ムサイのブリッジ後方モニターに映った光景に、私は思わず息を止めた。
ルウム宙域。連邦軍のティアンム艦隊を迎え撃つべく、ジオン公国軍がここまで各所から掻き集めた戦力の、その全容がようやく視界に入ってきたところだった。
数えることに意味はないと分かっていながら、それでも私は目でざっと追ってしまう。巡洋艦、輸送艦、護衛艦――大小様々な艦影が、宙域のあちこちに幾重にも連なっている。エンジンの推進光がまるで無数の星のように瞬き、それが本物の星々と入り混じって、どこまでが艦隊でどこからが宇宙そのものなのか、一瞬分からなくなるほどだった。
「……これが、キリング中将の艦隊」
隣で同じモニターを見上げていたリリア姉さんが、そう呟いた。声には隠しきれない緊張があった。
「いや」とミロがすぐに訂正する。「これは中将の艦隊だけじゃない。各サイド方面から集まってきた部隊全部だ。合流点がここってだけで、指揮系統はまだ一本化されてない」
「一本化、されてない?」
「これからされる、って話だ。少なくとも艦長はそう聞かされてる」
私は改めてモニターに目を戻した。言われてみれば、艦の陣形はまだどこかまとまりを欠いている。それぞれの部隊が、それぞれの出自を引きずったまま、ひとつの宙域に押し込まれているような、そんな印象だった。
「多いな」
思わず漏らした呟きに、ミロが小さく笑った。
「多いだろう。俺も驚いた。……だが、な」
言葉が途切れる。私はその先を待ったが、ミロは続けなかった。代わりに視線をモニターの奥、艦隊のさらに向こう、まだ何も映っていない暗闇の方へと向けていた。
「ミロ大尉?」
「なんでもない。――ただ、これだけの数を並べても、向こうを楽に潰せると思うほど、俺は楽観的じゃないってだけだ」
その言葉の重さに、ブリッジに一瞬の沈黙が落ちた。
連邦軍のティアンム艦隊。この戦争でジオン軍が初めて正面から相対する、まとまった規模の敵主力艦隊。サイド4のパトロール部隊とは、おそらく格が違う。
「弾薬の搬入量、開戦前とは比べ物にならないですよね。あれだけ集まってるんだから当然か」
私が言うと、ミロは頷いた。
「今頃はどの艦も、似たようなことになってるだろうな。……お前らの機体も、着いたらもう一度点検だ。今度ばかりは、40分の稼働時間をフルに使い切ることになる」
その言い方に、私は自然と背筋が伸びるのを感じた。
艦内放送が入ったのは、それからほどなくのことだった。全乗組員に対し、間もなく合流艦隊への編入手続きが完了する旨、そして詳細な作戦ブリーフィングは合流完了後に改めて行われる旨が告げられる。
「行くぞ」
ミロが先に踵を返した。リリア姉さんも私も、その背中を追ってブリッジを後にする。
格納庫へ向かう通路の途中、私はもう一度だけ、小さな窓の外に目をやった。無数の艦影が、静かに、しかし確実にひとつの塊へと寄り集まっていく。その光景は美しくもあり、同時にどこか、抗いようのない何かに巻き込まれていくような、不穏な予感も孕んでいた。
左胸のポケットに触れる。シーマ中佐から贈られた、あの安物のコロンの小瓶の感触が、いつもよりわずかに冷たく感じられた。
しかしその予感が形を変えて現実になったのは、合流手続きが完了してから、いくらも経たないうちのことだった。
艦内放送が、今度は違う響きで入った。「全艦、進路変更。目標、サイド2」――それだけだった。
私は思わずリリア姉さんと顔を見合わせた。ここまで来て、ようやく艦隊が形になったばかりだというのに、その艦隊ごと、まるきり別の方角へ動き出すという。
「……サイド2? ルウムじゃなくて?」
