キヴォトスにウォーハンマー40kの世界の武器がやってきた! 作:eriza7170
シャーレ武器庫。
朝。
先生は。
一つの箱を見つめていた。
箱には大きく。
FLAMER
と書かれている。
その横には。
MELTA GUN
そして。
GRAV-GUN
と書かれた箱もある。
先生は腕を組んだ。
「……」
昨日まで。
ラスガン。
ボルトガン。
プラズマガン。
チェーンソード。
それだけでも十分だった。
しかし。
今日。
さらに。
火炎放射器。
熱線兵器。
重力兵器。
が追加された。
「……」
先生は箱を閉じる。
「見なかったことにしよう」
「先生?」
後ろから声。
振り返る。
「ノノミ?」
「おはようございます」
「おはよう」
ノノミは箱を見る。
「新しい武器ですか?」
「違う」
「でも箱に」
「違う」
「FLAMERって」
「見間違い」
「先生」
ノノミが笑う。
「先生って嘘が下手ですね」
「……」
その時。
シャーレの扉が開いた。
「先生!」
「……」
聞き覚えのある声。
先生は嫌な予感がした。
「先生!」
イオリが入ってくる。
その後ろには。
カヨコ。
アコ。
そして。
ヒナ。
「……」
先生は箱を見る。
「何もないよ」
イオリが箱を見る。
「あるじゃん」
「ない」
「ある」
「ない」
「FLAMERって書いてある」
「……」
「火炎放射器だろ?」
先生は諦めた。
「そう」
「見せて!」
「ダメ」
「なんで?」
「火炎放射器だから」
「だから?」
「危ないから」
イオリは首を傾げる。
「銃より?」
「銃より」
「チェーンソードより?」
「……」
「プラズマガンより?」
「それは……」
先生は少し考える。
「場合による」
「じゃあ大丈夫じゃん」
「どういう理屈?」
結局。
フレイマーは。
訓練場に運ばれた。
安全確認。
防火設備。
消火器。
耐熱壁。
そして。
周囲に何もないことを確認。
先生は念を押す。
「絶対に勝手に触らない」
「はい」
イオリ。
「絶対に勝手に使わない」
「はい」
カヨコ。
「絶対に人に向けない」
「分かってる」
アコ。
「……」
ヒナ。
「ヒナ?」
「分かってる」
「本当に?」
「先生」
ヒナは真面目な顔をする。
「私はそこまで子供じゃない」
「ごめん」
「……」
「でも」
ヒナがフレイマーを見る。
「これ、使いやすそうね」
「……」
先生は黙った。
フレイマー。
見た目は巨大だった。
燃料タンク。
ホース。
ノズル。
頑丈な金属フレーム。
そして。
火炎を放つための機構。
イオリが持ち上げる。
「重い!」
「でしょ」
「これ、誰が持つんだ?」
カヨコが言う。
「重装備担当じゃない?」
「なるほど」
アコが説明書を見る。
「燃料は?」
「特殊な燃料」
「どこで補給するんでしょう」
「分からない」
「……」
アコがため息。
「また維持費の問題ですね」
先生は思った。
――ユウカがいたら絶対にそこを気にする。
その瞬間。
「先生!」
扉が開いた。
「……」
ユウカだった。
「何をしているんですか?」
先生は天を仰いだ。
「フレイマーの試験」
「フレイマー?」
ユウカが見る。
「……」
「……」
「これ」
ユウカは少し考える。
「燃料費は?」
「やっぱりそこなんだ」
試射。
ターゲットは耐熱板。
イオリがフレイマーを構える。
「撃っていい?」
「安全確認は?」
「完了」
「周囲は?」
「問題なし」
「じゃあ」
先生が頷く。
「一瞬だけ」
イオリがトリガーを引く。
――ゴォォォォッ!
