朝から空は曇っていた。
厚い雲が空一面を覆い、いつもなら木々の間から差し込んでくる朝日も、今日はほとんど見えない。森の中には薄暗い灰色の光が満ちていた。風が吹くたびに木々の葉がざわざわと揺れ、どこか肌寒さすら感じる。
「今日はお天気が悪いですね……」
リオンは空を見上げながら、井戸へ木桶を下ろした。
昨日まで続いていた晴天が嘘のようだった。とはいえ、雨が降っているわけではない。水汲みを終えたら朝食の準備を手伝い、その後は洗濯をして――。
いつもと変わらない一日になるはずだった。
「よいしょ……」
水をいっぱいに汲んだ桶を引き上げる。
数日前に比べれば、この作業にも随分慣れた。最初は重く感じていた桶も、今ではそれほど苦にならない。リオンは汲み上げた水を地面へ置いた。
「もう一回ですね」
再び井戸へ桶を下ろそうとする。
その時だった。
「……?」
視界の端に、白い光が映った。
リオンは手を止める。庭の奥にある木々に囲まれた場所に建つ、小さな石造りの祠。そこから淡い光が漏れていた。
「創造主様?」
先日と同じだった。隣人への道が開かれた時にも、祠はこうして光を放っていた。
また何か、新しいお告げがあるのだろうか。そう思ったリオンだったが、なぜか胸の奥に小さな不安が生まれた。
前回とは違う。何が違うのかは分からない。ただ、曇り空の下で光る祠が、妙に不気味に見えた。
「シラキさん!」
リオンは家へ向かって声を上げた。
「シラキさん、来てください!」
しばらくすると、家の扉が開いた。
「どうした?」
シラキが姿を現す。
「祠がまた光っています」
「祠?」
シラキの表情がわずかに変わった。二人は庭の奥へ向かう。
祠へ近づくにつれ、石から放たれる光がはっきりと見えるようになった。
「また道が開いたのか?」
「分かりません」
リオンは祠の前へ跪いた。
「ですが、創造主様からのお告げだと思います」
「そうか」
シラキも隣へ立つ。二人で祠を見つめる。やがて淡い光が強くなり、石の表面へ文字が浮かび始めた。
『地獄より亡者が抜け出した』
「……え?」
リオンは思わず声を漏らした。
何度読み返しても、そこに浮かんでいる文字は変わらない。
地獄の亡者。それが地獄から抜け出した。
「亡者……ですか?」
「そう書いてあるな」
シラキの声は落ち着いていた。だが、その目はすでに先ほどまでとは違っている。
「でも……」
リオンは祠へ視線を戻す。
「ここは、安全な場所ではなかったのですか?」
「ああ」
「創造主様は、子どもたちが安心して暮らせる場所だとおっしゃっていました」
親に恵まれなかった子ども。家族を知らずに死んだ子ども。希望も愛情も知らないまま、生涯を終えた子ども。そんな魂たちが安らかに暮らし、家族の愛を知るために作られた世界。それが、この箱庭だったはずだ。
「それなのに、地獄から亡者が抜け出してくるなんて……」
リオンには理解できなかった。ここは創造主が作った世界だ。創造主ほどの存在ならば、亡者が抜け出すことなど簡単に防げるのではないだろうか。
いや。そもそも――。
「創造主様は、ご存じだったのでしょうか」
「何をだ?」
「亡者が抜け出すことをです」
シラキは少し考える。
「知ってただろうな」
「……やはり、そう思いますか?」
「ああ」
即答だった。
「あの神が知らなかったとは思えん」
「では、どうして……」
そこまで言って、リオンは口を閉じる。創造主なら防げたはずだ。それなのに、亡者は地獄から抜け出した。
「分からん」
シラキが言う。
「神の考えてることなんて、俺には分からんよ」
相変わらず、創造主に対して随分と遠慮のない物言いだった。神官だったリオンとしては少し注意したくなる。だが、今はそれどころではなかった。