格納庫の隅で工具を片付けていたグラムさんが、怪訝そうに顔を上げた。
「俺に聞かれても分からんよ、坊主」
そう言いながらも、グラムさんの表情には隠しきれない戸惑いがあった。長年現場を渡り歩いてきた男の勘が、この命令のどこかに違和感を覚えているのが、傍で見ていても分かった。
ブリッジに戻ったミロが、艦長との短い遣り取りの後、私たちを呼んだ。
「艦長も詳しいことは知らされてないそうだ。上からは『目標をサイド2に変更する』、それだけ」
「理由は……」
「ない。少なくとも、この艦のレベルには降りてきてない」
リリア姉さんが眉をひそめる。
「艦長ですら、ですか」
「艦長ですら、だ」
ミロは腕を組み、モニターに映る、今まさに向きを変えつつある艦隊の姿を眺めていた。
「……こういう時は大抵、下には見せない絵が上にある」
ミロはそこで一度言葉を切り、モニターの艦隊の航跡を目で追った。
「考えてみろ。わざわざあれだけの数を一箇所に集めておいて、まとまるより先に散らす。効率だけで言えば無駄でしかない。だとしたら、集めること自体に意味があったんだ。――たとえば、ルナツー方面の目を引き付けておくため、とか」
「陽動、ということですか」
「あくまで俺の勘だ。上から聞いた話じゃない。……こんなことは、まず噂にすらならない。知ってる人間が最初から一握りしかいないんだろうさ」
その言葉に、私は改めて落ち着かない気分になった。もしそれが当たっているのなら、あれだけの数の艦が、あれだけの熱気で集まっていたこと自体が、誰かの絵図の一部でしかなかったことになる。自分がどんな絵の中の一手なのかも知らされないまま、次にどこへ向かい、何と戦うことになるのかさえ上の判断ひとつで変わってしまう――その頼りなさが、じわりと胸に応えた。
「そんなこと、一般の将校にも知らされないんですか」
「知らされるわけがない。知ってたら、演技する必要もなくなる」
ミロの声は淡々としていたが、その端に、微かな苛立ちが滲んでいた。命令には従う。だが、それが心地良いものだとは限らない――そんな感情が、言葉の隙間から透けて見えた。
艦隊はその後、一日とかからずサイド2への進路に乗った。道中、これといった交戦はなかったが、艦内の空気は明らかに張り詰めていた。誰もが「なぜサイド2なのか」を胸の内で問いながら、それでも口には出さず、日々の点検と訓練を淡々とこなしていた。
その道中、一度だけ艦隊全体が速度を落とす場面があった。
「補給か」
ブリッジのモニターを覗き込んだミロが、独り言のように呟いた。見ると、艦隊の合間を縫うようにして、ずんぐりとした艦影がいくつも近づいてくる。ムサイのような戦闘艦とは明らかに違う、無骨で腹の膨れたような船体だった。
「パプア級ですね」
私が言うと、ミロは頷いた。
「弾薬と燃料、それに機体の予備部品まで積んでる。……ムサイの艦内容積は知っての通りだ。単艦じゃとても長期戦を支えきれない。ああいうのが後ろについてくれてる間は、まだましだと思っておけ」
やがてムサイの側面にパプア級の一隻が接舷し、ケーブルと連結アームが伸びていく。格納庫では次々と補給物資が運び込まれ、グラムさんたちが慌ただしく立ち働いていた。
「弾倉も予備の関節ユニットも、根こそぎ積み替えだ。手伝えるやつは手伝え」
グラムさんの号令に、私とリリア姉さんも荷運びに駆り出された。汗だくになりながらコンテナを運ぶ合間、ふと視線を上げると、パプア級の船体越しに、遠くの艦隊がまだ列をなして進み続けているのが見えた。あれだけの数の艦を支えているのが、この無骨な補給艦の群れなのだと思うと、不思議な感慨があった。
