胎動する翼、不条理の血を超えて   作:新人ガイア

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血の証明

公式査察の模擬戦が終わり、完膚なきまでに叩きのめされた近衛の至宝と、言葉を失った本国反対派の政治家たちが集まる通信室。

画面の向こうの老人たちは、なおも往生際悪く「混血野郎と平民風情のまぐれだ」「伝統なき機体など」と、歪んだ血筋論で責任を逃れようと見苦しく吠え立てていた。

 

その冷え切った空気を切り裂くように、一歩前に出たのは、凛とした軍服に身を包んだ崇宰恭子だった。

 

「――そこまで血筋や伝統に固執なさるなら、この場で一つ、言わせていただくわ」

 

恭子の美しくも冷徹な声音に、画面の向こうの政治家たちが一瞬で静まり返る。五摂家当主の放つ圧倒的な威圧感。だが、彼女が次に放った言葉は、その場にいた全員の心臓を跳ね上がらせるに十分な「爆弾」だった。

 

「あなた方がたった今、画面の向こうで『平民風情』と否定し、侮辱したあの少年――『恭夜』。彼こそは、誉れ高き崇宰の血を引く我が実の弟であり、もしもの時、私の後を継ぐ紛れもない崇宰の者です」

 

「な、何だと……っ!?」

 

本国の上層部が愕然と目を見開く。

 

「いい皮肉よねえ?」

 

恭子はクスリと、氷のように冷たい、しかし極上の気品に満ちた笑みを浮かべてみせた。

 

「あなた方の大好きな血筋と伝統は、彼の中にしっかりと受け継がれ、証明されていたのだもの。あなた方が『絶対』だと信じ込んでいた近衛の至宝を、あなた方が『不浄』と切り捨てた崇宰の血が、その実力で完全にねじ伏せたのよ。……これで、まだ何か文句があるかしら?」

 

完璧な論破だった。

血筋を否定して実力を貶めようとしたら、その実力こそが自分たちの崇拝する「最高峰の血筋(崇宰)」によって磨かれたものだった。自分たちの価値観のすべてを真っ向から否定され、矛盾を突きつけられた老人たちは、顔を真っ赤にしながらも、もはや一言も返す言葉がなかった。

 

「今後、XFJ計画、ならびに我が弟とその仲間たちに下らない難癖をつける者がいれば――この崇宰恭子が、家名のすべてを懸けてその首を獲りにいきます。……お覚悟を」

 

通信を容赦なくブツリと切った恭子は、ふぅ、と小さく息を吐いてから、後ろで呆然としていた唯依、ユウヤ、そして恭夜へと振り返った。

その顔には、先ほどの冷徹さは微塵もなく、一人の優しい「姉」の顔に戻っていた。

 

「……すまないな、恭子姉さん。俺を守るために、わざわざあいつらに本当のことを」

 

恭夜が頭を掻きながら一歩前に出ると、恭子は愛おしそうに微笑み、やはりあの懐かしい仕草で、恭夜の髪をクシャクシャと撫で回した。

 

「良いのです。あの者たちには、これくらい言ってやらなければ分かりませんから。それに、あなたが唯依を守ってくれたのが、私は何より誇らしいのですよ」

 

唯依はその光景を見つめながら、涙の浮かんだ目で、けれどしっかりと恭夜の手を握りしめた。

 

「恭夜……ありがとう。私、もう何も怖くありません」

 

その様子を見ていたユウヤが、やれやれと肩をすくめながら恭夜の隣に並ぶ。

 

「おい、スペア補佐官。いや……崇宰の弟君? 妹を泣かせたら地の果てまで追うって言ったのはお前だが、これからは俺もお前を地の果てまで追うからな。俺はアイツの『兄貴』なんだからな」

 

「へっ、シスコン全開の義理のお兄さんだな、アメリカ野郎。かかってこいよ、いつでも相手になってやる」

 

血筋という名の呪いを、圧倒的な実力で、そして本当の家族の絆で完全にねじ伏せた三人の衛士たち。

アラスカの凍てつく空の下、彼らの前には、もう誰も遮るもののない、ただ真っ直ぐな希望の未来が広がっていた。

 

 

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