世界を越える約束を   作:綾小路ぽん太

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抗う

 

 

 

「かなたん!!? ……だめだ、ここにも居ない」

 

 

 肩を震わせ息を整えながら誰も居ない収録ブースの中で雪花ラミィは呟く

 

 

 その呟きに答える者はおらず、疲れからか思わず膝から力が抜け床にぺたりと座り込んでしまう。

 

 

 手に握ったままのスマホが震え、アプリに次々と届くメッセージには目もくれず、探し人でありこの収録ブースで共に語り合った大切な人の名前を押すも返信はない。

 

 

 右手の薬指で光る指輪が目に入り思わず涙と共に声がこぼれ落ちる

 

 

「どこに行っちゃたのよぉ……! かなたぁ……!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 天音かなたが居なくなって2日経った。

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 

 before 2 Days

 

 

 

 天音かなたがホロライブを卒業してから色々な噂が流れていた。

 

 

 復帰する。復帰しない。転生する。転生しない。様々な噂が流れ続ける中ホロキャスにある投稿が拡散され噂が流れ始めた。

 

 

『8月13日 天音かなた復活ライブ  URL……』

 

 

 その投稿に1つの画像が貼り付けられていたがそこに文字はなく、あるのはただ黒い画像にしか見えない配信サイトのサムネイル。

 

 

 始めは目立つ事なく消えていく噂の1つと誰もが思っていた。

 

 

「詐欺だろう」 「どうせ嘘」 「あの子がそんなすぐ復帰を決めるはずない」

 

 

 そんな反応だったが1人、また1人と貼り付けられたリンクを押し確かめようとする人が後を絶えなかった。なぜならそこに書かれていたリンク先は天音かなた彼女本人のアカウントだったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、かなたん? これ知ってる?」

 

 

 ラミィがスマホを突き出し正面でオムライスと格闘中だった彼女、天音かなたに問いかける。スマホを見せられたかなたはスプーンを置き画面に書かれた文字を黙読し、目を見開いた後確かめるように小声で呟く。

 

 

「復活ライブ……!? 何これラミィどういう事?」

 

 

 思わず強くなりそうな語気を抑え、画面から目を離しかなたがラミィに尋ねる。するとラミィも肩の力を抜きスマホを手元に戻し

 

 

「だよねぇ……ちょっと前に雪民さんに教えて貰って気にはしてなかったんだけど、これかなたんのアカウントに繋がるみたいでさ」

 

「僕のアカウントに!? ちょっと、いたずらにしても悪質すぎない!?」

 

「ラミィもそうだと思ってCOVERに報告はしといたんだけど、こんな事する人が出てくるなんてねぇ……でも」

 

 

 ラミィがスマホから目を離し、かなたの顔を見てすぐに思ったのはやってしまったという少しの後悔。すぐにかなたの手を取り

 

 

「違うの! ラミィが見せたのは傷つけたかったんじゃなくて、もう1度かなたんがステージで歌うところを見たかったから!」

 

「分かってるよ……ラミィがそんなつもりで言ったんじゃないって。……でも、やっぱりどこかで思っちゃうんだ。本当にこれで良かったのかな? もしかしたら違う方法も選べたんじゃないか? って」

 

「ごめん! かなたんだってたくさん悩んで迷って傷ついたのに……ラミィがっ!」

 

 

 思わず言ってしまった言葉をかなたが抱きしめ包み込むようにしながらラミィの背中をぽんぽんと叩く。

 

 

「ううん。これは僕が決めた事だからラミィは悪くない。卒業してからも今もこうして僕とご飯を食べたり、遊びに行ったり、話をしたり。……もしかしたら全部手放してたかもしれないって思うとぞっとするよ」

 

「がなだぁ〜〜〜ん!!!!!」

 

「大丈夫だよ! ……絶対手放したりしないし忘れようだなんて思わないって! こんなに可愛くて僕の為に泣いてくれて胸がでかい大切な彼女が居るんだし!」

 

 

 そういうとラミィがやんわりと絶壁から離れ、ゆっくりと顔を上げると目のハイライトが消えゆらゆらと一歩ずつかなたに近づき

 

 

