月曜日
目が覚めた瞬間、体の軋みがいつもより軽いことに気づいた。
二週間前は、起床の合図と同時に全身の筋肉が悲鳴を上げていた。今は、まだ張りはあるものの、それを「痛み」ではなく「準備運動の続き」として受け止められている自分がいる。ベッドから起き上がり、軽く肩を回してみる。関節の可動域が、明らかに広がっていた。
「お、今日も一番乗りか」
兵舎の廊下でグレンに声をかけられた。彼もまた、以前より足取りが軽い。
「相棒こそ。体力強化メニュー、僕だけじゃなくてお前も真似してるだろ」
「バレてたか。あれ、効くんだよな……最初の三日はマジで死ぬかと思ったけど」
二人で並んで簡単な柔軟をしながら、他愛のない話をする。こういう時間が、士官学校時代とは違う形で今の生活を支えているのだと、最近になって実感するようになった。
三週目に入って、シーマから個人的に課された体力強化メニューは、いつの間にか小隊全体の朝の日課に紛れ込んでいた。誰かに強制されたわけでもないのに、グレンもレナもダンも、起床時間を早めて自主的に体を動かしている。最初は物珍しさから覗いていただけの三人が、いつしか本気で取り組むようになっていた。
朝食の席で、その空気に気づいたシーマが片眉を上げた。
「揃いも揃って早起きだな」
「隊長についていくには、これくらいしないと」とダンが胸を張る。以前のリオンへの対抗心は、いつしか小隊全体への向上心に変わっていた。
シーマはそれ以上何も言わなかったが、トレイを置く手つきがどこか機嫌よさそうに見えた。
月曜は基本訓練日だ。低重力下での急制動と空間認識の確認――もう数え切れないほど繰り返してきた課題だが、今日の一本目、私は自分の機体の挙動にいつもと違う手応えを感じた。
カタパルトを蹴り出し、規定コース上に浮かぶ複数のブイを縫うように急制動を繰り返す。減速、姿勢反転、再加速。以前は一つ一つの動作の間に、頭の中で「次はこうする」という一拍の間があった。今日はその間がない。ブイが視界に入った瞬間には、もう腕と脚が答えを出している。
「――軽い」
思わず声が漏れた。制動から次の姿勢制御への移行が、以前より一拍早い。頭で考えるより先に、腕と脚が最適な操作系列を選んでいる。タイム計測を担当していたオルテガが、通信越しに珍しく感心したような声を出した。
「坊主、今の制動、記録更新だぞ」
「マジですか」
「数字は嘘をつかん。二本目も同じ調子でいけ」
その言葉通り、二本目の空間認識課題――複数のマーカーを規定順に、規定姿勢で通過する複合課題――でも、私はほとんど詰まることなく完走した。コックピットの中で、汗ばんだ手のひらを一度だけ握り直す。悪くない滑り出しだった。
デブリーフィングで示されたログには、二週目終盤からの伸びが数字となって表れていた。同期のグレンやダンと比べても頭一つ抜けている――が、シーマやガイアたち三人の記録には、まだ大きく及ばない。並べられたグラフの上で、自分の線がようやく「上位」に届いた実感と、その先にまだ果てしない距離が残っている事実が同時に胸に落ちてきた。
「みんなに勝てても、隊長格にはまだ届かない、か」
昼食の席で、その差をぼんやり口にすると、隣に座ったベラが淡々と返した。
「当たり前でしょう。あの人たちは、そこらの叩き上げとは格が違う。誰もが名を知るトップエース候補なんだから」
身も蓋もない正論に、小さく苦笑いがこぼれる。だが悔しさよりも、伸びしろがまだあるという確信の方が今は強かった。トレイの上のスープをかき混ぜながら、午後の予定を頭の中で組み立てる。