「派手な艦じゃないが、これがなきゃ俺たちは何もできない」
グラムさんがぽつりと言った言葉が、妙に耳に残った。
補給を終えた艦隊は、再び速度を上げてサイド2への航路に戻った。
サイド2に到着したのは、その日のうちのことだった。
窓の外に見えたのは、これまで見てきたどのコロニーとも違う光景だった。円筒形の巨大な構造物の各所に、赤い光が灯っていく。あれは――点火だ。
「あれは……コロニーの、推進器?」
私が呟くと、隣でリリア姉さんが頷いた。
「移動させる気なんだ、あのコロニーごと」
巨大な人工の大地が、ゆっくりと、しかし確実にその位置を変え始める。何万人という人間が暮らしていたはずのその場所が、今は兵器としての役割を与えられ、定位置から引き剥がされていく。その光景に、私は言葉を失った。
「ティアンム艦隊との交戦は、ラグランジュポイント1よりも地球寄りになるらしい」
ミロがぽつりと言った。
「地球に、近い……」
「ああ。連邦もそこを死守に来る。今度のは、サイド4の時とは規模も意味も違う」
ミロは一度言葉を切り、それから声を落とした。
「向こうもこっちも、切り札は隠し持ってるはずだ。核の応酬になってもおかしくない戦場だと思っておけ。……一瞬の油断が、そのまま命取りになる」
その言葉に、私は無意識のうちに拳を握っていた。あの日、無我夢中で撃墜したセイバーフィッシュの数機。あれとは比べ物にならない何かが、この先で待っている。そんな予感が、確信に近い重さで胸の中に降りてきた。
コロニーの推進器が、一段と強い光を放つ。艦隊全体が、その巨大な影に付き従うようにして進路を変えていく。
私たちは今、歴史のどこかへ、否応なく運ばれていく途中にいるのだと、そう思った。
それからの日々は、拍子抜けするほど静かだった。
艦隊は移動を続けるコロニーを中心に、幾重もの円を描くようにして展開していた。近くを固めるのは巡洋艦クラス、その外周を駆逐艦や小型艦が埋め、さらにその外側を、常に数機のMSが哨戒に飛ぶ。移動する巨大な人工の大地を、鎧のように幾層もの艦影が守っている――そんな陣形だった。
「見た目ほど暇な仕事じゃないぞ」
初めて哨戒当番が回ってきた朝、ミロがそう釘を刺した。哨戒任務は各隊の持ち回りで、丸一日、数時間おきに交代しながら艦隊周辺の空間を見張り続ける。灰狼隊にも数日に一度、その順番が巡ってきた。
「ウルフ1よりウルフ2、ウルフ3。定点への移動を終えた。索敵範囲、確認しろ」
コックピットの中、ミロの声が通信越しに届く。任務中はこうして互いをコールサインで呼び合う。艦内での気安いやり取りとは違う、張り詰めた響きだった。
「ウルフ3、了解。異常なし」
「ウルフ2、こちらも異常なし。……ただ、静かすぎる気もする」
リリア姉さんの声に、私も同じことを感じていた。ミノフスキー粒子が濃く撒かれたこの宙域では、レーダーはほとんど役に立たない。頼りになるのは自分の目と、僚機との連携だけだった。何もない虚空を見つめ続ける時間は、想像していた以上に神経を削った。
「静かなのはいいことだ。だが、油断はするな。連邦の斥候が先に見つけて、こっちが気づかないまま去っていくことだって有り得る」
ミロの言葉に、私は改めて周囲へ視線を走らせた。星の海は変わらず美しく、しかしその美しさの向こうに、いつ牙を剥くとも知れない何かが潜んでいるような気がしてならなかった。
哨戒の合間には、時折、僚艦から放たれた偵察用の小型艇が近くを横切っていくのが見えた。索敵の網は、艦隊全体で幾重にも張り巡らされている。誰も、油断してこの艦隊を作っているわけではない――そのことが、逆にこの先で待つ相手の大きさを物語っているようだった。