「それってラミィじゃなくてもあずあずやこぉねにも言えるし、ねねやあくたんに沙花叉とか、んなたんや莉々華にも言ってなかった……?」

 

「や!? ちょ、いや違っ!? 確かに近いことは言ったかもだけど……! あ! ほら、ペアリングあるのはラミィだけだから!?」

 

 

 若干しどろもどろになりながら、慌てて右手の薬指に付けている指輪を見つけラミィによく見えるように手を差し出す。するとさっきまでのオーラがまるで嘘のように消え、両手を頬に当て嬉しいような恥ずかしいようなどちらも選べない! といった表情で微笑む可愛らしい姿に戻っていた。

 

 

「もうっかなた〜ん! ラ ミ ィ だけなんて〜!!! あ〜ん! 好き!」

 

「ナハハ……(ラミィと会う時は絶対付け忘れないようにしよう)」

 

 

 その後2人が食事を終え、それぞれ明日の予定もあった為帰路につく中ふと途中だった話題について思い出す。それまで握っていた手を離すとかなたがスマホを取り出し

 

 

「ラミィ、そういえばさっきの復活ライブってやつ送って貰ってもいい? 僕からもCOVERに伝えておきたいから」

 

「ん! えっと、ほい! ……あんまり気負わなすぎないでよね。何かあってもラミィはもちろん、みんなかなたんの味方だから! 今度はちゃんと相談してよ!?」

 

「うっ!? こればっかりはなんとも言えないけど、ちゃんと頼るよ……ありがとね」

 

「じゃあ次はまた来週……や、来週は仕事が忙しいんだっけ?」

 

「そうなんだよねぇ……でも、ちゃんとみんなと会う日は予定空けとくからそこんとこは大丈夫! ラミィもしっかり休んで喉のケアも忘れないように暖かくして寝なよ?」

 

「泣かせたやつが言うんじゃないよ! 大好き! ありがとね!」

 

 

 そうして2人は別れ、それがラミィが最後に見たかなたの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の朝ラミィが目を覚ましたのは配信を終え、眠っていた時間にかかってきた電話の通知音だった。目をこすりながら手を伸ばし、昨夜枕元に置いたスマホを手に取り電話に出る。通話先の相手は慌てていたのかどこか声がうわずって今にも泣きだしてしまいそうな声で

 

 

『ラ、ラミィさん!? 起こしちゃったらごめんなさい!! おねぇちゃんそこにいますか!?』

 

「こなた? やー……かなたんは来てないよ?」

 

『おねぇちゃんがいなくなっちゃったんです!!!』

 

 

 ラミィの寝ぼけていた頭が冷水をかけられたように一気に覚めた。身体を起こしこなたに続きを話すよう促す。

 

 

『昨日の夜、おねぇちゃんにおやすみなさいって部屋の前で言ったとこまではこなたも見てて、今朝になって起きてこないな〜? と思って部屋を覗いてみたらおねぇちゃんが居なくて、スマホや財布も置いたままで玄関も閉まってるし、もうこなたどうしたらいいかって……!?』

 

「まず落ち着きなって! かなたんが何も言わずに居なくなる訳ないでしょ!?」

 

『そう、だね……ごめんなさいラミィさん』

 

「ううん、ラミィもまだ信じられないだけだから。気づいたのがラミィだったらおんなじ様に慌ててたと思う。昨日の夜、かなたんの様子がいつもと違うなって事はない?」

 

『うん……。おねぇちゃん、ラミィさんと会って今日も可愛いかったな〜! って寝る前に話しててそれでラミィさんに聞いてみようってこなた思って『きゅ!』あっ! 待ってかなたそちゃん!? こなた達で近くを探しに行ってみるのでラミィさんもおねぇちゃんが来たら教えて貰っていいですか!?』

 

「分かった! ラミィも他の子に聞いてみて探しに行くよ!」

 

 

 電話を切りメッセージアプリを確認するも昨日の夜から返信はなく、新しいメッセージも送られていなかった。すぐに他のホロメンもいるグループチャットにかなたから連絡がきていないか確かめるも結果は同じだった。

 

 

