キヴォトスにウォーハンマー40kの世界の武器がやってきた! 作:eriza7170
第三話
プラズマガンは触らないでください
シャーレ武器庫。
その一角に。
厳重に封印された箱があった。
箱には、ユウカによって大きく張り紙が貼られている。
【危険物】
PLASMA GUN
絶対に勝手に触らないこと。
特にウタハ先輩。
「……」
ウタハは、その張り紙を見つめていた。
「失礼だね」
「そう書かないと触るでしょ」
先生が即答する。
「触らないよ」
「本当に?」
「うん」
「……」
「……」
「……少しだけなら?」
「ダメ」
ウタハは残念そうに箱を見る。
その隣ではヒビキがしゃがみ込み、箱の側面を観察していた。
「先生」
「何?」
「これ、昨日のラスガンより明らかに危険そうなんだけど」
「うん」
「何をする銃なの?」
先生は説明書を見る。
「プラズマを撃つ銃」
「そのまんまだね」
「うん」
「プラズマって何?」
「ものすごく熱い」
「どれくらい?」
「説明書によると、装甲を溶かせる」
ヒビキが少し黙る。
「……」
「どうした?」
「撃ちたい」
「なんで?」
「そんなの見たら撃ちたくなるでしょ」
「ならないよ」
「先生は研究者じゃないから分からないんだよ」
「僕は先生だよ」
「先生だから分からないんだよ」
「ひどい」
その時。
武器庫の扉が開いた。
「先生!」
ユウカだった。
「ここにいましたか!」
「どうしたの?」
「大変です!」
「何が?」
「プラズマガンの件です!」
先生は嫌な予感がした。
「……何かあった?」
「ありません」
「じゃあ大丈夫じゃない?」
「それが問題なんです!」
「?」
ユウカは端末を見せる。
そこには。
ミレニアム技術部合同研究申請
と表示されていた。
申請者。
エンジニア部。
ヴェリタス。
ゲーム開発部。
セミナー。
トレーニング部。
「……」
先生は画面を見る。
「なんでゲーム開発部まで?」
「分かりません」
ユウカは頭を抱える。
「ただ、ゲーム開発部から『プラズマ兵器のゲーム内再現について研究したい』と申請が来ています」
「ゲームに使うだけ?」
「そのはずです」
「ならいいんじゃない?」
「問題は……」
ユウカが次のページを開く。
そこには。
実物を参考資料として使用したい。
と書いてあった。
「……」
先生はプラズマガンを見る。
「ダメだね」
「はい」
ウタハが横から言う。
「合理的な判断だね」
「ウタハ」
「何?」
「さっき研究申請出した?」
「出してないよ」
「本当に?」
「……」
「ウタハ?」
「共同研究者として名前は入れた」
「出してるじゃん!」
ウタハが笑う。
「面白そうだから」
「面白そうでプラズマ兵器を研究しないで!」
「でも、先生」
「何?」
「これは単なる武器じゃない」
ウタハは箱を見つめた。
「技術体系そのものだ」
「……」
「エネルギーを圧縮し、安定化させ、射出する」
「うん」
「しかも携行可能」
「うん」
「キヴォトスの技術体系とは違う」
「そうだね」
「だからこそ研究価値がある」
ウタハの目が輝く。
「すごくね?」
「すごいけど危ない」
「そこも含めて研究だよ」
「僕は安全第一でお願いしたい」
すると。
「先生」
新たな声。
振り返ると。
ヒマリがいた。
「……」
先生は少し嫌な予感がした。
「ヒマリ?」
「はい」
「何しに来たの?」
「もちろん」
ヒマリは微笑む。
「プラズマガンを見に」
「帰って」
「即答ですね」
「だって絶対に何かするでしょ」
「失礼な」
「ヒマリ?」
「はい」
「何をしたの?」
「まだ何も」
「まだ?」
「……」
「何をするつもり?」
ヒマリは端末を見せた。
そこには。
プラズマ兵器の理論解析シミュレーション
と書かれていた。
「シミュレーションなら安全です」
「それならいいけど」
「もちろんです」
「本当に?」
「……」
「ヒマリ?」
「実物を一度だけ観測できれば、シミュレーション精度が大幅に上がるのですが」
「ダメ」
「残念です」
先生は思った。
ミレニアムの天才たちに「ダメ」と言う仕事は。
先生が想像していたよりずっと大変だった。
その日の午後。
ゲーム開発部。
「じゃあ、プラズマガンのデザインを考えよう!」
モモイがホワイトボードの前に立っていた。
「まず武器の見た目!」
ミドリが絵を描く。
「こんな感じ?」
そこには。
巨大な銃が描かれていた。
「いいね!」
「でも大きすぎない?」
ユズが小さな声で言う。
「40kならこれくらいじゃない?」
モモイが答える。
「そうなの?」
「たぶん!」
アリスが真剣に絵を見る。
「アリスはこれを装備します」
「え?」
「アリスが?」
「はい」
アリスは胸を張る。
「巨大兵器はロマンです」
「いや待って」
ユズが止める。
「アリスちゃんが持ったら絶対重いよ」
「問題ありません」
「なんで?」
「ゲームなら重量を無視できます」
「そういう話じゃないよ!」
そこへ。
先生が入ってきた。
「みんな」
「先生!」
モモイが振り向く。
「プラズマガンの研究は?」