午後の二本目の出撃は、午前中の課題をより高速化した応用形だった。速度が上がるほど、判断の余地は削られていく。それでも、今日の私はどうにか食らいついていけた。着艦後、機体から降りるとき、いつもより疲労が薄いことに自分でも驚いた。
夜、シミュレーター室に顔を出すと、リン・オーバーが一人で機体を動かしていた。普段はフィンと組むことが多い彼と、二週目からの方針通り自主的に対戦を申し込む。
「リン、一戦、付き合ってもらえないか」
「……珍しいな。フィンじゃなくて俺かよ」
「フィンとは何度か組んだが、お前の狙撃の間合いは、まだよく分かっていない」
開始早々、リンは中距離を保ったまま牽制の射撃を絶やさなかった。近づこうとすればするほど、進路を先読みされたように弾幕を敷かれる。三度目の接近でようやく間合いを詰め、一撃で押し切った――が、結果は僅差での私の勝ち。だが振り返れば、リンの牽制射撃に何度も進路を制限され、こちらの手数の多くが無駄撃ちに終わっていた。
「悪くねえよ。……にしても、二週間前のお前とは別人だな」
その一言に、悪い気はしなかった。モニターに表示された戦闘ログを見返しながら、狙撃手特有の「待ち」の呼吸を、もう少し体に覚え込ませておく必要があると感じた。
火曜日
応用訓練日、ダミーバルーンを使った対艦・対MS射撃訓練。空間に展開された十数個の標的を、規定時間内にどれだけ正確に撃ち抜けるかを競う課題だ。
一本目の射撃課題で目を引いたのは、カイの変化だった。以前の彼は、射撃が苦手な分を近接戦闘へのこだわりで補っていたが、今日は複数目標への射撃処理で明確に安定感を増していた。標的の切り替えに迷いがなく、照準の移動も無駄がない。
「カイ、お前……射撃、練習したのか」
「別に。ただ……」
カイは言葉を濁したが、後で聞けば、夜のシミュレーターでベラに射撃の基礎を叩き込まれていたらしい。オルテガ小隊の二人は、互いの弱点を補い合う形で伸びていた。
私自身の射撃課題の結果も、二週目より明らかに良くなっていた。標的の切り替え速度、命中率、どちらも自己ベストを更新している。だが、隣で結果を確認していたオルテガが、通信越しにぽつりと付け足した。
「悪くないが、当てるだけなら誰でもできる。実戦で問題になるのは、当てた後だ」
その言葉の意味を、すぐには飲み込みきれなかった。
午後、ダミーバルーンを使った演習の合間、私はカイと近接戦のスパーリングを申し込んだ。
「カイ、一本だけ付き合ってくれ。三週目、近接がどこまで通用するか試したい」
「……いいぜ」
一本目、一撃離脱の型で先手を取る。踏み込みからの初撃は、カイの防御をわずかに崩した。だが二の太刀が続かない私の弱点を、カイは正確に見抜いていた。初撃の勢いが消えた瞬間、カイの機体がわずかに間合いを詰め直し、そこから斬り合いのペースを握られる。斬り合いを続けたまま、じわじわと間合いを支配され、最後は僅差で押し切られた。
「相変わらず、一撃目は速いけどな」
「二の手が……まだだめだ」
悔しさを噛み締めながらも、その悔しさの質が二週間前とは違うことに気づく。以前は「勝てない」ことへの焦りだったが、今は「あと一歩」という手応えに近い。カイの機体が離脱していくのを見送りながら、二の太刀の型をどう組み立て直すべきか、頭の片隅で考え始めていた。
デブリーフィングで、シーマが小隊全員を見渡してこう言った。
「三週目に入って、お前たちの動きが変わった。互いにぶつかっても、以前ほど一方的にはならない。……だが、勘違いするな。私たちとの差は、まだ埋まっていない」
誰も反論しなかった。むしろ、その事実を突きつけられたことで、全員の目つきが一段引き締まった気がした。グレンでさえ、いつもの飄々とした表情を消してうなずいていた。
