鬼姫と勇者姫、東京にて。~ヤマトとアンルシアの異世界珍道中~   作:あかさたなつき

4 / 7
第四話 ヤマトとアンルシア、現代通貨と邂逅す

 「ん?」

 

 手に何かが触れた。

 

「なんだこれ?」

 

 ヤマトが取り出したのは、小さな財布だった。

 

「なんか、いつもと感触が違う」

 

 ぱかっ。

 

「…………」

 

 ヤマトの動きが止まった。

 

「どうしたの?」

 

「……なんだこれ?」

 

 中に入っていたのは、見覚えのない紙幣と硬貨。

 

 当然、ワノ国で使われている金ではない。

 

 ヤマトは一枚取り出す。

 

「…………一万円?」

 

「え?」

 

「これ、一万円って書いてある」

 

 アンルシアが目を丸くする。そして自分の財布を探り出す。そして開けると

 

 

「私の財布にも同じのが入ってる……ん?日本銀行券?」

 

「ニホン?」

 

 ヤマトが反応する。

 

「この国の名前か?」

 

「可能性は高そうね」

 

 アンルシアは近くにいた青年へ尋ねた。

 

「これ、この世界のお金?」

 

「え?そうですけど……一万円札ですね」

 

「やっぱり!」

 

「持ってたんですか?」

 

「さっき見つけた!」

 

「さっき?」

 

 青年が首を傾げる。

 

 ヤマトは財布の中身を全部確認した。

 

「えーっと……」

 

 一万円札が二枚。

 

 千円札が三枚。

 

 それに何枚かの硬貨。

 

「二万三千円ある!」

 

「おお!」

 

 周囲からなぜか拍手が起きた。

 

「ちゃんと日本円持ってるじゃん!」

 

「異世界転移設定なのに現金だけ日本仕様なの面白いな!」

 

「設定じゃないんだけどな……」

 

 ヤマトが小声で呟く。

 

 そして、アンルシアも丁寧に数える。

 

「一万……二万……三万……三万二千円ね」

 

「僕より多い!」

 

 ヤマトが即座に反応する。

 

「そこ?」

 

「九千円も違う!」

 

「張り合うところじゃないでしょう」

 

 アンルシアは呆れながらも笑う。

 

ともあれ———金はある。先ほどまで最大の問題だった「この世界で食事ができない」という危機は、あっさり解消された。

 

「よし!これで飯が食える!」

 

「結局、最初に出てくるのはそれなのね」

 

「腹減ってるんだからしょうがないだろ!それに、これだけ文明が進歩した世界だ!食べ物だって美味しいに決まってる!」

 

「確かにそのとおりね!いいわ、それじゃあ食べに行きましょう!」

 

ここでヤマトは道路の向かい側のこじんまりとした建物を見る。

 

「あそこ、食事処って書いてある!そこで食べよう!」

 

「いいわよ」

 

 二人はさっそく食事処に向かい、暖簾をぐぐって中に入っていく。

 

 「いらっしゃいませー!」

 

 店員の声が響いた。

 

 当然、店内にいた客たちの視線が二人へ集中する。

 

「……あれ?」

 

「さっき駅前にいたコスプレの子たちじゃない?」

 

「ああ、あの二人!」

 

 すでに顔を知られていた。

 

 ヤマトは気にすることもなく、アンルシアと共に空いていた席へ座る。

 

「どうぞ」

 

 店員からメニューを渡された。

 

「おお!」

 

 アンルシアは店内を見渡す。

 

「木を多く使った、落ち着いた雰囲気の店ね」

 

 ヤマトは楽しそうに開く。しかし料理メニューを見た瞬間、驚きの声を上げる。

 

「え!?……」

 

「どうしたの?」

 

 ヤマトが一つずつ料理名を読む。

 

「うどん……そば……釜めし……川魚の塩焼き……ワノ国にある料理ばかりだ……」

 

 

「あら……」

 

 アンルシアもメニューを眺める。

 

「私も、エルトナの首都の料理店で見たことあるメニューばかりだわ……」

 

 ヤマトは嬉しそうに笑う。

 

「異世界なのに、食べ物は意外と変わらないんだな!」

 

「世界が違っても、似た文化が生まれることはあるのかもしれないわね」

 

「面白いなあ!」

 

 二人はさらにメニューを眺める。

 

 すると————

 

「…………!」

 

 ヤマトは“ある食べ物”を目にした瞬間、衝撃が走った。

 

「これは――――」

 

「なに?」

 

 

「『おでん』じゃないか!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。