極振り歌唱力のTS吟遊詩人配信者   作:カロ(ハーメルン)

1 / 4
初配信①

 

 

【初配信】吟遊詩人です、はじめまして!【星宮レーナ/DE2所属】

 

 

 みなさんこんにちは。ダンジョンがある現代日本にTS転生したものです。

 

 美しい光に溢れた真っ白な空間で転生特典を聞かれたので、『あなた(女神)の容姿』と『レベルMAX』をおねだりしました。それはもう、きゅるるんとつぶらな瞳で。おててをギュッと一つに結んで。

 

 その結果、見事俺……もとい私が手に入れたのは『銀髪ロング美女』と『ジョブレベル100』。

 

 かわいい×つよい=最強!

 みんなにチヤホヤされながら、悠々自適なニューライフを満喫したい!!

 

 全くもって、ちっぽけでつつましいその願いは……あろうことか、かの邪知暴虐の女神によって、木っ端みじんに砕け散ってしまったのです。

 

 

──ああああぁ、騙されたッ!?

 

 容姿こそ素晴らしいものの、口調や動作まで強制されるなんて!

 

 私のジョブがまさかの『歌手』で、成長ステータスポイントが特有の『歌唱力』に全ブッパされてるなんて!

 

 レベルは100が限界値であり、歌手でこれ以上の成長は望めない。

 幸か不幸か、その無駄に積み上げられた『歌唱力』と習得スキルだけ残して、上位のジョブ『吟遊詩人』に進化することができた。

 

 でも、精神ステータスなんて初期値だから、MPはすっからかんでスキルの燃費は最悪。

 レベルアップに必要な経験値も、今までの合計レベルから算出されるためバカみたいに莫大。

 

 貧弱ウスノロ紙装甲の、クソザコ吟遊詩人レベル1。

 

 オワオワリ。

 

 

──だからさ。

 

 吟遊詩人になることでゲッチュしたスキル。その名も『リライト』。

 

 効果としては、習得している様々な祝詞を、消費MPはそのままで自分好みにアレンジできる。バフを付与する祝詞の詠唱文やテンポを、あれこれ自由に変えられるわけです。

 

 本来祝詞は10秒ぐらいで、戦闘に用いることを考えると結構時間がかかる。だから、詠唱短縮のためによく利用されるスキルらしいけれど。

 

 一応、長くするほど……そして対象の感情を揺さぶるほど、徐々にバフの効果が高まるのだとか。

 

──だから……こう思っちゃっても、仕方ないよね。

 

 歌うしか能のない私。

 

 もはや、ずっと歌っていてもいいのでは?

 

 それに──元世界で聴いていた、綺羅星のごとき神曲たちが存在しないのなら。

 

 

 パクっ……お借りしちゃっても、いいのでは?

 

 

:待機中

:新人きちゃ!

:wktk

:休日たすかる

 

「改めてよろしくね! れーな!」

 

 配信開始前なのに、太陽みたいなそのテンション。

 生粋の元気っ子なのか、前準備的なアレなのか。

 

「ええ……よろしくお願いします、ヒマリ先輩」

 

 フワリと花のように、上品にお辞儀するこの身体。

 さっき初めて顔を合わせた目の前の彼女は、所属した事務所のDTuber。もちろんDはダンジョンのDで、頭文字でも神の天敵でもない。むしろ天敵であって欲しかった。

 事務所の名前はDE2で、『Dungeon Exploration&Entertainment』の略だとか。つまり探索とエンタメどっちにも力を入れてるところ。歌唱力特化を押せばすんなり採用されてしまった。たぶん外見もある。

 

:吟遊詩人?

:デーツさん、常識枠でもいいんですよ

:どうせイロモノ

:同接すごw

 

「あれ、もしかして緊張してる?」

 

 結構な大手Dtuber企業で、抱え込んでいる所属人数も視聴者数もめちゃくちゃ多い。体感だけど。

 前世が一般ピーポーマン人…つまりピーマンの私には、緊張するなというほうが無理な話。

 

「まあ……そうですね」

 

 気づけば、自分のふっくら豊かに実っているお胸の上へ、柔らかく指先を当てていた。んあらまっ、なんてたおやかな仕草だこと!

 勝手に動くのやめてください。

 

 先輩は鈴を転がすように、クスクスと笑った。

 

「あたしも同じだったから、あんしんして!」

 

 ちっちゃな胸……というか身体を、どーんと張って。

 一応18歳は超えてるはず。これが合法ロリか。イイね。

 

:もーそろじゃん!

:引率だれだろ

:ビビリムだったら笑う

:間 に 合 っ た

 

「ふふっ……はい」

 

 思わず漏れる、慈しみに満ちた優しい笑い声。歌唱力バフは乗ってないのに、正直自分でもドキドキする。

 さすがは女神様、ありがとうございます。だが許さぬ。除かなければならぬ。決意はしてない。

 

「よし……じゃあ、ポチッとやっちゃって!」

 

 彼女は明るさを象徴するような黄色い髪を揺らし、そそくさとドローンの後ろへ隠れた。

 そのさらに向こうへ広がっている雄大な草原が、サァと一陣の風に吹かれる。

 

 最初は私一人だけ。

 

:くるぞ

:始まる?

