ジョジョ三部に転生したら、スタンドが魔虚羅だった   作:東京大特価

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第一話 そのスタンド、あまりにも見覚えがありすぎる

 転生した。その事実自体については、もう十年以上前に受け入れている。前世の記憶が戻ったのは五歳の頃で、事故だったのか病気だったのか、死因については妙に曖昧だったが、自分が以前は現代日本で普通に暮らしていた人間だったという記憶だけは残っていた。

 

 転生先も日本。ただし時代は少し昔で、名前は神代蓮司。特別裕福でもなければ貧しくもない家庭に生まれ、これといった大事件もなく十七歳まで育った。

 

 テレビが分厚い。携帯電話なんてものを一般人は持っていない。インターネットもない。それ以外は、まあ普通の日本だった。だから蓮司は長い間、自分はただ昔の時代に転生しただけなのだと思っていた。少なくとも、その日の高校の廊下で、ある名前を耳にするまでは。

 

「空条、また警察だってよ。どうせ喧嘩だろ。三年の空条承太郎」

 

 蓮司の足がぴたりと止まった。

 

「……今、空条承太郎って言ったか?」

「言ったけど。知り合い?」

「いや、そういうわけじゃない」

 

 聞き間違いではなかった。確かに「空条承太郎」と言った。

 

 知っている名前だった。ただし、詳しく知っているわけではない。前世でも『ジョジョの奇妙な冒険』は読んだことがなく、アニメも見ていなかった。ネット上で有名な画像や台詞を見かけたことがある程度である。

 

 主人公の一人に空条承太郎という男がいる。DIOという有名な悪役がいる。スタンドという超能力のようなものを使って戦う。第三部では外国を旅していた気がする。知識としてはその程度だ。

 

 同姓同名かもしれない。空条という名字は珍しいが、絶対に存在しないわけでもない。そう思おうとしたところで、クラスメイトが続けた。

 

「そういや神代も最近変だよな。たまに何もないところ見てるだろ? 空条も悪霊に取り憑かれたとか言って、自分から留置場に入ってるらしいぜ」

 

 蓮司は無言で額を押さえた。嫌な予感しかしない。

 

     ◇

 

 その日の放課後。誰もいない校舎裏まで移動した蓮司は、念のため周囲を確認してから小さく呟いた。

 

「出ろ」

 

 空気が沈む。次の瞬間、蓮司の背後に巨大な異形が姿を現した。人型ではあるが、人間とは到底呼べない。異様なまでに発達した筋肉、頭部から伸びる翼状の器官、右腕に備えられた巨大な剣。そして何より目を引くのは、頭上に浮かぶ巨大な方陣だった。

 

 蓮司は振り返って、その姿をしばらく見上げる。

 

「……何度見ても、やっぱりお前なんだよな」

 

 こいつについては知っている。むしろ、よく知っている。前世で『呪術廻戦』はかなり好きだった。漫画も読んだし、アニメも見た。能力についての考察まで調べたことがある。

 

 十種影法術。歴代術師の誰一人として調伏できなかった最強の式神。八握剣異戒神将魔虚羅。見間違えるはずがない。

 

「なんでジョジョっぽい世界で魔虚羅なんだよ……」

 

 我ながら意味が分からない。しかも式神ではなかった。十種影法術なんてものは使えないし、影から玉犬も出てこなければ、鵺も蝦蟇も呼べない。出てくるのは魔虚羅だけで、自分の意志で出し入れでき、ある程度は命令にも従う。そして今のところ、周囲の一般人には見えていないらしい。

 

 ここまで条件が揃えば、思い当たるものは一つしかない。ジョジョに出てくる「スタンド」という能力が、確かこんなものだった。とはいえ、それを誰かに話すつもりはない。

 

 原作知識なんて呼べるほど大したものではないが、それでもこの世界で知るはずのないことを知っているのは事実だ。自分から余計な疑いを招く理由もないし、誰かから説明された時には普通に初めて聞いたふりをするつもりだった。

 

     ◇

 