 簡単に説明を並べ、見かけた場合や連絡があれば教えて欲しいと書き込む。すぐメッセージを見ていた何人かが返事をくれた事を確認し、服を着替え外に出て思い当たる所へ次々と駆けていくも見つからない。

 

 

 前日の喫茶店、行きたいと言っていたおしゃれな雑貨屋さん、指輪を買ったお店、どこへ行ったか覚えていてもそこにあるのは思い出のみ。まるで卒業を告げられたあの日のように何度手を伸ばしても、寂しげに微笑むかなたを取り留める事ができなかった事を思い出し嫌になる。

 

 

 結局1日中探し続けるも見つける事が出来ず、どうやって帰ってきたかも覚えてないくらい疲れていたのか沈むように眠ってしまった。

 

 

『絶対手放したりしないって言ったじゃん……』

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の朝再び電話の通知音で目が覚めたラミィはスマホの画面を確認し、かなたではない事に少し落胆し通話に出ると

 

 

「もしもし? あずあずどう」

 

『かなたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?? こぉねを置いてどこ行っちまったんだよぉぉぉ!!???』

 

『ちょ、うっさいわ!? ってこぉね!? なんで???』

 

 

 ラミィがスマホから耳を離し、しっかり覚めてしまった目で画面を見るもそこに書かれている名前はAZKiとなっており見間違えた訳でもなさそうだった。

 

 

『や、今あずちゃんが手離せそうにないからこぉねが代わりに電話しただけ』

 

「だったら普通にかけてくんない!? 心臓止まるかと思ったわ!」

 

『あはははは!!! いやぁ〜ラミィのことだから落ち込んでそうだし、発破かけてやるかって! どうよ!? ちょっとは元気出た?』

 

「おかげさまでね! ありがと!!!」

 

『ころさんお待たせ! ラミたんに繋がった?』

 

 

 電話の向こうから本来の通話相手AZKiの声が聞こえ、スピーカーに変えたのか少しタップする音が聞こえると

 

 

『かな『ころさん? 今から真面目な話するからね?』ハイ、ゴメンナサイ……』

 

 

 怖!? っとラミィも電話越しでも感じる圧に少し、いやかなり身震いし、思わず正座になって話を聞くと

 

 

『昨日連絡貰って他の子にも聞いてみたんだけど、やっぱり一昨日の夜からかなたんに連絡貰った子も会った子も居ないみたい。で、ころさんと一緒にかなたんと行ったところを探してみようと思って集まったんだけど、ラミたんが昨日回った場所を聞いてもいい?』

 

 

 ラミィが地図アプリを開き昨日探してみた場所をメッセージと共に伝え、AZKiが他のホロメンが探した範囲を共有し、グループチャットに貼り付けると

 

 

『これ、結構探してくれた範囲広くない???』

 

『それだけみんなかなたんが大事だから一生懸命探してくれたんだよ……でも、かなたんの家の近くもこなたちゃんが見てくれたのにいなかったって』

 

「あと思いつく場所といえば……あっ!?」

 

『何か思い出したのラミィ!? どこよ!?』

 

「ちょっと違うかもしんないんだけど、一昨日かなたんに会った時こんなのがあったって見せちゃって……」

 

 

 グループチャットにかなたに見せた物と全く同じ物を2人に共有すると、2人から全く同じタイミングでため息をつくのが聞こえ

 

 

『ラミたん……』  『ラミィ……これはダメだよ』

 

「いや、ほんとその通りでラミィも悪いと今は思ってるんだけど、もしかしたらって信じたくてぇ!?」

 

『それはあずき達も思ってるし、もう1度歌って欲しいって気持ちも分かるけど……』

 

「ごめんってぇ……!!」

 

 

 思わず2人とかなたに向かってそのまま土下座をするラミィ。顔を上げてもまだ若干居た堪れない気持ちになっていると、ころねが思いついたと手を叩き

 

 

『あ! そういえばあそこはまだ見てないんじゃない!? ほら、かなたのソロライブの……何だっけ!?」

 

『有明アリーナ……!? ほんとだ! ナイスだよころさん! 早速行ってみよう!』

 

『ちょ!? あずちゃん早いって!? スマホスマホ!』

 

