ジョジョ三部に転生したら、スタンドが魔虚羅だった 作:東京大特価
カラチで鋼入りのダンを退けた後、一行は海を渡り、アラブ首長国連邦のアブダビへ入った。地図の上ではエジプトまでの距離もかなり縮まっている。日本を出た時には遠い目的地だったはずが、少しずつ現実的な距離へ近づいているのは確かだった。もっとも、目的地へ近づいたからといって旅が楽になるわけではない。
「……ラクダですか」
蓮司は目の前に並んでいる動物を見上げた。
「ああ。ここから北西へ向かうなら、砂漠を横切るのが早い」
ジョセフは妙に自信ありげに答える。
「ジョセフさん、ラクダに乗ったことあるんですか?」
「ない」
「即答ですね」
「じゃが心配するな。映画なら何度も見とる! ラクダの扱い方くらい分かるわい!」
蓮司はしばらくジョセフを見たあと、無言で承太郎へ視線を向けた。承太郎も何も言わず、帽子の鍔を下げる。
「今のうちに別の移動手段探しません?」
「待て待て! 何じゃその反応は! わしを信用せんのか!」
「ジョセフさん本人を信用してないわけじゃないです。映画鑑賞を経験者扱いしてるところを心配してるだけです」
「余計悪いわ!」
その横では、ポルナレフが既にラクダへ跨ろうとしていた。
「こんなもの、馬と大して変わらんだろ。乗って手綱を引けば――うおっ!?」
ラクダが突然立ち上がり、前後へ大きく身体を揺らす。ポルナレフは慌てて背中へしがみつき、どうにか落下だけは免れた。
「全然違うじゃあないか!」
「だから気をつけろと言おうとしたんじゃ」
「立ってから言うな!」
数日前までのポルナレフなら、こうしたやり取りの途中にもどこか重さが残っていた。今でもアヴドゥルのことを忘れたわけではないだろうが、少なくとも自然に声を上げ、仲間との会話へ入れる程度には戻っている。蓮司はそこへわざわざ触れず、自分のラクダへ慎重に跨った。
「これ、急に立ちます?」
「立つよ」
花京院が横から答える。
「先に言ってくれてありがとうございます」
予め身構えた状態でラクダが立ち上がったため、ポルナレフほど慌てずに済んだ。
「お前、妙なところだけ慎重だな」
「落ちて怪我したら痛いでしょう」
「魔虚羅で治るんじゃないのか?」
「治ることと痛くないことは別です」
そこだけは旅を始めてから一度も変わっていなかった。
◇
砂漠へ入ってから数時間が経った。最初のうちは珍しかった景色も、延々と砂と岩だけが続けばさすがに見慣れてくる。何より日差しが強く、頭へ布を巻いていても熱がじわじわと身体へ溜まっていった。蓮司は水筒から少量だけ水を飲み、少し前を進む花京院を見る。先ほどから、何度も後方を気にしていた。
「花京院さん。さっきから後ろ見てますけど、何かあります?」
「僕にも分からないんだ。誰かにつけられているような感じがする」
蓮司も振り返る。地平線まで続く砂漠には人影も車も見えない。スタンドらしいものもなく、陽炎が揺れているだけだった。
「何も見えませんね」
「だから気のせいかもしれない。ただ、ずっと同じ距離から見られているような感じがするんだ」
その話を聞いた承太郎も後方へ目を向けた。
「何もいねえな」
「ええ。でも、一応覚えておいた方がいいと思います」
花京院はそれ以上騒がなかった。蓮司も警戒だけは続けることにする。この旅では、嫌な予感が単なる気のせいで終わることの方が少ない。しばらくして、ジョセフが前方を見ながら声を上げた。
「日が傾いてきたな。もう少し進んだら休憩にするぞ」