「禁止」
「えー!」
「実物を使った研究は禁止」
「じゃあ模型は?」
「それならいい」
「やった!」
「ただし」
先生は指を一本立てる。
「絶対に実物と間違えないように」
「分かった!」
モモイは嬉しそうに頷いた。
「じゃあプラズマガン型のゲームコントローラー作ろう!」
「なんでそうなるの?」
一方。
エンジニア部。
「なるほど……」
ウタハはプラズマガンの設計図を見ていた。
「エネルギー供給」
「安定化」
「射出」
「冷却」
彼女は真剣な顔でメモを取る。
チナツも横から見る。
「危険じゃないですか?」
「危険だね」
「ならやめたほうが……」
「だからこそ面白い」
「……」
チナツはため息をつく。
「先生に怒られますよ」
「分かってる」
「ユウカにも」
「分かってる」
「セミナーにも」
「分かってる」
「ヒマリにも」
「……」
ウタハが顔を上げる。
「ヒマリには怒られる理由がないと思う」
「あなたが怒らせるんですよ」
「そうかな」
「そうです」
その時。
武器庫から連絡が入った。
「先生?」
「どうしたの?」
「プラズマガンの安全装置を確認していたんですが」
「うん」
「どうやら」
「うん」
「この銃、充電式じゃありません」
「……」
「専用のエネルギーセルを使うみたいです」
先生は少し安心した。
「じゃあ勝手に撃てないね」
「それが……」
「何?」
「箱の中に」
「うん」
「予備セルが」
「……」
「大量に入っています」
先生は天井を見る。
「誰がこんなに送ったんだ……」
夕方。
シャーレの訓練場。
先生は安全確認をしていた。
プラズマガンは厳重に固定されている。
その前には特殊な耐熱ターゲット。
「先生」
ユウカが言う。
「これ、本当に撃つんですか?」
「一発だけ」
「大丈夫でしょうか?」
「専門家に確認してもらった」
先生は後ろを見る。
ウタハ。
ヒマリ。
カリン。
ネル。
そして。
なぜかモモイ。
「なんでモモイがいるの?」
「見学!」
「危ないから離れて」
「はーい」
モモイは素直に下がった。
先生は操作パネルを確認する。
「安全装置解除」
カチッ。
「エネルギーセル接続」
カチッ。
プラズマガンが低く唸る。
ウゥゥゥゥン……。
「……」
全員が黙る。
銃の内部が青白く輝き始めた。
「先生」
ウタハが呟く。
「今の音、聞いた?」
「聞いた」
「いい音だね」
「そこ?」
「技術者としては気になる」
「分かったから落ち着いて」
先生は照準を合わせる。
「撃つよ」
「はい」
「三」
「二」
「一」
引き金。
――ズドンッ!!
青白い閃光が走った。
ターゲットに命中。
次の瞬間。
ターゲットの中央が。
赤熱した。
そして。
ドロリ。
金属が溶け落ちた。
「……」
「……」
「……」
モモイが目を丸くする。
「すご」
ネルが笑う。
「おお……」
ウタハは完全に固まっていた。
ヒマリでさえ。
珍しく無言だった。
先生は銃を下ろす。
「……これ」
ユウカが呟く。
「シャーレで使うには強すぎません?」
「僕もそう思う」
ウタハがゆっくり口を開いた。
「先生」
「何?」
「一つだけ確認したい」
「何?」
「これ」
彼女はプラズマガンを見る。
「量産できる?」
「……」
先生はウタハを見る。
「ダメ」
「まだ何も――」
「ダメ」
「……」
「絶対にダメ」
「……分かった」
ウタハは素直に引き下がった。
しかし。
ヒマリが端末を操作する。
「では、量産ではなく――」
「ヒマリ」
「はい?」
「ダメ」
「……」
「何を考えてたの?」
「小型化です」
「もっとダメ!」
その瞬間。
モモイが手を挙げる。
「先生!」
「何?」
「ゲームに使っていい?」
「それはいいよ」
「やった!」
モモイが喜ぶ。
「じゃあアリス用のプラズマガン作ろう!」
アリスがいないのに。
すでに話は進み始めていた。
翌日。
シャーレの武器庫。
新しい張り紙が増えていた。
【シャーレ武器庫・重要】
ラスガン
使用可
「安い」
ボルトガン
使用可
「ただし弾薬に注意」
プラズマガン
原則使用禁止
理由:
「強すぎるため」
その下に。
小さな文字で。
誰かが書き足していた。
「研究目的での使用は要相談」
先生はそれを見て。
「……誰が書いた?」
ウタハが手を挙げた。
「私」
「消して」
「はい」
素直に消す。
しかし。
そのさらに下。
もっと小さな文字で。
「チェーンソードも研究したい」
と書かれていた。
先生は無言で消した。
そしてその日の午後。
シャーレにまた新しい荷物が届いた。
箱には。
見慣れない文字。
ADEPTUS MECHANICUS
と書かれている。
先生は箱を見る。
「……」
嫌な予感しかしなかった。
その箱の横では。
ウタハが目を輝かせている。
「先生」
「何?」
「これは」
「……うん」
「絶対に面白いよ」
先生は深いため息をついた。
キヴォトスの日常に。
また一つ。
帝国の技術が入り込もうとしていた。
そして。
その技術を最も喜んでいるのは。
どう考えても。
ミレニアムだった。
――第四話へ続く。