 

 送られてきた地図を確認すると確かに誰も探しておらず、思いつけばかなたが居る可能性が今1番高い場所としか思えなくなった。ラミィも着替えを済ませ、2人に合流しようと思ったその時、地図を見てもう一箇所思い出の場所が近い事に気づいた。

 

 

「2人ともごめん! 先に行ってて! ラミィもう一箇所思いついた場所に行ってみる!」

 

『えっ!? ラミたん何処に行くの!?』

 

「あずあずも来た事あるでしょ!? ゴリレバラジオの収録ブース! 有明アリーナに行く前に先にそっちに寄ってみる!」

 

『あっ!? ……ほんとだ。どうして気づかなかったんだろう……?』

 

「あずあずも心配しすぎて、気づかないくらい焦ってたんじゃないの? ラミィもだけど」

 

『まぁまぁ、当てもなく探すよりよっぽどいいって! んじゃ、こぉねとあずちゃんでアリーナに行くからラミィはそっちをお願い! また後でな〜!』

 

 

 そこまでがラミィがゴリレバラジオの収録ブースに辿り着き、物語の始まりに戻るまでにあった出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────

 

 

 

 

 

 

 涙がこぼれ落ちるも時間は止まらず一刻一刻と過ぎていく。ラミィがアプリを開くと、グループチャットに先に向かった2人からメッセージが届いており

 

 

『ラミたん!? こっちにはかなたん居なかった! そっちはどう!?』

 

『ラミィ! こっちももうちょっと探してみるからまだ泣くんじゃないよ! うそ! 泣いてもいい! そん時はこぉねも泣く!』

 

「どっちなんだよぉ………………よし!」

 

 

 2人もまだまだ探してる。だったら自分だけが諦める訳にはいかない。ラミィが自分を奮い立たせ出口へ向かい、1度だけ収録ブースを振り返り、楽しかったあの時間を思い出しまた少し涙が滲む。

 

 

「絶対に離さないんだから……ん?」

 

 

 その時涙でぼやけたのか一瞬部屋の中に扉の様な物が見えた気がしたが、涙をぬぐいもう1度部屋を見るも変わった様子は無く、気のせいだと思いドアを締め走り出す。

 

 

 

 

 

 

 ラミィが有明アリーナに着くとAZKiところねが入り口で待っており、近づくと2人以外にもう1人いる事に気づき名前を呼ぶ。

 

 

「んなたん! 探しに来てくれたの!?」

 

「天音ちゃがんなたんに返信しないからこりゃ、大事件の匂いがするのらって探してたらここに来たってわけなのらよ」

 

 

 そういうとルーナは何処からか取り出した虫眼鏡で辺りを見渡し始める。

 

 

 その服装はいつものドレス姿ではなく、動きやすそうなカッターシャツにチェック柄のベスト、短パンにキャスケット帽といかにも探偵または助手といった服装だった。ここに着くまで探し続けていたのかところどころ糸がほつれていたり、葉っぱが付いている。

 

 

「こぉね達も今合流したところで次は何処を探そうかって地図と睨めっこしてたところよ〜……って、あずちゃんあずちゃん」

 

「ここにも居なかったしあと思いつく場所といえばかなけんで行った伊豆くらいしかでも財布もなしに……はい!? あ! ラミたんどうだった!?」

 

 

 AZKiがスマホから目を離しラミィの肩を掴みながら尋ねるも、首を横に降る事しかできず。4人で次の場所を探そうと動き出すと何かに気づいたのかルーナが動きを止め

 

 

「ん〜? あんな扉みたいなのあったっけ……? ねぇみんな〜! 戻って!」

 

「姫〜? 何か見つけたー……って何だこりゃ!? さっきまでこんなのなかったよね!?」

 

「うん、さっきまでなかったと思う……何の扉なんだろ?」

 

 

 4人の前にある扉は白く石像の様な物が埋め込まれており、周りを鎖で縛りつけ、壁ではなく見えない空間に扉を付けているかの様に自立していた。

 

 

 扉を開こうとするも固く閉ざされており、まるで開く事を拒否されている様にも見えた。ころねがふと鍵穴に目をやると

 