炎が噴き出した。
耐熱板が一瞬で赤くなる。
「おお……」
イオリが目を丸くする。
「すげぇ」
カヨコも見る。
「火力高いね」
アコは記録する。
「射程もかなりあります」
ヒナは黙って見ていた。
そして。
「……」
「ヒナ?」
「これ」
「うん」
「対人兵器としてはかなり危険ね」
「そうだね」
「なら」
「?」
「絶対に普段使いしないほうがいい」
先生は安心した。
「そうして」
「でも」
ヒナが続ける。
「対ティーパーティー用の――」
「やめて」
「冗談よ」
「本当に?」
「……」
「ヒナ?」
「半分」
「半分なの!?」
その日の昼。
トリニティ。
ティーパーティー。
「……フレイマー?」
ナギサが首を傾げる。
「はい」
ミカが目を輝かせる。
「火炎放射器?」
「そう」
「面白そう!」
ナギサが止める。
「ミカ」
「なーに?」
「絶対に触らないでください」
「えー」
「絶対です」
「ちょっとだけ」
「ダメです」
「じゃあ見るだけ!」
「それなら……」
先生が説明する。
「試験用に持ってきただけだよ」
ミカが嬉しそうに笑う。
「へぇ」
「触らないでね」
「分かった!」
先生は安心した。
しかし。
五分後。
ミカが。
「先生」
「何?」
「これ」
「うん」
「料理に使えないかな?」
「……」
ナギサが顔を覆う。
「ミカ」
「だって火力強いよ?」
「料理用ではありません」
「でも火を使うんでしょ?」
「そうだけど」
「じゃあ」
ミカが真剣な顔になる。
「パンを焼ける?」
先生は即答した。
「焼けるかもしれないけど、絶対にやらないで」
「残念」
ナギサが言う。
「そもそも火炎放射器でパンを焼く人はいません」
「先生は?」
「僕もしない」
「じゃあ」
ミカが首を傾げる。
「誰がするの?」
「……」
「……」
先生は答えられなかった。
その日の午後。
レッドウィンター。
「火炎放射器だと!?」
チェルノボーグが叫ぶ。
「なんと革命的な兵器だ!」
「違う」
先生が止める。
「ただの武器だよ」
「否!」
チェルノボーグは拳を握る。
「これは我々の暖房問題を解決する!」
「……」
先生は嫌な予感がした。
「どういう意味?」
「冬のレッドウィンターは寒い!」
「うん」
「ならば!」
チェルノボーグがフレイマーを見る。
「火を使えばいい!」
「ダメ」
「なぜだ!」
「火炎放射器だから」
「しかし暖かいぞ!」
「危険だから!」
そこへ。
ノドカが来る。
「先生」
「はい」
「実際、火炎放射器は暖房器具としては……」
「ノドカ」
「はい?」
「考えなくていい」
「……分かりました」
チェルノボーグは不満そうだった。
「我々には科学が必要だ!」
「科学以前の問題だよ」
夕方。
シャーレ。
先生が戻ってくる。
机の上に。
ユウカの報告書が置いてあった。
フレイマー維持費試算。
先生は嫌な予感がした。
ページをめくる。
「……」
ユウカの文字。
燃料費:高
整備費:中
携行性:低
破壊力:非常に高
日常用途:なし
そして最後。
結論:シャーレでの常用は推奨しない。
先生は頷いた。
「まともな結論だ」
その横に。
別の紙が置いてある。
『フレイマーの日常用途について』
先生は嫌な予感がしながら開く。
そこには。
ゲヘナ:バーベキュー
トリニティ:パン焼き
レッドウィンター:暖房
ミレニアム:実験
百鬼夜行:祭りの演出
アビドス:砂漠での害虫駆除
先生は。
ゆっくり紙を閉じた。
「……」
「先生?」
ノノミが聞く。
「どうしました?」
「みんな」
「はい」
「火炎放射器を何だと思ってるんだろう」
ノノミは笑う。
「キヴォトスでは普通の武器ですよ?」
「……」
「だからじゃないでしょうか」
先生は考える。
確かに。
キヴォトスでは。
銃を持って街を歩いている生徒は普通にいる。
戦車もある。
爆発物もある。
チェーンソードも。
だから。
40kの武器が入り込んでも。
生徒たちは。
「ちょっと変わった武器」
くらいにしか思わない。
問題は。
その「ちょっと変わった武器」を。
日常生活に取り込もうとすることである。
先生は深いため息をついた。
「……よし」
「何をするんですか?」
「武器庫に新しい規則を追加する」
先生は紙に書いた。
【シャーレ武器庫・追加規則】
フレイマー
・料理禁止
・暖房禁止
・バーベキュー禁止
・祭りの演出禁止
・害虫駆除禁止
・実験は許可制
・人に向けない
・火災発生時は消火器を使用すること
先生は満足した。
「これで大丈夫」
しかし。
その夜。
武器庫の前を通りかかった先生は。
中から。
ゴォォォ……
という音を聞いた。
「……」
扉を開ける。
そこには。
小型の炎を出しているフレイマー。
そして。
その前で何かを焼いている人物。
「……」
先生は固まる。
「……ミカ?」
ミカが振り返る。
「先生!」
「何してるの?」
「パン焼いてる!」
「……」
「すっごく早く焼けるよ!」
「……」
「先生も食べる?」
先生は。
しばらく黙った。
そして。
「……そのパン」
「うん?」
「どこから持ってきたの?」
「食堂から!」
「……」
先生は天井を見上げた。
「ナギサに報告しないと」
「えっ」
ミカが慌てる。
「先生、お願い!」
「ダメ」
「一個あげるから!」
「そういう問題じゃない!」
「二個!」
「もっとダメ!」
シャーレの夜に。
先生の叫び声が響いた。
そして。
その翌日。
武器庫の張り紙には。
さらに一行が追加された。
第八条
ミカにフレイマーを渡さないこと。
その下に。
小さな字で。
「パンは美味しかった」
と誰かが書き足していた。
先生は。
誰が書いたのか。
最後まで分からなかった。
――第六話・終。