鬼姫と勇者姫、東京にて。~ヤマトとアンルシアの異世界珍道中~   作:あかさたなつき

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第七話 ヤマトとアンルシア、記念写真と邂逅す

 ヤマトとアンルシアは満足そうに席を立った。

 

 二人は会計を済ませる。

 

 先ほど手に入れたばかりの日本円。まだこの世界の貨幣価値には慣れていない。

 

 だが、店員に言われた金額をそのまま支払い、釣り銭を受け取ることはできた。

 

「これが五百円で……こっちが百円……」

 

 ヤマトが硬貨を手のひらに並べる。

 

「種類が多いな。“ベリー”とはずいぶん違うな……」

 

「ベリー?果物のこと?」

 

「ああ、ぼくがいた世界での通貨の名称だよ。君の世界ではどうなんだい?」

 

「“ゴールド”よ」

 

「お金の名称が“ゴールド”……直球だね」

 

「言われてみるとそうね!」

 

 そして二人が出口へ向かう。

 

 その時————

 

「あの……」

 

「ん?」

 

「?」

 

 店員の若い女性が、少し遠慮がちに声をかけてきた。

 

 先ほど二人の注文を取っていた女性だ。

 

「ちょっとお願いがあるんですけど……」

 

「お願い?」

 

 ヤマトが振り返る。

 

「なんでしょう?」

 

 アンルシアも足を止める。

 

 女性店員は少し恥ずかしそうにスマートフォンを持ち上げた。

 

「お二人の写真、撮らせてもらってもいいですか?……お二人、凄く絵になるので」

 

「絵になる?」

 

「見栄えがする、という意味かしら?」

 

「そうです、そうです!」

 

 店員は何度も頷いた。

 

「衣装もすごく素敵だし、お二人とも凄く綺麗で……」

 

「ありがとう!」

 

 ヤマトは素直に喜ぶ。

 

「それで、もしよければ写真を撮って、お店に飾らせてもらえたらなって」

 

「店に飾る……」

 

「はい!」

 

 店員は壁の一角を指差した。

 

 そこには観光客や常連客らしい人々の写真が何枚か飾られていた。

 

「この店に来てくださったお客さんの写真を、たまに飾ってるんです」

 

「へえ!」

 

 ヤマトが楽しそうに写真を見る。

 

「面白いな!」

 

「嫌であれば断っても構いませんが……」

 

「とんでもないわ!むしろ私からお願いしたいくらいよ!」

 

「僕もだ、ぜひ撮ってくれ!」

 

 即答だった。

 

「ありがとうございます!」

 

 店員の表情がぱっと明るくなる。

 

「じゃあ、そこに並んでもらえますか?」

 

 二人は店内の一角へ移動した。

 

 木造の壁。その横には「奥多摩」の文字が入った小さな暖簾。

 

 背景としてはなかなか風情がある。

 

「もう少し近くにお願いします!」

 

「こう?」

 

 ヤマトがアンルシアの隣へ寄る。両者、自然に微笑む。

 

「撮りますよー!」

 

 店員がスマートフォンを構える。

 

「はい、チーズ!」

 

 カシャ。

 

「…………!」

 

 店員が画面を見る。

 

「すご……」

 

「どうしたの?」

 

 アンルシアが尋ねる。

 

「いや、本当にめちゃくちゃ絵になりますね……」

 

「見せて!」

 

 ヤマトがすぐ寄ってくる。

 

 二人が画面を覗く。

 

「おお!」

 

 ヤマトが声を上げた。

 

 写真の中には。

 

 白髪に赤い角 百八十センチほどの長身で、豪快な笑顔を浮かべるヤマト。

 

 その隣には。

 

 金髪碧眼 白い衣装を身にまとい、穏やかに微笑むアンルシア。

 

 まるで。

 

 最初から二人一組のキャラクターとしてデザインされたかのように、妙に収まりが良かった。

 

「僕たち、こうして見ると全然似てないな!声はあんなに似てるのに……」

 

「本当に不思議ね」

 

 店員も笑う。

 

「姉妹みたいに声そっくりですもんね」

 

「今日会ったばかりだけどな!」

 

「え?」

 

「私たち、今日初めて会ったの」

 

「…………」

 

 店員が一瞬固まる。

 

「そこまで設定あるんですね」

 

「…………」

 

 ヤマトとアンルシアが顔を見合わせる。

 

「また設定って言われた」

 

「もう慣れましょう」

 

「そうだな!」

 

 店員が笑う。

 

「あと、もう一枚いいですか?」

 

「いいぞ!」

 

「今度はちょっと格好いい感じで!」

 

「格好いい感じ?」

 

 ヤマトは考えた末。

 

 金棒を肩に担いだ。

 

 一方。

 

 アンルシアは自然な動作で剣の柄へ手を添える。

 

「…………」

 

 店員の目が輝く。

 

「それです!」

 

 カシャ!

 

「めっちゃ格好いい!」

 

 周囲の客たちも見ていた。

 

「映画の宣材写真みたいだな」

 

「二人とも衣装似合いすぎ」

 

「金髪の外国人の女の子、RPGのヒロインみたいだなほんと……」

 

「角の女の人も迫力あるなあ」

 

 ヤマトが笑う。

 

「僕、やっぱりこの“写真”ってやつ好きだな!」

 

「さっきスマホ欲しいって言ってたものね」

 

「ますます欲しくなった!」

 

「値段を調べてからにしましょうね」

 

 撮影を終える。

 

「ありがとうございました!」

 

 店員が頭を下げる。

 

「写真、今度プリントして飾っておきますね!」

 

「また来たら見られる?」

 

「もちろん!」

 

「じゃあまた来よう!」

 

「あなた、もう再訪する気なのね」

 

「おでんも美味かったし!」

 

「結局そこなのね……」

 

 アンルシアは笑った。

 

 そして二人はようやく店を出た————

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