 

「なぁんか見えるけど……何だろ? ちょっと誰か変わって!」

 

 

 ころねに続きAZKiが覗くも見えずルーナが覗くとそれは見えた。

 

 

「えっ? これって天音ちゃのステージじゃないの?」

 

「え!? ちょっとんなたん、ラミィにも見せて!」

 

 

 ラミィが覗くと確かに鍵穴から見えるのはこのアリーナで行われたソロライブのステージだった。

 

 

 ラミィにも見えた事で再びころねとAZKiが覗くも靄がかかったようにしか見えず。4人は扉に手がかりがないか辺りを再度確かめる事にした。

 

 

「ラミたんとんなたんにはステージが見えて、あずきところさんには靄のような何かしか見えない……? 条件がある……?」

 

「あ〜もう!! こぉねには分からん! ヒントをちょうだいよヒントを〜!」

 

 

 AZKiところねの2人が頭を抱える中、ルーナは1つの可能性に気づきラミィを呼び2人で少し離れた所へ行き

 

 

「ラミィちゃんもしかしたらこれ……ホロキャス界に繋がってるかもなのらよ」

 

「ホロキャス界……って妖精の!? て事はまさか……!?」

 

「天音ちゃがユメオチしちゃったのかもなのらよ……うん。扉の先が見えるのもホロウィッチのんなたん達だからで、いきなり居なくなったのも、ホロキャス界に行っちゃったと思えばしっくりくるのら! 真実は一つ! なのらよ!」

 

「だったら早く助けに行かないと……! アエルとラグに連絡して、他のホロウィッチのみんなにも伝えなきゃ!? うぅえ!? 何で!? ラミィのスマホが!?」

 

「浮いてるのら……!?」

 

 

 その時ラミィのスマホが手から弾かれるように宙に浮き、ホロキャスアプリが起動する。

 

 

 画面にノイズが走るとそこに映されていたのは、復活ライブを告げていたあの投稿だった。2人が離れ逃げようとするも、黒い画像がどんどん大きくなりスマホに吸い込まれそうになった時にその声は聞こえた。

 

 

「来ちゃったね」

 

 

「!!? かなっ!!!??」

 

 

 そこで2人が吸い込まれ後に残ったのはラミィのスマホだけだった。

 

 

「ラミィ!? 姫!? 何のお、と!? あずちゃん! これ!?」

 

 

「ラミたんのスマホ……!? 2人も居なくなっちゃった!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いぃったぁ……! 何なのさっきの!? かなたんの声もしたし何がどうなってんのさぁ!? あっ!? んなたん!? 大丈夫……?」

 

 

 ラミィが目を覚まし辺りを見渡すとさっきまでいた外ではなく、何処かの屋内いや鍵穴から見たステージの上だった。ステージは照明が差しているのか明るいが、よく見れば星がない夜空のように黒く塗り潰されている。

 

 

 辺りを見渡し一緒に吸い込まれたルーナを探すとルーナはステージから下側の観客席に当たる部分を見ていた。ラミィも近づき下を見ると、そこには黒のローブのような物が席を埋める様に漂っており、頭の部分にかなたが付けていた手裏剣が付いていた。

 

 

「ラミィちゃん、ここのフードを被ったやつ何に見える……!?」

 

「お化けじゃないといいなって思うけど、もしかしてこれってみんなコラプサーなの……!?」

 

 

 2人で下がりながら抱きつき身を寄せ合っていると

 

 コッ……コッ……コッ……と床をヒールで鳴らすかの様な音を奏でステージ上空、見えない階段を降りながら歩く人物が口を開く

 

 

「ひどいなぁラミィもルーナも! この人達はコラプサーじゃなくてへい民だよ! へ・い・み・ん! みーんなボクの為の集まってくれたんだっ!」

 

「かなたん……!?」  「天音ちゃ、何言ってるのら!?」

 

 

 探していた。居なくなって心配していた。でも本当にそれは目の前の少女なのかとラミィとルーナは思った。堕天使の衣装を身に纏い、にへらと笑う姿は記憶の中にある姿と変わらない。変わらないはずなのに、変わってしまっていた。