:わくわく

:よかったまだだよね!?

:こい!

 

 豪雨のように、どんどん勢いを増していくコメントたち。

 

 もう、なにがなんだか。

 

──ドクッ、ドクッ

 

 同じように速まっていく私の鼓動。

 

 ドローンに表示されているコメントの流れを黙って見つめる。

 

 ゴクリ…と固唾をのんだ。

 

:もうだ

:始まりますね!

:安全に終わりますように

:楽しみ

:く、くる!!

 

──ドクッ、ドクッ

 

 だいじょうぶ、ガワは女神。

 

 大丈夫、個性もバッチリ。

 

 コレはきっと……ワクワクの気持ち。

 

 最高のニューライフが、この先に待っているはずだから!

 

 

──ポチッ

 

「みなさんはじめまして……星宮レーナです!」

 

 

:きた!!!!!

:デビューおめでとうございます!!!

:おめでとう!

:え

:きちゃ!!

:やば

:めっちゃ美女なんだが!!!!

:デビュおめ!

:銀髪ロング大好きです

:レーナちゃんはじめまして!!!

:推し確

 

 コメント欄が爆発した。

 

 ついでに、私のキャパも。

 

 あばばばば。

 

 

 

 

「あはは! もーみんな、勘弁してあげなよぉ~」

 

 楽しそうにコロコロ笑う声がすぐ横から。

 

:ヒマリ先輩きゃわわ

:だってしょうがないじゃん……

:あたふたしすぎw

:ずっと耳真っ赤で草

 

 未だに顔が火照ったように熱い。

 と、とりあえず落ち着くのよ、歌川響……じゃなくて星宮レーナ。

 

 ひっひっふー、ひっひっふー!

 ベタすぎる。あ、落ち着いたわ(錯乱)

 

「……そうですよ」

 

:あっ

:ジト目たすかる

:やばい

:動悸とまらんのだがww

 

 もはやなんでも喜ばれるのではないだろうか。

 開始15分で宇宙の真理に気づいてしまった。

 

「おっと……第一村人発見!」

 

 小声で叫ぶという高等テクを見せびらかす先輩。

 

 あぁ。ついに、きてしまった。

 

:そいえば吟遊詩人とはなんぞ

:きた!!

:安全第一でね

:たぶん歌手の派生

 

 私たちの視線の向こうには、一体のスライム。

 持ち前の青透明ボディをぷるるんと揺らしている。かわ……かわいい?(洗脳済み)

 

 のどかな草原が広がる第一層の中でも、一番の雑魚モンスター。

 初配信はダンジョン探索というより自己紹介のためにある。戦闘は軽めの前菜で、お話がメインディッシュ。

 

:歌手!?

:スラたん今日もお疲れ様です

:がんばって!

:どう戦うんだろ

 

「れーな、いける?」

 

 周りをチラチラ見ながらそう言う先輩は、愛すべき新人の記念すべき初戦闘には参加しない。そういう決まり?伝統?なのだ。

 ただ、スライムも雑魚とはいえモンスター。レベルを上げていない一般人にとっては、恐ろしい脅威。

 

 まさに、私みたいな。

 

「……はい」

 

:れっつごー!

:大丈夫?

:ヒーコ警戒サンクス

:派生ってことは意外とバカ強いのかw

 

 まずい。変な勘違いをされてる。

 も、もうムリかも。やっぱりやめていいですか?

 

──ブォルルンッ

 

 スライムがいきり立ったみたいに全身を震わせる。あ、そんなに大きくなるんですね。私の身長の大体半分ぐらい?その身体で溺れさせたり呑み込んできたりするんですかね。それともガッチガチに固くなって全力衝突してくるとか?

 

 へー、かわ……いやコワイコワイ!

 

 逃げたいッ!!

 

 

──っていうか。

 

 私の真価はバッファーとしての支援では?ソレだけ伝わればきっと十分、いや絶対。

 そうだそうだ。そもそもこれから先だって、どうせ歌うことしかできないし。

 That's right(ペチィン)、天才かよ。ほら、私の中の俺も言ってる!

 

「ヒマリ先輩……ちょっと、頼んでいいですか」

「……え?」

 

 事務所の伝統からも逃げちゃうのは大変申し訳ないけど。

 

 インパクトだけは残すので、どうにかこうにか許してくださいお願いしますぅ……!

 

 

「それでは、捧げます──『グランドエスケープ』」

 

 

 

 

 




※見切り発車。需要があれば続きます。
曲名まではセーフだと聞いたので……ほんの出来心なんです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。