『もういっかい、歌って!!……歌って!……って……(残響)』
ロリにお願いされたなら、叶えてあげるが世の情け。
ロリの破壊を防ぐため、ロリの平和を守るため。
パクった曲で歌い出す、ラブリービューティーな女神役!
流れ星や!!(唐突)
トレンド駆けるロケット弾の私には!
チヤホヤ!チヤホヤ!チヤホヤを!!
Best wish(ペチィン)
ソーーレデハイコォォォー↑↑(渾身の女神モノマネ)
──いきなり、目の前が真っ暗になった。
「ひゃっ!?」
「わっ!」
えなに、ゲームオーバー!?お借りするバイク…じゃなくて神曲が全ッ然決まらないから、とりま先にイケイケ前振り口上を考えてただけなんですけど!?
『流れ星や』=『☆ミや』=『星宮』とかいうディープすぎて伝わらないワードに執着したせいで、もはや迷走してるよって?だからって、私の命葬しないでよ!?
:!?
:お、深夜ですね
:びっくりした
:俺らの出番きちゃ!
──ピカァッ!
「きゃぁっ!?」
ああ、目がっ……目がぁぁぁっ!
正面にいたらしい配信用サポートドローンが、これまたいきなり自己主張強めのフラッシュを放った。
眩しい光で照らされた視界には、直前までと変わらない平坦な草原が広がっている。
つまり、突如としてお先真っ暗になったのは、私の人生ではなく──このダンジョンそのもの。
「ドローンくん、偉い!」
これといった動揺を見せずに、バ○スドローンをいい子いい子してる平坦な先輩……ついでに私にもして欲しいです。は?キモくねーし。合法だから、百合(Lily)だから!つまり百合法(リリーガル)!一歩間違えればイリーガルってな!ドッ!
:ヒマリママ…
:明るくなった!
:だぁー!
:レーナ様大丈夫?ww
「あはっ、もしかしてれーなって怖がりぃ?」
「う……ちがいますから!」
いきなりすぎて、びっくりしただけでしょうが!わ、私はお姉ちゃんだぞ!?(存在すべき記憶)
てゆか、今のイエロリなんかエロ……イリエロ……イリーガルエロ……いやまあそれは置いといて、恐らくこの暗闇は例の現象。進○ゼミでやったところ。まあ、こんらんで頭から抜けてたんだけど……フラッシュじゃなくてあやぴかだったとは、このリハクの目を持ってしても(ry
ン゙ン゙ッ──説明しよう!
まずこの世界のダンジョンは、人が暮らしている地球とは異なる時空に存在しているのだ!
つまり、二十四時間の日照変化や季節、気候変化などが連動していないということ。日本がいま朝でも昼でも、平成でも令和でも、円安でも円高でも、ダンジョンの中には一切関係ないのである!当たり前だぁぁぁ!!
では一体、ここで何が起こるのかというと──なんと一時間ごとに、環境がランダム変化していくのだ!ふざけんな!新世界か!
今みたいに真っ昼間からド深夜へ突然切り替わることもあれば、雨や雪が降りだすこともあるらしい。多分雷槍は降らない、それと便座カバー。
:必死な姿もお美しい…
:気を付けてくださいね!
:夜苦手
:なんか聞こえない?気のせい?
「それにしても、ほんとに暗いですね」
「……ぇ」
ま、深夜といってもただ暗いだけ。ここが第一層であることは変わらないし、近くにいるのはザコイム一匹。いやまっさかあの歌で、実は遠くからモンスターを呼び寄せちゃってて、今とんでもない物量で迫ってきてるとかそんな訳ないですし(笑)
視聴者という一般ガラス細工の緊張感を良い感じに刺激しつつ、私たちの安全はバッチグーと……あれ、もしかしてこれ以上ないエンタメフィールドなのでは?一夜限りのダンジョンテーマパーク開園!?デーツニー・ハーモニー・イン・カラー!?
おいおい勝ったなガハハ!!ちょっくらフロア沸かせてきま
──ゴゴゴゴゴゴッ
何か、不気味に轟く地響きが。
暗闇の奥、遠く遠くから。
少しずつ。
「なんでしょうか?」
「ど、どうしようッ……これ、やばいよッ!?」
:どした
:うそ……
:え?
:なにこの音!?
気づけば私の足元にまで、ガタガタと伝播しているその振動。
一体なにが起こっているの……いやいや、まさか。
異変を察知したドローンが、おどろおどろしい暗黒へピカァと光を向ける。そそ、そんなわけないって。
緑に照らされた、果てしなく広がる草原の波間。
じわじわ……じわじわと。
──数え切れないほどのモンスターの影が、滲みでてきた。
「ッッ!?」
「……そん、な」
ぎやぁああああああって痛いッ!?喉痛いッ!?ギュギュッって絞められた!こんな時ぐらい全力で叫ばせて!?
いや、それどころじゃない!ヤバイよヤバイよ、リアルガチ!!
:!?
:まって
:やばい!!
:助け呼んで!
──ゴゴゴゴゴゴゴッ!
強まっていく地響きが、私の心をどんどん焦らせる。
恐怖で背筋は凍り付き、歯もガチガチとぶつかり合って……はくれないらしい女神の身体。き、気持ち悪いよこの感覚!
ウジャウジャと押し寄せる、無数のモンスター。
ゴブリンだったりスライムだったり、でかいネズミに鳥に虫に。もはや何が何だか分からないぐらい集まってきている。
っていうかこれ、もしかして私のせい?さっきのお歌、途中からめちゃんこ楽しくなってきて、できる限り遠くまで響かせようとしちゃったんだよね……い、いや、だってそこに草原があるから!理由なんていらないというか……うう。
:なんで!?