 

 

「ようこそ! 現実でもなくホロキャス界でもないボクの夢の中の世界へ! へい民を集めてからホロメンのみんなも招待しようって思ってたんだけど、まだ上手く力が混ざってなかったみたいで失敗しちゃった♪ だから、ラミィとルーナもボクのステージに呼んだんだよ? ほら、見てよ〜! みんなが集まって埋めてくれたステージを! あはっ! ソロライブの時と一緒だ! いや? それ以上かも!」

 

 

 無邪気に笑顔で話し続けるかなた。声も姿も思い出も天音かなたの物のはずなのに、認めたくない。認めちゃいけない。

 

 

「せっかくだし、2人にも特等席で僕のステージを見てて欲しいなって! 今夜のライブは終わらない! みんながボクのことを見たい、聞きたい、会いたい! ってお願いしてくれたから! だから、みんなをボクの世界に連れてこれたんだ! ね? へい民のみんな? 寂しかったよね? 辛かったよね? でも、大丈夫! これからはボクと一緒にずぅーっとずぅーっと終わらない夢を見よう?」

 

 

 そこにあったのはあの子が掲げた信念や理想とは違う。純粋な悪夢だった。

 

 

「かなたんが……! かなたがどれだけ悩んで決めたかはラミィにも分かるなんて言えない! ……でも! みんなを閉じ込めて喜ぶはずない!」

 

「天音ちゃはんなたんのお願いなら何でも聞いてくれるのら……でも、悪いことはだめ! ってしっかりんなたんを怒ってくれるの! 友達が悪いことしたら止めてあげる……! そう天音ちゃが教えてくれたのらよ!」

 

 

「……分かってないなぁ2人とも」

 

 

 かなたがやれやれと言わんばかりに首を振ると、ラミィとルーナにまるでお芝居でもするかのように話しだす。

 

 

「まず、ボクはユメオチした天音かなたであると同時に、2人の知らないナイトメアっていう人類と共に存在してきた悪夢の怪物が混ざり合った存在でもあるんだ」

 

「ナイトメア……? アエル達からも聞いたことねぇのら」

 

 

 照明が消えかなたにスポットライトが左右から当たり、左にコラプサー、右にナイトメアと書かれたローブが浮かび上がる。かなたがナイトメアと書かれたローブに近寄ると中を捲ったり、包まったりしながら続きを語る。

 

 

「ナイトメアは宿った人物の深層心理を暴き、破壊する事で夢の世界から現実の世界に現れる事ができる怪物なんだ……だから、ボクは天音かなたの隠したい夢や願いその物が形になったようなものかな?」

 

「っ! 例えそれが本当だとしても嘘か本当かはラミィ達には分かんないでしょうが!?」

 

「いや? 天音かなたの心の中にはたくさんの人を傷つけた……その思いが悪夢となって心に残ってる。それはラミィだって分かってるはずだよ?」

 

「それは……! そうかもしれないけど!? だからって……!」

 

「だったらその方法を教えて欲しいのら。どうやったらみんなを救えるのか……んなたんには分からねぇのら」

 

「ルーナの頼みならしょうがないなぁ〜! ボクが思いついたのは〜……! 傷つけた人も傷ついた人達もみ〜んな現実から居なくなればいいって! そうすれば誰も傷つかなかった! みんなもボクも夢の世界で幸せ! ね? 簡単でしょ?」

 

「「!!?」」

 

 

 かなたがそう告げお辞儀をすると暗くなったステージに明かりが戻る。まるでそうすれば明るい世界が待っているかのように。

 

 

 言葉を交わせるなら、話しを聞けば以前戦ったマレフィクスのように分かりあえるかもと思っていた。だけど()()()()()()()()

 

 

 ルーナとラミィは顔を合わせ頷くと

 

「ここに集まったへい民達や天音ちゃにも絶対そんな事はさせないのらよ! ラミィちゃん!」

 

「うん!」

 

 

 2人が同時にボトルを取り出し、湧き上がる思いをホロに変え高らかに声を上げる! 

