極振り歌唱力のTS吟遊詩人配信者   作:カロ(ハーメルン)

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初配信④

 

 

『もういっかい、歌って!!……歌って!……って……(残響)』

 

 ロリにお願いされたなら、叶えてあげるが世の情け。

 ロリの破壊を防ぐため、ロリの平和を守るため。

 パクった曲で歌い出す、ラブリービューティーな女神役!

 

 流れ星や!!(唐突)

 

 トレンド駆けるロケット弾の私には!

 チヤホヤ!チヤホヤ!チヤホヤを!!

 

 Best wish(ペチィン)

 

 ソーーレデハイコォォォー↑↑(渾身の女神モノマネ)

 

 

──いきなり、目の前が真っ暗になった。

 

「ひゃっ!?」

「わっ!」

 

 えなに、ゲームオーバー!?お借りするバイク…じゃなくて神曲が全ッ然決まらないから、とりま先にイケイケ前振り口上を考えてただけなんですけど!?

『流れ星や』=『☆ミや』=『星宮』とかいうディープすぎて伝わらないワードに執着したせいで、もはや迷走してるよって?だからって、私の命葬しないでよ!?

 

:!?

:お、深夜ですね

:びっくりした

:俺らの出番きちゃ!

 

──ピカァッ!

 

「きゃぁっ!?」

 

 ああ、目がっ……目がぁぁぁっ!

 正面にいたらしい配信用サポートドローンが、これまたいきなり自己主張強めのフラッシュを放った。

 

 眩しい光で照らされた視界には、直前までと変わらない平坦な草原が広がっている。

 つまり、突如としてお先真っ暗になったのは、私の人生ではなく──このダンジョンそのもの。

 

「ドローンくん、偉い!」

 

 これといった動揺を見せずに、バ○スドローンをいい子いい子してる平坦な先輩……ついでに私にもして欲しいです。は?キモくねーし。合法だから、百合(Lily)だから!つまり百合法(リリーガル)!一歩間違えればイリーガルってな!ドッ!

 

:ヒマリママ…

:明るくなった!

:だぁー!

:レーナ様大丈夫?ww

 

「あはっ、もしかしてれーなって怖がりぃ?」

「う……ちがいますから!」

 

 いきなりすぎて、びっくりしただけでしょうが!わ、私はお姉ちゃんだぞ!?(存在すべき記憶)

 てゆか、今のイエロリなんかエロ……イリエロ……イリーガルエロ……いやまあそれは置いといて、恐らくこの暗闇は例の現象。進○ゼミでやったところ。まあ、こんらんで頭から抜けてたんだけど……フラッシュじゃなくてあやぴかだったとは、このリハクの目を持ってしても(ry

 

 ン゙ン゙ッ──説明しよう!

 

 まずこの世界のダンジョンは、人が暮らしている地球とは異なる時空に存在しているのだ!

 つまり、二十四時間の日照変化や季節、気候変化などが連動していないということ。日本がいま朝でも昼でも、平成でも令和でも、円安でも円高でも、ダンジョンの中には一切関係ないのである!当たり前だぁぁぁ!!

 

 では一体、ここで何が起こるのかというと──なんと一時間ごとに、環境がランダム変化していくのだ!ふざけんな!新世界か!

 

 今みたいに真っ昼間からド深夜へ突然切り替わることもあれば、雨や雪が降りだすこともあるらしい。多分雷槍は降らない、それと便座カバー。

 

:必死な姿もお美しい…

:気を付けてくださいね!

:夜苦手

:なんか聞こえない?気のせい?

 

「それにしても、ほんとに暗いですね」

「……ぇ」

 

 ま、深夜といってもただ暗いだけ。ここが第一層であることは変わらないし、近くにいるのはザコイム一匹。いやまっさかあの歌で、実は遠くからモンスターを呼び寄せちゃってて、今とんでもない物量で迫ってきてるとかそんな訳ないですし(笑)

 視聴者という一般ガラス細工の緊張感を良い感じに刺激しつつ、私たちの安全はバッチグーと……あれ、もしかしてこれ以上ないエンタメフィールドなのでは?一夜限りのダンジョンテーマパーク開園!?デーツニー・ハーモニー・イン・カラー!?