当番を終えて艦内へ戻ると、格納庫ではグラムさんが額の汗を拭いながら、私たちの機体を出迎えた。
「異常はないか」
「今のところは」
「そうか。……まあ、今のところ、な」
グラムさんはそう言って、格納庫の奥、まだ動き続けるコロニーの光を見上げた。誰もが同じ言葉を、同じ重さで胸に抱えていた。今のところは、何も起きていない。だが、それがいつまで続くのかは、誰にも分からなかった。
窓の外、僚艦から次の哨戒当番が発進していく光を遠目に見送りながら、私はふと、シーマ中佐から受け継いだ「敵の気配を読む」という感覚を、意識して研ぎ澄まそうとしている自分に気づいた。
まだ何も見えない。だが、確かに近づいてきている――そんな予感だけが、日に日に強くなっていった。
その予感が裏付けられたのは、初めての哨戒当番を終えた、翌日のことだった。
夕食時、食堂のモニターに簡易の艦隊内通達が流れた。文面は素っ気ないものだった。曰く、艦隊北方を哨戒していた別部隊が、連邦軍の哨戒部隊と接触、交戦したという。詳しい戦果や被害までは記されていない。
「北方って、どのあたりだ」
ミロがフォークを置いて呟いた。誰に聞くでもない問いに、答える者はいなかった。
食堂のざわめきが、一瞬だけ小さくなった気がした。それぞれが、それぞれの想像で、その「接触」の意味を測っているのが分かった。斥候同士の小競り合いなのか、それとも本隊の先触れなのか――誰にも判断のしようがなかった。
「……近いな」
グラムさんが低く言った言葉に、私は黙って頷くことしかできなかった。
静かだった日々に、初めて確かなひびが入った。ティアンム艦隊は、もう遠い噂話の中の存在ではない。この宙域のどこかに、確かに存在している。
その夜は、誰もがどこか眠りの浅い夜を過ごしたのだと思う。私自身、何度も目を覚まし、そのたびに狭い個室の天井を見上げていた。
艦内が慌ただしくなったのは、翌朝のことだった。
「総員、第二種戦闘配置。繰り返す、総員、第二種戦闘配置」
艦内放送のその一声で、眠気は一瞬にして吹き飛んだ。廊下を行き交う足音、開け放たれる隔壁の音、遠くで響く号令――昨日までとは明らかに違う空気が、艦全体に満ちていた。
招集されたブリーフィングルームには、灰狼隊の三人だけでなく、艦の主だった士官たちも顔を揃えていた。艦長が壇上に立つと、それだけで室内の空気が張り詰めた。
「連邦軍ティアンム艦隊、本隊との接触を確認。現在の速力及び針路から、本日十三時十五分、我が艦隊との交戦が開始される見込みだ」
その一言に、室内のざわめきがぴたりと止んだ。数字という形を与えられた瞬間、それまで漠然とした不安だったものが、逃れようのない現実に姿を変えた。
「各隊、配置につき次第、詳細な布陣は追って通達する。以上」
簡潔な言葉と共に、ブリーフィングは終わった。交戦開始までは、まだ数時間の猶予がある。それでも誰も、多くを語らなかった。長く喋ったところで、この先で待つものが軽くなるわけではないと、誰もが分かっているようだった。
私たちはブリーフィングルームを出ると、まず控室でノーマルスーツに着替えた。締め付けの強い生地に身体を通し、各部のシールを確認していく手つきは、いつもの訓練と変わらないはずなのに、今日はやけにぎこちなく感じられた。
着替えを終えると、格納庫の隣にある待機室へ移った。パイロット用の簡素な椅子がいくつか並ぶだけの、殺風景な部屋だった。壁際のモニターには、艦隊の配置図が静かに映し出されている。
「まだ、しばらくかかるな」