蓮司も空を見る。本物の太陽は西へ傾き始めている。砂漠は昼と夜の寒暖差が激しいというし、このまま日が落ちれば少しは楽になるはずだった。ところが、そのまま一時間ほど進むうちに様子がおかしくなってきた。
「……暑くなってません?」
蓮司が最初に口にした。日が沈むにつれて涼しくなるどころか、先ほどより明らかに暑い。肌を焼く日差しも強くなっており、ラクダたちまで苦しそうに歩いている。
「わしもそう思っておったところじゃ」
ジョセフが額の汗を拭う。
「おかしいな。この時間なら気温は下がっていくはずだ」
花京院が空を見上げた。ポルナレフも同じように顔を上げたところで、動きが止まる。
「……おい」
「どうしました?」
「太陽、あっちに沈んでるよな」
全員が西を見る。本物の太陽は確かに地平線近くまで落ちている。ところが反対側の東の空には、もう一つ巨大な光球が浮かんでいた。
「…………」
蓮司は二つの太陽を見比べた。
「ジョセフさん」
「何じゃ」
「さすがにこれはスタンドですよね」
「わしもそう思う」
「今回は否定しないんですね」
「太陽が二つあって自然現象で済ませられるか!」
その直後、東の空に浮かぶ光球がさらに輝きを増した。熱気が一気に強くなる。
「来るぞ!」
承太郎の声とほぼ同時に、光球から細い閃光が放たれた。砂へ突き刺さった瞬間、大きな爆発が起こる。
「散れ!」
一行はそれぞれラクダから飛び降りる。続いて二発、三発と光線が降り注ぎ、地面を次々と抉っていく。
「魔虚羅!」
蓮司の背後へ三メートルの神将が現れる。次の光線が真っ直ぐ蓮司へ向かった。
「防げ!」
魔虚羅が前へ出て両腕を交差させる。閃光が前腕へ直撃した。爆発と高熱が同時に広がり、巨体が数歩後ろへ押される。
「っ……熱い!」
蓮司の両腕にも焼けるような痛みが走った。袖の下の皮膚が赤く焼け、一部は明らかな火傷になっている。攻撃そのものを魔虚羅へ受けさせても、共有される損傷まで避けられるわけではない。
「神代君、大丈夫か!」
「動けます! でも何発も受けるのは嫌ですね!」
魔虚羅の頭上で方陣が低く軋んだ。今の一撃の解析が始まっている。だからといって適応が完成するまで正面から攻撃を受け続ける必要はない。
「近くの岩へ行きましょう! 魔虚羅、必要な分だけ防げ!」
巨体をただの盾として立たせるのではなく、一行が近くの大岩へ走る間だけ攻撃を逸らさせる。魔虚羅は降ってくる光線のうち、避けきれないものだけを腕で受けたり叩き逸らしたりしながら移動を支援した。全員が岩陰へ転がり込んだ直後、反対側へ光線が着弾し、大量の砂と岩片が頭上から降ってくる。
「冗談じゃあないぞ!」
ポルナレフが岩へ背を預ける。
「太陽みたいなスタンドが空に浮かんでるなんて、どうやって倒すんだ!」
蓮司も岩陰から上空を確認した。巨大な光球は遥か上空にある。スタープラチナやシルバーチャリオッツの射程では到底届かない。魔虚羅も近距離型なので、同じく直接殴りに行く方法はなかった。
「魔虚羅の剣を投げるのはどうだ?」
ポルナレフが提案する。
「届く保証がないですし、外した後に戻せるか確認したこともないので嫌です」
「戻せないのか?」
「分かりません」
「なら絶対やるな!」
「だからやらないって言ってるでしょう」
頭上から再び光線が降る。今度は岩そのものではなく、その周囲へ何度も撃ち込まれた。逃げ道を潰し、岩陰から出られなくするつもりらしい。
「問題は本体じゃ」
ジョセフが周囲を見渡す。
「あれほどのスタンドを出しておる以上、使い手が何百キロも離れているとは考えにくい。近くのどこかに隠れておるはずじゃ」
「花京院さんが感じてた視線と関係ありそうですね」