「ただ」
シラキが祠を見る。
「本当にどうにもならない相手なら、こんな警告だけで済ませるとも思えん」
「……え?」
「俺たちで対処できるってことじゃないか」
リオンは目を瞬いた。
「私たちが、ですか?」
「ああ」
「でも、相手は地獄から抜け出してきた亡者ですよ?」
「だから?」
「だからって……」
あまりにも平然とした返事に、リオンは困ってしまう。シラキは祠に浮かんだ文字を見つめながら続けた。
「創造主が何を考えてるのかは知らん。俺たちを試してるのかもしれんし、自分で何でも片付ける気がないのかもしれん」
「……」
「だが、少なくとも警告はしてくれた」
シラキの表情が引き締まる。
「だったら、備えろってことだろ」
その言葉に、リオンは何も返せなかった。自分にはまだ、創造主の意図が分からない。だが一つだけ、確かなことがある。
「……ルナ」
家の中にいる少女の姿が頭に浮かんだ。
先日、初めて友達ができた。カークと楽しそうに笑い合っていた。少しずつ、この箱庭での生活を楽しめるようになってきた。その子を危険な目に遭わせるわけにはいかない。
「シラキさん」
「ああ」
「ルナを家から出さない方がいいですね」
「そうだな」
シラキは頷いた。
「ノアたちにも知らせた方がいい」
「はい。ですが、まずは――」
「静かに」
突然、シラキが低い声で言った。
「え?」
「何かいる」
その一言で、リオンの身体が強張る。シラキの視線は森へ向けられていた。リオンもそちらを見る。
薄暗い森の中。風が木々を揺らしている。ざわざわと葉の擦れ合う音が響く。それ以外には何も聞こえない。
「何も……」
「よく聞け」
シラキに言われ、リオンは口を閉じた。
耳を澄ませる。風の音。鳥の声。木々が軋む音。その中に――何かが聞こえた。
森の奥からだ。何かが草木を掻き分けている。ゆっくりと。しかし確実に、こちらへ近づいてきていた。
「動物……でしょうか」
「違う」
シラキが即答した。
「歩いてる。二足歩行だ」
リオンの背筋に冷たいものが走った。
昨日までなら、森から誰かが近づいてきたとしても、それほど恐ろしく感じなかっただろう。ノアやオルガかもしれない。カークがルナを遊びに誘いに来たのかもしれない。
だが今は違う。祠には、たった今こう記された。
『地獄より亡者が抜け出した』
音が近づく。
「……ルナ」
無意識に、その名前が口から漏れた。
「家に入れ」
シラキが言った。
「シラキさんは?」
「武器を取ってくる」
昨日までのリオンなら、反射的に止めていたかもしれない。ここは創造主の箱庭なのだから、武器など必要ない。ピクニックへ短機関銃を持っていこうとした時にも、自分はそう言った。
だが――森の奥から、再び音が響く。
「……分かりました」
今日は止めることができなかった。
シラキが家へ向かう。リオンはその背中を見つめてから、もう一度森へ視線を戻した。木々の向こう。薄暗い森の中で、何かが動いた。人影のように見えた。
「……一人?」
さらに奥でも何かが動いている。
リオンは息を呑んだ。人影が増えていく。ゆらゆらと身体を揺らしながら、こちらへ向かって歩いてくる。森を抜けようとしている。
その時、背後から金属同士が触れ合う音がした。振り返るとシラキが戻ってきていた。肩には、見覚えのある短機関銃が掛けられている。腰には拳銃。胸元にはいくつものポーチ。数日前、初めて出会った時と同じ。戦うための姿だった。
「シラキさん……」
リオンは思わず呟いた。
シラキは何も答えない。ただ短機関銃を手に取り、森へ向ける。
「だから武器は必要だと言っただろ」
「……今、それを言いますか?」
「言うなら今だろ」
「もう……」