 魔虚羅が現れたのは三日前。最初は本気で死ぬと思った。夜中に目を覚ましたら、自室の隅に三メートル近い怪物が立っていたのだから当然である。だが、魔虚羅は襲ってこなかった。

 

 恐る恐る命令してみると右腕を動かし、歩けと念じれば歩き、消えろと思えば消えた。それでようやく、自分に害を与える存在ではないらしいと分かった。能力について知るきっかけになったのは、その翌日の事故だった。階段を踏み外して転倒し、右腕を強く打った。その瞬間、蓮司の腕に走った痛みとほぼ同時に、背後へ現れた魔虚羅の右腕にも同じような損傷が生じた。

 

 そして、ガコン。頭上の方陣が回った。

 

「……え?」

 

 痛みが急速に引いていく。魔虚羅の傷が修復され、それに連動するように蓮司の腕も元に戻っていった。完全に痛みが消えたところで、蓮司はしばらく呆然と自分の腕を見つめることになった。再生。そして、おそらく適応。

 

 呪術廻戦における魔虚羅と同系統の能力なのだろう。何らかの現象を受ければ解析が始まり、一定まで進めば方陣が回る。その際に損傷を修復しつつ、受けた現象に対して徐々に適応していく。原作知識通りなら、とんでもない性能だ。ただし。

 

「性能だけ見れば強いんだけど……俺まで普通に痛いんだよな」

 

 これはかなり重要だった。魔虚羅が傷つけば自分にもダメージが来る。再生できるとしても痛覚までなくなるわけではないし、適応が終わるより先に致命傷を受ければどうなるかも分からない。原作の魔虚羅だって無敵ではなかった。完全に破壊されれば終わる。

 

 だから運用方針は既に決めてある。できるだけ被弾しない。

 

 適応できるからといって、わざわざ攻撃を受ける理由はない。避けられるなら避ける。防げるなら防ぐ。それでもどうにもならない時に初めて、適応という能力を使えばいい。スタンドの見た目に反して、使い手の思想はかなり慎重だった。

 

     ◇

 

 放課後。蓮司は警察署の前に立っていた。

 

「……来ちゃったよ」

 

 目的は確認だけだった。本当にあの空条承太郎なのか。ここが本当にジョジョの世界なのか。それだけ確認して帰るつもりだったし、危ない話に深入りする気もなかった。少なくとも、この時点では。

 

 受付で名前と用件を伝えたものの、当然ながら同じ学校というだけで留置場へ通してもらえるわけではない。どうしたものかと考えていると、背後から女性の声がした。

 

「承太郎のお友達?」

 

 振り返ると、明るい髪色をした柔らかな雰囲気の女性が立っていた。どこかで見覚えがある気はするが、ジョジョをまともに読んでいなかった蓮司には名前までは出てこない。

 

「いえ、同じ学校ってだけです。ちょっと本人に確認したいことがあって」

「まあ、わざわざ来てくれたのね。承太郎ったらお友達のことなんて全然話してくれないから」

「いや、本当に友達では――」

 

 そう言いかけた瞬間、背筋にぞわりと寒気が走った。誰かに見られている。反射的に振り返ると、少し離れた場所に長身の白髪の老人と、褐色肌の大男が立っていた。だが蓮司が見ていたのは二人ではない。その背後にいる、普通の人間には見えないはずの「何か」だった。

 

 老人が蓮司の視線に気付き、面白そうに目を細める。

 

「ほう。今、見えたな?」

「とぼけなくていい。君もスタンド使いなのだろう」

 

 褐色肌の男が静かに言った。やっぱりそうなのか。内心で納得しながらも、それは顔には出さない。

 

「……スタンドって言うんですね。三日前に突然こいつが出てきたんですけど、俺もまだよく分かってなくて」

 

 三日前、と聞いた瞬間、二人の表情が僅かに変わった。何か意味があるらしい。蓮司には分からない。

 

「私はモハメド・アヴドゥル。そしてこちらがジョセフ・ジョースターだ。君の名前も聞かせてもらえるか?」

「神代蓮司です」

 

