キヴォトスにウォーハンマー40kの世界の武器がやってきた! 作:eriza7170
「先生」
シャーレ武器庫。
ネルが。
小さな箱を指差している。
「これ」
箱には。
BOLT PISTOL
と書かれていた。
先生は。
黙っている。
「……」
ネルが笑う。
「開けようぜ」
「……」
「先生?」
「ネル」
「何?」
「これだけは言っておく」
「うん」
先生は真剣な顔で言った。
「これは拳銃じゃない」
「?」
「ボルトピストル」
「だから拳銃だろ?」
「形はね」
「じゃあいいじゃん」
「よくない」
「なんで?」
先生は箱を指差す。
「弾が爆発する」
「ボルトガンもそうだったじゃん」
「うん」
「じゃあ同じだろ?」
「……」
先生は言葉に詰まる。
「それを拳銃サイズにしたものだよ」
ネルの目が輝いた。
「最高じゃん」
「そうなると思った」
箱を開ける。
中には。
巨大な拳銃が入っていた。
普通のキヴォトス製拳銃より。
明らかに太い。
銃身も太い。
グリップも大きい。
しかし。
アスタルテス用ボルトガンと比べれば。
ずっと小さい。
ネルが持ち上げる。
「……」
「どう?」
「軽い」
「だよね」
「これなら普通に持ち歩ける」
先生は頭を抱えた。
「そういう問題じゃないんだよ」
「でも」
ネルは構える。
「サイズは拳銃だろ?」
「うん」
「なら拳銃じゃん」
「……」
キヴォトスでは。
どうやら。
サイズが拳銃なら拳銃らしい。
先生はそう悟った。
そこへ。
「先生!」
ノノミがやってくる。
「何をしているんですか?」
「ボルトピストル」
「まあ」
ノノミが箱を見る。
「可愛いですね」
「……」
先生は思った。
「可愛い?」
ノノミは持ち上げる。
「ちょっと大きめの拳銃ですね」
「そうだけど」
「撃ってみたいです」
「……」
先生は。
また同じ流れになることを理解した。
「安全な訓練場で」
「はい!」
訓練場。
ボルトピストル。
ターゲット。
安全装置。
先生。
ノノミ。
ネル。
カリン。
アカネ。
そして。
なぜか。
モモイとミドリ。
「どうしてゲーム開発部までいるの?」
モモイが答える。
「新武器だから!」
「ゲームに?」
「もちろん!」
ミドリも頷く。
「新しい武器は資料になりますから」
「……」
先生は諦めた。
「じゃあ」
ノノミが構える。
「一発」
先生が頷く。
「安全確認」
アカネ。
「完了」
「周囲」
カリン。
「問題ありません」
「では」
ノノミが引き金を引く。
――ドンッ!!
小型。
しかし。
明らかに。
普通の拳銃とは違う。
ターゲットに命中。
――ズドンッ!!
爆発。
「……」
モモイが。
「え?」
ミドリも。
「……」
ノノミは。
「……」
ネルが。
「ははっ!」
笑い出した。
「やっぱり最高じゃん!」
先生は。
「だから拳銃じゃないって言ったのに……」
モモイが駆け寄る。
「先生!」
「何?」
「これ!」
「うん」
「ゲームに入れよう!」
「まあ……」
「武器名は?」
「ボルトピストル」
「そのまんまだね」
「そうだね」
モモイは考える。
「じゃあ説明文!」
ホワイトボードに書く。
ボルトピストル
「拳銃型の高威力兵器」
「弾丸は着弾時に炸裂する」
「小型ながら強力」
モモイが振り返る。
「どう?」
「いいと思う」
「じゃあレア度は?」
「……」
先生は少し考える。
「かなり高いんじゃない?」
モモイが笑う。
「じゃあ最高レア!」
「ゲームならね」
しかし。
ゲーム開発部の問題は。
ここからだった。
「先生」
モモイが言う。
「何?」
「これ」
彼女はゲーム内の武器欄を見せる。
「ボルトピストルがあるなら」
「うん」
「ボルトガンも欲しい」
「……」
「プラズマガンも」
「……」
「メルタガンも」
「……」
「フレイマーも」
「……」
「チェーンソードも」
先生は。
静かに端末を閉じた。
「ゲームの話なら好きにして」
「やったー!」
その頃。
シャーレ武器庫では。
別の問題が起きていた。
ユウカ。
「……」
彼女は。
ボルトピストルを見つめていた。
「先生」
「何?」
「これ」
「うん」
「弾薬費は?」
「……」
「高いですよね?」
「たぶん」
ユウカが説明書を読む。
「……」
「……」
「……」
「ユウカ?」
「一発」
「うん」
「これ」
「うん」
「ラスガンの何倍ですか?」
「……」
先生は答えられなかった。
ユウカは。
ゆっくり。
ボルトピストルを置いた。
「却下」
「早い」
「経費的に却下です」
「でもネルが欲しがってる」
「ダメです」
「ノノミも」
「ダメです」
「カリンも」
