キヴォトスにウォーハンマー40kの世界の武器がやってきた!   作:eriza7170

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第五話 チェーンソードは工具ではありません

 

 

シャーレ武器庫。

 

朝。

 

先生は一人で棚を整理していた。

 

ラスガン。

 

ボルトガン。

 

プラズマガン。

 

そして。

 

問題の品。

 

チェーンソード。

 

「……」

 

先生はそれを見つめる。

 

黒い柄。

 

巨大な刃。

 

そして刃の周囲に並んだ鋸歯。

 

見るからに。

 

危険。

 

「これだけは」

 

先生は呟く。

 

「絶対に日常生活で使わせちゃいけないな」

 

その直後。

 

「先生!」

 

扉が開いた。

 

「おはようございます!」

 

「おはよう、ノノミ」

 

「今日は何をしてるんですか?」

 

「武器庫の整理」

 

ノノミが棚を見る。

 

「あ」

 

チェーンソードを見つける。

 

「これ、まだあったんですね」

 

「うん」

 

「使ったことあります?」

 

「ない」

 

「じゃあ」

 

ノノミが首を傾げる。

 

「どうやって使うんでしょう?」

 

先生は答える。

 

「たぶん」

 

「たぶん?」

 

「刃を回して」

 

「はい」

 

「対象に当てる」

 

「……」

 

ノノミが考える。

 

「それだけ?」

 

「たぶん」

 

「意外と単純ですね」

 

「いや」

 

先生はチェーンソードを見る。

 

「単純だからこそ危険なんだと思う」

 

その時。

 

廊下から。

 

ドタドタドタドタ。

 

「先生ーーー!」

 

聞き覚えのある声。

 

先生は嫌な予感がした。

 

扉が開く。

 

「面白いものがあるって聞いた!」

 

ゲヘナ。

 

そして。

 

先頭にいるのは。

 

イオリだった。

 

「……」

 

先生はチェーンソードを見る。

 

イオリも。

 

チェーンソードを見る。

 

「……」

 

「……」

 

イオリが一言。

 

「何これ?」

 

「チェーンソード」

 

「剣?」

 

「そう」

 

「チェーン?」

 

「そう」

 

「ソード?」

 

「そう」

 

イオリは首を傾げる。

 

「名前の意味は分かるけど」

 

「うん」

 

「なんで剣にチェーン付いてるの?」

 

「僕も知らない」

 

「……」

 

イオリはチェーンソードを持ち上げる。

 

「重っ!」

 

「だから気をつけて」

 

「分かってる」

 

イオリが柄を見る。

 

そこにはスイッチ。

 

「これ何?」

 

「たぶん起動スイッチ」

 

「押していい?」

 

「ダメ」

 

「なんで?」

 

「危険だから」

 

「じゃあ安全なところで」

 

「それもダメ」

 

イオリは少し不満そうだった。

 

「つまんない」

 

そこへ。

 

さらにゲヘナ生徒が入ってきた。

 

「何してんの?」

 

「変な剣がある」

 

「剣?」

 

「これ」

 

チェーンソードを見せる。

 

「へぇ」

 

「面白そう!」

 

「やめて」

 

先生の制止は。

 

届かなかった。

 

ゲヘナの生徒は。

 

チェーンソードを囲む。

 

「これ、木を切れそうじゃない?」

 

「木?」

 

「ほら、刃がギザギザしてるし」

 

「……」

 

先生は嫌な予感がした。

 

「待って」

 

「庭の木とか」

 

「待って」

 

「家具作るときとか」

 

「待って!」

 

しかし。

 

すでに話は進んでいた。

 

「これ、便利じゃん!」

 

「いや」

 

先生は必死に説明する。

 

「これは工具じゃない」

 

「でも木切れるだろ?」

 

「切れるかもしれないけど」

 

「じゃあ工具じゃん」

 

「違う」

 

「何が違うの?」

 

先生は答えに詰まった。

 

「……武器だから」

 

「キヴォトスでは武器も工具も似たようなもんじゃん」

 

「そんなことないよ」

 

イオリが頷く。

 

「確かに」

 

「イオリまで?」

 

「銃で釘を撃てば工具にもなるし」

 

「ならないよ」

 

「なるだろ」

 

「ならない」

 

昼。

 

ゲヘナ校舎。

 

なぜか。

 

チェーンソードが一台。

 

そこに置かれていた。

 

「……」

 

先生は頭を抱えていた。

 

「どうしてこうなった」

 

イオリが答える。

 

「運んだ」

 

「どうして?」

 

「みんなが見たいって」

 

「武器庫から持ち出しちゃダメだよ」

 

「ごめん」

 

イオリは素直に謝った。

 

先生はチェーンソードを回収しようとする。

 

その時。

 

「先生」

 

声をかけたのは。

 

カヨコだった。

 

「これ」

 

「うん」

 

「ちょっと面白いね」

 

「カヨコまで?」

 

「いや」

 

カヨコは刃を見る。

 

「武器としては合理的だと思う」

 

「……」

 

「弾薬が必要ない」

 

「まあ」

 

「電源さえあれば使える」

 

「そうだね」

 

「近距離ならかなり強い」

 

「……」

 

カヨコは考える。

 

「ただ」

 

「うん」

 

「音がうるさい」

 

「そこ?」

 

「かなり」

 

「……」

 

「ゲヘナ向きじゃない?」

 

「どうして?」

 

カヨコは遠くを見る。

 

「うるさいから」

 

先生は納得してしまった。

 

