東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第三十六話 優斗の気づいていなかった一面

 さて、今回の勝敗条件を整理しようか。

 

 俺の勝利条件は大妖精と小悪魔に許してもらうこと、敗北条件は死だ。随分と重い罰なことで。

 

 さて、勝利に近づくためにはこの方法しかないことを俺は知っている。大妖精にひきずられているときに思い立った。

 

 そして今、こたつのある和室に正座させられている。2人に見下されているっていう何かに目覚めてしまいそうなこの状況も俺から恐怖を引き出している。

 

 考えていても仕方ない。やるか……

 

「すいませんでしたあ!」

 

 土の下に座ると書いて土下座。ドゲザ。とにかくDO・GE・ZAである。

 

「だって、こあちゃん。どうする?」

 

「う~ん……どうしよう? 煮るなり焼くなり好きにして構わないよ」

 

「それはもちろん大前提だよ」

 

 なんか末恐ろしい声が頭上で聞こえている。

 

「何とか許してもらえないでしょうか」

 

 そのまま畳に頭をこすり付け、懇願してみる。

 

 小悪魔がこちらを覗き込んできた。そしてそのまま微笑を保ったまま末恐ろしい低音で質問してきた。

 

「優斗、あなたが何やったかわかってます?」

 

「はい、椛のイラストを文に渡してしまいました」

 

「どんなイラストでしたか?」

 

「十五歳未満は閲覧禁止のやつです」

 

「挙句の果てに新聞になんて書かれましたっけ?」

 

「あることないこと書かれました」

 

「大ちゃん、やっぱり処刑でいいんじゃないかな?」

 

「それだけは何とか」

 

 もう小悪魔拷問人になれるって。

 

「まあ、もうやることは決めているんですけどね。――ねえ、ここは私に任せてもらっていい?」

 

「もちろんだよ」

 

 どうやら何かやることになってしまったらしい。

 

 満面の笑みでズボンのポッケから何か取り出した。あれは……なんだ?

 

 それは、両手で持てるサイズで、銀色で包まれていた。先端にはカメラのレンズらしきもの。これって……

 

「これこそ月で買った時代の最先端! ビデオカメラというものです!」

 

 いや、もうスマホの時代なんだが。しかも大きい。確かに幻想郷では超最先端科学なんだろうけど格段驚きもしない。

 

「これ何?」

 

「これはね……これに残しておいた映像を後で見ることができるの」

 

「えっ、どういう事?」

 

「つまり、これに写っているものは絶対ってこと!」

 

「そ、そうなんだ……――それでこれで何をやるの?」

 

 いよいよ発表である。俺の正面に立ち、小悪魔が判決を告げる。

 

「これですね優斗さん、あなたに大ちゃんへ愛の告白をしてもらいますよ。そしてその様子はバッチリこれにおさめます」

 

「ふ~ん ――はっ?」

 

「へえ~ ――ええっ!」

 

 俺と大妖精の声が重なる。こ、告白!? なにその内容、全く意味が、いや意味はわかるけどさ。そりゃいくらなんでも大妖精が嫌がるだろう。

 

「ちょ、ちょっとまってこあ! どういう事? 優斗が私に告白!?」

 

「うん、すごく恥ずかしくって、精神的に来る罰ゲームでしょ?」

 

「いや、そうだけどさ……」

 

「おいおい、そんなの大妖精が迷惑するだろ?」

 

「い、いや……別にそんなことはないけど……」

 

「へっ?」

 

 声が小さすぎて聞き取れない。

 

「ちょっと来て大!」

 

 小悪魔が家の外に引っ張る。扉が勢いよくしまり、全く会話が聞こえない。

 

 大妖精を説得するつもりなのだろうがそうはいかない。確かに大妖精は俺を慕ってくれているが、そこに恋愛感情が存在しないのは火を見るより明らかだ。

 

 それに、好きでもない人に告白されるなんて迷惑以外の何物でもないだろう。ここから導き出される結論は、

 