夜、シミュレーター室でフィンと再戦した。先週、初めて対戦した時は、距離を取る静かな戦い方に苦しめられ、僅差で敗れた相手だ。
開始直後、フィンは前回同様に距離を保ち、こちらの接近を許さない立ち回りを見せた。だが今回は、ただ距離を詰めるのではなく、一度あえて後退し、フィンの射線を切るように迂回してから仕掛けた。結果は、また僅差での敗北。だが内容は前回とまるで違った。フィンの間合い管理に対し、こちらも一度は互角の駆け引きに持ち込めた。最後の一撃だけ、コンマ数秒の判断の差で沈められた。
「……悪くない」
フィンが珍しく、感情の読めない声のまま短く評した。この数週間で、それが彼女なりの賛辞に近いものだということくらいは、なんとなく分かるようになっていた。
水曜日
非飛行日。機体はドックに預けられ、パイロットたちは反省会と座学、そして通信訓練に一日を費やす。
朝の反省会で、シーマが週明けからの三日間のログをまとめて示した。
「三週目の全体的な傾向を言っておく。得意分野に限れば、お前たちの腕はもう熟練パイロット並みだ。……だが、私やガイアたち三人が相手だと、まだ一歩及ばない。ここから先、その一歩を詰められるかどうかは、お前たち自身の課題の見つけ方次第だ」
言葉は淡々としているが、その裏に確かな期待が滲んでいるのを感じ取れるようになったのは、いつからだろうか。
午前の座学は、連邦軍の艦隊運用に関する基礎資料の読み合わせだった。まだ実戦の匂いのしない、あくまで教範上の話として語られる内容だが、説明する担当士官の口調にはいつもよりわずかに張りがあるように感じられた。ノートを取りながら、なぜかふと、この座学の内容がそう遠くない未来に意味を持つ日が来るのではないかという、根拠のない予感がよぎった。
座学の合間、ダンが小さなノートを広げているのに気づいた。整備班の技術用語がびっしりと書き込まれている。
「ダン、それ……」
「ああ、暇な時に整備班に混ぜてもらってる。機体の癖、パイロットより整備の方が先に気づくこともあるからさ」
二週目の日曜に芽生えた自主的な変化が、着実に根を張っていた。整備班の一人が通りかかりざま、ダンの肩を軽く叩いた。
「筋がいいぞ、お前。将来、整備科に転向するか?」
「いや、俺はパイロットのままで。ただ、自分の機体くらい、自分でも分かっておきたいんです」
その姿を見ていたレナが、私の隣でぼそりと呟いた。
「みんな、変わったよね。二週間ちょっとで」
「お前もだろ」
「そりゃそうよ。負けっぱなしは性に合わないもの」
レナは午前の射撃座学の点数を密かに気にしていたらしく、教本の余白に小さく計算式を書き込んでいた。誰もが、それぞれのやり方で足元を固めようとしていた。
昼食後の通信訓練では、四つの小隊を跨いだ連携演習が組まれた。実機を交えた数的不利演習では既に顔を合わせていたが、四小隊が机上とシミュレーターの両方で顔を揃えるのは久しぶりだった。
ガイア・オルテガ・マッシュの三人が同じ会議室に顔を揃えるのを見るのは、まだ数えるほどしかない。ガイアがモニターに簡易な陣形図を描きながら、興が乗った様子で説明を始める。
「連携っつってもな、小手先の合わせ技より、各々が自分の役割を分かってりゃそれでいい。俺が突っ込んで、マッシュが繋いで、オルテガが仕留める。それだけの話だ」
「単純だが、単純に強い」とオルテガが低く付け足す。
図面上の矢印を目で追いながら頷く一同を見て、ガイアがふと退屈そうに肩をすくめた。
「……つっても、図で見ても分かんねえよな。百聞は一見に如かず、実際にやって見せた方が早い」
「私は反対しないが」とマッシュが淡々と応じる。
