キヴォトスにウォーハンマー40kの世界の武器がやってきた!   作:eriza7170

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第二話 便利なラスガン

 

翌朝。

 

シャーレの執務室には、昨日よりも明らかに増えていた。

 

武器が。

 

「……先生」

 

ユウカは机の上に置かれた物体を見つめていた。

 

「なんですか、これ」

 

「僕にも分からない」

 

「分からないじゃありません!」

 

机の上。

 

そこには、黒と金属色で構成された細長い銃が置かれている。

 

昨日のボルトガンと比べれば、ずっと細い。

 

軽そうで。

 

無骨で。

 

装飾もほとんどない。

 

そして何より。

 

箱に書かれていた名前が妙に簡潔だった。

 

LASGUN

 

「ラスガン……?」

 

ノノミが箱の説明書を覗き込む。

 

「レーザー兵器みたいですね」

 

「レーザー?」

 

カリンが興味深そうに近づく。

 

「それならミレニアム製の光学兵器に近いんでしょうか」

 

「たぶん違うと思う」

 

先生は説明書を読む。

 

そこには。

 

ラスガンの基本的な性能が書かれていた。

 

光線。

 

長射程。

 

高い信頼性。

 

簡単な整備。

 

そして。

 

極めて安価な弾薬。

 

「……」

 

先生はもう一度読む。

 

「安い?」

 

ユウカが反応した。

 

「今、なんて?」

 

「弾薬が安いらしい」

 

「どれくらい?」

 

「かなり」

 

ユウカが説明書を奪い取った。

 

「……」

 

「……」

 

「……先生」

 

「はい」

 

「これ、何本あります?」

 

「箱には二十丁って書いてある」

 

ユウカの目が輝いた。

 

「採用しましょう」

 

「早い」

 

「シャーレの武器庫に置きましょう!」

 

「そんなに?」

 

「だって安いんですよ!?」

 

ユウカはラスガンを机に置く。

 

「昨日のボルトガンを見ましたよね?」

 

「うん」

 

「弾薬が高い」

 

「うん」

 

「巨大」

 

「うん」

 

「一発撃つたびに爆発」

 

「うん」

 

「つまり維持費が高い!」

 

「……そうだね」

 

「それに比べてこれは!」

 

ユウカはラスガンを掲げた。

 

「安い!」

 

「そこなの?」

 

「そこです!」

 

その瞬間。

 

ウタハが入ってきた。

 

「先生、ラスガンが届いたと聞いて――」

 

彼女の視線がラスガンに向く。

 

「……」

 

「ウタハ?」

 

「貸して」

 

「ダメ」

 

「まだ何も言ってないよ」

 

「顔に出てる」

 

ウタハは仕方なくラスガンを見る。

 

「でも、これは興味深いね」

 

「どこが?」

 

「エネルギー兵器なのに、構造がかなり単純そうだ」

 

「へぇ」

 

「そして、この説明書」

 

ウタハが読む。

 

「極限環境でも動作する」

 

「うん」

 

「砂漠でも」

 

「うん」

 

「泥でも」

 

「うん」

 

「寒冷地でも」

 

「うん」

 

ウタハは少し考えた。

 

「……これ、ミレニアムの生徒が好きそうだね」

 

「もう好きになってるよ」

 

「そう?」

 

「目が怖い」

 

そこへ。

 

「先生!」

 

今度はヒビキだった。

 

「変な武器が届いたって聞いたんだけど!」

 

「変な武器って……」

 

ヒビキはラスガンを見る。

 

「……何これ?」

 

「ラスガン」

 

「へぇ」

 

彼女は手に取る。

 

「軽い」

 

「そうだね」

 

「撃ってみていい?」

 

「ダメ」

 

「なんで?」

 

「昨日それで大変だったから」

 

「昨日?」

 

ネルが横から口を出す。

 

「ボルトガンのことだろ?」

 

