ガンダムビルドダイバーズ ブレイズ   作:ランナーの切り屑

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初投稿です。


クジカワ・シイカと「ブラックハンター」

「よっし! これで今日は十二連勝!」

 

 相手のコックピットをソードオフショットガンの一撃で撃ち抜いて、あたし──クジカワ・シイカこと、ダイバーネーム「シイカ」は小さくガッツポーズした。

 今、この時代で最もアツいオンラインゲームことガンプラバトル・ネクサス・オンライン。通称GBNの中で、あたしはフリーバトルに挑んでいたのだ。

 ハードコアディメンション・ヴァルガ。ここでは普通、ダイバーことプレイヤー間での同意が必要なフリーバトルが、申請なしの無制限で行えるからこそ、あたしは、この超危険地帯にいるわけで。

 

「入り口を抜けてまともなエリアに来れば、ポイント狙いじゃなくて真っ当に強いやつが待ってる……リッカの作ってくれたこのイフリート・イェーガーで、今日も連勝動画作ってあげないと!」

 

 クリスタルのような構造物が渓谷を作っているエリアで影に潜んで、二丁持ちしているソードオフショットガンのリロードを行いつつ、次に攻めてくる敵に備える。

 イフリート・イェーガーの両肩をスパイクにしたリッカ──あたしの義妹(いもうと)が作ってくれたこのガンプラと、昔おじいちゃんからハワイで習った銃撃戦の知識があれば、ある程度戦えることは今日の記録が証明済みだ。

 GBNでは、FPSとも、TPSともセオリーが違って、ガンプラの出来とダイバーの腕前がモノを言う。

 

「つまり……こういうこともできるってこと!」

 

 あたしは渓谷の遮蔽物に隠していたアンチマテリアルライフルに装備を変えて、同じく遮蔽物を盾にしてこっちへの狙撃をしようとしていた、ガンダムデュナメスを一手先に撃ち抜いた。

 この渓谷地帯は構造物がクリスタルでできている都合、隠れているつもりでも、他のクリスタルに影が映り込んだりしているのだ。

 それをいかに早く察知できるかが、ダイバーの腕前と直結しているといっても過言じゃない。

 

「これで十三連勝……あと二勝したら、キリもいいし終わろうっと。さてさて、次の相手は……」

 

 アンチマテリアルライフルを物陰に隠しつつ、ソードオフショットガンに装備を持ち替えて、あたしは慎重に索敵を行いつつ、なるべくスラスターを使わないで移動する。

 スラスターの噴射光や噴射音は、相手に対してこっちの情報を与えているのに等しいからだ。

 もっとも、GBNで音感センサーも頼りにして戦っているダイバーなんて、ごく少数だろうけど──と、意識が緩みかけた、刹那。

 

 通常ではありえない距離から、弾丸が飛んでくる。

 そして、私がギリギリのところでかわした狙撃は、背後から迫ってのキルを狙っていたドートレスのコックピットを寸分違わず撃ち抜いていた。

 一体なにを、どこから。

 

『へえ、今のをかわすんだ』

 

 ドートレスの残骸を前にして、通信ウィンドウ越しに呼びかけてきた、金髪をオールバックにした男はヘラヘラと笑っていた。

 相手は、レッドライダーとジム・スパルタンのミキシングモデルだろうか。ハンドガンを二丁装備している。

 ブラッグドッグ隊仕様のジム・スパルタンを従えている男は、ヘラヘラとした笑いを崩すことなく、こっちのスラスターを撃ち抜いて、イフリート・イェーガーに迫ってくる。

 

『まあ相手は誰でもいいんだけどね、要するに俺たちがポイントを稼げさえすればいい。そんで君は俺らの養分。それだけ』

 

 それだけ。

 たったそれだけの理由で嬲り殺しにされなければいけないのか。

 スラスター類を丹念に潰されたせいで、起き上がるのにも時間がかかる機体を立て直しつつ、私は唇を噛んだ。

 

 武器はソードオフショットガンが二丁。腰の左の方にヒートナイフ。

 やれるか。

 やれるのか? 私に? リッカが作ってくれたとはいえ、スラスターが潰されているこのイフリート・イェーガーで?