そこへ。

 

突然。

 

「こんにちはーーー!」

 

扉が開く。

 

アコだった。

 

「先生、こんなところにいたんですか」

 

「アコ」

 

「……?」

 

アコがチェーンソードを見る。

 

「何ですか、これ」

 

「チェーンソード」

 

「……」

 

アコは無言になる。

 

「どうしてゲヘナに?」

 

「みんなが見たいって」

 

「……」

 

アコは額を押さえる。

 

「またヒナ様の仕事が増える……」

 

「まだ何も起きてないよ?」

 

「この学校では」

 

アコはチェーンソードを見る。

 

「こういうものが存在するだけで事件が起こるんです」

 

「それは分かる」

 

すると。

 

「おーい!」

 

遠くから声。

 

誰かがチェーンソードを持ち上げている。

 

「これ、動かしていい?」

 

「ダメ!」

 

先生とアコが同時に叫んだ。

 

その日の夕方。

 

ゲヘナの部室。

 

先生はチェーンソードを回収し。

 

シャーレへ戻そうとしていた。

 

しかし。

 

その前に。

 

ヒナが現れた。

 

「先生」

 

「ヒナ」

 

「これ」

 

ヒナはチェーンソードを見る。

 

「何?」

 

「ゲヘナに持ち込まないでください」

 

「ごめん」

 

「……」

 

ヒナは少しだけ考える。

 

「でも」

 

「うん」

 

「これは……」

 

「?」

 

「意外と悪くないかもしれない」

 

先生が驚く。

 

「ヒナまで?」

 

「近距離戦では強い」

 

「うん」

 

「弾薬を必要としない」

 

「うん」

 

「壊れても修理できるなら」

 

「うん」

 

「便利」

 

「……」

 

ヒナはチェーンソードを持つ。

 

「ただ」

 

「何?」

 

「重い」

 

「そうだね」

 

「私には扱えるけど」

 

「……」

 

「便利そう」

 

「ヒナ?」

 

「何?」

 

「持って帰らないでね」

 

「分かってる」

 

「本当に?」

 

「分かってる」

 

ヒナはチェーンソードを置いた。

 

そして。

 

少し離れたところから眺める。

 

「……」

 

「ヒナ?」

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

「いや」

 

ヒナは小さく呟いた。

 

「これで戦うのは」

 

「うん」

 

「かなり効率的かもしれない」

 

先生は黙った。

 

――やっぱりヒナには渡さないほうがいい。

 

翌日。

 

シャーレ武器庫。

 

チェーンソードの横に。

 

新しい張り紙が増えていた。

 

【チェーンソード使用規則】

 

第一条

 

工具ではありません。

 

第二条

 

庭木の剪定に使わないこと。

 

第三条

 

家具の加工に使わないこと。

 

第四条

 

敵対していない生徒に向けないこと。

 

第五条

 

電源を入れたまま廊下を歩かないこと。

 

第六条

 

ゲヘナへの持ち出し禁止。

 

先生は張り紙を見て。

 

「……第六条まで必要になった」

 

と呟いた。

 

その横で。

 

ユウカが新しい紙を持ってきた。

 

「先生」

 

「何?」

 

「もう一枚追加したほうがいいと思います」

 

「何を?」

 

ユウカは書き足した。

 

第七条

 

チェーンソードを使って書類を切らないこと。

 

「……」

 

先生はユウカを見る。

 

「誰がやったの?」

 

「知りません」

 

「ユウカ?」

 

「知りません」

 

「本当に?」

 

「……」

 

ユウカが視線を逸らす。

 

「昨日、ゲヘナの生徒が紙束を切っていたという報告がありました」

 

「……」

 

「よく切れたそうです」

 

「そりゃそうだろうね」

 

その日の夜。

 

シャーレ。

 

先生は一人で武器庫を見回っていた。

 

ラスガン。

 

ボルトガン。

 

プラズマガン。

 

チェーンソード。

 

そして。

 

新しく届いた箱。

 

先生は箱を見る。

 

そこには。

 

FLAMER

 

と書かれていた。

 

「……」

 

先生は箱を閉じた。

 

「これは絶対にゲヘナへ渡さない」

 

しかし。

 

背後から声。

 

「先生?」

 

「……」

 

「今、何か届きました?」

 

振り返る。

 

そこには。

 

イオリ。

 

そして。

 

アコ。

 

さらに。

 

カヨコ。

 

「……」

 

先生は箱を抱え込む。

 

「何でもない」

 

「でも今、フレイマーって見えたんだけど」

 

「見間違い」

 

「先生」

 

「何?」

 

イオリが笑う。

 

「それ」

 

「うん」

 

「火炎放射器だろ?」

 

先生は黙った。

 

イオリが笑顔になる。

 

「面白そう!」

 

「ダメ」

 

「まだ何も言ってないだろ!」

 

「顔に出てる!」

 

その日。

 

先生は初めて。

 

武器を隠すために武器庫の奥へ武器を隠す。

 

という。

 

意味の分からない仕事をすることになった。

 

そして。

 

箱の中には。

 

フレイマーだけではなかった。

 

その下には。

 

さらに別の武器。

 

MELTA GUN

 

そして。

 

GRAV-GUN

 

が眠っていた。

 

先生は思った。

 

「……このシリーズ、いつまで続くんだろう」

 

その答えを知る者は。

 

まだ誰もいなかった。

 

ただ。

 

キヴォトスの日常は。

 

今日も平和だった。

 

――たぶん。

 

第五話・終。

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