「ああ」

 

ヒビキは少し考えた。

 

「じゃあ安全なところで撃とう」

 

「そういう問題じゃないんだよ」

 

しかし。

 

数分後。

 

先生たちはシャーレの訓練場にいた。

 

「……どうしてこうなった」

 

先生が呟く。

 

目の前には。

 

ヒビキ。

 

ノノミ。

 

カリン。

 

アカネ。

 

ネル。

 

ウタハ。

 

ユウカ。

 

そして数名のミレニアム生徒。

 

全員がラスガンを見ている。

 

ユウカだけは違う。

 

「先生」

 

「何?」

 

「試射の結果次第では、シャーレの標準装備にできますよ」

 

「予算の話?」

 

「もちろんです」

 

ユウカは真剣だった。

 

「武器は性能だけじゃありません」

 

「うん」

 

「維持費が重要なんです」

 

「うん」

 

「安価で、頑丈で、長く使える」

 

ユウカはラスガンを見る。

 

「素晴らしいじゃないですか」

 

先生は思った。

 

――ラスガンの評価基準が完全にユウカの経理目線になっている。

 

「では」

 

ヒビキが射撃位置につく。

 

「撃ちます!」

 

ラスガンを構える。

 

ターゲットは二十メートル先。

 

「……」

 

「……」

 

引き金を引く。

 

シュンッ!

 

光が走った。

 

ターゲットの中心に命中。

 

「おお……」

 

ノノミが声を上げる。

 

もう一発。

 

シュンッ!

 

命中。

 

さらに一発。

 

シュンッ!

 

命中。

 

ヒビキが驚く。

 

「すご」

 

「どう?」

 

先生が聞く。

 

「反動がほとんどない」

 

「へぇ」

 

「撃ちやすい」

 

カリンも頷く。

 

「確かに扱いやすいですね」

 

アカネがラスガンを受け取る。

 

「整備性も高そうです」

 

「まだ分解しちゃダメだよ」

 

先生が釘を刺す。

 

「分かっています」

 

「本当に?」

 

「……」

 

アカネは微笑んだ。

 

「もちろんです」

 

「怪しい」

 

そして。

 

ノノミがラスガンを持つ。

 

「私も撃ってみていいですか?」

 

「もちろん」

 

ノノミが構える。

 

シュンッ!

 

命中。

 

「わぁ!」

 

シュンッ!

 

また命中。

 

「これはいいですねぇ」

 

「ノノミ、気に入った?」

 

「はい!」

 

彼女は嬉しそうにラスガンを眺める。

 

「軽くて、撃ちやすくて、弾もたくさん持てそうです」

 

「弾じゃないけどね」

 

「そうでした」

 

そして。

 

問題のユウカ。

 

彼女はラスガンを受け取った。

 

構える。

 

狙う。

 

シュンッ!

 

命中。

 

「……」

 

もう一発。

 

シュンッ!

 

命中。

 

ユウカはラスガンを下ろした。

 

「先生」

 

「何?」

 

「これ、買いましょう」

 

「え?」

 

「二十丁」

 

「もう箱に二十丁あるけど」

 

「追加で」

 

「そんなに?」

 

「必要です」

 

ユウカは真顔だった。

 

「これは経済的です」

 

「銃だよ?」

 

「でも経済的です」

 

「……」

 

「先生」

 

「はい」

 

「昨日のボルトガン、一発いくらですか?」

 

「知らない」

 

「調べました」

 

「早い」

 

「かなり高いです」

 

ユウカは指を一本立てた。

 

「それに対してラスガンは――」

 

二本目。

 

「安い」

 

三本目。

 

「軽い」

 

四本目。

 

「頑丈」

 

そして。

 

「弾薬も大量に用意できる」

 

「……」

 

先生は思った。

 

ラスガンがユウカの心を完全に掴んでいる。

 

そこへ。

 

ネルがやって来た。

 