 

 

 

「「ホロウィッチボトル インフューズ!!!」」

 

 

 

 ボトルが輝きホロを身に纏おうとするも、光が集まらずやがて散らばるように弾け、そこにいるのはホロウィッチではなくラミィとルーナそのままの姿だった。

 

 

「な、なんで!?」 

 

「ホロウィッチに変身できねぇのら!?」

 

「も〜ラミィもルーナも慌てすぎだって! 忘れちゃったの? ボク達ホロウィッチはアエルとラグの妖精の魔法で変身してるんだよ? 2人が居ないんだから変身できるわけないじゃ〜ん?」

 

「「あっ……!?」」

 

 

 2人が気づき一歩後ろへ下がるとかなたが一歩距離を詰める。一歩また一歩と徐々に壁際に追い込まれると、かなたの周りに集まるローブの数も増え手裏剣が鈍く光り点滅を繰り返す。

 

 やがて間隔が短くなり、光が消えると手裏剣が次々とラミィとルーナに向け放たれた。

 

 

 ガガガガガガガガガガガガガッッッ!!! 

 

 

「2人ともボクの大事な人だからあんまりいじめないでよ〜? ライブも見てもらわなくちゃいけないし」

 

 

 かなたが背を向けぼやくように呟くと煙の中からそれは聞こえた。

 

 

「全く先輩達ぃ〜? かなた先輩相手だからって油断しすぎなんじゃないです〜?」

 

「沙花叉!?」  「クロヱちゃん!?」

 

「おひさでーす」

 

 

 煙が晴れると、ラミィとルーナを守る様に双剣オルカスロットエッジを構えるホロウィッチクロヱがそこに居た。

 

 

「クロヱちゃんなんでホロウィッチになれてるのら!?」

 

「ん? ああこれ? 実はちょいと前にまた変身できるようになったんすよー」

 

「いや軽ぅ!? じゃなくて、ここにアエル達が居ないのにあんたどうやって!?」

 

「へぇ〜それはボクも聞きたいなぁ……ねぇ沙花叉? どうやってここにきたのかも教えてよ?」

 

 

 かなたが前に出ると、ローブ達は席に戻りまるで見守るように再び漂い始める。それを見た沙花叉は構えていた双剣の右手側を肩に載せ、もう1つの左手側の剣をかなたに向け

 

 

「おめぇの席温めとくから! って言ってましたけど、見せ場をあげるって意味じゃなかったと思うんですけど〜?」

 

「あー……? 言ったんだっけそんな事も?」

 

「そうですよー! で? どうやって来たか……でしたっけ? あの投稿を見つけた時にシオン先輩に調べて貰ったら怪しい魔法の気配がするってんで、普通にリンク押して乗り込みに来たんですよ!」

 

「沙花叉あんたあの怪しいのから来たの!?」

 

「シオン先輩のお墨付きですし、どうみてもそこの抱え込みがちな先輩が関わってるじゃないですか? だったらくるしかないっしょ?」

 

「相変わらずパねぇのらね……」

 

 

 ラミィが沙花叉の行動力にぐぬぬと対抗心を燃やしそうになるも、まだ聞かねばいけない事があり思い留まる。

 

 

「で、でもだったらなんでラミィ達は変身できなかったのに沙花叉は変身できたわけ?」

 

「そっちはもっと簡単っすよ、ラミィ先輩……夢は自由で良いんです。かなた先輩は自分の事に関しては強情で意地っ張りで頑固だけど、決して誰かに押し付けたりしなかった。ここがかなた先輩の夢の中だってんならそれは変わんないはずっしょ? だったら沙花叉が思えば変身できるって迷わず飛び込めたんすよ」

 

「そっか……そうだよ! かなたなら例え失敗しても叶えるまで絶対諦めない……!」

 

「諦めなければ夢は叶うって……! 天音ちゃがそうだったようにんなたん達だって……!」

 

 

 ラミィとルーナが立ち上がり共に再びホロウィッチボトルを構える。それを見たかなたは少し呆れたような表情で

 

 

「いやいやいや〜!? 確かにボクの世界だから理屈は分かる……してもそこまでやる??? もしかして沙花叉ボクの事好きすぎ?」

 