 

『まぁ運が悪かったと思って諦めてくれよ、他人を恨んだってなんも生まれないからさぁ』

「……『ブラックハンター』がよくも……!」

『へえ、俺らの素性知ってるんだ? じゃあ尚更、生かしていくおけなくなったなぁ!』

 

 ブラックハンター。初心者狩りを生業にしているフォースで、噂ではGBNで最近流行り始めたチートツールにも手を出しているとかいないとか、とにかくそういう噂が絶えない、最低な集団だ。

 戦力比は大体十対一。

 こっちはスラスターを潰されていて、多勢に無勢もいいところだけど、やるしかない。

 

 ソードオフショットガンに指をかけて、挟撃を図ってきたジム・スパルタン二機のコックピットを同時に潰す。

 スラスターを使わない跳躍で後退、続いて死角から迫ってくるスパルタンを一機、ノールックの背面撃ちで撃墜する。

 不意打ちとはいえ、スラスターを潰されていなければ、もっとやれたはずだ。

 

『ちょっと本気出せよお前ら、相手はスラスター潰れてんだぜ? 遠距離からミニガンで潰せよ』

 

 フォース「ブラックハンター」のリーダーである「レザード」の指示に従う形で、私を取り囲んでいたジム・スパルタンが一斉にミニガンを発射して、攻撃してきた。

 

「ぐ、うっ……!」

 

 防ぐ術がない。

 格闘戦で決着をつけるのではなく、エイムを数で補うためのミニガン斉射というのは理に適っている。

 このままでは、やられてしまう。

 

 あいつらに、「ブラックハンター」に目をつけられた時点で運が悪かったといわれればそれはそうかもしれないけど、こんな結末は納得できない。

 

『後ろにも目をつけろ! 可能であれば伏せるんだ!』

 

 もう一つの通信ウィンドウがポップしてきたかと思えば、指示に従って身を屈めた次の瞬間には、メガ粒子砲の一撃が、密集隊形をとって私にトドメを刺そうとしていたジム・スパルタンたちを飲み込んでいた。

 

『ちっ、「ヴァイスガード」か……面倒だけど、今日は「あいつ」もいないし、ここは後退するしかないか』

『逃がすものかよ!』

 

 私を助けてくれたのであろうヘビーガンダムの改造機は、手にしていた、ジーライン・ライトアーマーが持っていたのを改造したのであろうビームライフルを、レザードの機体へと撃ち放ったけど、すんでのところで取り逃してしまったようだった。

 

『逃したか……』

「ええ、と。あなたは?」

『フォース「ヴァイスガード」所属の「クーロウ」だ。今は訳あって「ブラックハンター」を追っている』

「大変なんですね……助けてくれて、ありがとうございます」

『礼には及ばない。ただ、集団戦で生き残りたければ、再三にはなるが、後ろにも目をつけるといい』

 

 それだけ言い残すと、ヘビーガンダムを改造した機体を操っていた男の人こと、「クーロウ」さんはゲートを開いてどこかへと消えていった。

 

「後ろにも目をつけろって……アムロ・レイじゃないんだから……」

 

 なにはともあれ。

 最愛の義妹の作ってくれたこのガンプラが、データ上とはいえリンチにあってバラバラにならなくてよかった。

 私はただ、どっと押し寄せてきた疲れと安堵に身を任せて、そのままGBNをログアウトした。

 

 はあ。

 次にリッカに会える日がきたら、対多数を想定したカスタマイズでもしてもらうかな。

 今まで私がやってきたバトルって、大体タイマンばっかりだったし。




妹が作って姉が戦う
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