披露宴会場の賑やかな喧騒の中、アルゴス小隊の面々が座るテーブルからも、雛壇の三人へ温かい視線が注がれていた。
「あーあ、本当にアイツら、結婚しちゃったよ。しかもユウヤが『お義兄ちゃん』なんてさ。最初は今にも殺し合いが始まるんじゃないかってハラハラしたのに、人間の縁ってのは本当にわからないもんだね!」
ジョッキのビールをあおりながら、タリサ・マナンダルがいつもの勝気な笑みを浮かべ、感慨深げに呟いた。その視線の先では、新婦の唯依に頭を小突かれながらも、斑鳩崇継を睨みつける恭夜と、そんな恭夜に凄むユウヤの姿がある。
「ふふ、本当に。あの頃の二人の熱量は、見ているこちらが火傷しそうなくらいでしたものね」
ステラ・ブレーメルが上品に微笑みながら、優しく目を細めた。
アラスカの地で、日本とアメリカ、平民と武家、血筋に人生を狂わされた二人が出会った当初は、まさに犬猿の仲。言葉を交わせば即座に火花が散る最悪の空気だった。
それが、不知火・弐型という自分たちの存在証明を完成させるために、泥泥になりながら切磋琢磨し、いつしかあーでもないこーでもないと取っ組み合いの議論を交わすようになった。
技術論が白熱しすぎて掴み合いになり、恭夜がユウヤを綺麗な軌道で巴投げしたかと思えば、翌日にはシュミレーターでユウヤが恭夜をジャーマンスープレックスで床に叩きつける──そんな、衛士の戦いとは違う意味で凄まじい日常が、昨日のことのように思い出される。
「最初はさ、お互いを嘲るための言葉だったんだよな。『スペア補佐官』だの『アメリカ野郎』だのってのはさ」
ヴァレリオ・ジアコーザがパスタをフォークに巻き付けながら、懐かしそうに肩をすくめた。
「それがさ、いつの間にかアイツらの間でしか通用しない、特別な『愛称』みたいになっちまって。気づけばお互いの背中を預け合える唯一無二の相棒で、おまけに総官(唯依)を巡る男同士のライバルだ。まったく、青春を拗らせすぎなんだよ、アイツらは」
「だが、その拗らせた絆があったからこそ、俺たちはあの地獄を生き残り、フェイズⅢという奇跡を完成させられた。……そして今、こうして家族となり、皆に祝福されている。これ以上の結末はないさ」
ヴィンセント・ローウェルが静かにグラスを掲げ、大人の渋い笑みを浮かべた。
過酷なアラスカの冬、テロの恐怖、BETAの脅威、そして理不尽な政治の闇。多くの困難を共に乗り越え、誰一人欠けることなくこの平和な戦後の世界で、大切な仲間の門出を祝えている。
雛壇で賑やかに、しかし心の底から幸せそうに笑い合う恭夜、唯依、ユウヤの三人を見つめながら、タリサたちアルゴス小隊のメンバーは、胸の奥から湧き上がる確かな温もりを感じていた。
色々あった。死にかけたことだって一度や二度じゃない。
だけど──このメンバーで、アルゴス小隊として出会い、共に戦い、今日という日を迎えられて、本当に良かった。
戦友たちの最高の笑顔は、彼らが駆け抜けた激動の日々が、何一つ無駄ではなかったことを証明していた。