はじめまして、1年生諸君。
私がマグル学を担当するアーサー・ホークショーだ。
昨年よりマグル学は全学年の必修となった。
今までの物好きだけが学ぶ学問では無く、魔法族1人1人が学び考えなくてはいけない学問として扱われる。
昨今の技術の進歩と世界情勢は恐ろしい。
次代の魔法界を担う者として、“たかが”マグル学とは思わず、真剣に学んでいってほしい。
さて、諸君。特に純血を誇る生徒には考えてほしい。
魔法界育ちの中には、本物のマグルを見たことが無い者もいるだろう。
それにもかかわらずマグルとは劣等種だと声高に叫ぶ者もいる。
何故、マグルが弱者として扱われるか考えたことはあるかね?
魔法が使えない以外にも我ら魔法族に劣る点があるのか。
それとも、魔法の恩恵が巨大すぎるために魔法族が優位に立っているだけなのか。
この2つのうちどちらが正しいと考える?
"魔法"以外に我ら魔法族とマグルを隔てるものはあるのだろうか。
真剣に考えたことがあるものは少数派だろう。
誰か分かる者は。
「マグルと婚姻を結ぶ魔法族がいることから種族として大きな違いがあるとは思いません。歴史的に魔法族の方が出来る事が多く、出来ないことが多いマグルを見下したのだと思います」
そう、キャンベルが正解だ。よく学んでいる。レイブンクローに5点。
実のところマグルというのは、我々とそう変わらない存在だ。
特別愚かなわけでもないし、特別醜いわけでもない。
ただ魔力という唯一絶対のものが我らを隔てているだけだ。
そして、それだけの違いで優位に立てるのが魔法という力である。
昔のマグルには出来ないことが多すぎた。
魔法族が箒で1日で移動する距離を、マグルは馬で数日かけ移動する。
魔法薬を使えば一瞬で治るような怪我もマグルは数カ月かけて治療する。
魔法族が片手間に解決する火災も、マグルにとっては手に負えない厄災だ。
寿命という意味でも違った。
120年以上生きることもある魔法族と60年程で死ぬマグル。
どちらが優れているかと言えば、当然魔法族が優れていると皆がいうだろう。
過去のマグル学教科書にもそう刻まれている。
しかし、彼らはそのままの弱者では無かった。
君たちはホグワーツ特急に乗って来たね?
アレはマグルの技術が産み出した。
大勢の人間を高速で長距離運搬するという代物だ。
ポートキーよりも自由度は下がるが……より多くの人間を運ぶ事が出来る。
それに飛行機。1900年まで空は魔法族のものだった。
地を這うマグルと空を駆ける魔法族。そういった対比が一般的になる程度には。
けれど今ではマグルが我が物顔で空を駆けている。
マグルがシンガポールからブリスベンまで空を飛んで移動するなどマーリンでも予測できなかった筈だ。
この状況で「空は魔法族のもの」と語る者がいれば、それは愚か者という他ないだろう。
彼らマグルは魔法が使えないが、知恵と技術で補った。
そして、その技術はこれから先も進歩していくだろう。
魔法が使えないというだけで劣等種と呼べる時代は終わった。
これからの魔法族は、彼らの技術を学ばねばならない。
ホグワーツ特急のように取り入れるべきか、それとも無視すべきか。
これを真剣に考えない者にこれからの魔法界は相応しくない。
さて、今日の講義はこれで終わりだ。
君たちは次週までにレポートを1本書いてもらう。
テーマはホグワーツ特急が入学にもたらした変化について。
約100年前に導入された移動手段だ。
マグルと魔法族の違いを比べるにはもってこいだろう。
羊皮紙5枚程度に纏めてくるように。
魔法族にはもう少しマグルを警戒してほしい……。
個体としては魔法族が優れていても、文明としてのマグルは恐ろしいぞ。