結局、午後の座学枠は急遽シミュレーター室での実演に差し替えられた。ガイア・マッシュ・オルテガの三機が一組となり、迎え撃つ側は二人一組のペアを三組作って順番に挑むことになった。まずはリオンとグレン、次にカイとベラ、最後にフィンとリン。全員でまとめて相手をしても、動きの意味を誰も体で覚えられない――というマッシュの提案だった。
「一発でも入れられたら、坊主たちの勝ちにしといてやる」
ガイアの軽口を合図に、一組目の演習が始まった。
情報は何もない。突出――分断――仕留め、という言葉だけを頭に入れた状態で、いきなり本物の速度に晒される。型に嵌まった動きを崩すことこそがリオンとグレンの得意分野であり、本来なら息の合った連携ほど崩しやすい相性のはずだった。だが、日頃から顔を合わせているガイアたちは、二人の癖を隅々まで知り尽くしている。型崩しの糸口を作ろうとした瞬間には、もう次の一手を読まれていた。
最初の数秒、ガイアの機体だけが単騎で突出してくる。リオンとグレンが左右から挟撃を試みた瞬間、ガイアはあえて被弾覚悟の直進で二人の照準を吸い寄せた。そこへ死角から滑り込んできたのがマッシュだ。二人の間に割り込み、連携を分断しようとする。
「――しまった」
分断されかけた瞬間、リオンは反射的に機体を大きく右へ流し、わざと被弾コースに入り込んだ。日曜、シーマに叩き込まれた「わざと当てさせて照準を引きつける」動きだ。狙い通り、オルテガの照準がリオンへと吸い寄せられる。その隙にグレンが後方へ回り込み、一瞬だけオルテガの背後を狙う体勢を作った。
「グレン、今だ!」
だが、その一瞬の間隙をマッシュが読んでいた。グレンの機体が引き金を引くより早く、マッシュが割り込んでコースを塞ぐ。稼いだ時間はわずか数秒。それでも、何の抵抗もなくやられた最初の想定より、二人はずっと粘っていた。最後はオルテガの一撃で二機とも撃破判定になったが、開始から数えて優に三十秒近くが経っていた。
「今の、私が的になっている間に、マッシュさんが割って入ってきたのって……」
リオンが呟くと、オルテガが低く答えた。
「そうだ。お前らは俺たちの誰か一人を"見て"しまう。だから隙間ができる。二人がかりで見なきゃならないところを、一人分の意識でしか見られなくなる瞬間がある。そこを突く。それに、お前らみたいに型を崩してくる相手は本来厄介なんだが……悪いな、こっちはお前らの癖まで先週の演習でだいたい頭に入ってる。予想外の動きも、二、三手先までは読める。……にしても、坊主。今の当て身の使い方、誰に教わった」
「シーマ隊長に」
「ふん。あの人らしいな」
交代して二組目、カイとベラの番になった。一組目の光景を見ていた分、カイとベラには最初から迷いがなかった。カイは開始直後からガイアの誘いに乗らず後退を選び、距離を保ったままベラが牽制射撃を続けて、マッシュの侵入経路を事前に潰しにかかる。一度目を見ているというだけで、初見のリオンたちより明らかに反応が速い。それでも二十秒ほど粘ったところで、業を煮やしたガイアが強引に距離を詰め、最後はオルテガの一撃で終わった。
「粘ったな。だが粘るだけじゃ、いずれ息切れする」
オルテガの評は短かったが、カイは悔しそうに拳を握った。距離を取る判断そのものは間違っていなかった、という手応えだけは残ったようだった。
最後にフィン・リンの狙撃コンビが挑む。二組の戦い方を見た上で、二人は最初から連携を組もうとせず、あえて散開して二方向から牽制射撃を浴びせた。ガイアの突出とマッシュの分断、その両方の軌道をあらかじめ読んでいたからこそ組める布陣だった。ガイアの直進に対し、フィンが一射だけ命中弾を通す――このメンバーの中で唯一、三人のうち誰か一機に有効打を与えた瞬間だった。だが、その隙にマッシュとオルテガが左右から回り込み、結局は数十秒後に二機とも仕留められた。