こんな時だというのに、いつもの調子を見せるシラキ。リオンはほんの少しだけ、肩の力が抜けるのを感じた。
だが、それも一瞬だった。森の向こう。最初の人影が、ゆっくりと木々の間から姿を現そうとしていた。
これまで穏やかだった箱庭へ、初めての脅威が、近づいてきていた。
♢
森の奥から現れたものを見て、シラキは短機関銃を構え直した。
人間――だったものだ。
一体、二体ではない。木々の隙間から、次々と姿を現してくる。そのさらに後ろにもいる。軽く数えただけでも数十の大群だ。
「……随分と多いな」
思わず呟いた。
亡者たちは、どれも酷く痩せ細っていた。骨に皮を張り付けただけのような身体。腕も脚も枯れ枝のように細い。服らしきものを纏っている者もいたが、そのほとんどは朽ち果て、ぼろ布と変わらない。身体のあちこちでは皮膚がただれ、肉ごと剥がれ落ちている。頬は削げ、眼窩は深く窪み、その奥から濁った目がこちらを見つめていた。
死体が歩いている。そうとしか思えない姿だった。
「シラキさん……」
背後からリオンの声が聞こえる。
「下がってろ」
「ですが」
「ルナのところへ行け」
シラキは森から目を離さなかった。
「家から絶対に出すな」
「……分かりました」
リオンの足音が遠ざかっていく。
それを確認してから、シラキは短機関銃の安全装置を外し、初弾を装填した。小さな金属音が響く。
亡者たちはゆっくりと近づいてきていた。一歩。また一歩と。ふらふらと身体を揺らしながら、それでも確実にこちらへ向かってくる。
「……なんで」
声が聞こえた。シラキは眉を寄せる。
先頭を歩いている男だった。唇は半分ほど崩れ落ち、剥き出しになった歯の隙間から掠れた声を漏らしている。
「なんで……お前らだけ……」
その後ろから、別の声が続いた。
「ずるい……」
「俺たちは……地獄なのに……」
「なんで……」
「なんで……」
声が増えていく。老若男女様々な亡者たちが口々に呟いている。
「俺だって……幸せになりたかった……」
「暖かい飯を……食いたかった……」
「家族が……欲しかった……」
「愛されたかった……」
「なんでお前らだけ……」
「ずるい……」
「ずるい……」
「ずるい……」
無数の声が重なっていく。森のざわめきすら飲み込むほどの呪詛となって、シラキへ押し寄せてきた。
「そこを寄越せ……」
「俺たちにも寄越せ……」
「代われ……」
「お前らが地獄へ行け……」
「俺たちがそこで暮らす……」
亡者たちの足が少しずつ速くなる。シラキは黙ってその姿を見ていた。
不思議と、怒りは湧かなかった。むしろ――その気持ちが分かってしまった。
「……そうだな」
小さく呟く。
自分だって、好きであんな世界に生まれたわけではない。地上は汚染され、人間は地下へ追いやられた。薄暗い地下鉄の駅の中。湿った空気に、ろくに手に入らない食料。いつ襲ってくるかも分からない化け物。銃を抱いて眠り、銃声で目を覚ます。昨日まで話していた人間が、次の日には死んでいる。そんな日々だった。
もっとまともな世界で生きてみたかった。朝になれば太陽が昇る。腹が減れば飯を食う。夜になれば、明日も生きていることを疑わずに眠る。そんな当たり前の生活をしてみたかった。
家族を持つことだって。戦争や化け物のことなど考えず、くだらないことで笑うことだって。できることなら――してみたかった。
「俺たちだって幸せになりたかっただけだ!」
一体の亡者が叫んだ。
その声だけは、不思議なほどはっきりと聞こえた。
「なんでお前らだけ!」
「……ああ」
シラキは答えた。
「その気持ちは分かるよ」
亡者たちが近づいてくる。距離は十数メートル。その後ろにも、まだいる。
「俺も、もう少しまともな世界で生きたかった」