ミロがそう言って、椅子に深く腰を下ろした。リリア姉さんは黙って自分のヘルメットを膝の上に置き、じっとその表面を見つめている。私はと言えば、座っていることさえ落ち着かず、何度も足を組み替えていた。
待機室には灰狼隊の三人だけがいた。狭い部屋に沈黙が満ちていく。誰かが小さく祈るような仕草をし、誰かは目を閉じて動かない。言葉を交わす者は少なく、ただ時間が過ぎていくのを、それぞれのやり方で耐えているようだった。
モニターの片隅に表示された時刻が、少しずつ十三時十五分へと近づいていく。その数字を睨みながら、私は何度も拳を握っては開くことを繰り返していた。
やがて艦内放送が、抑えた声で状況を伝えてきた。
「――十三時十五分。第一波、C型部隊、発進を開始。連邦軍艦載機部隊との交戦に入った」
ミロが顔を上げ、モニターの配置図を見つめた。表示上では、無数の光点がぶつかり合うようにして入り乱れている。私たちの出番ではない。それでも、待機室の空気は一段と張り詰めた。
時折、艦内放送が短い戦況を挟んでくる。互いに距離を詰め合う両軍、崩れては再び立て直される陣形。詳細までは分からないが、決して楽な戦いではないことだけは、声の抑揚から伝わってきた。
それからしばらくして、放送の声色が明らかに変わった。
「――C型部隊、核使用を確認」
その一言に、待機室の空気が凍りついた。リリア姉さんが小さく息を呑む音が聞こえた。ミロは何も言わず、ただ表示された配置図の一点を見つめ続けていた。
核という言葉が持つ重みは、私にも十分に分かっているつもりだった。だが、それが実際に、この戦場で、今まさに使われたのだと知らされた瞬間の感覚は、想像していたものとはまるで違っていた。腹の底に、冷たい重石を押し込まれたような感じだった。
それから三十分ほどが経った頃だろうか。待機室のドアが開き、艦長自らが顔を覗かせた。
「状況が動いた。第一波の消耗が予想より大きい。――エース級部隊、投入を早める。灰狼隊も含まれる」
その言葉に、私は思わずミロを見た。ミロは静かに頷き、椅子から立ち上がった。
「配置につけ」の号令が待機室に響いたのは、それからほどなくのことだった。
格納庫へ向かう足取りは、いつもより重く、それでいてどこか急いていた。ミロが先頭を歩き、リリア姉さんがその後ろに続く。私は最後尾で、二人の背中を見つめながら歩いた。
格納庫に入ると、グラムさんがすでに三機の前に立って待っていた。いつもの軽口はなく、ただ真っ直ぐにこちらを見ている。
「点検は済んでる。弾も燃料も、積めるだけ積んだ」
短くそう言ってから、グラムさんは一瞬だけ言葉を切った。
「……生きて戻ってこい。それだけだ」
その一言に、私は胸の奥が引き絞られるような感覚を覚えた。頷くことしかできなかった。
搭乗口の前で、私は左胸のポケットにもう一度触れた。シーマ中佐から譲り受けた小瓶の感触を確かめる。何かのお守りになるとは思っていない。それでも、今はその冷たい感触が、不思議と手放しがたかった。
「時間だ」
ミロの声に、私は顔を上げた。コックピットハッチが開き、その奥に見慣れた操縦席が待っている。
私は小さく息を吸い、搭乗ラダーに足をかけた。
座席に腰を下ろし、シートベルトを締める。いつもと同じ手順、いつもと同じ重み。
それから、左胸のポケットから小瓶を取り出した。蓋を開け、狭いコックピットの中へ、三回、軽く吹きつける。安物のコロンの香りが、無機質な機器の匂いに混じって、ふわりと満ちていく。
この匂いを嗅ぐと、不思議と肩の力が抜けた。
――大丈夫。今回も、前回と同じようにできるはずだ。
私は小瓶をポケットに戻し、ハッチを閉めるスイッチに手をかけた。