「……」
ユウカが少し考える。
「訓練用途なら」
「うん」
「一丁だけ」
「いいの?」
「弾薬を厳重管理します」
「分かった」
先生は思った。
やっぱり。
ユウカは強い。
その日の午後。
ネルが。
シャーレの廊下を歩いていた。
腰には。
ボルトピストル。
先生が見る。
「……」
「何?」
「それ」
「ボルトピストル」
「どうして持ってるの?」
「許可取った」
「誰から?」
「ユウカ」
「……」
ユウカを見る。
「本当に?」
「訓練用です」
「でもネルだよ?」
「……」
ユウカが少し黙る。
「規則は守ってもらいます」
「絶対?」
「絶対です」
ネルは笑う。
「分かった」
先生は少し安心した。
しかし。
その夜。
ゲヘナ。
「なあ」
イオリが言う。
「ネルが変な銃持ってたぞ」
カヨコ。
「ボルトピストル?」
「そう」
「……」
「強いらしい」
カヨコが考える。
「拳銃サイズなら」
「うん」
「取り回しもいい」
「うん」
「欲しい?」
イオリ。
「欲しい」
カヨコ。
「……」
「カヨコも欲しい?」
「少し」
その後ろ。
ヒナが聞いていた。
「……」
「ヒナ?」
「何でもない」
「でも」
「何?」
イオリが聞く。
「ボルトピストルの話――」
「忘れて」
「はい」
ヒナはその場を去った。
しかし。
その夜。
ヒナは一人。
机の上に。
ボルトピストルの資料を置いていた。
「……」
彼女は資料を読む。
Astartes sidearm.
Mass-reactive ammunition.
High stopping power.
「……」
ヒナは。
小さく呟く。
「便利そう」
翌朝。
シャーレ。
先生が目を覚ますと。
机の上に。
大量の申請書が置かれていた。
「……」
一枚。
ボルトピストル配備申請
二枚。
ボルトピストル訓練申請
三枚。
ボルトピストル研究申請
四枚。
ボルトピストルゲーム実装資料請求
五枚。
ボルトピストル料理使用禁止確認書
「最後の何?」
ユウカが答える。
「ミカさんです」
「……」
先生は。
深くため息をついた。
そして。
一番下の書類を手に取る。
「……ん?」
そこには。
今まで見たことのない申請者名。
アビドス高等学校。
「……」
申請内容。
ボルトピストル一丁を貸与してほしい。
理由。
「砂漠での護身用」
先生は。
少し考えた。
アビドスなら。
確かに。
護身用としては。
理にかなっている。
「……」
しかし。
その下に。
小さな追記。
「シロコが欲しがっています」
先生は。
即座に却下印を押した。
「ダメ」
昼。
アビドス。
「先生」
シロコが言う。
「どうして?」
「ダメだから」
「理由は?」
「君が銀行強盗に使う可能性があるから」
「……」
シロコは少し考える。
「じゃあ銀行強盗には使わない」
「本当に?」
「うん」
「じゃあ何に使うの?」
「……」
シロコは。
真顔で答えた。
「強盗以外」
「信用できない!」
夕方。
シャーレ。
先生は武器庫の前に立っていた。
ラスガン。
ボルトガン。
プラズマガン。
フレイマー。
メルタガン。
グラヴガン。
チェーンソード。
そして。
ボルトピストル。
ずらりと並ぶ。
先生は思う。
最初は。
「なぜこんなものがキヴォトスに?」
だった。
しかし今では。
生徒たちは。
ラスガンを便利な銃として扱い。
メルタガンを作業用に使い。
チェーンソードを工具にしようとし。
フレイマーでパンを焼こうとし。
プラズマガンを研究し。
ボルトピストルを拳銃として持ち歩こうとしている。
「……」
先生は笑ってしまった。
「これがキヴォトスなんだな」
その瞬間。
武器庫の扉が。
コンコン。
と鳴った。
「はい?」
扉が開く。
立っていたのは。
ヒナ。
「先生」
「ヒナ?」
「……」
ヒナは少しだけ迷って。
言った。
「相談がある」
「何?」
「ボルトピストルなんだけど」
「……」
先生は。
嫌な予感がした。
「うん」
「私も」
ヒナは真面目な顔で言った。
「一丁、借りられない?」
先生は。
しばらく。
何も言えなかった。
そして。
小さく笑う。
「……ユウカに相談してみようか」
ヒナは。
少しだけ嬉しそうに頷いた。
「ありがとう」
その背後。
廊下の角から。
ネルが顔を出していた。
「ヒナも欲しいのか?」
「……」
「……」
二人が見つめ合う。
ネルが笑う。
「競争だな」
ヒナは。
静かに答えた。
「必要なら譲らない」
先生は頭を抱えた。
こうして。
キヴォトスに。
新たな問題が発生した。
ボルトピストル争奪戦。
しかも。
参加者は。
一人ではなかった。
――第九話・終。