「無罪放免……だろ?」

 

 俺が得意げにつぶやいたと同時に2人が入ってきた。この勝負、もらった。

 

「了承してもらいましたよー!」

 

「なんだかね……優斗が恥ずかしがっているところ見てみたいと思ったの。すごくレアな光景じゃない?」

 

 マジかよ。完全に大妖精を甘く見ていた。考えてみればさっきの俺の発言。あれ完全にフラグだったな。

 

「既成事実って言葉で……一発でしたね……これで半年はニヤニヤできそうです」

 

「おい、なんか言ったか」

 

「いえいえ」

 

 どうせ心の中で快哉を叫んでいるんだろう。

 

「では、準備しましょう! ほら、大ちゃんこっちに! こうやって大ちゃんの前に立って……あっ、手でも握った方がいいですね。そうですそうです。おっと、目線をそらすのは許しませんよ。アイコンタクトをしっかりとね。うん、完璧です!」

 

 演出家のように口をフル回転させながらてきぱきと進めていく。いっそのこと映画監督にでもなればいいんじゃないだろうか。

 

「カメラも準備オッケーです! ささ、どうぞ!」

 

 くっそ……やるしかないのか……

 

「優斗、い、いつでもいいよ……まあ……嘘っこだからね。そう、これは演技……」

 

 やっぱり照れくさいのか、かすかに頬を赤らめている大妖精。やっぱり子供っぽい。

 

 こんなことなら素直にピチュってた方が良かったかもしれない。今となっては後の祭りだが。

 

「大妖精」

 

 しっかりと大妖精を正面に見据え、いよいよその時を迎える。

 

「好きだ」

 

「…………!」

 

「ぐおっ……!」

 

 なんだこれ? 

 

 言った瞬間、何か熱い物が胸に流れ込んできた気がした。そしてその後にくる、焼けるようなほほの感触。そして最後に気付くいつもよりずっと早い心臓の鼓動。

 

 なるほど、これは恥ずかしい。精神力が削り取られていくようだ。あ~体があっつい。

 

「じゃ、わたしはこれで~」

 

 小悪魔は撮るだけ撮って帰ってしまった。まて、今回得したのあいつだけじゃないか?

 

「だ、大妖精……」

 

「…………」

 

「あ、あれは小悪魔にやらされてやっただけだからな。そんなんじゃないからな」

 

「う、うん……」

 

 どうしよう。超気まずい。

 

 俺はこれまで恋愛経験が無いせいでこういう時の対処法が全く分からない。一番の有効な手は……くっそ、考えても全く分からない。

 

 俺があぐらをかいて首をひねったその時、

 

「こんな優斗初めてだね」

 

 唐突に大妖精に頭をなでられた。大妖精は思考停止してるはずじゃ……

 

「まさかここまで恥ずかしがるとは思わなかったよ」

 

 妖艶な笑いでそう語りかけてきた。何も言えずに固まっている俺に、言葉をつづける。

 

「優斗も意外と……子供っぽいんだね。どんなに頭が良くっても、どんなにクールでいられても、やっぱり優斗は優しいんだよ」

 

「あ、ああ……」

 

 やられた。完全に大妖精の方が一枚上手だった。

 

「はあ……」

 

 なんだか不思議だ。今までずっと子供だと思ってたのに。今の言葉はとても大人びていた気がする。思わずかわいいと思ってしまった。

 

「じゃ、ご飯作ろ?」

 

「……ああ、そうだな。よっし、今日は特に腕によりをかけるぞ」

 

「うん!」

 

 弾幕ごっこ大会の最終日の夜は、やはりこうしてゆっくりと、そして優しく過ぎていくのであった。

 




第三十六話でした。今回のテーマ、優斗を追いこむ。

優斗もこんな感じになるんですね。僕も初めて知りましたw

優斗の心境も若干変わってきたのではないでしょうか。大妖精がどういう行動をとるのかも注目ですね。

では!
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