チェンソーと斧   作:林檎の木

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茨の道

「一つ目の目標は達成…と」

 

誰に言うともなく発した声は空間に消えていった。

 

「目標って何?」

 

アサには聞こえていたようだが。

 

「猫を吸うこと」

「変なの」

 

アサとはお互い頻繁に話すようになり、かなり親しくもなった。

そもそも孤児院の描写からして話し相手がいなかったからだろうか。

 

とりあえず寮長の死体は内臓や血液を貪り食ったあとバラバラにして庭の焼却炉で燃やしておいた。その時は寮長名義でメンテナンスの伝言をしたという体で言い訳をしておいた。

 

死体は少し血なまぐさいが肝心の血液は吸い尽くして干からびているからまるで薪火の様によく燃えた。

そもそも普通十何歳ぐらいの身寄りのない子供が親同然の人物をそんな巧妙に殺害、証拠隠滅の完全犯罪をするとは誰も思いつかないだろう。

 

しかしながら、寮長を消してクラムボン生存を実現したのはいいとして、ここからどうするか。

 

まず状況を整理すると俺はこのチェンソーマンの世界に孤児として転生した。歳は大体十代、正確に言うと中学一年ぐらい、12歳ぐらいといったところか。

 

で、この孤児院は三鷹アサがいて、まだ件の猫、クラムボンは死んでいなかったので先に寮長を消した。

 

というか原作読んだときに寮長が気に食わなかった。自分が正しいことと主観的に思い込んでる事を嘘をついてまでやろうとするなんて、疚しいから隠して殺したんだろってことだから。それって貴方のエゴですよね?

 

しっかし俺もやりすぎると死後身体を乗っ取られた某元特級呪術師の猿共皆殺し計画という具合にエゴが暴走しかねない。

そうなると俺は狩る側から狩られる側になっていまう。

 

だが寮長を殺したという事実は変わらないし後悔もしてないから大丈夫だな。(適当)

 

俺自身について話すと、殺す時寮長が見た通り俺は人間でも悪魔でもない存在、所謂武器人間になっている。

 

どうやら種類は斧の悪魔で、ざっくり説明すると変身すると両手が斧になるからそれで闘うということらしい。ここは実際に変身するところを見る方が早い。

 

そしてせっかくこの世界に来た暁には登場人物達とも会ってみたいとは思うが…

 

「でも皆死んじまうんだよなぁ…」

 

そう、ご存知の通り原作では主要キャラがバンバン死にまくる。

姫野先輩は登場から次の巻で直ぐに死んでしまうし、第一部の後半ではアキやパワー、レゼなども敵も味方揃いに揃って死にまくる。ましてやそこら辺に出てくるモブや一般市民などもさも当たり前かのように死ぬまさに阿鼻叫喚の地獄絵図。

 

まあ殆どマキマの所為なのだが。

 

「とすると、やっぱり全員生存かな」

 

流石に全人類を救済するみたいなそんなキリストじみた事は到底不可能だと考えても、原作の登場人物全員生存でデンレゼを達成するというのを目標にしたい。

 

「ただし生姜焼き、テメェは駄目だ」

 

そうするにはマキマを倒さないといけない。

つまり戦闘と登場人物との鍛錬鍛錬鍛錬鍛錬鍛錬交流交流鍛錬鍛錬鍛錬交流鍛錬鍛錬鍛錬鍛錬鍛錬鍛錬交流鍛錬鍛錬鍛錬鍛錬鍛錬鍛錬鍛錬鍛錬鍛錬交流鍛錬交流鍛錬交流鍛錬鍛錬をすることになる。

 

何という果てしない道のりか。

 

俺の年齢が推定12歳だとすると今は原作開始の4年前。

 

既に運命の歯車は動き出している。

 

◆◇◆◇

 

私がクラムボンを膝の上で撫でていると、目の前にハナミチが立っていた。

 

「アサ、話したい事がある」

「…何?」

 

ハナミチがいつもの様に私の隣に座った。

彼は大抵の場合微笑しているとかで何らかの感情を顔に表している。

 

