じる。
「……」
全員。
箱を見る。
「……」
ネルが。
笑う。
「なあ」
「何?」
「それ」
「……」
「絶対すげぇ武器だろ?」
先生は。
深く。
深く。
ため息をついた。
「……」
「明日」
先生は言った。
「明日説明する」
ネルが。
満面の笑み。
「よし」
その夜。
シャーレの武器庫に。
新しい張り紙が追加された。
【重要】
パワーフィストで握手しないこと。
パワーフィストでドアを開けないこと。
パワーフィストで机を動かさないこと。
パワーフィストで穴を掘らないこと。
パワーフィストで料理をしないこと。
パワーフィストを日用品として扱わないこと。
先生は。
最後に。
もう一行を書き足した。
「チェーンフィストはまだ見せません。」
しかし。
その紙を貼った翌朝。
その文字の下に。
誰かが。
小さく。
こう書き足していた。
「もう見つけたよ。」
先生は。
それを見て。
しばらく。
無言だった。
――第十二話・終。