「ああ。ずっと僕たちを追っていた誰かがいたなら、そいつが使い手かもしれない」
だが見渡す限り砂と岩しかない。身を隠せそうな建物もない。蓮司は岩陰へ座り、傍らに魔虚羅を立たせた。
「敵を見つけるまで、この暑さに耐えないといけないんですね」
「そうなるね」
花京院が答えた。
「適応で何とかならんのか?」
ジョセフに聞かれ、蓮司は魔虚羅を見る。
「最初の光線をまともに受けたので解析は始まってます。それに今もあのスタンドの熱を浴び続けてるから、多分その分も解析してます。でも、適応しても俺と魔虚羅だけです。皆まで平気にできるわけじゃないので、本体を探さないと解決にはならないですね」
「便利なようで、こういう時は融通が利かんな」
「俺もそう思います」
魔虚羅だけが暑さに強くなっても、他の四人が熱中症で倒れてしまえば意味がない。
◇
時間が経つにつれて、岩陰の空気まで熱を帯びていった。水の残量も多くない。逃げたラクダたちも戻ってこず、頭上では太陽のようなスタンドがこちらを炙り続けている。直接の光線は岩に隠れてやり過ごしているものの、その異常な熱までは遮断できない。
「……暑い」
ポルナレフが岩へ背を預けながら呻いた。
「さっきも聞いたよ」
「暑いものは暑いんだから仕方ないだろう!」
花京院も額から流れる汗を拭う。蓮司自身もかなりきつかったが、隣にいる魔虚羅の様子を見ているうちに、一つ気付いたことがあった。最初の光線でできた両腕の火傷はまだ残っている。しかし方陣は先ほどから何度も小さく軋み、もう少しで回りそうなところまで来ていた。最初の一発。
その後も浴び続けている熱。解析はかなり進んでいるはずだ。だったら、もう一発受ければ適応が終わるんじゃないか。
「…………」
蓮司は、自分の中からあまりにも自然に出てきた考えに引っかかった。今までなら、まずどうすれば次の攻撃を受けずに済むかを考えていたはずだ。魔虚羅が再生できても痛みは本物で、適応する前に致命傷を負えば終わる。それなのに今は、適応を完成させるためなら一発くらい受けてもいい、という前提で考えていた。
「……何考えてるんだ、俺」
「どうした、神代?」
ポルナレフがこちらを見る。
「いや。ちょっと変なこと考えただけです」
「暑さで頭やられたんじゃないだろうな」
「多分そこまでは――」
言いかけたところで、金属が噛み合うような音が響いた。ガコン。魔虚羅の頭上で方陣が一回転する。
「あ」
次の瞬間、両腕に残っていた火傷が猛烈な勢いで塞がり始めた。焼け爛れていた魔虚羅の皮膚が元へ戻り、それと連動して蓮司自身の火傷も消えていく。
「治った……」
それだけではない。先ほどまで肌へ突き刺さっていた熱が、一気に弱くなった。周囲の気温そのものは変わっていない。ジョセフたちは今も大量の汗を流している。それなのに蓮司と魔虚羅だけは、空から浴びせられている異常な熱をほとんど感じなくなっていた。
「適応したのか?」
承太郎が魔虚羅を見る。
「みたいです。多分、あの太陽みたいなスタンドの熱と、さっきの光線に」
蓮司は確認するために岩陰から少しだけ身体を出した。上空の光球がすぐに反応する。
「神代君!」
閃光が飛来した。花京院が叫ぶより早く、魔虚羅が片腕を差し出す。光線が前腕へ直撃し、爆発が起きた。しかし、先ほどとは全く違った。
魔虚羅の身体は僅かに押されただけで、腕にもほとんど火傷が生じていない。蓮司にも衝撃そのものは伝わったものの、焼けるような痛みはなかった。
「……効いてないわけじゃないけど、かなり軽くなってます」
「十分すぎるだろ、それ」