だが、今回は違った。

 

あたかも明日地球に隕石が落ちてきて、長年付き合ってきた親友との永遠の別れを惜しむかの様な表情が顔に微かだけれども、表れていた。

 

「突然だが、俺はここを抜け出す」

「…え?抜け出すって」

「文字通り抜け出すんだ、俺にはしなければならない事…いや、どうしてもやりたいことがあるからな。別に君を嫌ってるとかじゃない」

「待って、待って…それってどういう…」

 

ハナミチとは会ってまだ1週間ぐらいしか経っていない。

しかし、それでもアサは彼と会えなくなるかもしれないということに強い抵抗があった。彼とアサは、何か共通する部分があった。

 

何より、彼はアサにとっての、最初の友達なのだ。

 

「どうして…というか冗談でしょ。抜け出すっていうことは里親とかそういうのじゃなくて勝手にいなくなるってことでここにいるみんなは身寄りがないからここに来ているわけで…」

「いや、悪いが本気なんだ」

 

彼の顔に浮かび上がったどこか重苦しい表情とその真っ直ぐとした瞳を見ると、どうしても冗談には思えなかった。

 

「せっかく親しくなれたのに、出会って数日で本当に申し訳ない」

「どうして…出ていくの」

「…悪いが理由は言えない」

「…」

 

自分の頬をつねってみた。痛かった。

 

「…だが、もう君と永遠に会えなくなるってことじゃない。けどほら、たらーん」

 

ハナミチが右手の拳から何かを差し出してきた。

 

…鉄の…破片?

 

「贈り物だ。受け取ってくれ」

 

よく見ると破片の一部に太い糸が通っていて、ネックレスの様になっている。

 

「…永遠じゃないって、じゃあいつ会えるの」

「分からない。だけどそう遠くない未来にまた会えると思うよ」

「じ、じゃあ約束しよう、絶対にいつかまた会うこと!」

 

曇った表情に、隙間から光が差した。

 

「ああ、約束だ」

 

◆◇◆◇

 

孤児院を抜け出すのは造作も無かった。

 

基本的に子供が逃げ出すことを想定していないのか、刑務所の様な柵が無く、窓から外へ出ることであっさりと脱走できてしまった。

何というザル警備。

 

なぜアサと別れたかというと理由は二つ。

一つ、孤児院にいたらデビルハンターの仕事なんて到底つけないこと。日中に居なくて夜にも居ないというのはどういうことかと疑われるし、デビルハンター自体が基本的にパトロール有りきの職業。それ以外が依頼なので場合によっては脱走しないと悪魔に遭遇できない可能性が大。なので抜け出したほうが効率は良い。

二つ、原作ではアサは戦争の悪魔と契約を結ぶことで一応死なない程度には強くなっているが今の段階だと戦争の悪魔がアサと契約しようとしているかどうかすら分からないから、万が一アサが巻き込まれて死ぬなどしてしまったら元も子もないということ。

 

今は、そこら辺の書店で買ったリクルートブックという就職の為の分厚い冊子から応募した民間のデビルハンターとして街を巡回している。

 

幸いなことにチェンソーマンの世界では悪魔もデビルハンターも一般に認知されていて何かオカルトじみたおっかない職業だという認識がない。

 

これのおかげでデビルハンターの仕事を見つけるのも簡単だった。

 

今就いている所では給料は結果制で倒した悪魔や魔人の強さに応じて報酬が貰えるという形式だ。

1話を見る限りトマトの悪魔という、名前だけ聞くとふざけたような悪魔でも倒せば大体10万位は出るらしい。もっとも、それは借金やら手数料だか税金で抜かれない場合の話だが。

 

「おっと、噂をすれば」

 

偶々通りかかった路地裏に明らかに異様な光景が広がっていた。

 