短機関銃の銃床を肩へ押し当てる。照準の先に、亡者の姿を捉えた。
「だが」
家の方から物音がした。シラキは一瞬だけ視線を向ける。
窓の向こうからリオンがこちらを見ている。その隣から、小さな銀色の頭が覗いていた。ルナだ。不安そうな金色の瞳が、こちらを見つめている。
それだけで十分だった。シラキは亡者へ視線を戻す。
「この家は、お前たちにはやれない」
「寄越せ……」
「俺たちのものだ……」
「そこに入れろ……!」
「家族を寄越せ……!」
「それはもっと駄目だ」
シラキの指が引き金へ掛かる。
「悪いな」
亡者の一体が走り出した。
「俺にも守るものができたんだ」
引き金を引いた。乾いた銃声が、森に響き渡った。
先頭の亡者の胸から血とも泥ともつかない黒いものが飛び散る。身体が後ろへ弾かれ、そのまま地面へ倒れた。だが、亡者たちは止まらない。
「ずるい!」
「ずるい!」
「殺せ!」
「奪え!」
「俺たちにも寄越せ!」
群れが一斉に走り出した。
「来るなら来い」
シラキは短機関銃を構え直し、引き金を絞った。連続した銃声が響く。先頭の亡者たちが次々と倒れていった。
弱い。撃った瞬間に分かった。生前の世界で戦っていた化け物とは比べものにならない。あの怪物たちは、数発撃ち込んだ程度では止まらないものも珍しくなかった。身体の一部を失ってなお襲いかかってくる。
だが、こいつらは違う。肉体そのものが酷く脆い。弾丸が当たれば肉が裂け、骨が砕ける。足を撃たれれば転倒し、胸を撃ち抜かれれば動かなくなる。
「がああああっ!」
一体が横から飛びかかってくる。シラキは銃口を向け、一発撃つ。頭部が跳ね上がった。そのまま倒れる。続いて二体が襲いかかってくる。短く連射する。二体とも地面へ転がった。
「……弱いな」
思わず口に出た。数だけは多い。だが、それだけだった。戦い慣れている者もほとんどいない。ただ妬みと憎しみに任せ、こちらへ殺到しているだけだ。
「なんで……」
一体が倒れながら手を伸ばす。
「なんで……俺は……」
シラキは一瞬だけそちらを見る。
「幸せに……」
言葉が最後まで続くことはなかった。亡者の身体が崩れ、黒い霧となって消えていく。
「……」
シラキは何も言わなかった。
次の亡者へ銃口を向ける。引き金を引く。倒す。また次。撃つ。倒す。
弾倉が空になった。すぐさま新しい弾倉へ交換する。身体が覚えている。何度繰り返したか分からない動作だった。
銃を構える。狙い、撃ち、殺す。
生きていた頃と、何も変わらない。
やがて銃声が止んだ。
「……」
シラキは短機関銃を構えたまま、森を見つめる。もう動いている亡者はいなかった。地面へ倒れた亡者たちの身体が、一体ずつ黒い霧へ変わっていく。風に吹かれ、霧は森の中へ消えていった。
後には何も残らない。まるで最初から、誰もいなかったかのようだった。
静寂が戻ってくる。シラキはゆっくりと銃口を下げた。
「……終わったか」
息を吐く。それほど苦戦はしなかった。手も震えていない。
人の形をしたものを何十体撃ったところで、今さら何かを感じるほど綺麗な人生を送ってきたわけでもない。
だが――。
『俺たちだって幸せになりたかっただけだ』
亡者の言葉が、頭に残っていた。シラキは短機関銃を見る。そして、自分の手を見る。
血と硝煙にまみれた人生だった。世界を恨まなかったと言えば嘘になる。どうして自分たちが。どうしてこんな世界に。もっとまともな場所に生まれていたら。そんなことを考えたことなど、何度でもある。
違いがあるとすれば――。
自分には今、守りたいものができた。それだけなのかもしれない。
シラキは黒い霧が消えていった森を、しばらく黙って見つめていた。
「……俺も」
小さく呟く。