 ジョセフ・ジョースター。その名前にも聞き覚えはあった。確かジョジョの登場人物だったはずだが、それ以上は曖昧である。もちろん、そんなことは口にしない。ジョセフは蓮司をしばらく観察してから、背後へ視線を向けた。

 

「神代君。よければ、そのスタンドを見せてもらえんか? 心配せんでも、一般人には見えん」

「一般人には見えないんですか。……それなら」

 

 一応周囲を確認してから、蓮司は魔虚羅を呼び出した。

 

「出ろ、魔虚羅」

 

 ズン、と空気が重くなる。巨大な異形が蓮司の背後に現れた瞬間、アヴドゥルの顔から僅かに余裕が消えた。ジョセフも目を見開き、頭上に浮かぶ方陣までじっくりと観察している。

 

「……これはまた、随分と異様なスタンドじゃな」

「かなり強い力を感じる。それに、あの頭上の輪もただの飾りではなさそうだ」

 

 アヴドゥルの背後に、炎を纏った鳥人型のスタンドが姿を現した。魔虚羅が即座に反応して身構える。

 

「魔虚羅、動くな」

 

 蓮司が命じると、巨体はぴたりと停止した。アヴドゥルはその様子を興味深そうに見ている。

 

「こちらのスタンドに反応したようだが、君の命令には従うのだな」

「完全に操り人形って感じじゃないですけど、ある程度は。戦う相手だと判断すると勝手に反応することもあります」

「なるほど。では能力については、どこまで分かっている?」

 

「まだ、はっきりとは分かってません。怪我をした時にこいつの頭上の方陣が回って、魔虚羅の傷と俺の傷が一緒に治ったことはあります。それ以外は未確認です」

 

 蓮司は一度、魔虚羅の方陣を見上げた。実際に確認できているのはそこまでで、それ以上を口にすれば前世の知識を説明する必要が出てくる。

 

「頭の輪が何かに反応したのは確かですけど、再生以外に何ができるのかはまだ分かりません。試すために攻撃を受ける気もないですし」

 

 ジョセフとアヴドゥルが顔を見合わせ、先にアヴドゥルが口を開いた。

 

「つまり、現時点で確実なのは傷の再生だけか」

「はい」

 

「……見た目以上に得体の知れない能力だな」

 

 ジョセフも腕を組み、魔虚羅を見上げた。

 

「再生だけでも相当なものじゃが、当然弱点もあるんじゃろ?」

「傷が治る前に俺か魔虚羅が致命傷を受けたらどうなるか分かりませんし、魔虚羅が受けたダメージは俺にも来ます。能力があるからって好き好んで攻撃を食らいたくはないですね」

 

「なるほどのう。見た目に反して、使い手の方は随分慎重らしい」

「痛いものは痛いですからね」

 

 アヴドゥルが僅かに口元を緩める。

 

「その判断は正しい。再生できるからといって、致命傷まで試す必要はない」

 

 その時だった。

 

「ジジイ。いつまでそこで騒いでやがる」

 

 低い声が響いた。鉄格子の向こうに、黒い学生服を着た大柄な少年が立っている。帽子と髪が一体化しているように見える独特の姿と、高校生とは思えない体格。空条承太郎。本人を目の前にした瞬間、蓮司は確信した。

 

 名前を聞いただけなら同姓同名だと思えたかもしれない。しかし、これはもう無理だった。本物だ。ここは本当に『ジョジョの奇妙な冒険』の世界らしい。

 

「承太郎!」

 

 先ほどの女性が嬉しそうに駆け寄る。承太郎は母親らしき女性には目もくれず、蓮司の背後へ視線を向けた。

 

「……見ねえ顔だな。それに、そのデカブツは何だ」

「同じ学校の神代蓮司です。こいつは三日前に出てきた俺の……スタンド、でしたっけ」

 

 さっき初めて名前を教わった人間らしく言っておく。承太郎の背後に別の人型スタンドが現れる。かなり逞しい。魔虚羅ほど大きくはないが、立っているだけで圧迫感があった。これが承太郎のスタンドか。

