転生したらフィジギフ持ちだったので、気ままに第七王子を護ります 作:とつげきぃぃぃ
「この程度、か…。」
放たれてくるのは火に水、風や土などのさまざまな種類の魔術たち。
それらを人の領域から超越した動体視力で完全に見切り、最短最小の動きで回避する。
「あまりにも脆弱、惰弱、貧弱。ゆえに────僕には届かない。」
前世でかの大人気ゲームから知識に入れ、今生にて実戦で使えるように鍛え上げたとある武術。
その中にある技の一つを使い、流れるようにみぞおちへと、捻りを加えた拳を叩き込む。
前世の言葉で表現するのなら、マジカル八極拳と呼ばれるような戦闘方法である。
性格以外は基本的に普通ろ人間の癖に、戦闘能力が完全に人間をやめてる本家マジカル八極拳の使い手の麻婆神父さんとほとんど遜色ないであろう一撃。
いや実際のところは、そこまでの威力は込めてないけどね?
あくまで動きを近づけているというだけのこと。
マジカル八極拳を人間相手に使いでもしちゃったら、即死だろうしさ。
今だってもし僕が本気で拳を放ってたら、心臓グチャリであっという間にあの世逝きだったよ?
まぁそれより、さっさと話をまとめてしまおう。
僕…エーティア・ルアネは天与呪縛のフィジカルギフテッド持ちなのである。
ちなみに転生した世界は呪術廻戦じゃなくて、よく知らない異世界でした。
たぶんナーロッパ系統の世界だと思います、はい。
ナーロッパだと思う根拠?
そんなのはない!!
…というわけじゃあなくて、強いて言うのなら剣と魔術の存在する世界だからかなぁ?
まぁ僕は生まれ落ちた時から、魔力からの完全脱却を果たしてしまっているので、魔術は絶対に使えないわけだけど。
アハハハッ……いやなんでやねん。
ナーロッパに転生させるんだったら、 魔術くらいは使わせてほしかった。
てか使わせろや、僕を転生させたアホ神。
ぶっちゃけ、魔術を使えるようになるより、今のフィジギフおじさん並みの身体能力を持っていたほうが強くいられるだろうけど…。
それでもさぁ!!
ロマンっていうのがあるじゃん?
現代人が異世界に転生or転移したのなら、誰しも魔術を使ってみたいんだよ!!
それにさ、魔力を少したりとも持ってないってみんなに知られた日なんて、両親からめちゃくちゃに謝られたんだぞ?
母さんは号泣するし、父さんはすごく複雑そうな顔をするし、もうなんというかさ……くそみたいに気まずかったよ。
今でも少なからず気にしてるみたいだし。
もし神を名乗る存在と出会ったら、自称でもそうじゃなくても土下座させる。
父さんと母さんにあんな思いをさせたのだから、当然のことだろう?
「それで…まだやりますか?僕からしたら、これ以上は無駄な時間にしかならないと思うんですけど。」
なんかいきなり喧嘩を売ってきた魔術師くんを見下ろしながら、僕はそんなことを考える。
ほんとに今さらなんだけど、僕はどうして喧嘩を売られたのだろう?
残念ながら、僕には思い当たる節が少しもない。
だって喧嘩を売ってきたのは、今までに一度も話したことのないヤツだから。
「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、こんなの嘘だッッッ!!この俺が、魔力も持たない能無しのガキなんかに負けるはずがねぇ!!」
あぁ、なんだ…そういうことだったのか。
最近は一人もそういうのが絡んでこなかったから、ナチュラルに選択肢から取り除いちゃってたよ。
「僕が魔力とかそういうのを持たないから、喧嘩を売ってきたのですね。」
あまりにもしょうもない理由。
思わず笑いが漏れ出てしまいそうだ。
あっ、抑えられなかったよ。
「ふふっ…。貴方はなんと─────無知で愚鈍で醜悪なのでしょうか。」
あまりにもどうしようもなさすぎて、呆れることもできないや。
まぁ滑稽ではあってくれたから、笑うことはできるんだけど。
「まぁ良いです。これが初めての体験ならまだしも、もう何度もやられたようなことですので、もはや慣れてしまいましたし。それに…貴方みたいな人にいちいち教えを刻んでいたら、どう足掻いても終わりがありません。」
いちいち教育を施すのは、とてもめんどくさいのだ。
こういうヤツを性根から変えるには、数十分はかかってしまうだろう。
「ですので…次に手を出してきたら、この足の位置が貴方の頭の上にズレますので。」
天与呪縛の影響によって人間のレベルを大きく逸脱している脚力にものを言わせて、地に伏せている彼の頭のすぐ近くへと足の裏を叩きつける。
衝撃波で空気がビリビリと震えた。
地面には僕の足が叩きつけられたところを中心にして、大きく亀裂が入っている。
そして、僕に喧嘩を売ってきた魔術師は白目を剥いて失神していた。
ちょっとばかり、刺激が強すぎたかな?
「んー…そろそろ別の国に行きましょうかね?」
なんだかこの国にいるのも飽きてしまったし。
そうなると…どこがいいだろうか?
「サルーム王国にでも行ってみましょうか。」
近場でまだ行ったことのない国。
そういえば母方の祖父母があっちで生活してるっていうのを聞いた覚えがある。
「うん。次に向かうところは、サルーム王国で決まりですね。」
思い立ったが吉日という前世のことわざを再現するかのように、僕はるんるんと旅立つために必要な荷物を纏めに、街の宿屋へと戻っていくのであった。