「いいか、この辺とねじれの関係なのはこれとこれだろ」
「だからこれって言われてもわからない!」
「もう一回よく見て。辺ABと触れてなくて、平行でもない辺はこの2本しかないだろ?」
「平行ってなに?」
氷の妖精、チルノが小首をかしげて聞いてくる。
「そっからか……」
頭を抱えた俺の後ろから、また悲痛な声が上がる。
「ゆ、優斗! なにこの変な記号の羅列は!」
「どれどれ。――これ英検で言うと四級くらいなんだが……」
お空の羽がパタパタしていて、この英文を全く理解してないことが手に取るようにわかる。
それと同時に、俺の頭痛がどんどん激しくなっていく。ああ、どうしよ……
時は2月末。バレンタインが終わった後に待ち構えていたのは、恐怖の学年末テストであった。
大妖精や霊夢などは問題なくパスした。だが、全員が勉強しないで良い点を取れるはずがない。
予想通りといってはアイシクルフォールやメガフレアが飛んでくるだろうが、チルノとお空はすがすがしいくらい低い点数を取り、追試を食らっていた。
そんなわけで、大妖精の家へ来た2人。仕方ないので休日返上で教えているのだが、
「チルノ、平行ってのはいくら伸ばしても交わることがないってことだ。あとお空、この『is playing』は現在進行形だ。今ちょうどしていることを表す時に使う」
「「どゆこと?」」
「むむ……」
俺の教え方が悪いのか2人の理解力が悪いのかわからないが、テストを通過できる気がしない。
しょうがない。いったん休むか。
「じゃあ少し休憩な」
「みんなおつかれさま~。お茶入れたよ」
「あ、ありがとう大ちゃん……」
持ってきた麦茶にチルノが飛びつく。脳が相当オーバーヒートしているのだろう。正座している大妖精の膝にあおむけで転がって、すごい勢いで飲み干していく。
「大ちゃん、助けて……優斗がよくわかんないこと言ってくる!」
「そうそう。現在進行形なんて言われてもよくわからない!」
チルノとお空が俺への不満を大妖精にぶつける。
「おいおい、すべてまっとうなことだぞ。あと大妖精に助けを求めても無駄だぞ」
「「へっ?」」
もう一度大妖精の顔を見た二人が青ざめる。
大妖精は口角を上げ、満面の笑みになっていた。この笑顔は、普段なら彼女がご機嫌なことを意味している。だが、この場合……
「ちゃんとやろうね? さもないと留年しちゃうよ? 私が先輩になっちゃうよ?」
「「ご、ごめんなさい!」」
でた、大妖精の得意技「笑符『デススマイル』」。この笑顔を受けたものは誰であろうが大妖精に逆らえなくなる恐怖のスペカだ。俺は日常茶飯事で食らっている。
「よっし、じゃあ続きやるぞ」
「うわーん! 弾幕ごっこしたいよ!」
「早くさとり様のもとへ帰りたい……」
「大丈夫だ。あと半月もすれば弾幕ごっこ大会だろ」
「待ちきれないよ!」
「今は勉強だ。確か今回の大会はクラス対抗だろ? ここでいい点とれば絶対楽しくなると思うけどな~」
「そ、そうかな?」
「当然。なっ、大妖精?」
「もちろんだよ!」
「わ、わかった。頑張る!」
ちょろいなこの妖精と八咫烏。
「あとお空。お前の主人はとんでもない裏の顔を隠し持ってるからな?」
「へっ? ――そ、そんなことはない! 立派な人よあの方は!」
「まあお前がそう思ってるならそれでいい」
「えっ?」
「さあ勉学に励むぞ」
「みんな頑張って!」
日付が変わるまで知識を詰め込んだかいあって、赤点ギリギリで通過できたのはこの3日後のことである。もっと早く誰かに教えてもらえよ……
「デススマイル」って、どこかのフラワーマスターが使ってましたね。
今回久しぶりの一話完結。帳尻合わせの意味も兼ねてたりします。
次回、チルノの言ってたあれになります!ただ、優斗視点なのでちょっと違った方向からになりますかね。
今回で五十話! ここまで積み重ねられたのは応援してくださってる皆様のおかげです!ありがとうございます!
ではっ!