 

 名前までは知らない。有名だった気もするのだが、思い出せなかった。二体のスタンドが向き合った途端、魔虚羅が僅かに身構える。

 

「魔虚羅、動くな」

 

 再び命じると、魔虚羅はその場で止まった。承太郎はその様子を一瞥してから、興味深そうに目を細める。

 

「ずいぶん強そうじゃねえか。ちょっと試してみるか?」

「嫌です。スタンド同士で殴り合ったら俺まで痛いんでしょう? 能力を試すためだけに怪我したくありません」

 

 承太郎が僅かに眉を寄せた。

 

「てめえ、そのナリのスタンドを出しておいて随分ビビりだな」

「慎重と言ってください」

 

 ジョセフが吹き出した。

 

「確かに、スタンドと本人の印象はだいぶ違うのう」

 

 承太郎は興味を失ったように視線を逸らす。

 

「やれやれだぜ」

 

 蓮司は一瞬だけ思った。あ、それは知ってる。もちろん口には出さない。

 

     ◇

 

 その後、蓮司は流れで空条家まで同行することになった。ジョセフたちは承太郎に起きた異変について説明していく。スタンド。ジョースター家の血筋。そしてDIOという男。

 

 DIOは百年前からジョースター家と因縁を持つ男であり、しかも人間ではなく吸血鬼なのだという。ジョセフによれば、そのDIOが再び現れたことによって自分や承太郎にスタンドが発現したらしい。蓮司は一応真面目に聞きながら、頭の中で情報を整理していた。DIO。

 

 その名前だけなら前世から知っている。有名な悪役であることも知っているが、具体的に何をした人物なのかはほとんど知らなかった。だから余計なことは言わない。知らないふりをするというより、この世界で知るはずのない情報については自分から触れない、と決めている。そもそも持っている知識自体が断片的なので、下手に話したところで役に立つとも思えなかった。

 

 ジョセフは一通り説明を終えると、今度は蓮司へ向き直った。

 

「そこで気になるのが、お前さんじゃ。魔虚羅が現れたのは三日前と言ったな。承太郎たちに異変が起き始めた時期と妙に近い。お前さんがジョースター家の血筋でないとしても、完全な偶然と決めつけるには少々引っかかる」

 

「俺も同感です。三日前まで何もなかったのに突然こんなのが出てきたわけですから、DIOって人と直接関係があるかは分かりませんけど、何もないとは思えないですね」

 

 原因は分からない。ただ、蓮司自身も偶然とは思えなかった。前世ではただの一般人。この世界でも三日前までは一般人。それが突然、よりにもよって魔虚羅をスタンドとして発現させた。

 

 しかも、空条承太郎たちの異変とほぼ同時期。

 

「……嫌な予感しかしないな」

 

 蓮司が呟いた、その時だった。

 

「あら……?」

 

 承太郎の母親がふらついた。

 

「母さん!」

 

 承太郎がすぐさま身体を支える。蓮司も振り向き、その背後に現れたものを見て目を見開いた。植物の蔦のような何かが、女性の身体へ絡みつくように広がっている。

 

「……あれもスタンドですか?」

 

 ジョセフとアヴドゥルが駆け寄った。ホリィと呼ばれた女性の身体は明らかに熱を持っており、呼吸も苦しそうだった。本人にスタンドを制御するだけの闘争心がなく、その力に身体が耐えられていない。説明を受けた蓮司は、無意識に魔虚羅へ視線を向けた。ジョセフも同じ考えに至ったらしい。

 

「神代君。お前さんの魔虚羅で、ホリィを何とかする方法はないか?」

 

 蓮司は少し考えたが、すぐに首を振った。

 

「難しいと思います。魔虚羅の再生や適応は基本的にこいつ自身と、それに繋がっている俺に作用する能力です。他人を治療できたことはありませんし、適応そのものを他人に移せるかも分かりません」

 

 試したことがない以上、可能性がゼロとは言えない。だが、今ここで試すには危険すぎる。

 