両側の建物どころかアスファルトの地面に夥しい程の蔓が巻き付き、見渡す限りが緑一色になっていた。 

その壁の間には丈が2,3メートル程の楕円形に近い蔓の集合体が左右の建物で自身を支えながら空中に鎮座していて、その隙間からは幾つかの赤い目が鋭くこちらを見つめていた。

 

見た目通り、蔓の悪魔だかそんな具合だろう。

 

自身の腕を真っ直ぐと伸ばしたまま、両手をくっつける。

 

そのまま後頭部まで動かし、一気に振り下ろす。

 

両手から鋭く、巨大な斧が肉を破って突き出した。

 

「さて、デビュー戦だな」

 

地面を蹴り壁を走り素早く本体らしい集合体に近づく。

相手も黙って見ている気はないようで貼り付けておいた蔓を巻き付け拘束しようとした様子だがあっさりと斬り裂くことができた。

しかし本体が蔦を弾丸の様に放ってきた。

流石に武器人間になってるとはいえ速度が速い。

 

「うげっ」

 

何本かがそれぞれ右肩と腹を貫通し、腕の動きが封じられた。

腹の風穴から血が滴り落ちる。

 

これで手も足も出ないと思っただろう

 

だがしかし

 

「まだ変身のトリガーはあるんだよなあ!」

 

武器人間人間には変身のトリガーがある。

そのトリガーを作動させることで変身し、また自身に怪我を負うか死んでしまった際に再生、復活、或いは変身が解けてしまったときに再び武器人間に変身するできる。

胸に付いたスターターロープを引く。首についたピンを抜く。手を鞘の様に抜く。指を鳴らす、奥歯のスイッチを押す、脊髄から槍を抜くなど。

 

通常は一つしかない。

 

しかしこちらの場合はトリガーが二つある。

 

一つ目は先程したように両手を合わせ振り下ろす動作。実際は振り下ろす動作は短縮出来るが気分によってやる。

 

二つ目は腕を捻る動作。

 

拘束されたままの右腕を無理矢理捻ると、頭部に斧が僅かながらも飛び出してきた。

 

「いってえ!」

 

頭で縛っている蔓に切り込みを入れ、そこから千切りぬけだす。

壁の蔓を斬り落とし本体を支える軸を破壊してバランスが崩れた隙に飛びかかり踵落としで落とす。

予想よりも無抵抗に落ちてくれたので背後から斧を交互に叩き込んで身体を抉る。攻撃の途中何本か地面に衝突したときには斧と落下の二重の衝撃で文字通りぶっ潰す。

 

魔人は再生はしないが武器人間同様悪魔は心臓を破壊しない限り再生すると聞いたので一通り思いつく攻撃をしてみたが以外に効いた上に小一時間は再生しなさそうである。

 

最後に心臓があるであろう中心部に刃を突き立て隙間を魚のように切り開き、心臓を貪り食ってゲームセット。

 

「…まあまあいけたな」

 

最初に自分が斧の悪魔の武器人間と知ったときは弱いのかもしれないと思い込んでしまったが、そもそもデンジがチェンソーの武器人間、対人の殺傷能力は十分にあれども本来は木を切る道具である。寧ろ能力を鍛えれば終盤のデンジ並みに強くなれるかもしれない。

 

今回は無事生きて悪魔を倒せたが、現在は変身してもまだ両腕しか変わっていなかった。つまりデンジや他の武器人間の様に頭部が変形していないという事だ。

 

おまけに不死身とはいえ傷も負ってしまったし危うい所もあった。

恐らくまだ12歳という年齢の為血液の量が十分に無く、両腕のみの変身となってしまっているのだろう。

血は悪魔にとって力の源。

 

再生どころか変身も満足に出来ないようでは心許ない。

 

仮に原作の主要人物を全員生存させ、デンジとレゼを結びつけるとすれば、いずれはマキマと闘う運命にある。

 

「どうにか強くなるしかないな。」

 

兎に角倒した悪魔がこれぐらいの強さなら報酬は10,20万ぐらいは貰えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今気づいたけど斧の悪魔とチェンソーの悪魔でチェンソーマン林業編作れる。作らないけど
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