午後10時、俺たちは博麗神社のこたつで温まっていた。
別に霊夢だけに協力するわけではない。博麗神社の方が近いだけなのだ。ただ、これから関係なくなるのだが。
「はあ……しっかしあんたらもよく考えたわね」
霊夢がつぶやきながら隣に座ってきた。手にはお盆に乗った3つの湯飲み。
「まあ俺が考えたじゃないんだけどな」
「あら、大妖精なの?」
「そうそう。何か変?」
「いえ、いいアイデアだと思うわよ。ただ、妖精がこんなこと思いつくんだって驚いててね」
「まあチルノだったら絶対無理だっただろうな」
妖精にだっておつむの違いはあるものだ。頭がいい妖精が並の人間レベルと考えると少々悲しくなるが。
「ほら、せっかくこの私が入れたのよ。飲んだら?」
「ああ」
悲しい事実を忘れるように、湯呑みを口に運ぶ。
「熱っ!」
「ふふ……かかったわね」
「優斗、舌大丈夫?」
「ぐ……なんて奴だ」
まさか報復に熱湯攻撃とは……舌が天に昇ってしまいそうだ。しかし、目には目をだ。反撃開始。
「ふふ……なかなか面白かったわよ」
「よっし、お賽銭箱を持って行こう」
「うん、これで守屋神社は大盛況だね!」
「ごめんなさい、それだけは勘弁してください」
案外ちょろかったな。大妖精との連携攻撃で完全勝利だ。なんだよ連携攻撃って。
協力しなかったらどうせお札が飛んでくるんだ。少しくらい文句を言ってもいいだろう。
お茶が適度の覚めるのを待ちながら、時が進むのを待つ。
あと数十分で日付が変わる。
思えばこの1年間は今まで生きてきた16年間より長く感じた。無理もない、幻想入りなんて特別な体験、普通出来ないもんな。
約8か月、幻想郷での生活をしてきて分かったことがある。
「なあ、大妖精」
「ん?」
「意外と幻想郷に飛ばされても何とかなるもんだな」
「どうしたのいきなり」
「まあ……ふと思っただけだ」
「そうなんだ。私はここで生まれたとき慌てふためいてたよ」
「あー……頭に浮かんでくる。霊夢が大人げなく弾幕飛ばしてくる姿が鮮明に見えるな」
「!? ちょっとひどいわね。こんな妖精襲うまでもないわよ」
「優斗、あれは嘘だよ。実際チルノちゃんの家に何度も押し入って……」
「さすが霊夢さんだ。清楚な巫女さんだとみじんも感じさせないな」
「2人して畳み掛けてくるんじゃないわよ!」
霊夢の強烈なツッコミをもらうと、俺たちは顔を向け合ってクスリと笑いあった。
恐らく幻想郷で一番深い関わりがあったのはこの大妖精であろう。
大妖精がいなければきっとチルノに凍らされて命を落としていた。
その後、居候させてもらって、本当に感謝している。面と向かって礼を言うのはなんか照れるからやんないけど。
小悪魔が周到に用意した悪魔のビデオの一件があってから、大妖精の印象が大きく変わった気がする。
前までは小さい子供ってイメージしかなかったもんな。今では他の妖精より少し、いやかなり、聡明で大人びていると感じている。
小さな体を持ちながら、それに合わない大きな心を持っている。こんなギャップのある女性を今まで見たことが無い。
また1年、お世話になるのだろう。
「優斗、時間だよ! 起きてる!」
「んあ……ああ」
頭の中で1年を振り返っていたら、日付が変わる10分前になっていた。さて、始めるか。
「2人とも、いよいよ実行の瞬間となったわけだが」
「最後にあれをやらないとね。私は準備万端だよ!」
「あまり気が進まないのだけど……本当に叫ばないといけないの?」
「こうしないと来ないからな。アイツは」
「はあ……わかったわよ」
この作戦を実行するにはあの人が不可欠だ。
あの人を呼ぶためには叫ばなければならない。3人で思いっきり息を吸い、ありったけの声を出して叫ぶ。
「「「助けて~! ゆうかり~ん!」」」
「はいは~い♪」
第三十九話でした。霊夢さん不憫……(特に後半)
次回はあの人が活躍します!もう仕組みはわかりますね!
では!