作者の猫のこたつです。
誤字脱字等あれば報告してもらえると助かります!
1933年11月5日
イタリア王国 王都 ローマ
大学に入って、もうすぐ半年となる。
長いようで短いような、そんな生活だった。
いや、もう終わるわけじゃないんだけど、半年とか1年とかって、ある一定の区切りとして見る時があるからさ。
まあ、それにしても…
「今日は、郊外の森に出た獣数体を倒しに行くよ〜!
やっぱりこういうのを覚えるためには実践だよ実践、ということで許可を貰ってまいりました!」
なんだかテンションが高い、私たちのことを教えてくれているのは、キャッツだ。
ビガリは少し嫌そうだったけれど、腕は確かということで我慢していた。
胃が痛そうな顔をしていたけれど…
「まあ、みんな半年くらいここで学んだし…
最低限は戦えるって信じてるからね。
そんな訳で、今から行くよ!」
「今からですか?郊外って、いったいどのくらい…」
「鉄道で…大体30分かな。往復1時間、まあ仕方ない仕方ない。
実践は大事、みんなわかるでしょ?」
そう問われた皆の中では、しっかりと頷く者、経験がないのか首を傾げる者、黙りこくって首すら動かさない者、そしてあろうことが居眠りしている者…
大体は頷いてる人が多めに見えた。
これは…本心からなのか、はたまた教師に対しては媚を売っておこうとする人が多いのか…
まあ、どうだっていいか。
そんな訳で、狩人の学生や魔導兵や魔導飛行兵に将来なる学生が集められ、郊外の森へと出発した。
列車の中から見る街の景色は特別な気がしたが、そんなことを考えている内に、目的地の森へと着いた。
魔具を構え、キャッツを先頭に森の中へと潜っていく。
森の中は鬱屈になるほど暗く、嫌な気配が立ち込める。
膝くらいの高さの草が多く、歩くだけでも大変だ。
何かが潜んでいたとしても、あまり気付くことは出来ないだろう。
…何か、草をかき分けてくる音がする。
四足歩行の、何か。
それは、つまり――
「来たよ、準備!」
キャッツの声が辺りに響く。
その声に合わせ、皆が魔具を構える。
ある者はある者と背中合わせに、死角の無いよう連携して動く。
「どうするビガリ。私達もやるかい?」
「お任せしますが、どうしてもと言うなら。」
そう話しながら、周囲を見る。
一先ず、自分の正面からは来ない。
大体、3時や9時の方面から来る…そんな気がする。
「来ますよ、準備を。」
「言われずとも!」
その瞬間、四足歩行の、数多の動物の一部を組み合わせたような、体色の黒いキメラが飛び出してくる。
予測していた場所に綺麗に飛んできたそれを、魔具に魔力を込めて断ち切る。
上半身と下半身が綺麗に吹き飛び、紫色の血が吹き出す。
断ち切られた獣は地に落ちたあと、少しだけ呻きを上げた後に、身体と血が消える。
「ホントにどういう生態なんだろうね。」
「さあ。研究者も全く解明できていないらしいですので、専門家でもない我々は見当もつかぬものでしょう。」
それもそうかと思いながら、また飛んできたり草むらから突っ込んでくる奴らを皆で斬っていく。
一体、また一体と殺していく。
飛び上がった獣は、さっきのと同じ様に斬り、届かないようであれば、自分も地面を蹴ってその高さまで飛び上がる。
魔力強化した身体は一時的に能力が増加する。
それによって、魔導適性のある者たちは超人のように扱われているんだけれど。
蹴った地面は抉れ、斬ってはまた身体を回し他のものも殺していく。
地上の獣達はキャッツやビガリ、また同級生達が殺していく。
無論、私のように空中に飛び上がって戦う人もいるけれど。
そんなこんなで、全て殺し尽くしたと思われた後に、キャッツが口を開く。
「今回の子たちは強いねぇ、もう少しかかると思っていたんだけれど。」
そう言いながら、魔具をしまう。
「…よし。周囲に獣は居ないみたいだし、帰ろうか。皆1体ずつぐらいは殺せたよね?」
そう聞かれた皆は、こくりと縦に顔を振る。
横に振る者がいないことを確認したキャッツは、来た道を慎重に戻っていく。
私たちはそれについて行った。
――――――――――――――――――――――――
『ふむ…なるほど。』
誰も居なくなった森の中。
先程まで狩人や、狩人の卵がいた場所に、人型ではあるが、脚や腕の一部が動物の物であり、身体のどこもが黒い何かが、そこに立っている。
それは、先程の跡を手で触れる。
『…やはり、この魔力痕跡から見て…あの魔具、怪物狩りか。』
そのように独り言を呟きながら、それは指を鳴らした。
そうすると、どこにいたか、草むらから多くの獣が出てくる。
何匹、何十匹と。
『さて、皆。この魔力痕跡を覚えておきなさい。』
そう言いながら、先程まで魔具が振るわれた地面に指を指す。
『これは、私達の神を殺した、最悪のものだ。』
獣達は、吠えながら、叫びながら、その魔力痕跡を恐怖する。
憎い、だがそのような力は憎いよりも怖い。
自然に生きるものであれば、大体はそうだ。
自分より強いもの、それを殺した力を恐怖せず、どう生き残る?
