転生したらフィジギフ持ちだったので、気ままに第七王子を護ります 作:とつげきぃぃぃ
「はぁ…神隠しのノロワレですか。分からないことだらけですけど、すごくめんどくさい体質ってことくらいは分かりましたよ。」
「いきなりあんな殺気を向けられた時はすごくびっくりしたけど、分かってくれたのなら良かったよ。」
サルーム王国へと向かっていた道中で出会った真っ黒な青年⋯ジェイドくんは朗らかな笑みを浮かべながら、そう言った。
しかし⋯瞬間転移能力を持ってるノロワレねぇ。
そもそもの話、ノロワレってなんだったっけ?
魔術とかそういうのは絶対に使えない体質だったから、それに関連するものも覚えてないんだよなぁ。
絶対に使うことができないことを覚えようと努力したとしても、なんにも楽しくないだろう?
「それにしても、さっきのエーティアはすごかったね!!気を使ってるようには見えなかったし、もしかしてなにかの魔術で筋力とかを強くしたのかい?」
「いえ、あれは素の身体能力です。」
「えぇ!?あれで魔術もなにも使ってないの!?」
「そうですよ。魔力とかそういうのをなにも持たない代わりに、身体能力だけがとても高くなるんです。」
「へー…キミもなかなか苦労の多そうな体質を持ってるんだねぇ。」
「ジェイドくんほどではありませんよ。」
サルーム王国へと向かっている道中にて、神隠しのノロワレ持ち…ジェイドが仲間になった!
○○○○○
「エーティアとは、ここらへんでお別れかな。」
「はい?王都まではもう少し距離がありますけど…大丈夫なんですか?」
「あぁ、大丈夫さ。ここから王都にたどり着けないだなんてことは、瞬間転移が発動しない限りはあり得ないからね。」
ジェイドくんにもなにか事情があるみたいだし、しぶしぶながらもここは従っておくとしよう。
「それ、瞬間転移が発動するフラグにしか聞こえませんよ?」
「アハハハ、そうかい?まっ、たぶん大丈夫さ。」
「それならいいんですけど…。まぁとにかく、ジェイドくんとはここでお別れということですね。たった数日一緒にいたくらいでしたけど、貴方との旅は楽しかったですよ。」
どこか悲しそうな顔をしているジェイドくん。
ほんの少し寝食をともにしたくらいなのだから、そんな顔をする必要なんてないというのに。
まったく…なんとお人好しで、人たらしなヤツなのだろうか。
「今度会った時には、貴方が楽しそうに話していた仲間たちに会わせてください。それじゃあ…またいつか。」
「…っ!!うん、また会おう!!」
一週間にも満たぬ彼との旅はこうして、実に呆気なく幕を閉じたのである。
王都よ、フィジギフお兄さんがもう少しで着くから覚悟してろよ。
○○○○○
「ここで…ほんとにあってるよね?」
祖父母が暮らしているらしい家だと思われる、なかなかに大きな豪邸。
一応はアポイントメントを取って、場所も確認してあるのだが…この大きさの家を見てしまうと、尋ねるのになんだか臆してしまうね。
「失礼。この家になにか御用件でしょうか?」
どこからか現れて、僕に話しかけてきた執事のような格好をしている男性。
「えっとですね…。初めて祖父母を訪ねに来たんですけど、ほんとに家がここであっているのか分からなくなってしまって。」
「なるほど…。ぶしつけながら、お名前をお伺いしても?」
「エーティア・ルアネと申します。」
「ああ!!旦那様からお話は聞いております。エーティア様が訪れたのなら、速やかに旦那様のもとへ案内するように申し使っていますので…どうぞこちらへ。」
どうやら家の位置は間違っていなかったらしい。
ところでお母様…貴女の実家がこんな裕福だったなんて、僕は一度足りとも聞いた覚えがないんですけど。
洗練された動きでお辞儀をする執事さん。
彼の後ろを歩きながら、僕は応接間へと案内された。
「では旦那様がお越しになるまで、ごゆっくりお過ごしください。」
すご、この執事さんすご。
シゴデキな感じがするし、漫画とかに出てくるような完璧系スーパー執事なんだろうね。
憧れますわぁ…。
「おぉ!!久しいの、ティア!!元気にしておったか?」
「お久しぶりです、お祖父様。」
「そんな堅苦しいあいさつはしなくてよいぞ。以前会った時みたいに、わしのことはおじいちゃんと呼んでくれい。」
いや今までに一度もおじいちゃんと呼んだことはないと思うんだが。
この外面の口調も、生まれた時から使っているせいで、もはや取ることのできぬ癖となってるし。
「貴方はアホですか。ティアは昔から丁寧な口調でしゃべっていた賢い子ですよ?今さらそれを崩せと言われても、難しいに決まってるでしょう。それと以前に会った時も、貴方はおじいちゃんと呼ばれていません。存在しない記憶を生み出さないでください。」
きびきびとした口調でお祖父様…ローディス・ルアネにそう告げるのは、彼にバカを見るような目を向けている祖母。
「お祖母様もお久しぶりです。」
「えぇえぇ。久しぶりね、ティア。半年も見ない間にすごく身長が伸びたのねぇ。ティアの成長が逞しくて、私は嬉しいわ。」
淑女らしい笑い方をするお祖母様…クアラ・ルアネ。
今さらすぎることだけど、なんだか仕草が貴族令嬢っぽいよねぇ。
お祖母様がどこかの貴族の令嬢だと仮定すれば、この家が裕福なのも納得できる。
ほんとに今さらな気付きだったねぇ…。
「ところでティアよ。久しぶりに会えたのだから、わしらと買い物に行かんか?」
夢を追いかける少年にも負けぬほどに瞳をキラキラと輝かせて、お祖父様はそう告げる。
「この人、今日のために若い子の好きなものとかを調べてたから、付き合ってもらえると私もローディも嬉しいわ。」
お祖母様が小声で、僕に耳打ちでそんなことを伝えてきた。
お祖父様って孫との再会にそんな張り切るタイプの人だったっけ?
それはともかく、んー…少しだけ身体が疲れちゃってるけど、まぁいっか。
こういう時に動けないのは、フィジギフ持ちの名折れというものだろう。
それに…お祖父様もお祖母様も楽しそうにしてるし、付き合ってあげるのが親孝行者ならぬ祖父母孝行者だよね。
と、いうわけで…買い物にレッツゴー。