ポルナレフが魔虚羅の腕を見る。
「これなら魔虚羅だけは外へ出られます。俺も熱には耐えられそうですけど、皆はそうじゃないので、やっぱり敵本体を探す方が先ですね」
「ああ。適応できたからといって、ここで撃ち合いを続ける理由はない」
花京院の言葉に、蓮司も頷いた。
「ですよね」
そう答えながら、さっき自分が考えたことだけが頭に残った。実際には追加の一撃など必要なく、既に解析はほとんど終わっていた。それなのに自分は、待つより先に攻撃を受けることを選択肢へ入れた。何故そんな考えが、あれほど自然に浮かんだのか。蓮司には分からなかった。
ただ、その隣で魔虚羅は岩陰から少し身体を出し、遥か上空の光球をじっと見上げている。先ほどもう一発を受け止めた後も構えを解かず、次の攻撃が来るなら受けて立つと言わんばかりだった。
「魔虚羅、戻れ。今は戦う必要ない」
命令すると、神将は素直に岩陰へ下がった。蓮司はそれ以上考えないことにした。
◇
適応によって蓮司と魔虚羅は動けるようになったものの、状況そのものが解決したわけではない。ジョセフたちは依然として暑さに苦しんでおり、水も減り続けている。蓮司は魔虚羅を使って岩陰の範囲を少し広げたり、必要な時に光線を防いだりしながら、他の四人と一緒に周囲を探した。
「敵がいるなら、あの辺ですかね」
「いや、あそこには隠れる場所がない」
花京院が首を振る。
「地面を掘って隠れてるとか?」
「可能性はあるが、この広さを全部調べるわけにもいかんぞ」
ジョセフが言う。
「スタンドで地面を全部ひっくり返します?」
「被害範囲が広すぎるよ、神代君」
「ですよね」
自分でも言ってから無理があると思った。さらにしばらく探していた時。
「フッ」
突然、承太郎が笑った。ジョセフが振り向く。
「承太郎?」
花京院も口元を押さえ始めた。
「フフッ……」
ポルナレフまで肩を震わせる。蓮司は三人を見比べた。
「何です?」
答えはない。承太郎と花京院がとうとう堪えきれずに吹き出した。
「ハハハハハ!」
「ククク……」
ポルナレフまで笑い始める。
「お、おい!」
ジョセフが本気で慌てた。
「しっかりせい! 熱で頭をやられたのか!?」
蓮司も最初はそう思った。しかし、承太郎たちが同じ方向を見ていることに気付く。視線を追う。少し離れた場所に、大きな岩があった。そしてその隣にも。
全く同じ形の岩がある。
「……あ」
蓮司にも意味が分かった。自然の岩が、傷や形まで完全に同じになるとは考えにくい。
「なるほど」
思わず笑いそうになった。
「お前まで!?」
ジョセフが振り向く。
「違います。ジョセフさん、あそこ見てください。二つ並んでる岩」
「岩?」
ジョセフが目を凝らす。しばらくして、ようやく表情が変わった。
「……全く同じ形じゃな」
「ええ。片方は多分、本物じゃないです」
花京院もようやく笑いを収める。
「鏡だろう。こちら側にある岩を映して、隠れる場所そのものを偽装していたんだ」
蓮司は納得した。花京院がずっと感じていた視線も、それなら説明がつく。
「敵はあそこですね」
承太郎が足元から小石を拾った。
「承太郎さん、あそこまで届くんですか?」
「届かせる」
スタープラチナが現れた。小石を指先で持ち、大きく腕を引く。蓮司は空に浮かぶ太陽のようなスタンドを見上げ、それから承太郎へ視線を戻した。敵のスタンドへ直接攻撃する必要はない。ジャスティスの時と同じ。
本体を叩けるなら、それが一番早い。
「オラァッ!」
スタープラチナが小石を投げる。弾丸のような速度で砂漠を横切り、二つ並んだ岩の片方へ突き刺さった。ガラスが割れる音が響く。岩に見えていた景色の一部が砕け、その向こうから一台の車が現れた。