:終わった
:逃げて!!
:出口は無理です!遠すぎる!
「れーなッ」
流石に数が多すぎる。お盆の帰省ラッシュかなんかですか?ご家族のこと大切にされてて、偉いと思います()
自慢じゃないけど、私はもう二度と帰省できないからさ。
あぁ。
でも、もしかしたら。
これで。
私が……俺が大好きなみんなに、また──
「危ないッ!!」
「え?」
今なんか言われ
──目の前にいた先輩の姿が、突如搔き消えた。
瞬間、パァン!と弾ける音。
背後から、青白くて美しい光が迸る。
:え?
:な、なにが起きた!?
:!?
:ヒマリちゃんが
「せん、ぱい?」
動揺で上手く出せない声を固く漏らしながら、グググ…とゆっくり後ろへ振り返った。
そこには、青白い粒子が僅かに立ち昇る刀を振り抜いた姿勢のまま、私より驚いた表情でピシリと固まっている平坦先輩。
あ、ちなみに平坦のジョブは侍です。ずるい。二つの意味で生まれた星が違う……やば、心の血涙でてきたかも。心臓はいつも血まみれだろって?ハッ。
「……」
そんな勝ち組ツルペタは、フリーズしていた身体をスッと正すと、『信じられない……』という顔でこちらを眺めてくる。ど、読心された!?いや、別にうら山しさをプラマイゼロで平らにしたかったとか、そういう訳じゃないンデス!許してチョモランマ!
「あたしに、何したの?」
:なになに!?
:とりあえず逃げてください!
:まさか…
:まずいよ!
──ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!
地鳴りはこれでもかと酷くなってきている。
やつらの先頭集団はもうすぐ、ゴールテープという名の私たちを引きちぎるだろう。こここ怖すぎる!
さらにイリエロはイリエロで、瞬間移動したり読心したり……エスパータイプかっつーの!こんらんが加速するから、これ以上属性(タイプ)盛んないで!
「れーな?」
っていうのはもちろん冗談でして、えへへ。
なんでしたっけ、不肖私めがあなた様に何かをしでかしてしまったとか?いやホント、すいやせんすいやせん。でもまいりましたな、こりゃあ。心あたりなどさっぱりパリパリ。こんな絶望の真っ只中で覚えてる記憶とか、薄っぺらすぎてもはや海苔とちゃいますかって……あ。
「──祝詞」
「ッ……やっぱり」
疑いが確信に変わった表情でポツリと呟くイリエロ先輩。
そうだった。私が捧げたのは『烈風の祝詞』。歌声を響かせた魂に、敏捷ステータスの割合バフを付与するスキル。
本来なら1.2倍や1.3倍ぐらいのバフがかかれば、上出来らしいけど……。
:ふぁっ!?!?
:どゆこと
:だから祝詞ってなんですか!
:まじ…?
:後ろヤバイ!!
すまねえ視聴者!あとで説明するから、一旦この頭を整理させてくだしあ!
えーとつまり、イエローツルペタサムライエスパーイリーガルエロリーガルロリエンタメ大先輩に付与した素早さバフが、先ほどの瞬間移動を生み出したというコト?
いやいや、あっても2倍か3倍ぐらいだと思ってたんですけど!?もはや何倍かも想像つかないし、チヤホヤどころかドン引きレベルじゃないですか!?
「これなら……いけるかもッ」
ぴょんぴょん飛んだり刀を構えたり、ビュンッと搔き消えては、突然違う場所に現れたり。
せわしなく準備運動(?)していた先輩が、少しの興奮をにじませた声色でそう言った。
:!?
:やばww
:僕歌手だけどこんなんじゃないよ烈風!
:えっ
:とんでもなく速い移動……
:ヒーコ!?
「れーな、ねえ歌って!!」
足元の草地をギュッギュッと固めつつ、迫りくる帰省集団の方をしっかり向いて、勇ましくおねだりをしてくる彼女。
その瞳には、夜空を駆ける流れ星のように、キラキラと輝く希望が宿っていた。
ああ。
もう……どうせ、逃げられはしないから。
そもそも多分、私が元凶だし。
二度目の人生、ほんとにあっけなくて儚くて、思えば最後にちょっとチヤホヤを味わえたくらいだったけど……ううん、これからがほんとの、最後の最後。
その流れ星に願いを残して──散りゆく覚悟で響かせるしか、ないでしょうよッ!
「……はい!!」
私の力強い表明を受けとるや否や、フッと明るい笑みをこちらに見せ、ビュォンッッ!と風になって駆けていくヒマリ先輩。
モンスターの大群はなおも暗闇から滲み出てきており、その底は未だ全貌を見せない。
数百体、数千体……そんなの分からない。
分からなくたって、関係ない。
MPを確認するも、この残量で使える祝詞は最低コストの烈風のみ。同じ祝詞の重複付与は、基本的に効果がない──だけど、一つ試せることがある。
感情の揺れに応じて効果が上がるなら……異なる揺らし方をさせれば、あるいは!
:歌う!?
:もーなにがなんだか!
:いやぁぁ
:頑張ってくださいッ!
:生きて!!!
さあさあお前らァ!よってらっしゃい、みてらっしゃい!
ロリにお願いされたなら?叶えてあげるが世の情け!
今夜限りのド派手な見せ場!!
散るは心に!!
祈るは星に!!
咲かせる願いは夜の花!!!
「それでは、捧げます──『残響散歌』!!」