「あいつらと、そう変わらないのかもしれないな」
曇った空の下、その言葉だけが誰にも届くことなく、静かな森へ溶けていった。
♢
しばらくして、リオンは家の外へ出た。
森には、もう亡者の姿はなかった。先ほどまで響いていた銃声も消え、聞こえるのは風に揺れる木々の音だけだ。
庭の端では、シラキが一人で座っていた。
短機関銃を膝の上へ置き、いつものように煙草を吸っている。戦いを終えたばかりだというのに、その横顔はいつもと変わらない。
「シラキさん」
「ん?」
シラキが顔を上げる。
「怪我はありませんか?」
「ああ。かすり傷もない」
「そうですか……」
リオンはほっと息を吐いた。そして、シラキの隣へ腰を下ろす。
「ありがとうございました」
「何がだ?」
「私たちを守ってくださったことです」
「……」
シラキは少しだけ目を逸らした。
「やるべきことをやっただけだ」
「それでもです」
リオンは微笑む。
「本当に、ありがとうございました」
「……ああ」
短い返事だった。けれど、それで十分だった。
リオンはシラキの横顔を見つめる。数日前、ノアから自分たちは相性を考えて選ばれているのだと聞いた。その時は、本当だろうかと思ってしまった。自分とシラキでは、あまりにも違う。生きてきた世界も。考え方も。得意なことも。
けれど――。
今日、少しだけ分かった気がした。自分には、あんなふうには戦えない。ルナの心へ寄り添うことはできる。傷ついたなら癒やすこともできる。けれど、危険が迫った時。迷わずその前へ立ち、戦うことのできる人がいる。だから創造主様は――。
「シラキ!」
家の扉が開いた。
二人が振り返る。
ルナがこちらへ駆けてきていた。
「ルナ?」
そのままシラキの前まで来ると、ぴたりと足を止める。
「どうした?」
「……」
ルナは何も言わない。
先ほどの戦いが怖かったのだろう。いつもの元気はなく、尻尾も垂れ下がっている。それでも、しばらくすると小さく口を開いた。
「シラキ」
「なんだ」
「怖い人たち、いなくなった?」
「ああ」
シラキは頷く。
「もういない」
「もう来ない?」
「……」
シラキが少し考える。
「来ても、俺が追い返す」
絶対に来ないとは言わなかった。けれど、その言葉を聞いたルナの尻尾が少しだけ上がった。
「……そっか」
「ああ」
ルナは胸の前で指を握る。
「ありがとう」
「……」
シラキの動きが止まった。リオンは思わず微笑む。
先日、花冠を渡された時と同じ顔をしている。戦場ではどれだけの敵を相手にしても平然としているのに、どうやらこの人は、子どもから感謝されることには未だに慣れていないらしい。
「……ああ」
シラキは頭を掻いた。
「どういたしまして」
ルナが嬉しそうに笑う。その笑顔を見て、リオンもようやく肩の力を抜いた。
シラキが何を思いながら亡者たちと戦っていたのか、リオンには分からない。きっと、自分には想像できないものを抱えているのだろう。それでも今は、それを無理に聞く必要はないと思った。
「今日は私が朝食を作りますね」
「……大丈夫か?」
「どういう意味ですか?」
「いや」
シラキが視線を逸らす。
「この前の卵を思い出しただけだ」
「失礼ですね!」
思わず声を上げる。
その隣で、ルナがくすくすと笑い始めた。シラキもほんの少しだけ口元を緩める。
いつもの二人だった。それが今は、何より嬉しかった。
「では、三人で作りましょう」
「わたしも?」
「はい。手伝ってくれますか?」
「うん!」
「俺もか?」
「もちろんです」
「……分かった」
三人は並んで家へ戻っていく。
空はまだ厚い雲に覆われていた。
それでもリオンには、先ほどまでよりほんの少しだけ、辺りが明るくなったように思えた。