 おいおい勝ったなガハハ!!ちょっくらフロア沸かせてきま

 

 

──ゴゴゴゴゴゴッ

 

 何か、不気味に轟く地響きが。

 

 暗闇の奥、遠く遠くから。

 

 少しずつ。

 

「なんでしょうか?」

「ど、どうしようッ……これ、やばいよッ!?」

 

:どした

:うそ……

:え?

:なにこの音!?

 

 気づけば私の足元にまで、ガタガタと伝播しているその振動。

 

 一体なにが起こっているの……いやいや、まさか。

 

 異変を察知したドローンが、おどろおどろしい暗黒へピカァと光を向ける。そそ、そんなわけないって。

 

 緑に照らされた、果てしなく広がる草原の波間。

 

 じわじわ……じわじわと。

 

 

──数え切れないほどのモンスターの影が、滲みでてきた。

 

「ッッ!?」

「……そん、な」

 

 ぎやぁああああああって痛いッ!?喉痛いッ!?ギュギュッって絞められた!こんな時ぐらい全力で叫ばせて!?

 いや、それどころじゃない!ヤバイよヤバイよ、リアルガチ!!

 

:!?

:まって

:やばい!!

:助け呼んで!

 

──ゴゴゴゴゴゴゴッ!

 

 強まっていく地響きが、私の心をどんどん焦らせる。

 

 恐怖で背筋は凍り付き、歯もガチガチとぶつかり合って……はくれないらしい女神の身体。き、気持ち悪いよこの感覚!

 

 ウジャウジャと押し寄せる、無数のモンスター。

 ゴブリンだったりスライムだったり、でかいネズミに鳥に虫に。もはや何が何だか分からないぐらい集まってきている。

 

 っていうかこれ、もしかして私のせい?さっきのお歌、途中からめちゃんこ楽しくなってきて、できる限り遠くまで響かせようとしちゃったんだよね……い、いや、だってそこに草原があるから!理由なんていらないというか……うう。

 

:なんで!?

:終わった

:逃げて!!

:出口は無理です!遠すぎる!

 

「れーなッ」

 

 流石に数が多すぎる。お盆の帰省ラッシュかなんかですか?ご家族のこと大切にされてて、偉いと思います()

 

 自慢じゃないけど、私はもう二度と帰省できないからさ。

 

 あぁ。

 

 でも、もしかしたら。

 

 これで。

 

 私が……俺が大好きなみんなに、また──

 

「危ないッ!!」

「え?」

 

 今なんか言われ

 

 

──目の前にいた先輩の姿が、突如搔き消えた。

 

 瞬間、パァン!と弾ける音。

 

 背後から、青白くて美しい光が迸る。

 

:え?

:な、なにが起きた!?

:!?

:ヒマリちゃんが

 

「せん、ぱい?」

 

 動揺で上手く出せない声を固く漏らしながら、グググ…とゆっくり後ろへ振り返った。

 

 そこには、青白い粒子が僅かに立ち昇る刀を振り抜いた姿勢のまま、私より驚いた表情でピシリと固まっている平坦先輩。

 あ、ちなみに平坦のジョブは侍です。ずるい。二つの意味で生まれた星が違う……やば、心の血涙でてきたかも。心臓はいつも血まみれだろって?ハッ。

 

「……」

 

 そんな勝ち組ツルペタは、フリーズしていた身体をスッと正すと、『信じられない……』という顔でこちらを眺めてくる。ど、読心された!?いや、別にうら山しさをプラマイゼロで平らにしたかったとか、そういう訳じゃないンデス!許してチョモランマ!

 

「あたしに、何したの?」

 

:なになに!?

:とりあえず逃げてください!

:まさか…

:まずいよ!

 

──ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!

 

 地鳴りはこれでもかと酷くなってきている。

 

 やつらの先頭集団はもうすぐ、ゴールテープという名の私たちを引きちぎるだろう。こここ怖すぎる!