「おい先生」

 

「何?」

 

「これ、ボルトガンより使いやすくね?」

 

「たぶん」

 

ネルはラスガンを持つ。

 

「……確かに」

 

「ネルまで?」

 

「こっちのほうが撃ちやすい」

 

そしてネルはターゲットを見る。

 

「でもよ」

 

「うん」

 

「爆発しねえじゃん」

 

「……」

 

「なんか物足りなくね?」

 

「ネル」

 

先生は真顔になる。

 

「それは銃として正常なんだよ」

 

「そうか?」

 

「そうだよ」

 

「でもキヴォトスだぞ?」

 

「……」

 

先生は黙った。

 

確かに。

 

キヴォトスでは。

 

爆発する銃も。

 

巨大な銃も。

 

謎の兵器も。

 

それほど珍しくない。

 

むしろ。

 

爆発しない銃のほうが地味に見える。

 

そんな空気を察したのか。

 

ウタハが口を開いた。

 

「先生」

 

「何?」

 

「ところで、このラスガン」

 

「うん」

 

「電池を使うんだよね?」

 

「そう書いてある」

 

「じゃあ」

 

ウタハは少し笑った。

 

「ミレニアムで充電システムを作れば、さらに運用コストを下げられる」

 

ユウカが振り向いた。

 

「……!」

 

「ウタハ」

 

「何?」

 

「それ、本当ですか?」

 

「理論上は」

 

ユウカの目が輝く。

 

「やりましょう」

 

「待って」

 

「何を?」

 

「何か大規模な計画が始まりそうな気がする」

 

ユウカはもう聞いていなかった。

 

「ラスガン二十丁」

 

「うん」

 

「追加弾薬」

 

「うん」

 

「充電設備」

 

「うん」

 

「保守設備」

 

「うん」

 

「訓練用ターゲット」

 

「うん」

 

ユウカは端末を取り出した。

 

「予算案を作ります」

 

「今?」

 

「今です」

 

先生は頭を抱えた。

 

すると。

 

ノノミが箱の中を覗き込む。

 

「あれ?」

 

「どうした?」

 

「先生」

 

「うん?」

 

「まだ武器があります」

 

「……」

 

全員が箱を見る。

 

ラスガンの下。

 

さらに別の武器が入っていた。

 

細長い銃。

 

青白い発光部分。

 

見るからに危険そうなデザイン。

 

説明書には。

 

PLASMA GUN

 

と書かれている。

 

「……」

 

ウタハの目が輝いた。

 

「先生」

 

「ダメ」

 

「まだ何も言ってないよ」

 

「絶対にダメ」

 

「でも」

 

「ダメ」

 

「少しだけ」

 

「ダメ」

 

「分解を――」

 

「ダメ!」

 

シャーレに先生の声が響いた。

 

その横で。

 

ユウカは黙々とラスガンの購入計画を立てていた。

 

こうして。

 

キヴォトスにおけるラスガンの評価は決まった。

 

「安い。軽い。壊れにくい。便利。」

 

そしてその日の夕方。

 

ユウカはシャーレの武器庫に一枚の張り紙を貼った。

 

【シャーレ武器庫・暫定価格表】

 

ラスガン

★★★★★

「経済的」

 

ボルトガン

★★☆☆☆

「強いけど高い」

 

ボルトピストル

★★★☆☆

「強いけど弾が高い」

 

チェーンソード

★☆☆☆☆

「工具ではありません」

 

プラズマガン

使用禁止

「ウタハ先輩が触ろうとするため」

 

先生はその張り紙を見て。

 

「最後のやつ、武器の評価じゃないよね?」

 

と呟いた。

 

しかし。

 

誰も答えなかった。

 

なぜならその頃。

 

ミレニアムでは。

 

ウタハがすでに。

 

プラズマガンの設計図を描き始めていたからである。

 

――第三話へ続く。

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