そのような様子を見たそれは、また話し始める。
『だからこそ、私達は覚えておかないといけない。
かの神の恩寵を授かった我々が、この物を、者を、破壊し、殺し、辱め、奴等の汚点として残しておかなければならない。』
そう話したそれは、腕を突き上げ、勢いよくその地面に叩き付ける。
『自身を守るため、私達の神を生かすため。覚えておけ。』
そう言うと、それは森の奥に入り、消えた。
吠える声も、叫ぶ声も、もう聞こえない。
彼等もまた、森へ帰ったのだ。
その"怪物狩り"を殺すために。
――――――――――――――――――――――――
「信仰が厚いのはいいんだけど、介入されるのはあんまり好きじゃないんだよね。」
森の中に、何かがいる。
黒く靄のかかった身体は、その何かの輪郭をぼやけさせてはいるものの、それが人間ではないことを感じさせる。
超常的な、何か。
「居るんでしょう?出てきて欲しいんだけれど。」
森の全てに響くようなその声は、森を震わせ草むらが揺れる。
その少し後、何かが出てくる。
人型で、黒い体色の何かが。
それは黒い靄を纏ったモノに膝を付き、言葉を待つ。
『これは…我が神よ、どうかされたのですか。』
「君、少しでしゃばりすぎだ。確かに私の"目"の管理を任せたけれど、ここまで彼らを集めて活動しろなんて言っていない。」
『…これは、私の頭が腐っていたようです。
直々に命じられた事を失敗する私を、どうかお許しを。」
「いいよいいよ。自我をしっかり与えた獣はあの人作ってくれないからさ。替えが利かないし、私は君を好いているからね。少し慎重に行動してくれたまえよ。」
黒い靄を纏ったモノは、その形を変える。
人だ。人、女性。この世のものとは思えない美貌を持った、いつか見たような女に。
彼女は服のポケットを弄りながら、黒い人型は話し始める。
『この国はお任せを。彼彼女等を確実に仕留められるよう、慎重に情報を集めます。』
「何かあったら…そうだね、ここに行ってみてくれ。一応、私や私達のことを信仰する…外なる神の信仰集団がいるから。そこに、あの人から貰った人形を置いている。』
ポケットから紙を出し、それを開く。
それは地図であり、イタリア王国の王都郊外の地図だった。
この森周辺が描かれており、ある地点に印が付けられている。
『了解しました、我が神よ。』
――――――――――――――――――――――――
1934年3月24日
フランス共和国 首都 パリ
再来年、万博が行われる。
そのため、万博の準備が着々と行われているのだ。
「久々に来たよ、ここ。誘ってくれてありがてぇな、ゼア。」
「いえいえ。研究者たるもの、様々な国の研究機関や研究状態を見ておきたいと思いまして。」
英国軍人の横に、スーツを着た男が立っている。
ゼアと呼ばれたその男は、胸ポケットから煙草を取り出す。
が、それをやめた。
「やめるのか?」
「ええ。流石に、これから様々な研究をしようというのに、その道中でこんなことで体調を崩して死んでしまう、なんて馬鹿でしょう?将来笑いものにされます。」
「有名になったら、だがな。」
「レグ、私の研究のことを知っていてそれを言ったのですか?」
そう言いながら、ゼアは辺りを見渡す。
少し遠く行けば、小さくともエッフェル塔というものが見える場所だ。
「ここは初めてか?」
「恥ずかしながら。ドイツ生まれですが、隣国にさえ行ったことはありませんでしたので。」
そう言いながら、ゼアは歩き始めた。
国民感情を考えれば、それは必然だったのかもしれない。
ドイツ国民皆がそうとは言わないが、ある程度の人々はフランスという国家に対して良い感情を持ってはいない。
そのため、ゼアのように全くフランスという、首都や様々な都市が観光地である国に行ったことがないというのもあるだろう。
「…世知辛い世の中になったもんだなぁ。」
ぼそりと呟くように、レグはそう言った。
―――――――――――――――――――――
1934年2月6日
イタリア王国 ロンバルディア州
新年が過ぎ、それでもまだ肌寒い季節。
温暖な季節とは言っても、それは南部の話。
私の親の実家は、この北――アルプス山脈の近くという、冬に行くには寒すぎる――まあ冬なのに来ているのだが――所にある。
「久しぶりだね、カリハ。
ベグとはどうだい、仲良くやれてるか?
オレの魔具の調子はどうだ?上手く使えてるか?」
そんな風に話してきたのは、私の母親だ。
私と同じ金髪で、碧眼。手には少しだけ古傷が残っている。
言っては失礼だが、女性にしては中々の物言いをする。
いや、本当に。たまに凄いこと言うから。
一人称も、私みたいに「私」とかじゃなく「オレ」だし。
「大丈夫だよ、上手くやってる。
にしても、この魔具…すごいね。」
「まあ、オレらの家庭で一番大切にされてる物品と言って相違ないからな。」
「何でこんなに大事にされてるの?」
「伝統というか、そう言った感じだった…って感じかね。」
なんだか具体的とは言えないけれど、そういった説明を行う。
確かに、他の人々の魔具を見てみても、この魔具の手入れや綺麗さ、魔力の込めやすさなどは比べ物にならないほど良かった。
「さ、中で料理を用意してるから、早く上がりな。」
そう言いながら、母親は家の中に入っていった。
その言葉についていき、私も続いて中に入っていった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
これからも書いていきますのでゆっくりお待ちいただけると幸いです!