 さらにイリエロはイリエロで、瞬間移動したり読心したり……エスパータイプかっつーの!こんらんが加速するから、これ以上属性(タイプ)盛んないで!

 

「れーな?」

 

 っていうのはもちろん冗談でして、えへへ。

 なんでしたっけ、不肖私めがあなた様に何かをしでかしてしまったとか?いやホント、すいやせんすいやせん。でもまいりましたな、こりゃあ。心あたりなどさっぱりパリパリ。こんな絶望の真っ只中で覚えてる記憶とか、薄っぺらすぎてもはや海苔とちゃいますかって……あ。

 

「──祝詞」

「ッ……やっぱり」

 

 疑いが確信に変わった表情でポツリと呟くイリエロ先輩。

 

 そうだった。私が捧げたのは『烈風の祝詞』。歌声を響かせた魂に、敏捷ステータスの割合バフを付与するスキル。

 

 本来なら1.2倍や1.3倍ぐらいのバフがかかれば、上出来らしいけど……。

 

:ふぁっ!?!?

:どゆこと

:だから祝詞ってなんですか!

:まじ…?

:後ろヤバイ!!

 

 すまねえ視聴者!あとで説明するから、一旦この頭を整理させてくだしあ!

 えーとつまり、イエローツルペタサムライエスパーイリーガルエロリーガルロリエンタメ大先輩に付与した素早さバフが、先ほどの瞬間移動を生み出したというコト?

 いやいや、あっても2倍か3倍ぐらいだと思ってたんですけど!?もはや何倍かも想像つかないし、チヤホヤどころかドン引きレベルじゃないですか!?

 

「これなら……いけるかもッ」

 

 ぴょんぴょん飛んだり刀を構えたり、ビュンッと搔き消えては、突然違う場所に現れたり。

 せわしなく準備運動(?)していた先輩が、少しの興奮をにじませた声色でそう言った。

 

:!?

:やばww

:僕歌手だけどこんなんじゃないよ烈風!

:えっ

:とんでもなく速い移動……

:ヒーコ!?

 

「れーな、ねえ歌って!!」

 

 足元の草地をギュッギュッと固めつつ、迫りくる帰省集団の方をしっかり向いて、勇ましくおねだりをしてくる彼女。

 

 その瞳には、夜空を駆ける流れ星のように、キラキラと輝く希望が宿っていた。

 

 ああ。

 

 もう……どうせ、逃げられはしないから。

 そもそも多分、私が元凶だし。

 

 二度目の人生、ほんとにあっけなくて儚くて、思えば最後にちょっとチヤホヤを味わえたくらいだったけど……ううん、これからがほんとの、最後の最後。

 

 その流れ星に願いを残して──散りゆく覚悟で響かせるしか、ないでしょうよッ!

 

「……はい!!」

 

 私の力強い表明を受けとるや否や、フッと明るい笑みをこちらに見せ、ビュォンッッ!と風になって駆けていくヒマリ先輩。

 

 モンスターの大群はなおも暗闇から滲み出てきており、その底は未だ全貌を見せない。

 

 数百体、数千体……そんなの分からない。

 

 分からなくたって、関係ない。

 

 MPを確認するも、この残量で使える祝詞は最低コストの烈風のみ。同じ祝詞の重複付与は、基本的に効果がない──だけど、一つ試せることがある。

 

 感情の揺れに応じて効果が上がるなら……異なる揺らし方をさせれば、あるいは!

 

:歌う!?

:もーなにがなんだか!

:いやぁぁ

:頑張ってくださいッ!

:生きて!!!

 

 さあさあお前らァ!よってらっしゃい、みてらっしゃい!

 

 ロリにお願いされたなら?叶えてあげるが世の情け!

 

 今夜限りのド派手な見せ場!!

 

 散るは心に!!

 

 祈るは星に!!

 

 咲かせる願いは夜の花!!!

 

 

「それでは、捧げます──『残響散歌』!!」

 

 

 

 

 

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