「今更知ったんだ〜! ウケるー! ……まぁ、そういう訳だからいい加減返して貰おうか? かなた先輩を」

 

 

 ルーナがラミィにちょいちょいと手招きし耳を寄せると

 

「ラミィちゃん……これ、んなたん達変身できなかったらクロヱちゃんに全部良いとこ持ってかれ」

 

「あーあー!!? んなたん今言わないでそれは! ラミィが意識しないようにしてたのにぃ!? ラミィがかなたの彼女だから! こういうのって愛が1番大事なやつでしょ!?」

 

「むぅー!? んなたんだって天音ちゃが1番甘えさせたい大事な同期で僕の姫って言ってくれたのらよ!」

 

「はぁーん!? 姫はズルいでしょ!?」

 

「ふふんっ! これがんなたんの姫たる所以なのらよ!」

 

 

 段々大きくなる声と共にホロウィッチボトルが輝き光を放つ。その輝きは大きく暗い闇の中を照らす星々が集い彼方まで届く光だった。

 

 

「先輩達まだですか〜? 早くしないと沙花叉が全部持ってちゃいますよ? おまけでかなた先輩も」

 

「ラミィだってやれるし! あとおまけって言いながら本気の目やめな!?」

 

「んなたんも天音ちゃにお願いする事たっくさんあるから、それが終わったら2人に代わってあげてもいいのらよ」

 

「ボク、罪深すぎない??? 美人でキュートで声が最高で笑顔で清楚でボクっ子天使でオシャレでセクシースタイルだからって」

 

「「「それはない(のら)」」」

 

「息ピッタリだなぁ!? ま、全部僕に勝てたらの話しなんだけどね?」

 

 

 かなたが右手を上に向けるように差し出すと、影が蠢き、瞬きの間に現れたのは天使の羽がついたかなたのホロウィッチボトルだった。

 

 

「かなたのホロウィッチボトルをどうするつもり!?」

 

「壊したりしないから安心しなよ〜! ただ、こうするだけだから」

 

 

ホロウィッチボトル インフューズ! 

 

 

 光ではなく闇が集まり、白色の衣装は黒く、どこまでも手を差し伸べる為の翼は漆黒に染め上げられ、守護者の名を冠するガーディアンアームは守る為ではなく破壊する為の力によりヒビ割れている。

 

 

「ボクも天音かなたに違いないしやれるとは思ったけど、案外いけるもんだね? どう? 似合う?」

 

「……ッ!!! よくも……!」

 

「クロヱちゃん! ……絶対に取り返すの」

 

「ルーナ先輩……はい!」

 

「ラミィちゃん!」 「んたなん!」

 

 

ホロウィッチボトル インフューズ!!! 

 

 

 

 ラミィとルーナの周りを光が覆い、衣装をボトルを姿を変える。ホロの輝きが2人の姿を魔法少女ホロウィッチへと変身させる! 

 

 

 

「甘〜い幸せ おすそわけ」

 

 

『姫』の『ホロ』 魔法少女 ルーナ!! 

 

 

「積もり重なる 純白の愛!」

 

 

『雪』の『ホロ』 魔法少女 ラミィ!! 

 

 

「荒波ゆく 奔放の牙!」

 

 

『シャチ』の『ホロ』 魔法少女 クロヱ!! 

 

 

チーム おらくる 全員集合(フルキャスト)!!! 

 

 

 

「ん? 沙花叉あんた変身してるから名乗り要らないんじゃ」

 

「まぁまぁまぁこういうのはノリっすよノリ! それよりチーム名おらくるって」

 

「天音ちゃの為に集まったチームだからいいんじゃない?」

 

「うん! ラミィはいいと思う! 可愛いし」

 

「んじゃそれで。今夜限りのドリームチームってやつすねー」

 

 

 3人がそれぞれの武器キャンディパラソル、スノーフレイクセイバー、オルカスロットエッジを構えかなたを見据える。

 

 

「良いね良いね! 名乗りはやっぱりあるとかっこいいし僕も考えとけば良かったなぁ……あ! こんなのどう!?」

 

 

『天使』の『ホロ』と『悪夢』の『ナイトメア』

 

 

誰も見てない夢を見せるよ

 

 

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