「本当にいた!」
車内では、太った男が額から血を流して倒れている。同時に、空に浮かんでいた巨大な光球が大きく揺らいだ。強烈だった光が薄れ、そのまま消えていく。ようやく砂漠に本来の夜が戻ってきた。
◇
「……涼しい」
ポルナレフが砂の上へ大の字になった。
「こんなに夜がありがたいと思ったのは初めてだ」
蓮司も岩へ背を預けながら息を吐く。適応してからは熱そのものをあまり感じなくなっていたが、周囲の空気が本当に涼しくなるとやはり違う。
「結局、敵のスタンド名も本体の名前も分からないままでしたね」
蓮司が倒れている男を見る。
「別に知らなくても倒せたんだからいいんじゃあないか?」
ポルナレフが寝転がったまま答えた。
「それはそうですけど」
ジョセフは空を見上げながら少し考えた。
「タロットカードの暗示で考えるなら、あれは『太陽』じゃろうな。英語ならTHE SUN……まあ、そういうスタンドということじゃろ」
「なるほど。太陽そのままですね」
蓮司はそこで初めて名前に相当する呼び方を知った。
「でも承太郎さん、小石をあそこまで飛ばすのは反則じゃないですか」
「スタンドの力だ」
「そう言われると何も言えませんね」
花京院が小さく笑う。
「それより、ジョースターさんの顔を見たかい?」
「花京院!」
ジョセフがすぐに反応する。
「わしは本気でお前らが熱にやられたと思ったんじゃぞ!」
「俺も最初は同じこと思いましたよ」
蓮司が言うと、ジョセフが満足そうに頷いた。
「分かってくれるか、神代!」
「はい。ただ、ジョセフさんが本気で慌ててるのを見たら、ちょっと面白くなってきました」
「お前もそっち側か!」
ポルナレフが砂の上で笑い、花京院も肩を震わせる。承太郎まで帽子の陰で僅かに口元を上げていた。久しぶりに、敵を倒した後の空気が軽かった。誰かが重傷を負ったわけでもなく、仲間を失ったわけでもない。異常な暑さに苦しめられたとはいえ、最後には敵の隠れ方がおかしくて笑えた程度で済んだ。
蓮司は完全に治った両腕を見る。魔虚羅が適応した瞬間のことよりも、その直前に自分が「もう一発受ければいい」と考えたことの方が妙に残っていた。結果的には受ける必要がなかったし、今でも攻撃を受けずに済むならその方がいいと思っている。それなのに、あの時だけは「受ければ適応が進む」という理由が、痛みや危険を避ける理由より先に出てきた。
「…………」
何故だろう。以前なら、そんな考え方をしただろうか。
「神代君?」
花京院に呼ばれ、蓮司は顔を上げる。
「すみません。ちょっと考え事してました」
「何か気になることでも?」
「大したことじゃないです」
今のところは、本当にそれだけだった。少し考え方が変わってきただけかもしれない。戦いにも、魔虚羅の適応にも慣れてきたからだと説明すれば、それほど不自然でもない。
蓮司はそう考えて思考を打ち切った。
「それより、ラクダ全部逃げましたけど、ここからどうするんです?」
笑い声が止まる。一行が暗い砂漠を見回した。逃げたラクダの姿はどこにもない。ジョセフの視線が、倒したスタンド使いの車へ向く。蓮司も同じ場所を見る。
「……あれに乗るんですか?」
「他にあるか?」
「また敵が使ってた乗り物ですね」
「今度は車そのものがスタンドじゃないだけましじゃろ!」
そこまで言われると、確かに以前よりはましだった。蓮司は立ち上がり、散らばった荷物を拾い始める。どうやらエジプトへ着くまで、乗り物への信用だけは戻りそうになかった。