「今の一発は褒めてやる」
珍しくガイアがそう言うと、フィンは表情も変えずに小さく頷いただけだった。
三組すべてが終わったところで、マッシュが淡々と締めくくった。
「見た回数だけ、対応は良くなる。それでも崩せなかったのは、俺たちが積んできた場数の差だ。役割を守れば、息は勝手に合う。逆に言えば、お前らも自分の役割さえ見失わなければ、いつか同じことができる」
三人の呼吸には、長年の付き合いだけが持つ独特の軽さがあった。分かっていても防げない。だが、初見で最も長く食い下がったリオンとグレン、一度見て的確に対応したカイとベラ、二度見て初めて有効打を返したフィンとリン――三組の結果を並べてみると、後から挑んだペアほど的確に対応できていたことに気づく。見た数だけ、対応の精度が上がっていく。頭で理解することと、体でその速度に対応することの間には、まだ大きな溝がある。それでも、その溝の埋め方にはいくつもの道筋があるのだと感じられた。
その動きに、なぜか胸のどこかが反応した。まだ言葉にできない何かが、遠く未来の景色と重なるような、そんな予感だった。演習が終わった後も、突出――分断――仕留めという三つの動きの残像が、しばらく頭から離れなかった。
夕食の席は、いつもより賑やかだった。グレン、レナ、ダンと四人でテーブルを囲み、今日の座学の内容や、明日の総合演習の予定について軽口を交わす。誰かが冗談を言うたびに、以前より大きな笑い声が上がるようになったのは、気のせいではないだろう。三週間かけて積み上げてきた何かが、こういう場所にも確かに表れていた。
食事の後、部屋に戻る前に、私は一人でシミュレーター室に立ち寄った。誰も誘わなかった。今日の借りは、今日のうちに自分の頭で整理しておきたかった。
演習モードで、ガイア・マッシュ・オルテガの三機を模した仮想敵を呼び出す。無論、本物ほどの精度は出ないだろう。それでも、突出――分断――仕留めという型の骨格だけなら、繰り返し体に叩き込むことはできるはずだった。
一回目、案の定、昼間と同じように単騎の誘いに引っかかり、あっさり分断された。二回目、今度は誘いに乗らず初手から距離を取ってみる。だが今度は距離を保ちすぎて、逆に三機がかりで包囲される形になった。距離を取ればいいという単純な話ではないらしい。
三回目、四回目と繰り返すうちに、少しずつ見えてくるものがあった。誘いに乗るでも、距離を取りすぎるでもなく、単騎の機体が仕掛けてきた瞬間、あえて半歩だけ引いて相手の勢いを空振りさせる――今日、シーマ仕込みの当て身で稼いだ数秒間を、もう一段効率よく使う形。うまくいけば、分断役が入り込む前にこちらの陣形を立て直せるかもしれない。
十回近く繰り返した頃には、仮想敵の分断役をわずかに遅らせることができるようになっていた。もちろん、それだけで勝てるはずもない。だが、今日の「何もできなかった」という感覚が、「次はこうする」という具体的な形に変わっていくのを感じた。
夕方、点呼の前に自室でノートを開く。三週目、月から水までの三日間を振り返り、成長した点と、まだ足りない点を書き出していく。
――一撃離脱は通用する。二の手が続かない近接戦の弱点は変わらず。射撃はみんなと肩を並べるレベルには追いついた。隊長格との差は依然大きい。ゾーンは実戦訓練以降、一度も再現できていない。連携崩しの糸口も、まだ見えたとは言えない。
ペンを止め、窓の外の人工太陽の光を見上げる。
二週間前より確かに強くなった。だが、この訓練期間が終わる先に何が待っているのか、まだ誰も、本当の意味では知らない。
――三週目は、まだ始まったばかりだった。