「無理に能力を試してホリィさんの状態を悪化させる可能性もあります。ぶっつけ本番でやるのは、さすがに怖いです」

 

 ジョセフは悔しそうに顔をしかめたものの、それ以上は求めなかった。やがて、ホリィを救うためにはDIOを倒すしかないという結論に至った。猶予は、およそ五十日。

 

「DIOはエジプトにいる可能性が高い。わしらはそこへ向かう」

 

 エジプト。その言葉に、蓮司の記憶が僅かに引っかかった。確か第三部は外国を旅する話だった。エジプトだった気もする。ただ、それだけだ。

 

 途中で何が起きるのかも、どんな敵が現れるのかも、誰が仲間になるのかも知らない。だから蓮司は、曖昧な記憶について何も口にしなかった。承太郎がこちらを見る。

 

「神代。これは俺たちの問題だ。てめえまで来る必要はねえぞ」

「……そうですね」

 

 本来なら、その通りだった。今日会ったばかりで、DIOとも何の因縁もない。わざわざ海外まで行って命を懸ける理由などない。しかし、蓮司は背後の魔虚羅を見る。こんな異常なスタンドが、この騒動とほぼ同時期に突然発現した。本当に無関係なのか。何より、一人で日本に残ったところで安全とは限らない。

 

「一つだけ確認したいんですけど、DIOって他にもスタンド使いを仲間にしている可能性はありますか?」

 

 アヴドゥルが頷いた。

 

「十分にある。私が以前エジプトで遭遇した時も、あの男には他者を支配下に置くだけの力とカリスマがあった」

 

「だったら、俺だけ日本に残っても安全とは限らないですね。もし俺が敵側だったら、こんな能力を持ったスタンド使いを放置したくない。勧誘するか、それが無理なら先に潰そうとすると思います」

 

 ジョセフも難しい顔で頷いた。

 

「否定はできんな」

 

「なら俺も行きます。ホリィさんを助けたいっていうのもありますけど、一番の理由は自分が死にたくないからです。一人で何も分からないまま襲われるくらいなら、事情を知っているスタンド使いと一緒に動いた方がいい」

 

「随分正直じゃのう」

「命が懸かってますから」

 

 格好をつける必要などない。蓮司は一度、眠っているホリィへ目を向けた。

 

「それに……今日会ったばかりですけど、この人を見捨てて普通に学校へ戻るのも、さすがに寝覚めが悪いです」

 

 承太郎はしばらく蓮司を見ていたが、やがて興味を失ったように顔を背けた。

 

「好きにしろ」

「そうします」

 

 こうして、空条承太郎、ジョセフ・ジョースター、モハメド・アヴドゥル、そして神代蓮司。四人のスタンド使いが、DIOを追うことになった。

 

 蓮司には未来など分からない。どんな敵が来るのか、どこで戦うのか、誰が仲間になるのか。DIOがどんな能力を持っているのかすら知らない。持っているのは呪術廻戦に関する知識と、魔虚羅というスタンドだけ。

 

 分からないことは、その時に考えればいい。敵の能力が分からないなら観察する。避けられる攻撃は避け、防げるものは防ぐ。それでも対処できない時には魔虚羅の適応を使う。何より優先するのは、生き残ることだ。

 

 そこまで考えたところで、蓮司はふと先ほどの説明を思い返した。DIO。百年前から生きている。人間ではない。吸血鬼。

 

「…………」

 

 いや。ちょっと待て。話の流れとホリィの件が重すぎて普通に聞き流していたが、よく考えればスタンド以上におかしい単語が混じっていなかったか。蓮司は恐る恐るジョセフを見る。

 

「あの、今更なんですけど」

 

「なんじゃ?」

 

「吸血鬼って、マジでいるんです?」

 

 ジョセフが固まった。アヴドゥルも一瞬黙り込み、承太郎だけが面倒くさそうに蓮司を見た。

 

「……お前、そこからか」

 

「そこからです」

 

 魔虚羅という化け物を背負った男が言うことではない。だが、それとこれとは話が別だった。

 

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